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白百合の散る頃  作者: 黒猫。


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3/3

part.3

父母ヶ浜には朝出発したためお昼頃に到着した。

空は雲ひとつなく晴れていた。

「わぁ、ホントに綺麗!」

子供のようにはしゃいで走り回っている。

「菖蒲ちゃん、一緒に写真撮ろう!」

「その姿だと写真に映らないんじゃない?」

はっとした顔をして

「そうだった…幽霊だと写真に映らないよね」

折角来たのに、と暗い声で呟く。

しばらくどうすればいいのか思考を巡らせ、一つの案が思い浮かんだ。

「黄昏時…」

「黄昏時って夕方のことだよね?それがどうしたの?」

と首を傾げる。

「黄昏時は死者と繋がることができると言われているのよ。黄昏時なら、もしかすると映ることができるかもしれない。夕方の方が人気みたいだから、丁度いいんじゃない?」

「じゃあ、夕方にもう一回来て撮ろうよ!」

父母ヶ浜の近くにあるお洒落なカフェでお昼ご飯を食べた後、電車に乗って紫雲出山(しうでやま)に行った。

紫雲出山は昔話の浦島太郎の伝説がある場所だ。

私達は自然豊かな遊歩道を歩きながら、展望台がある山頂を目指した。

一時間ほどかけて登ると、息を呑むほど美しい瀬戸内海の風景が広がっていた。

紫雲出山を降りてからは食べ歩きをして過ごしているうちに黄昏時になった。


黄昏時になり、私達は再び父母ヶ浜を訪れた。

「昼間も綺麗だったけど、夕方もとっても綺麗ね」

「うん、綺麗だね」

鏡のように夕日が水面に映る風景に目を奪われ、浜辺に立ちすくんだ。しばらくして

「菖蒲ちゃん、そろそろ一緒に写真撮りに行こうよ」

と声を掛けられた。

「ごめんなさい、つい見惚れてしまって」

「大丈夫だよ。それにしても、お昼よりも人がいっぱいいるね」

SNSで注目を集めているからか、多くの人がこの父母ヶ浜の写真を撮っている。

周りに人がいない場所を選び、三脚を立てて撮影の準備をした。スマホをホルダーにはめ、タイマーをセットする。

「「はい、チーズ」」

すぐに百合が映っているか確認する。

「ちゃんと映ってるかな…」

百合は心配そうな顔でそっとスマホを覗く。

「大丈夫、しっかり映ってるわ」

と伝えると百合の顔が明るくなった。

その後、ポーズを変えながら二人でたくさんの写真を撮った。


写真を満足するまで撮ってから、しばらくの間沈みゆく夕日を眺めながら浜辺に並んで座り、今日一日の出来事を語り合った。

「今日は本当に楽しかったよ。一緒に来てくれてありがとう」

「こちらこそ、とても楽しい一日だったわ」

百合の方を向くと、足元から徐々に透明になっていた。

「もう行かないといけないみたい」

「そんな…」

と呟くと、菖蒲の頬に手を添えて微笑んだ。

「大丈夫だよ、菖蒲ちゃん。もう心残りはないから」

菖蒲はまだ一緒にいたいと思い、腕を掴んで引き留める。

「行かないで…」

すると、急に強く抱きしめられた。

「わたしも行きたくないし、このままずっと一緒にいたい。でも、幽霊のわたしがずっと居座る訳にはいかないから」

後ろに回していた手を解くと、菖蒲の目を見つめながら口にする。

「最後にもう一つお願いしてもいい?」

「何?」

百合に聞き返すと

「わたしのことを忘れないで。今日ここに来たことも、中高生の頃の思い出も」

と真剣な顔つきで告げた。

「もちろん。忘れたりなんてしないわ」

と涙を堪えながら答えた。

「今まで本当にありがとう。楽しかったよ」

その言葉と共に、百合は夕闇の中に消えていった。

「さようなら、百合」

静かに呟いた声は、周囲の人々のざわめきや波の音に掻き消された。

百合が消えていった場所には、ほんのりと彼女の存在が残っているように思えた。


その日はあらかじめ予約しておいた旅館に泊まった。

翌朝、電車と新幹線を乗り継いで家路についた。

アパートに着いたのは昼過ぎだった。

お昼ご飯を簡単に済ませ、荷物を片づけをした。

その後、一息つこうとリビングに向かった。

ソファにゆっくりと腰を下ろして、スマホを取り出した。

百合と一緒に撮ったたくさんの写真が目の前に広がる。

昨日、百合と撮った写真を印刷し、ミニアルバムに収めることにしたのだ。

ミニアルバムは駅の百円ショップで買っておいたため、後は印刷する写真を選んでプリンターで印刷するだけだ。

百合と撮った写真の中でも良く撮れているものを選び、アパートの近くにあるコンビニに行った。

コンビニのプリンターで写真を印刷している間、一枚一枚の写真に込められた思い出を噛み締めた。

ミニアルバムの表紙には 『百合との思い出』と書き、写真を丁寧に貼りつけた。

笑顔で駆け回る百合の姿、二人で夕日の中撮った写真、二人で見つめた美しい景色。

どれも百合とのかけがえのない思い出だ。

ミニアルバムを閉じて棚にしまうとき、心の中で百合に感謝の気持ちを伝えた。

「ありがとう、百合。絶対に百合のことは忘れないから」

百合は心の中でいつまでも生き続ける。

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