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プロローグ

新作投稿開始です!

とは言ってもはるか昔にこの作品はタイトルは別で投稿したことがあるので知っている方は知っているかも知れませんが……楽しんでいただければ幸いです!


どうぞよろしくお願いいたします!


――――死んだらどうなるんだろう?


昔、そう、いつだっただろうか。

唐突にそんなことを考えていたのを思い出した。

気になって気になって、仕方がなくなった自分は誰かにこの疑問を投げかけた。


――――誰だっただろうか。


身近な存在にだった気がする。

頭に浮かぶのはぼやけた輪郭。


でも、そうだ()()()()()()


それがわかった途端にぼやけた輪郭はハッキリとその姿を映し出す。




―――――あぁ、お母さんに、お父さんに聞いたんだ。

だったらこれは『小学生の時の記憶』だ。


ゆっくりと、昔のことなのに昨日の事のように鮮明にその時の記憶が蘇る。


お母さんとお父さんにそう聞いたら2人とも困ったような表情を浮かべていた。

けれど、笑顔を浮かべていた。

とても、とても、とても暖かな。


――――答えはなんだっただろうか。


沈黙……?いや、そんなはずは無い。


……そう、そうだ。

確か『おそらのほしになるんだよ』って言われたんだ。

自分の顔に力が一瞬入る――――笑えなかった。


今考えると何ともファンタジーな答えだ。

死んだらお空の星になる。

そんなはずないのにあの頃の自分はそれを本気で信じていた。

信じずには、居られなかった。


お母さんとお父さんはなんでも知っているんだと、幼い自分は信じて疑わなかった。




―――――だからこそ、自分は夜空の星を見上げ続けたんだ。




()()()()()()()()()()()()




どの星が誰なのか分からないままに、ずっと、ずっと。


2人を見つけたくて、ずっと、ずっと、ずっと。




「―――――どうせ、なら……おし、えて……ほしかった……なぁ……」


『お母さんとお父さんはどんな星になるの?』って。


久しくぶりに頬が濡れた気がする。

枯れ果てたと思っていた雫で。




――――もはや震えることすらも出来ず動かない身体。


痛みを通り越して何も感じない自分の身体に、否が応でも自分という存在が消えかかっているのを感じる。


―――――19年。


いや、今日で20年。


()()()()()()()()()()


なんでこんなにも不幸なんだろう。


あぁ、神様、自分が何かしたでしょうか。


(……いや……だ……なぁ……)


もう、喉を震わせることすら叶わない。

せめて、せめてこんな自分にも欠片ほどの幸せが欲しかった。


家族を失い、友を失い、居場所を失い、終いには()()()()()()()()


ただ、ただ。

――――普通の幸せが欲しかった。




理不尽に自分から全てを奪っていく運命とやらから手の届く範囲のものを




―――――守る力が欲しかった。






求めて、求めて、求めてかき集めた末に手にしたものは――――視界には何も映らず、香りは無く、口内を満たす血の味すら感じられず、最後の音すら聞こえず――――何にも、無かった。





そんなことを最後に考え、自分という存在は消えた。

唯一薄らと残っていた意識とともに溶けるように。











◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇











――――もう目覚めることはないと思っていた。


どう考えてもあの状況下で生きているはずがないのだから。


しかし、自分の意識は覚醒した。

何も無い、まっさらな空間の中で漂いながら。


(―――――こ、こは……)


光に未だ目が慣れていないからだろうか。

目を開いているのにも関わらずどこかぼんやりとした風景しか見えない。

そもそもまっさらなこの場所で、はっきり見えたところで変わりはないのだろうけれど、しっかりと見えないというのも何となく不快感がある。




『―――――起きてくれたようですね』


「……っ?!!」


どこからとも無く柔らかな女性の声が聞こえてくる。

ただ声が聞こえるのであればここまで驚きはしない。

その声の主の姿が見えないのだ。

ぼんやりとした視界の中で四方八方を見渡すもののそこに何かがある訳では無い。


『落ち着いてください人の子よ』


再び聞こえて来る柔らかな女性の声。

何故だかその声に心が鎮まる。


『落ち着いたようですね……。

それではよく、聞いてください』


やはり何処からか見ているのだろう。

警戒しながらもキョロキョロと辺りを見回すのを辞めた途端にそう言って来たのだから。


『まずは謝罪を、人の子よ……。

―――――貴方の人生の数多くの不幸は私の責任です。

本当に申し訳ないことをしました……』


姿は見えなくともその声音から謝罪の、罪を償おうとする意をしっかりと感じた。


しかし、だからこそ疑問が浮かんだ。

勿論こんなありえない展開を飲み込んだ訳では無い。


「……どういう意味ですか……?」


既に止まったはずのドクン、ドクンと脈打つ心臓の感覚に驚きつつも、女性の言葉への疑問を口にする。


『……まずは貴方の現状を確認しましょう……』


その声に反応してか、自分の目の前にゲームでいう説明のために登場するウインドウのようなものが現れた。

今までぼんやりとした視界だったのだが、そのウインドウだけははっきりと見ることが出来る。

そこに映し出されていたのは1つの航空事故の新聞。


日付は自分の誕生日だった、それも20歳の。


「…………」


ゴクリと固唾を飲む。

ドクン、ドクンとより鮮明に感じられる心臓の鼓動がいつの間にか早くなっていた。


『人の子よ……貴方は()()()()()()()()()

その航空事故によって』


「……じゃぁなんで今ここに……」


訳が分からなかった。

この航空事故で死んだというのなら、今ここにいる自分は一体何なのだ。


『貴方は今魂のみの存在となっています。

今、貴方が感じている全てのものは、今まで生きてきた中で感じた記憶によって再現されているものに過ぎないのです』


「……へ、へぇ……?

