第51話 百年後の王国と、語られなかった最後の帰還
◆序章:新王歴212年、春
王国歴から数えてちょうど百年――
今、国の暦は「新王歴」と名を変え、《新ルヴィエール王国》の旗が空に掲げられていた。
かつてアリア、リアム、フィリアが守った王国は、
すでに「物語」として語られる時代になっている。
新王立大学の一室。
書架の奥から発見された《記録の断片》に、
ある若き研究者の目が止まった。
──『澪』という名がある。
──“かつて存在した者の魂が、再び現世に顕れた”と書かれている。
「……フィクションだろう? それとも――」
この資料を前に立ち尽くすのは、
王家の血を引く娘《セレナ・リュシア=アシリア》、
そして、彼女を護衛する青年《ユウ=リュシアン・アークヴェルト》。
彼らは――かつてのアシリアとリュシアンの孫だった。
⸻
◆一章:アシリアとリュシアンの生涯(記録編)
アシリア・ヴェルトレイド(リアムの娘)は、王国の統治機構を改革し、
「選べる統治」と「民意を問う制度」を打ち立てた名君だった。
そして彼女と共に生涯を歩んだのが、
外交と諜報を担った“影の王”と呼ばれた、フィリアの息子・リュシアン。
二人は、異母の従兄妹同士でありながら、
民の意思と信頼によって結ばれた、現代の“理と情の統治者”だった。
二人の間に生まれた子──
《リアス・ヴェルトレイド》と、《ミリナ・アークヴェルト》は
それぞれ文官・軍将として王国を支えた。
そして、その孫であるセレナとユウに今、
“未解読の記録”が託されようとしていた。
⸻
◆二章:語られなかった最後の帰還
──“その者は、かつて異世界から来たりし少女。
王妃として世界を救い、その魂は再び、この地へ戻り来たる”
文献の奥にあったのは、年老いた王家の手記だった。
筆跡は、確かに“澪”のもの。
そこにはこう綴られていた。
『私の名は澪。あの日、命を終えても、物語は終わらなかった。
気づけば私は、生まれ育った現実の世界に戻っていた。
戻った“理由”は、最後までわからなかったけれど……
ひとつだけ言えるのは、あの世界で愛した日々は、決して夢ではなかったということ』
そして最後のページには、こうあった。
『私の記憶が、誰かに継がれるのなら。
この命も、無駄ではなかったと。
……どうか、あなたたちが選ぶ未来に、“勇気”と“優しさ”を』
セレナは震える手でページを閉じ、
ユウが小さく呟いた。
「……これ、本当に実在した人の記録なのか?」
「わからない。でも――私は、この人に“ありがとう”って言いたくなった」
空を見上げる。
そこに広がっていたのは、
百年前と同じ《双翼の旗》と、
変わらぬ、温かい風だった。
⸻
◆エピローグ:未来へ継ぐ者たちへ
セレナとユウは、
澪の記録と共に“王家の記憶”を読み解く旅へと出る。
それは、かつてのリアムやフィリアが歩いた道と重なりながらも――
まったく新しい物語の始まりだった。
「さあ、ユウ。行こう。
世界の“真実”を、今度は私たちが確かめる番だよ」
──そして物語は、また未来へと受け継がれてゆく。
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