5.イズライール、バレた!?Ⅰ
楽園の薔薇
5.イズライール、バレた!?
<1>
「あー…3日前から何の進歩もしてない……」
イズライールことイスフィールはラクリーン家の部屋で頭を抱えていた。
(調査しなきゃいけないのに…。)
早くしないとセイレーン達に見つかってしまう。
「でも、なぁ……。」
ため息がさっきから止まらない。
「イール?何かあった?」
ここの住人トライドが部屋に入ってきた。
これといってやばいことはないが、なぜかイスフィールは慌てた。
「いやいやいや、何でもないから!」
「…そう?」
妙にきっぱりと言い切ったイスフィールに、トライドは不思議そうな顔をして部屋を出て行った。
今度はホッとしたようなため息がもれる。
「……」
(あのまま、抜け出したりしない方が良かったかなぁ…。いやいやいや、のこのこ帰っていったら怒られて、一生笑われるだけだし!)
気持ちを切り替え、イスフィールは立ち上がった。
「さぁて!調査に行くぞぉ!」
立ち上がった拍子に、机に足をぶつけた。
* * *
だいぶ(本っ当にほんの少しだけど)道を覚えたイスフィールは、情報をたくさんくれる店を知った。
普通の果物屋だが、そこにいるおばちゃんが新情報を提供してくれるのである。
ウラ道での名前は情報屋。
今日もそこに向かおうとしていた時。
途中で誰かに呼び止められた。
早く行きたいのに、と内心ぼやきつつ振り向く。
そこにいたのは。
「お前、イスフィールって奴、知ってるか?」
「れ」
レイアースと言いそうになったが、「れ」でとどめる。
―――って、デジャブ?
前って言うか抜け出した時とまったく同じ光景だ。
あ、でも1つだけ違う。
(何で笑ってんだ?)
レイアースがニヤニヤ笑っていた。
正直言って怖い。
(もしやのまさか…バレたとかいう?)
冷や汗たらーり。
しかしちょっと言ってみよう。
「イスフィールって誰だよ?」
「ほぉ。記憶喪失?」
「……。」
完全にバレていた。
「よし。」
回れ右をして駆け出す。
が、後ろにも知ってる人が。
「うっそぉ…。」
そこにいたのはセイレーン。
「ははは…」と乾いた笑いだけ、イスフィールの口から漏れた。