00:原罪時点
早速ですが残酷描写ありです。
「お前が悪いんだ」
甲高いボーイソプラノが、無邪気に繰り返す。ぼくは悪くない、お前が悪いんだ。
沈黙が流れる。彼が冷静に返る前に、少年は腕を引いて抜き出した。もう一度、繰り返すように両腕を突き出す。頬に暖かい液体。
「お前が居るから、本物なんて要らないんだ、役に立たない癖に、お前なんて」
言葉を吐き出す度に、腕を突き出す。いらない、いらない、いらない、と。滑る金属を両手で握りしめ、少年は無表情で言い放つ。
縋るように、彼の手が伸ばされる。きらきらと光る瞳に涙を溜めて、幼い彼はここには居ない誰かに助けを求めた。それを不愉快そうに眺め、少年はもう一度腕を突き出した。
「だから、死んじゃえよ」
赤く染まったナイフを握りしめ、少年はようやく微笑んだ。自分とよく似た背格好の彼を見下ろして、とても幸福そうに笑う。天使のように無邪気で澄んだ笑みに、その血化粧は崇高なもののように良く映えた。
あはは、と少年らしい愛嬌のある声が漏れる。その表情と声はとても可愛らしく、足元に広がる血溜まりに違和感すら感じる程に自然な笑みだった。
少年はナイフを落とし、ポケットからハンカチを取り出して両手を拭った。遊んだ後を片付けるように、ただ手が汚れたから拭うという以上の意味を込めずにその動作を続ける。にこにこと笑みを浮かべて、少年は呟いた。
「これで、褒めてくれるかな。ぼくの“お母さん”になってくれるかな」
ねぇ、と誰かの名前を呼ぶ。少年は赤黒くそまったハンカチをその場に捨て、一仕事終えたように笑みを零した。これでいいですよね、と澄んだ声が問いかける。愛する人へ呼び掛けるように、少年は問いかける。
「ぼくを、愛してくれますよね」
それは、起こらなかった過去の断片。




