第21話 ──双光の王国、永遠の契り
これはアリア編完結のお話です。
その日、世界は静かに息を呑んだ。
かつて“滅び”と“奇跡”の狭間で揺れたこの大陸に、
新たな未来を誓う――ふたりの王が、並んで立った。
◇ ◇ ◇
王都ルヴィエール。
魔王城の中心に据えられた、新たな“王の間”。
純白と漆黒の装飾が交錯するその空間の中央に、双つの玉座が設けられていた。
――今日、そこに座るのは、
ひとりは、“白と黒を継いだ王女”アリア・グラディウス。
そしてもうひとりは、“紅の誓いを受け継ぐ王子”ユリウス・エル=ノヴァ。
◇ ◇ ◇
「……誓約の時、至れり」
祭司の声が高らかに響く。
「これより、“双光の契り”が交わされる。
王女アリア、あなたは、ユリウス・エル=ノヴァと共に歩む意志を、神と世界に誓いますか?」
「はい。私はこの人と、光も影も分かち合い、共に未来を築くと誓います」
「ユリウス・エル=ノヴァ。あなたは、王女アリアと並び立ち、共にこの国を治める意志を示しますか?」
「もちろんです。
この手でアリアを支え、この国を――世界を守ると、心から誓います」
その言葉と共に、ふたりの指輪が光を放つ。
それは、かつて魔王と白き花嫁が交わした**“神託の契約”**を超える、
“人の意志”による、新たな誓いの光だった。
◇ ◇ ◇
式のあと、広場で行われた祝賀祭。
民は踊り、歌い、光の精霊が宙を舞う。
「まさかね……本当にこの子が、世界の希望になるなんて」
澪はグラディウスの隣で、小さく笑っていた。
「……あれほど泣いていた娘が、いまや“王”か」
「“あなたの娘”でもあるのよ。泣き虫だけど、芯は強いところ、そっくり」
「ふん……やはり俺の方が、性格はいいな」
「言ったわね?」
◇ ◇ ◇
その夜、ふたりは城のバルコニーに出ていた。
王都の灯りが、夜空の星と溶け合う。
「……不思議だね。昔は“交際すらしてないのに結婚した”両親を見て、
信じられないって思ってたのに……いま、私たちもそうなってるなんて」
「いや、僕たちはちゃんと“恋に落ちて”からだよ。
お互いに、“選び合った”から」
「……そうだね」
アリアはそっと手を差し出した。
ユリウスが、それを受け取る。
「この手がね、ずっと震えてたの。
王になると決めた日、あなたに“隣にいて”って言った日。
でもいまは……すごく、あったかい」
「それはたぶん、僕が隣にいるからだよ」
「……調子乗らない」
「はいはい」
でもふたりの影は、確かに一つだった。
◇ ◇ ◇
その後、“双光王政”と呼ばれる新体制のもとで、
魔族と人間の隔たりは減り、ノヴァ王国も再建され、
世界はゆるやかに、確かに、“誰かが選んだ未来”を歩み始める。
それは、
かつての白き花嫁と魔王が切り拓いた道。
そして――
その娘と、その隣に立つ者が、真に完成させた未来のカタチ。
◇ ◇ ◇
やがて、時は流れ。
伝説となったふたりの名は、こう記される。
《双光の王と、白き継承者の物語》
すべての“契約”を超え、ただ“愛”で選び取った奇跡の記憶である――
《完》
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