プロローグ
楽園の薔薇
<プロローグ>
ある日。
僕は不思議な人を見た。
水色の目。
それに明るい茶色の髪。
その女の人は、野原で何かを唱え、扉を作った。
そして、その扉の中に入っていく。
扉の中はまぶしい光であふれていた。
そんなことが何日も続き、がまんしていた僕も思いきって話しかけた。
「その扉は何?」
と。
そうすると、その人は僕をびっくりした目で見つめた。
「あなた…、これが見えるのね!」
と喜びながら言う。
「あなたも、来る?楽園に。」
そう言って、僕の手を取ると、扉の中へ入った。
目を開けると、そこは自然が広がるきれいな場所。
「来てくれてありがとう。あなたには、この子を頼みたいの。」
「この子…?」
考えて、気付いた。
この子というのは、女の人のお腹にいる赤ちゃんのことだ。
「そこで、あなたに、今日生まれてもらうわ。」
その最後を聞くか聞かないかの時、僕の意識はとぎれた。
* * * * *
「ソフィア」
その声に気付き、私は振り返る。
「ユニゾン」
「もう、終わったか?」
「ええ。今生まれたはずよ。」
その通り、建物にはどよめきがあった。
「あの子には、イスフィールの許婚になってもらうの。」
まだ生まれていないイスフィールをなでながら、私は目を閉じた。
「だからね、ユニゾン。あなたと、さっきの子…そうね、セイレーンにしましょう。その2人が中心になってイスフィールを守ってやって。この子は、この楽園にあるたった1つの薔薇なんだから。」
私の言葉に、ユニゾンは静かにうなずいた。
「たぶんイスフィールは元気な子になるだろうから、そのうち、もう1人あげる。…任せたわよ、セイレーン、ユニゾン。…イスフィール、あなたは、この世界の闇を出来るだけでいいから照らして。」
そして誰にともなくつぶやく。
「よろしくね」と。