表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第2章連載中】ラプラスの魔導士 〜魔眼で魔法を解析し、重力を操る異世界の理術使い〜  作者: 盆妖幻鳥
第2章 リオール疎開

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/52

02-01 領都バーストン出発

――第2章あらすじ

キマイラ襲撃未遂により魔王軍の脅威を感じたバーストン公爵は、娘のカナを貿易都市リオールへ疎開させることを決める。

アキトたちはその護衛として同行し、その道中で白色の魔力を持つ少女と出会う。

――神暦9102年3月12日

 キマイラの襲撃が魔王軍のものと判明し、バーストン公爵は周辺地域の警戒態勢を強化する。その傍らで娘であるカナを守るため、南方の貿易都市リオールへ疎開させる準備を進めていた。


(まさか、魔王軍が国境を越えてくるなんて)


 セレスフィルド連邦バーストン領は、魔王軍が襲撃したアルヴヘイム王国との国境に位置する。その襲撃から逃れたはずのアキトだったが、脅威の魔の手は確実に近づいてきていた。


「馬車の点検良し、馬の体調も良好っと……ユースケさん、荷物の方はどうですか?」

「ちゃんと全部あるよ」


 アキトは不安を振り払って馬車の点検を終えると、荷台にいるユースケに声をかけた。彼は森の中で保護された壮年の転生者であるが、まだこの世界に慣れていないため同行してもらうことになった。


(ユースケさんはステルス魔法、そして僕はラプラスの魔眼……授けられる能力は、叶える願いによって決まる?)


 魔力を高次構造体に形成したマトリクスを視ることができる魔眼【ラプラスの魔眼】によって、アキトはどんな魔法が発動するのか解析することができる。それに対してユースケは、透明になるステルス魔法を転生によって授けられた。

 この違いが何を意味するのかは分からないが、噂になっている願いを叶える者を召喚する魔法【勇者召喚】が関係しているのではないかと思っていた。


「ってあれ? リストにない荷物が乗ってる」

「どうしました?」

「この箱なんだけど、アキト君は何か知ってる?」


 移動に使うのは貴族が使うような豪華な外見ではないが、質素でありながら実用性のある8人乗りの幌馬車である。その中に、用意した覚えのない箱が紛れ込んでいるのをユースケが発見する。


「いえ、買った覚えはないですね」

「中身は……えっと、マヨネーズ?」


 アキトもその箱を見てみるが、買った覚えがなかった。ひとまずユースケが中身を確認すると、そこには瓶詰めのマヨネーズが何本も入っていた。


「あ、それは私が作ったやつですよ」

「少し量がありましたので、先に運ばせていただきました」


 2人が悩んでいると、そこに今回の護衛対象であるカナと執事のケビンがやって来た。2人は庶民が着るような私服を着ており、彼女が公爵家令嬢であると悟られないようにしていた。


「リオールに到着するのは明日の夕方ですよ。マヨネーズだけこんなにあっても……」

「ボクたち全員で毎食使っても、10日分くらいあるんじゃないかな。これ……」


 目的地である貿易都市リオールには、中間地点のワタオ村で1泊して2日で到着する予定である。そのため食料を多く持っていく必要はなく、アキトとユースケは大量のマヨネーズに困惑していた。


「だって、リオールに行ったら食べれないかもしれないじゃないですか!?」

(アキト君、マヨネーズってこの世界だと珍しいの?)

(大きな店に行けば売っていますよ。庶民が買うには高いですけど)


 リオールはラディウス法国との貿易都市であるため、マヨネーズが売ってないということは無いのだが。ユースケとアキトはカナの熱意に呆気にとられて、指摘する気は起きなかった。


「申し訳ありません。お嬢様は大のマヨネーズ好きでして」

「いえ、謝るほどのことではないですよ。そもそも僕らはカナさんの護衛として雇われている身ですから」


 キマイラ襲撃未遂の一件からバーストン公爵は、娘であるカナを一時的に貿易都市リオールへ逃がす決断をした。目立たないように民間の馬車に偽装するため、兵士や騎士ではなく冒険者であるアキトたちが護衛を務める。


「アキト、荷物は全部乗せた。そろそろ出発するぞ」

「分かりました」


 個人の持っていた荷物も積み終わったことをシンが告げ、それを聞いたアキトたちが馬車に乗り込む。最後に獣人の少女であるシーリスが御者台に座り、全員が揃ったことを確認する。


「みんな乗った? それじゃあ出発するよ」

(……お父さん、戦争なんて起きませんよね?)


 シーリスの操縦で馬車が出発し、門をくぐって街道に沿って進んでいく。離れていく領都バーストンを眺めながら、カナは魔王軍がセレスフィルド連邦に侵攻してこないことを祈る。




……




…………




 天候にも恵まれ、中間地点のワタオ村に向けて順調に草原の中を進んで行く。アキトは御者であるシーリスの隣に座り、連邦に入国した時に購入した本の続きを読んでいた。


(魔法はマトリクスの構成や用途によって様々な系統に分類される。例えば形質変換を応用して物質を造形・加工する錬金術、物理操作を応用して――)

