4.レイアースの「瞳」Ⅱ
楽園の薔薇
4.レイアースの「瞳」
<2>
これはその昔。
ユニゾンが薔薇の護衛をやっていた頃の話だ。
「ユニゾン!来て。おもしろいわよ、これ!」
図書室の奥から、当時の薔薇であるソフィアの声。
「図書室で騒ぐの禁止~。で、どした?」
呆れ顔でユニゾンが向かう。
いつもこんな感じでうるさくなる。
どんなに注意しても、ソフィアは騒いでしまうのだ。
「今度はどんな本?」
と顔を上げると、ソフィアが本のページを見せる。
その本は『糸』という題名でP76である。
とまあ、そんなことは追いといて…。
「緑の糸?」
「そうよ!人の小指についていて、別名信頼の糸というらしいわ。」
そのページをざっと見てみると、深緑の目を持つ者にだけ見えるらしい。
しかし残念ながらソフィアの目も、ユニゾンの目も色は違う。
「…私の目か、ユニゾンの目が深緑だったらいいのに。」
ふてくされたようなソフィアに、ユニゾンは苦笑した。
* * *
記憶をたぐり寄せてみたユニゾンは、驚きで思わず立ち上がる。
「まさかソフィアは…!」
そのことを覚えていて、レイアースを楽園に送ったのだ。
しっかりと糸が見え、呆然としているレイアースの瞳をしっかりと見てみると、ちゃんとした深緑。
たまに誕生で瞳の色が左右されるが、もとは澄んだ深緑だ。
もしその本の通りで信頼の糸だというのなら、レイアースの小指には―――
「レイアース君。今、君の小指にその糸は何本ある?」
まだ楽園に来たばかりだから、その数は少ないはずだ。
「3本だ…。ユニゾンと、セイレーンと、あと、もう1人。」
誰と繋がっているか、までレイアースはユニゾンに教えた。
おそらく、もう1人はイスフィールだろう。
「じゃあ、この糸をたどっていけば…。」
「そうだ。その糸は信頼の糸。見えるのは君だけだ。その目は大切にしなさい。」
「信頼の糸…。」
レイアースはもう一度自分の小指についている糸を見つめた。
あの呆然とした顔ではなく、しっかりと決意を固めたという顔。
「そうそう、セイレーン君もレイアース君も、ちょっと私の話を聞いていってくれないかな?」
言われた2人はとまどったように顔を見合わせ、頷いた。
そしてユニゾンは話し始める。
イスフィールの過去について。