【外伝1話】 『目覚めた世界は、知らない天井だった』
高校二年生の春野澪が異世界で亡くなった後の
現実世界に戻ってくるお話です。1話にて記載があります。
外伝シリーズ『記録の向こうで、君は生きていた』
“光”が、全てを包んだのは――放課後の交差点だった。
高校二年生の春野澪は、いつもの帰り道。赤信号で立ち止まり、ふと空を見上げたその瞬間だった。
視界が、真っ白になった。
音もない。風もない。ただ、白い――“光”だけが、澪を包んだ。
次に意識を取り戻したとき。
澪の目に映ったのは、無機質な蛍光灯と、清潔な白い天井だった。
「……どこ、ここ……」
頭が重い。身体が動かない。
だけど、その問いよりもずっと早く、涙があふれた。
意味もなく、理由もなく、ただ――涙が止まらなかった。
⸻
「澪! 澪! 目が覚めたのね、よかった……!」
母の泣き声が聞こえた。
病院の個室、医師が何度もこう説明した。
「交通事故です。信号無視の車が交差点に進入し、澪さんは避けようとして転倒、頭部を強く……」
でも。
“違う”と、澪は心のどこかで思っていた。
事故? 本当に?
でも私、覚えてる。“剣の音”。“夜の焚き火”。“空を翔ける翼”……。
あれは夢だったの?
それとも――
⸻
退院は一週間後だった。
日常に戻るはずだった。けれど、澪は気づいていた。
学校の音、クラスメートの声、教科書のページをめくる感触。
どれもが“遠い”。少しだけ、色が褪せて見える。
授業中、何度もノートの隅に書いてしまう。
──アリア
──王国兵
──ルヴィエール
──リアム
──フィリア
「……誰、だろう」
名前の意味は思い出せない。けれど、確かに“知っていた”。心がそう叫んでいた。
⸻
そんなある日。
放課後の図書室で、澪はある一冊の本を見つけた。
──『空白の年代と異界の来訪者』。
興味本位で開いたそのページに、彼女は息を呑んだ。
《異界から現れ、王国の運命を変えた“少女”の記録。
その名は、“澪”と記されている。》
目を疑った。
そこには、自分の名前が、物語ではなく──“歴史”として、書かれていた。
「……嘘……でしょ?」
澪は、本を抱えるように閉じた。
心臓が、痛いほどに鳴っていた。
⸻
私は、あの世界で――
本当に、生きていたんだ。
物語は、終わっていなかった。
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