第9話 ──神の審判と、“夫婦”の誓い
澪の命が救われた奇跡の契約――
それは、世界の理そのものに“例外”を生み出した。
本来ならば共存できないはずのもの。
神の加護と、個の存在。
世界の平穏と、たった一人の命。
だがそれを可能にしたのは、魔王・グラディウスの“選択”だった。
――世界を救いながら、一人の命を諦めなかった男の、強すぎる祈り。
そしてその祈りは、神すらも動かす。
◇ ◇ ◇
数日後。
ふたたび開かれた“封印の神殿”の奥。
澪とグラディウスは、二人で神の前に立っていた。
天井から注がれる光。そこに、神の意志が宿っている。
『魔王・グラディウスよ。
お前は“奇跡”を創った。世界に逆らい、定めをねじ曲げ、
巫女の命を繋ぎ止めた。その罪と価値を、ここに審判する』
「審判だと……?」
グラディウスが剣に手をかけかけたとき、澪がその腕を掴んだ。
「待って。……これは、ちゃんと受けなきゃいけない。
私が、私としてここにいる意味を、きっと問われてるんだと思うから」
静かにうなずくと、彼女はまっすぐ光の中心を見つめた。
「私は、確かに選ばれた存在だったかもしれません。
でも、私は“それだけ”じゃない。私は、私の意思で――この人と生きることを選びました」
彼女の言葉は、光に溶けて、神に届いていく。
「私の命が誰かのために使われるだけの“道具”じゃないことを、
この世界に証明したい。私は……魔王グラディウスの花嫁です。
神の加護を持ちながらも、愛を持って生きるただのひとりの女の子なんです!」
その言葉に、光が揺れた。
そして――神は静かに、最後の問いを投げかけた。
『澪よ。
それでも、お前は世界の鍵として、生きることを選ぶか?
すべてを知ったうえで、この魔王と共に、進む覚悟はあるか?』
澪は――微笑んで、答えた。
「はい。私はこの人と……夫として、パートナーとして、生きていきます。
それが、私の“本当の運命”です」
その瞬間。
神殿全体が黄金に包まれ、石碑に刻まれていた“滅びの予言”が、音を立てて崩れ落ちた。
『契約、更新を認可。
この世界に新たな理を刻む。
二人の絆に、永劫の加護を。
そして――祝福を。』
神の声が消えると同時に、二人の指輪が淡く光を放ち――
契約の証は、“神託”から“誓い”へと変わった。
◇ ◇ ◇
城に戻った澪は、式服を身にまとっていた。
そう、それは――本当の“結婚式”。
形式だけの婚姻ではない。
神に認められ、魔王と契った“真実の夫婦”として、再び指輪を交わす。
「……緊張してる?」
「当然だ。俺は魔王だが、“夫”としては新米だからな」
グラディウスが苦笑する姿に、澪は小さく笑う。
「じゃあ、初心者夫婦として、一から頑張ろっか」
「……ああ。まずは、花嫁の笑顔を守るところから始めよう」
二人が誓いの口づけを交わした瞬間――
世界中の空に、金色の光が舞った。
それは“滅びの終焉”であり、“始まりの祝福”でもあった。
──第10話・一旦… 最終話へ続く。
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