5.イズライール、バレた!?Ⅲ
楽園の薔薇
5.イズライール、バレた!?
<3>
「ここ、なんだけど…。」
イスフィールは護衛の2人を連れ、今来た道を引き返した。
ラクリーン家は町のはじっこにあるため、商店街とはちょっぴり遠い。
「えーっと、俺らと同い年の奴、いるんだろ?」
「俺ら?え、もしかしてレイアースと私って同い年!?」
「もしかしなくてもそーだよ。つーか知らなかったのか。」
「レイアースと僕は双子だからね、イスフィール。」
目的を見失いかけていた3人。
しかし、セイレーンのセリフでイスフィールは思い出し、訂正する。
「セイレーン!私―じゃーなーくて――!俺は今はイズライールなんだ!レイアースも間違えないで!」
「おぉ。そーいやそーだったなぁ。」
「で、トライドにはイールって呼ばれてるから。あんた達もそれで呼んでいーよ。」
「あんまし変わってねーけどな。」
その小さなレイアースの呟きをイスフィールの耳は逃さない。
「うっさいわね!その方が短くて良いじゃないの!」
「短くても慣れない名前には変わりはないだろ?」
「ふっ……私は3日で慣れたわ。」
「誰にもイスフィールって呼ばれてないからだろ。」
「ぐっ……」
それを言われては何も言い返すことができない。
「ほら、2人とも!入るよ?」
セイレーンはいつもこういう役である。
「…分かったわよ。とにかく、名前に気を付けてね!」
「へーへー。」
何だ、そのテキトーな返事!と思ったが、口ゲンカは体力を使う。
それにキリがいい所はない。
永遠に続くのも疲れるから、2人はこれでやめておいた。