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白百合の散る頃  作者: 黒猫。


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1/3

part.1

親友が死んだ。

長い夏が終わり、そろそろ秋になる頃だった。

ユリの花びらが風に舞う中、親友 百合(ゆり)は交通事故で命を落とした。

彼女とは中学から高校まで同じ学校に通っていた。

親しくなったきっかけは、虐められていた私を助けてくれたことだった。

中学一年の二学期、私はクラスの中心の女子達から嫌がらせをされていた。

大事にしたくなかったがため、誰にも言わずにどうにか耐えていた。

そんな私を百合が助けてくれたのだ。

以前は彼女と然程話したことがなく、天真爛漫で誰とでも話すことができ、笑顔がよく似合う子だなという印象だった。

しかし、正義感が強く自分の意思をはっきりと伝えることができる子なのだと気づかされた。


百合と親しくなってから、彼女と常に一緒にいるようになった。学校の行き帰り、休み時間、放課後、休日。

すると、自然と彼女のことについて知ることができた。

百合の両親は共働きで、百合は祖父母に育てられていた。

そのため、祖父母と非常に仲が良かった。

彼女の祖父は映画鑑賞が趣味で、遊びに行ったときに時々、百合と彼女と祖父と一緒に映画を観た。

彼女の祖母はお菓子作りが趣味で、私が遊びに行くたびにお菓子をご馳走してくれた。

そして、二人とも旅行好きだったため、家のあちこちに旅行先で撮った写真が置かれていた。

百合が長期休みのとき、一緒に行くこともあったそうだ。

私がよく百合の家に遊びに行ったため、百合の祖父母は私のことも可愛がってくれた。

高校に上がると中学の頃よりも忙しくなり、百合の家に遊びに行く機会が減ってしまった。

それでも、学校が同じだっただけ良かったと思う。

高校卒業後、別々となってしまったからだ。

大学生活が忙しく、以前と比べて疎遠になってしまった。

メールも途絶えがちになり、気づけば半年以上会っていなかった。


大学二年の夏休みの終わり頃、百合の母親から一通の電話がかかってきた。

交通事故で百合が亡くなったと告げられたとき、私はその言葉が信じられなかった。

信じようとしても、現実を受け入れることができなかった。

彼女の葬式の日、現実を思い知らされた。

写真の中で微笑む彼女を見つめ、涙が止まらずに溢れる。

ハンカチを握りしめた手は震え、胸が締めつけられた。

『もっと会っておけばよかった、もっと話しておけばよかった』と後悔が頭の中を支配した。

高校を卒業してから大学が別々になり、すぐに会う機会がなくなってしまった。

忙しいことを言い訳に、友達関係を疎かにしてしまった。

こんなことになるなら、上手く時間を作って会っておけばよかった。

そう思っても、もう遅すぎる。


胸の痛みは癒えぬまま、百合が亡くなってから二週間が経った。

いつまでもクヨクヨしているわけにもいかず、身を引きづりながら以前の大学とバイト先を行き来する生活に戻っていた。

今日も大学の授業が終わり、バイトを深夜までした後に大学近くのアパートへと向かった。

三階のアパートのドアを開け、スニーカーを脱いだ。

明かりをつけるのすら億劫で、真っ暗な部屋に足を踏み入れた。

そのままいつもと変わらぬ静かな光景が広がっている、はずだった。

「久しぶり、菖蒲(あやめ)ちゃん」

リビングの中央に、死んだはずの親友 百合(ゆり)が立っていた。

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