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第7話 ──封印の神殿と、“運命の花嫁”の真実



 翌朝、魔王城から馬車で半刻ほど。

 王都の外れ、深い霧と森に包まれた場所に――封印の神殿はあった。


 空気は静まり返り、鳥すら鳴かない。

 それは“神域”と呼ぶにふさわしい、神聖で異質な場所だった。


「ここが……」


「この地は、白き花嫁と神が契約を交わした聖地。

そして、俺たち“魔王の血”に課された宿命が記されている場所だ」


 グラディウスが重く扉を押すと、長い回廊が現れる。


 古代文字が刻まれた壁の先に、巨大な石碑が立っていた。


「この碑文には、三百年前の“第一の白き花嫁”――ユリアの記録がある」


「……第一?」


「お前は二人目だ。

異世界から召喚され、“神の加護”を持つ巫女。

世界が滅びを迎える時にだけ、現れる存在――」


 そして、彼は澪を見つめながら言った。


「“お前の命は、世界と等価である”――それがこの契約の真実だ」


 息を呑む。

 グラディウスの声が、ひどく静かだった。


「白き花嫁は、力を完全に解放すれば、“世界を再構築する奇跡”を起こせる。

だが、その代償として――自身の存在は、この世界から消える」


「……っ」


「三百年前、ユリアはそれを選んだ。

世界を救い、そして――歴史から完全に消えた」


「そんな……」


 澪の中で、胸の奥がきゅっと締めつけられる。


「じゃあ……私も……?」


「その運命を回避する手段は、今のところ存在しない」


「……嘘でしょ……そんなの……」


 澪の膝が、力なく崩れそうになった瞬間、

グラディウスが強く抱きしめた。


「俺は、繰り返したくない。

ユリアを――あのときの“彼女”を……救えなかった後悔を、もう二度と……!」


「“彼女”って……まさか……」


 グラディウスは、ゆっくりと頷いた。


「俺は不老。魔王の力は、血によって継がれない。

この身一つで、過去も現在も生き続けてきた。

ユリアは、俺の最初の花嫁だった。

だが――彼女は世界を選び、俺を置いて消えた」


「……」


「だから、今度こそ……お前だけは、絶対に消させない」


 その瞳は、悲しみと覚悟に満ちていた。


 自分のためじゃない。“彼女”のためでもない。

 今、目の前にいる“澪”のために、彼は言ったのだ。


「……ありがとう」


 澪は、そっと彼の胸に顔を埋める。


 恐ろしかった。でも、心はなぜか落ち着いていた。

 この人が、たったひとりで世界の滅びに抗ってきたことが、痛いほど伝わってきたから。


「私も……運命に飲まれるだけの存在じゃ、いたくない。

自分で選びたい。あなたと、未来を――」


 その瞬間。


 神殿の奥、封印された間が振動を始めた。


「……何かが動き出した……!」


 グラディウスが澪をかばいながら、魔力を張る。


 石の床が割れ、黒い瘴気が吹き上がる。


 そして、封印の間から現れたのは――黒の教団の大司祭。


「“白き花嫁”よ……貴様の覚醒こそ、世界の終焉の合図だ」


「……!」


「我らは知っている。神の加護は、同時に“滅びの引き金”でもあると!」


 グラディウスが剣を構えるも、澪の前に立つその男は、彼女を見据えて動かない。


「貴様の存在が、世界を崩す。

ならば、今ここで――消えてもらう!」


 黒き大司祭の魔法陣が澪に迫る――その瞬間。


「離れろ、澪!」


「――嫌!」


 澪が、グラディウスを突き飛ばし、

自ら魔法を正面から受ける形で、光を発した。


 神聖な力が瞬時に爆発し、黒の瘴気を一掃する。


 だがその反動により、澪の身体は――光に包まれ、崩れるように倒れた。


「澪――!!」


 


──第8話へ続く。



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