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アカデミー 1

感想ください。

誤字脱字などがあれば教えて下さい。



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五月一二日 一○時○○分

帝都 シルバーレーン ルーム6科長室

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 帝城の周辺、シルバーレーンと呼ばれる通りは帝国の官庁街であり、そこには特務機関の本部もある。


 ルーム6の科長室の扉の前。

今朝電話で呼び出された初は、ノックをすると扉を開けて中に入る。

小奇麗に整頓されて部屋には二人の女性が居た。

椅子に座り机に向かう女性に、その横に立つエルフの女性。

 椅子に座っているのはルーム6の科長セシル・ローウェル、その横に立っているのは補佐のシェリー・パークだ。


「おはよう」


 入室した初に、聞こえたその声は前回の任務でザックとルータを確保した際、その報告で掛けた電話から聞こえてきた声だ。

椅子に座るセシルは初が来るのを待っていた。

セシルは、ファイルを取り出すとそれを机の上に置いた。


「これは?」

「今回捕まえたザックとスパイについてのファイルだ」


 二つあるファイルに、初は片方を手に取るとぱらぱらと中をめくる。張られていた顔写真にそれはザックについてのファイルだった。


 ザックは、相当量の秘や、極秘といった帝国の秘密情報を連邦に渡していた。それは尋問を行ったことで初めて明らかになった事で、今回の件までザックはノーマークの状態だった。


ザックがこれまで情報を持ち出してもマークされることがなかったのは、それ相応の手段と時間を掛けていたからだ。

そしてそれは今回も同じだった。しかし、今回マークされたことにその原因は持ち出そうとした機密が特定機密だったからだ。


特定機密は、帝国における最上位の秘密であり、これまでザックが持ち出していた秘や、極秘よりも遥かに厳重に管理されている。それはアクセスしようとした時点でマークされるレベルのものであり、ザックはその中でも最重要の機密にアクセスしようとしたことによりマークされた。


 そして、ザックを使い特定機密を入手しようとしていたのは連邦の諜報機関。

初は、ファイルを置くともう一つのスパイについてのファイルを取る。


「分かってはいたことだがザックと共に捕まえたスパイ、コードネームはルータ、本名ニコラス・ハーゲンはNCIAだった」


NCIAとは、連邦の諜報機関、ニューシエン連邦中央情報局、New Shien Central Intelligence Agency略称だ。


「それでだ」


 言葉を続けたセシルに、横に立っていたシェリーが一枚のメモを取り出した。


「これは?」


メモを渡された初に、それはシェリーの筆跡で書かれた。


「ニコラス達は銃を持っていただろう。その銃の出所だ」


普通の口調で言ったセシルに、だが、言われた初の頭には疑問符が浮かぶ。

 メモにはサニーカーゴとその営業所名だけ記されていた。

 これが敵のあじとの住所であれば難なく理解しただろう。しかし、記されているサニーカーゴとは帝国の運送会社の名前だ。

 理解出来ていない初に、シェリーはため息をつくと補足する。


「サニーカーゴは犯罪組織Kn00(ケーエヌハンドレッド)のフロント企業です」


 Kn00とは、帝国では有名な犯罪組織で、ゴーストガンや違法薬物の製造販売に人身売買など何でも行っている。

サニーカーゴは、表向きは一般的な運送会社だが、実情はそれら違法な荷物を一度に大量、何より誰にも疑われることなく輸送することを目的として設立されたフロント企業だ。


 帝国では民間人の銃器の所持は認められており、一般に販売されている銃には全てシリアルナンバーが刻まれている。

ゴーストガンとは、シリアルナンバーのない銃のことであり、ニコラス達から押収した銃にはシリアルナンバーがなかった。


ゴーストガンを使用したニコラス達に、ゴーストガンは一般に販売されている銃に比べ入手しやすい。しかし、だからと言って銃は銃であり入手のハードルはそもそもが高い。


「そこにニコラス達に銃を渡したNCIA局員が居る。そいつのコードネームはイアース」


Kn00は、自分達の工場で造った銃を、自分達の会社で運んでいた。NCIAはそこに目を付けた。Kn00を利用すれば銃を容易に入手することができ、また、運搬することも出来る。

NCIAは、Kn00に局員を入れると、そこから帝国に居る別のNCIA局員に銃を渡していた。


 イアースはその役目を行っており、Kn00が作ったゴーストガンをイアースを通してニコラス達に、イアースを捉えることが出来ればそれを足掛かりに国内に潜んでいるNCIAの連中を捕まえることが出来る。