じゃぁ何ですか?

あなたは――――神様だとでも言うんですか……?」


現実でありえない、意味のわからない現象の中でふと思いついた言葉を問う。

このような事は綴られた物語の中だけでしか有り得るはずがない。


『―――――はい、そうですよ』


しかし、その問いに関しての返答は肯定するもの。


「……っっ!!!」


間髪入れずに返された女性からの言葉に息を呑む。

訳が分からない。

ただでさえ今自分に起きている事に思考が纏まらないというのに、さらに頭の中がゴチャゴチャに掻き回され混乱する。


だからこそ、そんな中でも口が勝手に動いた。




「―――――あなたが神様だって言うのなら言いたいことが沢山ある……」


自分の口は思考するよりも先に勝手に動く。


―――――いや違う。


それは自分がずっとずっと思っていたことだ。

心の底からずっと言いたかった言葉だ。




『……何ですか?』


自らを神だと名乗る女性に、その姿は見えないものの言葉を叩きつける。

そうするしか、なかった。




「―――――自分が……()()()()()()()……っ?!」


『…………』


我ながら何とも情けない声だった。

まるで泣き出す前の子供のような声だ。

あまつさえ成人した大人が口にする声ではない。


「何であんなにも酷い人生にした……っ?!」


―――――トマラナイ。


「何で俺から奪う……っ?!」


―――――とまらナイ。


「何であんなことをした……っ?!」


―――――とまらない。


「何で助けてくれない……っ?!」


―――――止まらない。




願ったでは無いか。

お父さんとお母さんと自分で。

友と自分で。

自分1人だけでも。


――――奪わないでくれと。


声には出ていなかった。

出すことが出来なかった。




『……すみません……』


女性は―――――神様と名乗る声は謝った。

たった1度、心の底から。

それが伝わるほどに真剣な声音だった。


それからしばらく何も言わなかった。

自分―――――いや、俺も、神様も。






「……分かってるんだ。

そういう人生に立ち向かえない程弱い俺が悪いんだって……」


神様に言いたかったことはまだまだあったけれど、俺はポツリと呟いた。


『ち、違うのです人の子よ!

貴方の人生は弱いだとか強いだとか関係もなく不幸が襲ってくる人生だったのです!

