3.ラクリーン家調査「闇の人物」Ⅰ
楽園の薔薇
3.ラクリーン家調査「闇の人物」
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「で。」
レイアースを振り切ったのはまだいいことだったが、迷子だと言うことは変わらない。
「これは人に聞いて教えてもらうしかなのかなぁ。」
イスフィールがげんなりしていると、また(?)肩をたたかれた。
今度はどちら様と思い振り向くと。
(だれ?)
知らない人だった。
「君…イスフィールにそっくり…。」
その人もイスフィールのことを知っている。
(おかしいな?薔薇姫のことは公開されてないはずなのに…どうしてこんな人が?)
と、内心首を傾げていると、その人はにっこりと笑った。
なぜかその笑顔に懐かしさを感じた。
「ねえ。君の名前は?」
人懐っこい笑み。
少しセイレーンと印象がカブってはいるが、その笑みの裏には悲しみがほんの少し読み取れた。
「わ…じゃなーくーてー。俺の名前はイズライール。イールって呼んでもいい。」
また私と言いそうになるが、ごまかした。
「そうか。僕はトライド。ごめんな、イール。人ちがいだった。本当にごめん。」
本気で頭を下げるから、イスフィールも少し慌てた。
ここは技が必要となる場。
「そこまでするなよ。それに、話しかけたのが俺でよかったじゃん。」
『トライド』という重要なキーワード。
トライドは「へ?」と顔を上げる。それに向かって、イスフィールは、にっと笑った。
「俺の主人―イスフィールから伝言を預かっている。」