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第72話 列国連盟の影、王都に迫る ── 継がれし名の下に──集結、十人の継承者たち



王都ルヴィエール──新王歴101年。


静謐の空気に包まれていたはずの王都の大地に、

地を裂くような重低音が響いたのは、未明のことであった。


黒き雷が空を裂き、遠く地平の向こうに、

巨大な黒煙がゆっくりと昇っていく。


「……来たか」


中央司令塔のバルコニーで、

老いた参謀がその目を細める。


その視線の先に、かつて“澪”と呼ばれた少女が守り、

“英雄王リアム”と“王女騎士フィリア”が再建した都市――

その誇りが、今、再び試されようとしていた。


――列国連盟《十柱の影》。


長らく“失われた影”として記録から姿を消していたその存在が、

百年の時を超えて再び、王都を侵略せんと牙を剥く。


先遣部隊が南方の峠を越えたという報せを受け、

王国直属《特別戦力部隊》――五十人の王国兵が、

各自の持ち場へと進軍を開始した。



◆第一小隊《鉄の守壁》


「全員、持ち場に着けッ!」


レオ・ブランガルトが吠える。

長槍を手に、揺るがぬ盾兵たちが城門前へと整列する。


「シェリア、右前方!カズラは後方斜線の警戒を!ナディア、射線確認!」


「了解っ!」


背中を預け合う十人が、

迷いなく“壁”を築いていく。


レオが拳を握りしめる。

百年前、伝説となった戦士たちがそうしたように。


「俺たちは――“継承者”だ。後ろには、誰も通さない!」



◆王都・西門近く、空の広場


少女がひとり、

風に揺れる長い赤髪を翻し、

蒼のマントを羽織って立っていた。


その名は、レフィア・ファルネーゼ。

《炎の魔導士》の名を継ぐ少女にして、

百年前の烈火の魔導士・初代レフィアの孫。


「……熱くなってきたじゃない」


ポン、と手に灯した火球。

それを空に投げ上げると、瞬間、炎が鳥の形となって舞い上がった。


「レフィアの信号だ。合流地点に集まるぞ!」


声に応えたのは、灰の外套を羽織った男――

ユウゴ・ストレイ。雷撃剣士の血を引く継承者。


その後ろから現れるは、巨大な盾を背負うヴァンス・ラグナ。

盾兵の誇りを胸に、王都の路地を踏みしめる。


さらには、

機構兵器を背負い、油まみれの手で笑うトロワ・アルネスト、

冷静に状況を分析しながら地図を片手に歩くナオミ・エデルバッハ、

優しい微笑で子どもに魔法の光を見せながらも、

その裏に強い覚悟を宿すカリム・ソレイル――


そして、その中央には、

弓を背負い、全身黒衣に身を包んだ青年の姿があった。


リヒト・グレン。


彼が、百年前のリヒトの曾孫であることを知る者は少ない。

けれども、彼が矢を構えたとき――

誰もが悟る。これこそが、伝説の“再来”なのだと。


「……十人、全員、揃ったか」


リヒトが呟くと同時に、

風が吹いた。


まるで、それを祝福するように。

まるで、“誰か”が空の向こうで微笑んでいるように――



「……継がれし名の下に」


レフィアが、炎の槍を握る。


「ここに集いし我ら、再び立ち上がる者たち」


ナオミが、戦術書を開く。


「王都は、絶対に渡さない」


カリムが、胸の紋章を手で覆った。


「澪さま……あなたが守ったこの場所を、僕たちが――!」


風の音にまぎれ、誰かの“声”が重なった気がした。


(……ありがとう。守ってくれて)


まるで、遠くから澪の声が届いたかのように。


それは、彼らを震わせた。

それは、彼らを強くした。



そして、彼ら十人の継承者が集まったとき、

すべてが始まる。


列国連盟《十柱の影》。

その軍が、ついに王都の眼前に姿を現したのだった。


──次回へ続く。



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