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【第2章連載中】ラプラスの魔導士 〜魔眼で魔法を解析し、重力を操る異世界の理術使い〜  作者: 盆妖幻鳥
第2章 リオール疎開

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02-05 貿易都市リオール

――貿易都市リオール

 セレスフィルド連邦南西部に位置し、アキトたちが目指すラディウス法国との国境があるリオール領の中心都市。同じように大国に隣接しているバーストン領とは協調路線を取っており、その縁もあってカナの疎開先に選ばれた。


「ようこそ、貿易都市リオールへ。ピョートル様は公務が長引いており、今しばらくラウンジにてお待ちください。その間にこちらも、夕食とお部屋の準備をしてまいります」


 リオール領の領主を務めるピョートル伯爵は不在であったが、アキトたちは馬車を預けて先導する使用人に従って屋敷の中へ足を運ぶ。バーストン領の領主であるバーストン公爵の令嬢であるカナを迎えるだけあって、屋敷の内装は豪華であった。


「皆様、ここまでお嬢様をお連れしてくださり、誠にありがとうございます。こちらがこの度の報酬になります。全員分まとめてとなりますが、どうかお受け取りください」

「……確認した。契約通りだ」


 ラウンジに案内されて一息ついたところで、ケビンが深々と頭を下げてアキト達に感謝の言葉を伝える。彼が差し出した1枚のカードを代表してシンが受け取り、魔力を通して契約通りの金額が入っていることを確認する。


「MCカードだっけ? 異世界がキャッシュレスなのは、本当に驚いたよ」


 ユースケの感想の通り、この世界では魔力の回路が組み込まれたカード【MCカード】によって金銭のやりとりがされる。冒険者カードにもこの機能があるので、財布としても使用できる。


「3人とも、冒険者カードを出してくれ。すぐに分配する」

「僕の分はいいですよ。シンさんが貸してくれた分に充ててください」

「分かった。そうさせてもらう」

「じゃあ、私から」


 アキトは連邦入国時にお金を借りたため、その返済に充てるようにシンに伝える。彼はそれを了承すると、シーリスが出した冒険者カードと切り欠き同士を重ねる。お互いにMCカードに魔力を通すことで、報酬の移動が行われる。


「ボクなんかが、皆と同じ金額を貰って良いのかな?」

「当然だよ。この依頼は私たち4人で受けたものなんだから。正当な報酬だよ」

「雑務と料理をしてくれるだけで、俺たちは護衛に集中できる。冒険者の1人として十分に仕事をしている」


 同じように報酬を受け取ったユースケは申し訳なさを感じるが、その必要はないとシーリスが伝える。そこにシンからの具体的な評価も加わり、逆に照れくささを感じてしまう。


「カナさん、さっきからどうしたんですか?」

「あ、えっと……実はですね」


 何やら落ち着かない様子だったカナに、アキトが声をかける。どうやら何か伝えたいことがあったらしく、彼女は勇気を振り絞って全員に思いの丈を口に出す。


「皆さん……できればもうしばらく、一緒にいてくれませんか!」

「え?」

「何故だ? リオールには着いたぞ」


 カナからの申し出にアキトは驚きを隠せなかった。唯一冷静だったイシュテナが理由を尋ねたので、事情を知るためにひとまず続きの言葉を待つ。


「実は、私に婚約の話が来ていて……この街でその相手と顔合わせすることになってるんです。でも、突然の話で、どうして良いか不安で……」

「旦那様としても、段階を踏んで進めて行くつもりだったのですが……魔王軍の脅威が差し迫っている以上、お嬢様の安全のためにも急ぐ形となってしまいました」


 カナとケビンから語られる事の次第を、アキトたちは黙って聞き入る。護衛依頼はあくまでも彼女をリオールへ送り届けるまでである以上、ここから先はまた別の話になってくる。


「詳しい経緯は省きますが、相手はここリオール領の伯爵家嫡男です。元々は相手方から出た話ですので、後はお嬢様が首を縦に振るだけという状況です」

「……暗殺か?」

「ち、違いますよ! 殺しちゃダメです」

「それ以外にできることは無いぞ」


 ケビンの説明が一段落着いたところで、イシュテナが物騒な提案をする。どうやらリオール領の保護下にありながら冒険者を雇う理由を脅威の排除と解釈したようであり、カナが慌てて首を横に振りながら否定する。


