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第28話  ──政略の波、王妃としての試練と母の顔



 ――王国北方の国境線で、不穏な動きがあった。


 隣国ヴェルディアが、「外交的な友好の証」として、**“王族間の縁組”**を正式に申し入れてきたのだ。


 


 ◇ ◇ ◇


 


 「――“リアム王子と、ヴェルディアの第三王女との婚約を望む”ですって?」


 玉座の間でアリアの声が静かに響く。


 隣国からの使者は、朗々と続けた。


「まだ乳児のうちに政略的立場を固めておけば、将来的にも両国の関係は安定し……」


 カツン。


 アリアは、音もなく立ち上がった。


「……なるほど。つまり、私の子を“外交の駒”にしたいと」


「い、いえ、決してそのような――」


「王妃として申し上げます。“双光の子”は、希望であり、道具ではない。

 たとえ相手が国であっても、この子たちの“未来を奪う選択”に、私は応じません」


 その言葉は、あまりに冷静で、あまりに強く――

 誰一人、反論を挟めなかった。


 


 ◇ ◇ ◇


 


 その日の夜。


 「……私、母としての顔を忘れないでいられるかなって……少し、不安だったの」


 リアムとフィリアの眠る寝室の傍で、アリアはユリウスに呟いた。


「政務に戻ると、すぐ“王妃モード”になっちゃって。声も表情も、切り替わってて……」


「それでも君は、いつも“アリア”でいてくれる。僕には、ちゃんとわかるよ」


 ユリウスは、そっとアリアの肩を抱く。


「王妃であることも、母であることも、どちらも君だから、全部君でいいんだよ」


 アリアは、小さく笑った。


「……ありがとう。そう言ってもらえると、少し気が楽になる」


 


 ◇ ◇ ◇


 


 その翌日。アリアは王都の広場を訪れた。


 久しぶりの“公式行事ではない外出”。


 民の中に立つ姿に、ざわめきが起きる。


「王妃様……!」


「まさか、双子のお姿まで……!」


 乳母に抱かれたリアムとフィリアを連れ、アリアはゆっくりと微笑んだ。


「この子たちが、みなさんの“未来”です。

 だから私は、政略よりも、彼らの笑顔を信じます」


 王妃の言葉に、広場中が――拍手に包まれた。


 


 ◇ ◇ ◇


 


 その夜。

 アリアは日記帳を開き、柔らかなペンで一言だけ書き記す。


 


“王妃になっても、母の手は――この子たちに届いていますように。”


 


──第29話へ続く。



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