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雪の行方  作者: りらいず
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独りで食べるご飯

『今日は遅くなりそう。ご飯は先に食べておいて』


そんな無愛想なメールが届いたのはちょうど今日タイムセールの安売りで買った秋刀魚が美味しい焼き頃になった時だった。


「2人分、作っちゃったじゃん・・・」


私はそう独り言を呟いた後

はぁ、と深いため息をついた



最近、夫と上手くいっていないことはわかっていた。

先日、私と夫を知っている友人にも

「あなたたち、最近冷めてない?」と冷やかされた


別に私は、何かをしたつもりはない

普段通り毎朝あの人より早く起きて、簡単な朝食を作って

お昼ご飯の弁当をこしらえて、あの人を起こす。


あの人はまだ眠り足りないという、とろんとした目で「おはよう」とつぶやき

こうして私達の朝は始まる。



彼を送り届けた後は、私は普通の主婦のようにお掃除をしたり洗濯機をたくさん回したり

午後のワイドショーや昼にやっている再放送のドラマを見たり

それが見終わったら夕食の買い物に行って、手頃な値段の食物を買って帰り

夕食を作ってあの人を待つ。



ところが最近、夫と夕食をとっていない

夕食が出来た頃に決まってあの人からのメール

『今日は遅くなりそう。ご飯は先に食べておいて』

毎日同じ文章だから、きっと再送機能を使っているのだろう

メールを打つことさえ面倒だと思われているんだと、私はまた深いため息をついた


デザイナーの仕事をしている夫はときどき急な仕事で

休日や深夜に会社に行くことは多々あった



が、最近それがあまりにも多い


しかも、近頃は「帰りが遅い」のだ




結婚してまだ半年

当時の金銭の都合上、結婚式は開けなかったが、それでも慎ましく幸せに暮らしていた

(まさか、あの人が別の女の人と・・・・)


顔立ちの良い彼は、会社でも人気の「イケメン部長」だった

そんな彼を夫に取ったのだから、そんな心配をしてしまうのも当然だ

彼と結婚してから、私はそのデザイン会社を退社したため、現在の会社の様子はわからない


もしかしたら、新入社員があの人のことを狙っているのかもしれない

断り切れない性格のあの人は、時々私に内緒で外出して・・・・・・・・






・・・・彼が帰ってこない一人きりの夕食時は、いつもそんなことばかり考えていた



(今頃、あの人は一体何をしているのだろうか・・・?)

(真面目に仕事?それとも・・・・)




こんな事を考えてはいけないということはわかっている

きっと、今頃熱心にデザイナーの仕事をしているのだろう


だが、どうしても『妻』としては不安になってしまう・・・


「早く、帰ってきて・・・」

独り言でそうでないような言葉を、私はぽつりと呟いた。

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