第16話 ──二つの王国、ひとつの未来──ユリウスの正体と“亡国の再興”
戴冠式から数日後。
アリアは、ユリウスと共に北の国境を訪れていた。
雪原に沈む城の廃墟。
それはかつて魔導国家として栄えた――ノヴァ王国の跡地。
「……ここが、あなたの国……?」
「正確には、“だった”国だよ。七年前、国王の死と共に内乱が起きて、あっという間に滅びた」
ユリウスの声には、どこか静かな悔しさがにじんでいた。
「僕は、“最後の王族”だった。
でも、王としては誰にも認められなかった。国を守れなかったから」
「……だから旅に?」
「そう。力を探して、意味を探して、
“王としてふさわしかったかどうか”を、この目で確かめたかった」
それは、彼の胸にずっと刺さっていた棘。
「でもね、アリア。
君に出会って思った。王っていうのは、“血”じゃない。
誰かの未来を“背負うと決めた人間”のことを言うんだって」
ユリウスは微笑む。
「君がそれを教えてくれた。だから、僕ももう一度、立ってみたい。
この地を――ノヴァを、“未来に繋がる国”として立て直したい」
アリアはその言葉を、胸の奥で確かに受け止めた。
◇ ◇ ◇
その夜。
二人は焚き火を囲み、月の下で向かい合っていた。
「ねえ、アリア。もし僕が……“隣国の王”になったら」
「うん」
「その時も、君は僕の隣にいてくれる?」
火の揺らぎが、ユリウスの瞳に映る。
「王同士として? それとも……別の意味で?」
「……できれば、両方」
「ふふ、ずるい」
アリアは、そっと彼の肩に頭を預けた。
「でもね――私、あなただから“王女”をやろうって思えたんだよ。
父にも母にもなれなかった私の“未来”を、見つけてくれたのはあなたなんだもん」
「アリア……」
「私は、魔王の娘。でも同時に、**“誰かのために生きるただの女の子”**でもある。
だから――もしも、あなたが隣にいてくれるなら。
この手で“ふたつの国の未来”を繋げてみたいと思う」
言葉ではない“契約”が、二人の間に結ばれた。
◇ ◇ ◇
数日後。
アリアは王城の玉座で、父グラディウスに宣言した。
「私、ノヴァの再建を支援します。
そして――ユリウス・エル=ノヴァを、“盟友”として迎えたい」
静かなざわめきのなか、グラディウスは目を閉じて言った。
「……ようやく、時代が動いたな。
ならば、父としてではなく、王として助言しよう」
赤い瞳が娘を見つめる。
「盟友は、お前と対等の立場に立つ。
ならば――その“重さ”を知る覚悟があるか?」
アリアは、少しだけ困ったように笑って、言った。
「うん。……でも、私、“好きな人と同じ未来を歩く覚悟”なら、もうできてる」
澪がその横で、そっと微笑む。
「……あらあら。やっぱり、うちの子は最強ね」
こうして、二つの王国は手を取り合い――
**未来を共に選ぶ“ふたりの王”**が、生まれようとしていた。
──第17話へ続く。
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