「そこまでは尋問で分かったのだが、捕まえようにも肝心の顔が分からない。だから、そこに勤めている従業員全員の顔写真を撮って来てくれ」


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同日 一一時○○分

クリアブルフ基地 屋内射撃場

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「お帰り」


 初が基地に帰ると掛けられた声に、そこには小柄な少女が居た。

 一メートル程の身長に栗色の髪に濃褐色の瞳をした少女。

 イヴァ・クロフトは、クリアブルフ基地の火器取り扱い責任者であり、成人しているが身長が小柄なのは彼女の種族がドワーフだからだ。


「ただいま」


 初は、今から人を探すところだった。帰って来た初は居たイヴァに良いところにいたとばかりに尋ねる。


「イヴァ、キリエがどこに居るのか分かるか?」

「二人なら屋内射撃場に居るよ。呼んでこようか?」

「いやいい。ありがとう」


 武器に弾を搬出する際何処で何をするのかを聞いていたイヴァに、初はキリエの居場所を聞くと足早に向かう。

 屋内射撃場の扉は音が外に漏れないように、また、万が一があった際外に弾が飛んでいかないように重厚なものになっている。

重たい扉を開け中に入ると屋内運動場にはキリエの他に、リレアにエリシー、シーナも居た。


パン。パン。パン。


 仕切りにより区切られたレーンに、リレア達はレーンに並ぶとハンドガンの射撃を行っていた。


「お帰り。どうしたの?」


 誰かが入っていたことに扉の方にちらっと目をやったリレア。

射撃をやめるとハンドガンをホルスターに収めたリレアがこちらに歩いて来る。


「キリエに用があってだな」

「キリエに?」

「どうしたの?」


 隣で聞こえていたリレアの銃声が聞こえなくなったことに皆の射撃の手が止まる。


「キリエ、リーダーが読んでいるよ」

「私を?」


 リレアに呼ばれたことに、キリエはその後ろに初を発見する。


「仕事?」

「ああそうだ」


尋ねてきたキリエに、初は一枚のメモを取り出すと渡す。


「これは?」

「サニーカーゴがどうしたの?」


 メモを覗き込んできたリレア、いつの間にか全員が集まって来ていた。

 頭に疑問符を浮かべ数時間前の初の様になっている皆に、初はルーム6の科長室で聞いたことをそのまま説明した。


「と言うことだ」

「つまりここの職員の全員の顔写真を取ってくればいいんだね」

「張り込み場所は用意してある。頼めるか?」


張り込みとなれば一人だけではきつい部分がある。


「エリシーを使ってもいい?」

「構わない」

「なら任せて」


 いつの間にか集まって来てくれていたおかげでエリシーへの説明も済んでいる。


「エリシーも頼めるか?」

「分かったわ。それで出発はいつ?」

「準備出来次第で頼む」

「「了解」」


 キリエとエリシーは先ほどまで射撃をしていた。

 弾の入っている銃に二人はハンドガンのマガジンを抜くとスライドを引いて薬室内の弾を抜く。


「準備してくる」


 銃を安全な状態にするとキリエとエリシーは射撃場出る。

今回は出番がなかったが、出番はいずれ訪れる。


「ターゲットが判明し次第確保に向かうことになる。その時は頼むぞ」

「はい」

「任せて」


 任務に向かったキリエとエリシーに、リレアとシーナは自身が撃っていたレーンに戻ると的に向かってハンドガンを構える。


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五月一五日 ○九時○○分

シルバーレーン ルーム6 室長室

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 初は、頼まれた物を渡しにセシルの元に訪れていた。

 サニーカーゴは、表向きは運送会社であり、裏で何が行われているのか全く知らない一般人も勤めている。

 サニーカーゴに勤めているKn00のメンバーは少数であり、従業員の大半は一般人が占めている。


「サニーカーゴの営業所に勤めている全従業員の顔写真だ」


 科長室に居たセシルに、初は机の前まで行くと厚みのある封筒を置いた。

 中に入っているのはキリエから受け取った写真の束。

 卓上に置かれた封筒にそれを手に取ったのはシェリーだ。シェリーは、中身を一瞥するなり内容物が写真であることを確認すると扉の方へと歩いて行く。


「すぐに終わると思います。行ってきます」

「急がなくても私達は雑談でもして待っているさ」


 科長室を出るとエレベーターに乗ったシェリーに、シェリー向かったのは地下だ。


「ニコラスを連れてきて」


 特務機関の建物の地下に設けられた取調室。

 受け付けにそれだけを伝えると取調室で待つシェリーに、コンコンコンと、言うノックに数分もしない内にニコラスが連れてこられる。


 収容されている者達は皆一様に魔封じの手錠で拘束されている。それは魔法的、物理的抵抗をさせないためだ。


「外で待っていて」


ニコラスを取調室に連れて来るとそのまま部屋に留まろうとする屈強な警備にシェリーは告げる。


 シェリーが警備を外にやったのは、ニコラスに抵抗の意思など皆無なことをシェリーは知っているからだ。

 バタンとしまった扉に警備が部屋の外に出る。


「今日は前回最後に言った写真を持ってきました」


 二人きりになった状況にシェリーは、封筒を取り出すと中から写真を取り出した。


「この中でイアースはどれですか?」

「こいつだ」


 写真を見せるシェリーに、ニコラスは何の躊躇いもなくそうするのが正しい行動とばかりに写真を指差した。その答えるまでの速さは嘘でテキトウな人物を指しているのではないかと思える程だ。


「間違いない?」

「はい。間違いないです」


再度尋ねたシェリーに、ニコラスの肩が僅かに震える。


「分かった。ありがとう」


指差された以外の写真を片付けると、シェリーは指差された写真を手に取調室を出る。


「戻しておいて」


 シェリーは、取調室の外で待機していた警備に告げるとエレベーターに乗る。


「只今戻りました」


 ノックされた科長室の扉に一五分もしない内にシェリーは帰って来た。


「この男がイアースだそうです」


 セシルの机に一枚の写真を置いたシェリー。


「こいつか」


 写真に写っていたのは、サニーカーゴの制服を着た短髪に眼鏡を掛けた三〇代の男。

 写真を取り上げたセシルは、イアースの面を拝むと写真を初に差し出す。


「捕まえてきてくれ」


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