5.イズライール、バレた!?Ⅳ
楽園の薔薇
5.イズライール,バレた!?
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「トライドー?」
「あ、イール!おかえり!って誰?」
トライドはイスフィールの後ろにいる2人に目を丸くした。
そりゃそうだ。
双子が見知ってる人の後ろに並んでいたら、誰でも驚くだろう。
「同じ薔薇の護衛。レイアースとセイレーンだ。」
「お前、薔薇の護衛なんて言ってんのかよ。」
レイアースがトライドにバレないように耳打ちする。
「仕方ないだろ!相手が安心して話せるのはそれくらいしか思い浮かばなかったんだよ!」
バレた時のために男口調。
それを聞いて、セイレーンが苦笑する。
慣れとは恐ろしいものだ。
「すごいね。3人も護衛がいるんだぁ」
本気で感心したような声に、3人は沈黙するしかなかった。
「で、俺らはおまえが言っていた闇の人物について少し調べてみたんだ。」
レイアースがどこからか資料を取り出しながら言う。
イスフィールはそれを見て、「先に私に教えてよ!」と言おうとしたが、「話すひま無かったし。」と言われるのが分かっていた。
仕方なく口をつぐむ。
レイアースはそれを見てニヤリと笑った。
(本当、イヤなやつ!)
「ステライト・マリーナ。ここよりちょっと西の街から来たらしい。ふたつ名は『星の魔術師』。」
「星の?それなら聞いたことがある。」
「ああ。普段はタロット占いをここの商店街の隅っこでやっていたらしいからな。」
その会話を聞いて、イスフィールはちょっぴりヘコむ。
(レイアースたちはそこまで情報を集めたのに、私は――。同じ時間だったのに、何もやってない。)
これなら、抜け出した意味など無い。
イスフィールは自分でそれを確信してしまったのだ。
「イール?」
トライドの声だった。
あわてたのとびっくりしたのとを混ぜた声で。
「泣いてる…?」
自覚もなかった。
止めどなく涙があふれ、イスフィールの顔を濡らした。
「や、え?ちょっと?え、わけわかんない!」
イスフィールは自分の涙にとまどい、女子に戻って声を上げる。
「頭、冷やしてくるっ!」
追いかけるものなどいないのに、イスフィールは逃げた。
たぶん自分から逃げたかったのだろう。