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【第2章完結】ラプラスの魔導士 〜魔眼で魔法を解析し、重力を操る異世界の理術使い〜  作者: 盆妖幻鳥
第2章 リオール疎開

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02-11 初めてのダンジョン

――麓村クーパル

 貿易都市リオールから東に馬車で1日の場所に位置し、セレスフィルド連邦南側の国境に横たわる山脈の麓にある。入山者の拠点として整備されている村ではあるが、近くにダンジョンが発生したとあって普段以上に人が集まっていた。


「結構人がいるんだね」

「ダンジョンのお宝を求めて、冒険者が集まってるんだ」

「ロッシュ君もお宝が目的なの?」


 馬車を下りてアキトが見たのは、日の入りしても冒険者で賑わう村の様子だった。その理由を答えるロッシュに、シーリスがダンジョンに挑む理由を聞く。


「……誰もがたどり着けなかった場所へ行って、誰もが見たこともないような景色をこの目で見たい。だから俺は冒険者ではなく、探検家としてダンジョンに挑んでる」


 未踏の地へ挑む者は総じて探検家を名乗る。そんなロッシュの説明を聞きながら、一段と冒険者が集まっている建物にたどり着く。


「とは言うが……いかんせん俺たちアマチュアには金がない」

「それでギルドか」


 言われるがままロッシュに案内されたのは、この村の冒険者ギルドだった。ロマンを求めるにも活動資金が必要だということに、イシュテナも納得する。


「そういう事、情報収集のついでに護衛依頼を探すぞ」


 ダンジョンには学者も調査目的で訪れており、その護衛を現地で雇うことも珍しくない。そうした依頼の中からロッシュは1つを選び、その依頼を引き受ける。






――――――――――






「初めまして。連邦大学で古代魔法史学の教授をしているゲルトだ」


 翌朝、アキトたちは護衛の依頼人であるゲルト教授と共にダンジョンを目指して山の中へ入る。彼はローブを身に纏った初老の男性であり、調査のためにこの地を訪れた学者でもある。


「ゲルト教授、その本は何ですか?」

「魔導書を見るのは初めてかね?」


 ダンジョン近くの山小屋で突入前の最終準備をしていると、ゲルト教授が1冊の本を取り出す。それは魔法についてまとめられた書物【魔導書】であり、彼が発動させる魔法陣に興味を持ったアキトが声をかける。


「これは魔法陣と言って、いわば2次元の領域で構築するマトリクスだ。魔力を流して陣を作ることで魔法が発動する」

「魔石の代わりですか?」

「使いたい魔法を全て魔石で持つのはかさばるのでな。これなら本1冊で済む」


 魔導書にも種類があり、ゲルト教授が持っている本には魔法陣が記されていた。魔石であれば魔力を通すだけで魔法が発動するが、石である以上大量に持ち歩くことには向かないからだ。


「それよりアキト、早くここに転移マーカー付けてダンジョンに入ろうぜ」

「興味があるなら使ってみるかね?」

「良いんですか。ありがとうございます」


 ロッシュに急かされながらも、アキトは魔導書が気になっていたため、ゲルト教授の申し出に感謝する。彼は魔導書を受け取ると、描かれている通りに魔力を流して魔法陣を形成する。


「……よし、待たせてごめんね」

「大丈夫だよ」

「これで全員だな」


 形成した魔法陣が魔法反応として浮かび上がり、アキトは山小屋の脇にある木に発動した魔法を押し込む。シーリスもイシュテナも既に設置済みのため、これで全員の転移マーカーが設置されたことになる。


「じゃあ行こうぜ。入口はもうすぐだ」


 ロッシュが指を差した先に黄色い霧がかかっているのが見える。それこそが異界化した領域であり、アキトたちが目指すダンジョンの入り口だった。




……





…………




「ここがダンジョン……山の中とは思えないね」

「でもちょっと、幻想的で綺麗じゃない?」


 一面に広がる黄色い魔力の霧の中をアキトたちはまっすぐ進む。気付けば数十メートル先すら見通せないほど霧が濃くなっており、蜃気楼のように見知らぬ景色が現れては消えていった。