「カナさんが僕たちに求めているのは、そういう事じゃないですよ」

「そうそう! 一緒にいてくれるだけでも安心感は違うし、相談に乗ったり寄り添ってあげたり……何気ないことでも、色々とできることはあったりするんだよ」

「そういうものなのか……」


 アキトとシーリスから説明を受けるが、イシュテナは冒険者ではなく“自分たち”が必要である意味をいまいち理解できていないようだった。


「それで、カナさんはどうしたいんですか?」

「私としては、まずは友人から始めたいと思ってます」


 ユースケがカナに今回の件について希望を聞く。彼女としては、いきなり婚約というのは性急すぎると考えていた。


「貴族の事情は知らないが、可能なのか?」

「旦那様はお嬢様の意思を尊重するつもりですので、相手方の反応次第となります」

(相手が伯爵家なら、立場としては公爵家のカナの方が上か)


カナの願いが叶うかどうかは他国の平民であるシンには分からなかったが、ケビンの回答から望みはあると期待する。


「今度はお父さんではなく、私が依頼主です。貯金はいくらかありますし、足りないようでしたら働いて支払います」

「……良いですよ」


 真剣に頼み込むカナに最初に賛同したのはアキトだった。その言葉を聞いて、不安が残っていた彼女の顔が晴れる。


「元々この街にはしばらく滞在する予定でしたし……急いでラディウス法国に向かっても、すぐにテトラ様に会えるわけではないですからね」

「もちろん私だって! せっかく仲良くなれたんだもん、力になるよ」

「アキトが残るなら私も残るだけだ」


 アキトの言葉に続いて、シーリスとイシュテナも了承する。


「だそうだ。ユースケはどうする?」

「迷惑じゃなければ、ボクもまだ皆と一緒に居たいかな。1人だとどうすればいいか分からないし」

「決まりだな。俺たちの仕事は社交界まで延長だ」


 シンがユースケの意見を聞き、全員が期間の延長を受け入れる。


「皆さん……ありがとうございます!」

「私からも、感謝を申し上げます」


アキトたちの申し出に、カナとケビンが頭を下げて感謝する。そんな中、領庁の執務服を着た女性がラウンジに姿を現す。


「お話し中、失礼するよ」

「ピョートル様、どうかなさいましたか?」

「カナ様の代わりに、私が君たちを雇おう。社交界の準備と当日の警備を手伝ってくれるなら、部屋と食事を出そうじゃないか」


 そこに現れたのは公務から戻って来たピョートル伯爵だった。彼女は今回開かれる社交界の主催者であり、カナのお願いを含める形でアキトたちを雇いたいと申し出た。


「問題があるなら、冒険者ギルドを通して依頼しても良い」

「そこまでして、伯爵が俺たちを雇いたい訳は?」


 シンがピョートル伯爵に依頼の理由を問う。カナの護衛をしていたとはいえ、初めて会った冒険者を雇おうとする意図が読めなかった。


「明後日に開かれるパーティーは、カナ様が社交界にデビューする大切な場……彼女が信頼している人を参加させることで、安心して臨んでもらいたいのが1つ」

「はい。私からもお願いしたいです」

「もう1つは魔王軍への対策……もしこの街に奴らが現れた時は、キマイラを倒した君たちの力を借りたい」


 ピョートル伯爵が語った内容は元々カナがアキトたちに頼みたかった事と、魔王軍がリオールに出現した時の対応の2つ。特に後者については状況が未知数のため、念には念を入れておきたいとのことだった。


「もちろんです。魔王軍の好きにはさせませんから!」

「僕たちにできることは協力します」

「頼もしいじゃないか。期待させてもらうよ」


 魔王軍と聞いて気を引き締めるシーリスとアキトに、イシュテナも頷いて同意する。それにはピョートル伯爵も感心する。


「待って、そもそもボクは戦えないんだけど……」

「当日にやることは戦闘だけじゃない」

「そういう事、こっちも色々と人手不足でね。やってもらいたい仕事はたくさんある」


 逆に不安になるユースケだったが、シンとピョートル伯爵にできることがあると言われて安心する。アキトたちは正式に依頼を受ける事を了承し、明日に詳細を詰めることになった。


「お嬢様、良かったですね」

「ええ、とっても嬉しいです」


 カナはもうしばらく皆と一緒にいられることに安堵して、笑顔が自然に浮かぶ。その後は夕食の準備ができたと連絡があり、全員揃ってラウンジを後にする。


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