3.ラクリーン家調査「闇の人物」Ⅴ
楽園の薔薇
3.ラクリーン家調査「闇の人物」
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「ふあ~~。」
真夜中の商店街。
もう店は閉まっている。
そんな大通りを、イスフィールは男子の格好をして歩いていた。
「今日も出るのかなぁ、闇の人物。」
イスフィールは町の人、トライド、ラクリーン家で働いている人に話を聞き、闇の人物を探していた。
イスフィールだって調査するつもりだ。
と、その時。
曲がり角の向こうから高い悲鳴が上がる。
女性だと仮定し、イスフィールは走って向かう。
(闇の人かもしれない。)
「誰だ!!」
(あ、男子で慣れてしまった。)
少しがっかりしたが、今はそれどころではない。
「あら、あなたも見てしまったのねえ。なら、次のターゲットはあなたにしようかなあ。」
そこにいたのは、茶色のローブをまとった女の人っぽい。
「もしかして…闇の人!?」
「さてね。それを決めるのは薔薇の仕事だし。じゃ、またねぇ~♪」
そう言うと、その人は茶色のローブをひるがえらせて、イスフィールと反対方向に走っていく。
イスフィールはしばし固まっていた。
(薔薇の仕事、かぁ…。)
自分が薔薇なのに、ここにいることが情けないと感じた。
抜け出して、外に出て、浮かれて…。
(私、なにやってるんだろう…)
でも。
戻る気はしなかった。
ここにいるのに、何もしないで帰る方が情けないからだ。
もうすぐ太陽が昇る。
その太陽を見つめながら、偽りの人間『イズライール』として調査することを、再び決意した。