「……ん、あれは?」


 すると大きな影が3つ、馬車を追い抜いて行った。気になったアキトが上空を見上げると、そこには3羽の鳥が編隊を組んで飛んでいた。


「あれは、グラスエイビス!?」

「この先に誰かいる。もしかして……」


 隣にいたシーリスもそれを見ており、編隊飛行しているのが大型の鷲のような猛禽類【グラスエイビス】であると見抜く。アキトがその先に目を向けると、フードが付いたマントを被った1人の旅人の姿があった。


「アキト君、シンさんを呼んで!?」

「わ、分かった」


 グラスエイビスはその旅人を獲物と見定めたのか、飛行速度を上げていく。それに気付いたシーリスは手綱を振り上げて、馬車を加速させて追いかける。


「シーリス、どうしたの?」

「前にいる人がグラスエイビスの編隊に目を付けられたの。このままだと襲われちゃう!」


 馬車が突然加速したことに驚いたカナだったが、シーリスの説明に状況を把握する。グラスエイビスは普段は単独で狩りを行い、その対象は主に中型以下の動物だ。しかし集団になると話は変わり、人間や馬などの大型動物にも対象を広げる。


「大きな鷲にしか見えないけど!?」

「連携して人間も狩るモンスターだ。返り討ちにされる冒険者もいる」


 統率された編隊飛行から繰り出される連携は脅威であり、単独のグラスエイビスしか知らない冒険者が油断して殺される事例も少なくない。この世界に疎いユースケに、シンが端的に脅威を伝える。


「グラスエイビスの強みは連携だ。魔力弾で牽制して、分散したところを各個撃破する」

「分かりました」


 シンはクロスボウに魔力で形成した矢をつがえ、アキトも魔力弾【アステロイド】をいつでも撃てるように準備する。しかしトップスピードのグラスエイビスには追い付けず、旅人に対して攻撃が開始される。


(グラスエイビス……狙いは私か)


 グラスエイビスの編隊はトップスピードを維持したまま、標的を包囲するように散会する。襲撃に気付いた旅人は肩に掛けていた鞄を降ろし、両手に“白色の魔力”で短剣を形成して迎撃態勢を取る。


(馬車を待つより、仕留めた方が早いか)


 直進したままのグラスエイビスが急降下して加速をつけ、旅人の数メートル手前の位置で急上昇に転じる。身体が垂直になったところで翼を大きく羽ばたかせ、風の魔法【ダウンバースト】による旋風を叩きつける。


(魔力は撒いた。どこからでも来い)


 白色の魔力で形成したシールドで勢いを殺しつつ、軽やかな動きでダウンバーストを回避する。そして烈風にあおられて脱げたフードの下から、白髪の少女の顔が露わになる。


(挟まれたか)


 少女が回避した先を狙って、散会した2羽が全身に風を纏って急降下突撃していく。挟み撃ちにされ、避けたとしてもダウンバーストを放った1羽も控えている。彼女は放出した魔力の反射【探知魔法】によって位置を把握し、波状攻撃に備えてタイミングを窺う。


「ピィィ、ピィィーーッ!?」


 挟み撃ちを仕掛けた2羽のグラスエイビスが同時に突撃するが、当たる直前に少女の姿が消える。先ほどまで地上にいたはずの彼女の姿が、次の瞬間には追撃をするはずだったグラスエイビスの背後に現れる。


「落ちろ」


 風を纏ったグラスエイビスが加速するより先に、逆手に握った魔力の短剣を背中に突き刺す。その勢いのまま短剣を振り抜いて胴体を切り裂くと、少女はもう一方の手に持った短剣を次の標的に向けて投げつける。


――そして今度は空中から、少女の姿が消える。


 狙いは攻撃を外して反転してきた2羽のうちの1羽……狙われたグラスエイビスは上昇して回避を試みるが、そこには既に少女の姿があった。彼女は投げた短剣を掴み取ると、交差した一瞬に身体をひねって短剣を振るう。


「ピィィーーッ!!」


 グラスエイビスは少女が伸ばした腕と剣先から逃れようとするが、不意に伸びた魔力の刀身によって両断される。甲高い断末魔と返り血を浴びながらも、彼女は表情一つ変えることなく最後の1羽を見据えていた。


「凄い、あっという間に倒した」

「それよりも、彼女の魔力……白色の魔力って――」


 馬車が追いつくより早く仕留めた少女の実力に、ユースケは感嘆の声を漏らす。アキトはそれよりも彼女の魔力について気になっていたが、熟考できる状況ではなかった。


「残ったグラスエイビスがこっちに来る」

「それなら、僕が撃ち落とす」


 最後に残ったグラスエイビスは形勢不利と判断したのか、身体に纏った風を後方に放出することで加速を付けてその場から離脱する。その方向がちょうど馬車の位置と重なり、シーリスの声で気を取り直したアキトがアステロイドを斉射する。


(散弾のように撃ち出して、重力場の網を張って捕まえる)


 グラスエイビスはアステロイドの合間を縫って直撃を避けるが、各弾が発動した重力魔法【グラビティ】によって重力場に捕まる。そしてそのまま地面に墜落したところを、シンの放った矢によってトドメを刺される。


「それにしても、彼女は何者なんでしょうね?」

「分からないけど……気になるのは向こうも同じみたい」


 グラスエイビスの編隊を倒した、白色の魔力を持つ白髪の少女……彼女は返り血もそのままに鞄を拾い、アキトたちの馬車が到着するのを待っていた。


よろしければ、お気に入りや感想など頂けると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