……そして、貴方がそんな人生を歩むことになってしまったのは紛れもなく私の責任です……』


慌てたような神様の声。

そしてそのあとにやって来る後悔の滲み出る声。


『……せめてもの償いに貴方に新たな人生を贈りたかった……。

だから貴方の魂をここに呼んだのです……』


「……新たな人生……?」


神様の言葉に反応して声を出す。


『そうです。

死んでしまった貴方を新たな世界へ転生させようと思っているのです』


「……でも……」


俺は神様の言葉を聞きながら俯いた。

何度も何度も俺を襲う呪いのような不幸の数々。

再びアレを経験するのかと考えるとこのまま死んでしまいたい、消えてなくなってしまいたいとも考えてしまう。


どれだけ知識を蓄えようと、どれだけ力を蓄えようと、どれだけ足掻こうと――――足りない。

ただ自分の無力さが浮き彫りになるだけの。


もう2度とは味わいたくない。


『安心してください人の子よ……。

貴方を襲った不幸は次の人生では襲ってこないでしょう。

()()()()()()()()()―――――私の加護を貴方に授けます』


神様の声が再び柔らかなものに変化する。


『それと、もう1つ。

貴方を転生させる世界には貴方の両親の魂も転生させています』


「……っ!?」


『貴方の両親は凄いですね……。

前世での記憶を失ってもなお、互いに出会い、愛し合うのですから……』


「……俺の両親ですから」


年月が経っても忘れられないお父さんとお母さんの姿を思い出す。


『貴方にはその2人の子供として転生してもらおうと思っています。

……しかし、残念ながら前世での記憶は2人にはありません。

ですから貴方の知る両親ではないのですが……』


「……それでもいいです」


それでもいい。

俺は反射的にその言葉を口にしていた。

記憶がなかろうと何だろうと、再びお母さんとお父さんの子供になれるのならばそれでいい。


――――不幸は襲ってこない。

その言葉を信じるのならば、ただ幸せに生きれれば。


『そうですか……。

分かりました。

―――――それでは貴方の望みを言ってください』


俺が穏やかな気持ちでいると神様はそういった。


「の、望み……??」


『これは私の貴方に対する償いなのです。

貴方の望みを叶えるくらいさせてはくれませんか……?』


転生させてくれる上にお父さん、お母さんの子供に再びさせてくれる時点でもう満足がいっているのだがという言葉は口には出さなかった。

きっと、それでは後悔する時が来てしまう気がした。


「……これから転生する世界というのはどういうところですか?」


何を望むにしてもまずは情報からだろう。

ようやく落ち着いてきた思考をフル回転させる。

俺は神様にそう問うた。


『貴方を転生させる世界は様々な種族が居る世界、所謂ファンタジーの世界です』


「……ということは敵対する種族も……?」


『……残念ながら存在しています。

できることなら以前のような世界に送り出したかったのですが……許して欲しい……』


「大丈夫です。

そうか……そんな世界なのか……」


『……それと追加でもう1つ。

貴方の記憶はそのままに転生させるつもりです。

……貴方の学んだことを無駄にはさせたくないですからね』


なんともありがたい情報だ。

そして俺は神様から聞けるだけのことを聞き、必要なものは一体なんだろうかと頭を悩ませる。


どれほど悩んだか。

数秒かもしれないし数時間、数日かもしれない。

時間の感覚がないというのはあまり良くないことのようだ。


最終的にたどり着いたものは簡単な事だった。




「――――じゃぁ、大切な人を守れる力が欲しいです」




自分で用意出来るものだけでは足りない、というのは以前に嫌という程味わった。

では、情けなくとも頼ろうではないか。

自分では用意できないものを与えてくれる存在に。


『守るための力ですか……なるほど、貴方らしいですね……』


姿は見えない神様が笑ったような気がした。


「どんなものかは神様に任せます」


この神様であれば変なものは用意しないだろう。

不幸な人生がこの神様のせいだ、ということには納得のいかないこともあるが、多分大丈夫な気がする。


『……分かりました人の子よ。

それでは転生の準備に入ります』


神様がそう言うと俺の体が暖かな何かで覆われていくのを感じた。


『まずは貴方に私の加護を―――――』


じんわりと心が暖かくなる。

何と言えばいいのだろうか。

そうだ、これは幼い頃にお母さんに抱かれて眠った時のような安心感、そしてお父さんの偉大な力強さ。


――――俺の意識が揺らいでいく。

開いていた瞼が徐々に徐々に重たくなっていった。


『そのまま安らかに眠りなさい人の子よ。

次に目を覚ました時には全てが終わり、新たに始まっています』


完全に瞼が閉じてしまった後で頭を撫でられるような感覚をうっすらとだが感じる。


『……愛しき人の子よ。

新たな人生に幸多きことを願います』


その言葉を聞いた俺は完全に意識を途絶えさせるのだった。

それはあの時の、死の間際とは真逆の幸せなものだった―――――











◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇






――――緩やかに、緩やかに意識が覚醒していく。

なんとも忙しいことであるが、これは先程『神様』に出会った時のものとはまた違う。

これが新たに生まれるという感覚なのだろうか。

何とも表現しがたい感覚に包まれる。


生まれたばかりだからだろうか、明らかに反応の鈍い自分の身体に違和感を感じつつも何とか目を開いた。


―――――しかし何も見えない。

いや、何となく、そう、何となくだがそこに何かがあるのは認識できる。

ぼやけた視界は『神様』と出会ったのを思い出させる。

いい加減はっきりと自らの目で見たいものだ。


――――そんな時突然の浮遊感が襲った。

どうやら誰かに抱き抱えられてどこかへと運ばれていくようだ。


「*************」


何を言っているかは分からない。

聞こえてはいるのだがその意味が全くわからないのだ。

これは感じた覚えのある感覚。

そうこれは異言語を初めて聞いた時と同じだ。

とはいえ、聞こえていても意味がまったく分からないというのは不安感が煽られる。


浮遊感は直ぐにおさまり、代わりに柔らかなそして暖かい何かに乗せられた。

なんと心地よく安心する場所だろうか。




―――――そして、触れられた。

暖かな手に、逞しい手に、柔らかな手に。

それぞれが違う者の手だった。

幸せを、愛を感じる手だった。


うっすらとぼやける視界にようやく見えた。

暖かな微笑みを浮かべる顔が順番に3人。


(あぁ……これは……)


はっきりとは見えない。

だけどそれが誰なのかは何となくわかった。

それを確認した俺は満足に動かせない口をパクパクと開かせる。

言葉として成立していない、そう鳴き声のようなものが漏れた。


すると、笑ったような気配を感じた。

俺ではない他の誰かが。


「*************」


また分からない言葉が聞こえてきた。

だが、それは嫌な気分はしなかった。

むしろ心地いい、耳障りの良い声だ。


それから先はひたすらに泣くことしか出来ずに、これが赤ちゃんだからなのか、それとも自分の意思だったのかは――――わからない、ということにしておこう。




今はただこの幸せに溢れる空間を堪能したい。













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