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第3話:『盾は、揺るがず──第3小隊、防壁都市を死守せよ』


 戦場には、“攻める者”と“守る者”がいる。


 華々しく前に出て敵を薙ぎ払う者が英雄と呼ばれるなら──


 その背を支え、民と街と、未来を守る者こそ、“真の礎”である。


 ――王国軍・第3小隊。


 彼らは盾を掲げ、前には出ない。


 だが、誰よりも折れず、崩れず、退かない。



 東方戦線の小都市ガーレン


 王国と友好関係にある独立交易市でありながら、戦略上の要衝であるその街に、突如として敵軍が現れた。


「くっ……通信妨害、完全に断たれたか……!」


 小隊副長・メレルの顔が険しくなる。


 既に街の外周部は敵の小部隊に包囲されており、応援要請も通らない。残された兵はわずか三十、しかも住民を庇いながらの防衛戦だ。


 だが──


「だからこそ、俺たちがいる」


 重厚な盾を地に突き立てたのは、巨躯の男。黒鉄の鎧に身を包み、全身に古傷を刻んだ第3小隊長――バルグ・ドラスク。


 “王国最強の防壁”の異名を持つ、寡黙にして鉄の意思を持つ男だ。


「メレル。エイナ。配置を変える。敵の突破を絶対に許すな」


「了解! 都市内の曲がり路地を使って、誘導網を作ります!」


「後衛の子供たちは避難完了済み。あとは守りきるだけよ!」



 敵は三波構成。


 第一波は高速魔獣による攪乱。


 第二波は爆破魔術による壁面崩壊。


 第三波は重装歩兵による突撃。


 まさに“防衛突破”に特化した編成だった。


 だが――


「バルグ隊長、敵、来ます!」


 メレルの声と同時に、爆音が轟く。


 東壁が爆破され、粉塵の中から黒き兵影が現れる。


 だが。


「盾を──合わせろ!」


 バルグの号令一閃。


 第3小隊全員が一糸乱れぬ動きで“盾壁”を形成。


 どんな攻撃も、まず“鉄の壁”に阻まれる。


 音を立てて敵の突撃が砕ける。



 そして迎える、第三波。


 敵の重装兵たちは中央突破を狙い、怒涛の勢いで突っ込んでくる。


「ここが、正念場よ……!」


 エイナが盾を掲げる手を強く握りしめた。


 味方の数は圧倒的に少ない。


 だが──


 防衛とは、数ではなく“崩れない心”の競り合いだ。


 「押せえぇぇえッ!!」と怒号を上げてくる敵に対し、


 「耐えろおおおッ!!」と叫ぶのは、味方の魂。



 戦いは、一時間、二時間……やがて五時間へと及ぶ。


 だが、第3小隊は退かない。


 一歩も、後ろへは退かない。



 そして、ついに――


 「敵、撤退を開始!」


 報告に、一瞬だけ街が静まった。


 バルグは盾を下ろすと、淡く微笑んだ。


 「……この街に、誰一人、通さなかったな」


 「ええ。完璧な防衛、成功です」


 エイナとメレルがうなずく。


 瓦礫の向こうで、避難民の子供が泣きながら駆けてくる。


 「おじちゃんたちが、守ってくれた……!」


 その言葉に、バルグは無言で頭を撫でた。



 防衛とは、ただの戦術ではない。


 それは――“誰かが信じる未来”を、盾となって支え続けることだ。



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