第39話 ──神なき戦場(後編)──勝利の代償と夜明けの誓い
夜明け前。
王都ルヴィエールの空は、深い闇に包まれたままだった。
その地を這うのは、加護封殺兵の残骸。
魔力の痕跡すら吸い取られた大地。
そして、泥に塗れ、血に染まった兵士たちの姿だった。
◇ ◇ ◇
だが。
「――撤退だ」
異界に開かれた門の向こうで、ヴァイルの冷たい声が響いた。
加護封殺兵たちは、命令を受けたように動きを止め、次元の歪みへと引いていく。
その異様な静寂の中、王都の防衛戦は終わりを告げた。
◇ ◇ ◇
アリアは、崩れ落ちるように膝をついた。
「……終わった、の……?」
ユリウスがそっと肩を支えた。
「いや、これは“始まり”だ。だが……少なくとも今は、生きている」
その瞬間、後方からひときわ大きな歓声が上がった。
「戻ったぞ! 南門隊、全員無事だ!」
「東防衛線も、負傷者はいるが死者なし!」
「北壁隊、レン小隊も全員生存!」
◇ ◇ ◇
信じられなかった。
この死と隣り合わせの夜を越えて、
――還らぬ人は、誰ひとりとしていなかったのだ。
深手を負った兵は多く、再起不能となった者もいた。
だが、命を落とした者はいなかった。
それはまさに、“奇跡”だった。
◇ ◇ ◇
バルグが無言で盾を置き、仲間の肩を抱く。
リィナが泣き笑いのままメルアと抱き合い、
セリオが震える手でナリアの手を取った。
「……これが、“生きる”ってことだよな……」
グラディウスは、静かに剣を納めると、戦場の中心で立ち尽くすアリアに近づいた。
「よくやったな。俺たちの世代では、こんな戦いはできなかった」
「……私だけじゃない。みんなが、“信じて、守ってくれた”から」
◇ ◇ ◇
夜が明けてゆく。
東の空に、初めて太陽が昇った。
それは、加護も魔力も関係ない――“本物の夜明け”。
アリアは、リアムとフィリアをその手に抱きしめながら言った。
「ねえ、覚えていて。今日という日を。
“絶望が迫っても、人は希望をつなげる”ってことを」
――神の奇跡でなく、人の誓いが世界を救った。
この防衛戦は、後にこう呼ばれることになる。
《奇跡なき勝利》
そしてそれは、真の戦い――
神と人の“境界線”を越える物語の、序章にすぎなかった。
──次章【聖域編】へ続く。
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