 その光景にアキトとシーリスは目を奪われながらも、はぐれないように列を崩さずに足を運ぶ。


「……さて、着いたぜ」


 次第に蜃気楼が消えなくなり、天地がバラバラになっている岩場が姿を現す。魔力の霧は靄になって周囲を漂い、重界とは全く異なる空間が目の前に広がっていた。


「ようこそダンジョンへ。お宝やロマンが眠る……人類の挑戦場だ」


 完全にダンジョンの中に入ったところで、ロッシュが初体験のアキトたちを歓迎する。


「魔力の靄とは別に、細かいマトリクスがそこら中に浮いている」

「初めて嗅ぐ臭い……不思議な感覚がする」

「異界とも違う感じだ」


 アキトはラプラスの魔眼に映るマトリクスの破片に、シーリスは魔力が充満する独特の臭いに、イシュテナは自分の知る異界との違いに……初めてのダンジョンに思い思いの感想を呟く。


「アキト君見て、空にも別の地面がある」

「本当だ。重力とかどうなっているんだろう?」


 岩場の中を歩きながらシーリスは上空に別の地面がいくつも浮いていることを発見する。どれも向いている面はバラバラであり、ダンジョン内の空間が歪んでいることを目の当たりにする。


「異界の空間は時間と共に統廃合を繰り返している。それが重界に流出した際に固定化されたのが、このダンジョンと呼ばれるこの空間だ。重力なぞ、魔力と一緒に物質に引き寄せられている小さな力にすぎん」

「言われてみれば、重力が小さい気が――ん?」


 ゲルト教授の説明を聞きながら、アキトは改めてダンジョンの異質さを感じる。そんな時、突風が吹いて陰にあった岩が崩れて足元に転がってくる。


「うわ!? これ、人の顔だ!」


 転がってきた岩の形は明らかに苦悶の表情をした人間の顔をしていた。アキトがセイファートで転がしながら確認するが、どの角度から見ても人間の顔がそのまま石になったとしか思えなかった。


「もしかして、ここに挑んだ冒険者?」

「……どうやら、正解みたいだぜ」


 シーリスの予想をロッシュが肯定する。周囲をよく見ると、腕や脚と言った人体の一部と思わしき岩が所々に転がっている。見える範囲だけでも、その数は5人くらいにはなる。


「石化能力を持った原種生物がいるな」

「重界のモンスターとはわけが違うからな。気を引き締めろよ」


 ゲルト教授の見立てにロッシュが警戒するように呼び掛ける。ダンジョンには異界に住む生物【原種生物】が紛れ込む。種族が同じでも重界に住むモンスターより狂暴であり、同じと思って戦うことは死に直結する。


「……止まれ。敵さんのお出ましだ」

「後ろにもいるな。挟まれている」


 ロッシュが岩場の陰に動く生物に気付いて警告する。同時に最後尾に居たイシュテナも敵を感知し、アキトたちは荷物を降ろして臨戦態勢を整える。


「正面は俺とシーリスでやる。アキトはゲルト教授を守りつつ、イシュテナの援護だ」

「分かった」


 ダンジョン内に吹く風は魔力を運び、黄色く光る靄が静かに揺れる。ロッシュの指示に従い、アキトはシュヴァルツシルトを形成してゲルト教授の前に立つ。

 シーリスとイシュテナも武器を構え、各々が探知魔法で敵の存在を察知して待ち伏せする。


「白い魔力……本当に無属性だったのか!?」


 戦闘態勢を取るイシュテナの魔力を見てゲルト教授が驚く。彼女が両手に刀身が中抜きされた魔力の短剣を形成したところで、前後同時に敵が動きだした。


「蛇の髪を持った人面馬……やっぱりゴルゴンか!」


 ここは天属性のダンジョン……つまり天界の原種生物が姿を現す。それは蛇そのものが髪の毛になっている人の顔を持ち、さらに牙が生えている首が極端に短い馬【ゴルゴン】だった。


「いいか、奴らの目を見るなよ! 石にされるからな!」


 垂れ下がった前髪の下には、視線を合わせた者を石化させる魔眼【石蛇の眼】が隠れている。ロッシュの忠告を背に、アキトはイシュテナと共に後ろから来たゴルゴンと対峙する。


読んでいただきありがとうございます。

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