第60話 記録の終わりと、未来の扉
◆序章:風は静かに吹いていた
王都ルヴィエール。
100年という時を越え、なお輝きを失わないその地に、
一陣の風が吹く。
その風は懐かしき声と、優しき記憶を運んでいた。
「見て……ユウ、あれが私たちの――」
声が消える。
だが確かに、そこにいたのだ。
セレナとユウの姿を見たという者は、数知れずいた。
そしていま、その風の中を歩くのは、
ユリア=セレスティアとカイル=リュシアン。
澪から始まった物語、
アリアとユリウスが紡ぎ、
セレナとユウが護りきった“世界”。
その全てを、ふたりが“最後に”受け継いだ。
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◆第一章:記録の継承と、新たなる書
《王国大記録図書館》にて。
最奥の扉が開かれ、新たな書棚が据えられる。
そこに刻まれたのは、
『最終継承譚──終わりなき物語の記録』
記者:ユリア・カイル、ほか多数
棚には、一冊の本がそっと置かれる。
表紙には、澪の名前。
そして、“魔王グラディウス”の名も並ぶ。
隣には、アリアとユリウス。
さらにその後ろには、セレナとユウ、
そして仲間たち・五十人の兵士たちの名が丁寧に書き込まれていた。
「これで……終わったんだね」
カイルの言葉に、ユリアは首を横に振る。
「違うよ。終わったんじゃない。……“次に託された”だけ」
⸻
◆第二章:伝説、そして旅立ち
王都の大広場では、《世界継承祭》が開かれていた。
子供たちは澪の絵本を手に、
老人たちはセレナとユウの旗の前で静かに祈る。
そして、ユリアとカイルが舞台に立つ。
「世界は変わりました。
けれど私たちが大切にすべきものは、
“変えずにいられた記憶”だと思うのです」
「今日というこの日を、また未来の誰かが“物語”として読む日まで、
私たちは進みます。……伝える者として」
拍手が起こる。
けれどその中、ふたりはそっと互いを見た。
(……まだ何かが残っている気がする)
それは、《次の旅》への予感だった。
⸻
◆終章:最後の手紙、風に乗せて
その夜。
ユリアは筆を取り、空白の一枚にこう記した。
『澪さんへ
あなたの旅は、たしかにここで終わりました。
でも、あなたの愛と勇気は――
私たちが“物語”として語り続けます。』
『あなたがそうであったように、
私もまた、誰かにとっての“はじまり”でありますように』
その手紙は封筒に入れられ、風船に括られ、夜空へと舞い上がる。
風の向こう。
まるで誰かが受け取ってくれたように、ふっと光が瞬いた。
澪の声が、どこかでそっと囁く。
『ありがとう。……私、幸せだったよ』
そして夜が明ける。
すべてが始まり、終わり、また始まる――
それが、この世界の真実。
『交際0日で魔王と結婚したら、ただの契約婚のはずが世界の命運を握ることになりました!?──私、ただ嫁いだだけなのに』シリーズ
全60話+継承篇、ここに一旦完結?します。また続編や外伝があるかもしれませんが…
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