表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

なにか

作者: 木田といいます
掲載日:2023/06/07

────「庵、ついたぞ」

その一言で目が覚めた。

「...ん...んん」

重い体を起こし後部座席の窓から外を見る。

「早く降りろ、行くぞ」

父の威圧的な言葉に怯え急いで車を降りる。

車の鍵を閉めさっさと歩く父の後ろを重たい足取りでついて行く。

「...ここどこ...」

見覚えのあるようなないような

周りには緑ばかり広がるこの自然に囲まれた場所を

私はいままでの記憶を振り絞って思い出す。

思い出せる限りでは八ヶ岳やら嵐山やらなんやらと

そんなような場所にどこか似ているような気がする。

だかどこか違う。

何も話さない父のあとを

私はいつもどおり、ただ追いかけるしかない。



いくらか歩いた。

どれほど歩いたのか正確にはわからないでいた。

たどり着いたところは先ほどとは全く違う世界のような、キラキラとした場所だった。

父はまた何も言わず階段を上ったところにある外観の洒落た店に入った。

内観は私の心を揺さぶった。

雑貨が揃えられている店だったのだ。

ヘアアクセサリーや小物。証明はピンクや紫で

どこかミステリアスな雰囲気が醸し出されている。

なんていうか女ウケのいい店。という感じだった。

父はなぜこんな店に入ったのだろう。

私は父の顔色を恐る恐る伺った。

すると父は言った。

「お前好きだろう?見て回ってこい、ここにいるから」

私は店の中を見て回った。

小さい子供を連れた派手な女の人が煙草を吸っていた。

こっちに寄ってきて、何も言わずに一本。

私に煙草を渡してきた。

奥に行くに連れて優雅な音楽が聴こえてきた。

音を頼りに進んでいくとカランカランと鈴のような音がした。

見ると奥の壁に一つ。ステンドグラスのドアがあった。


そこから腕を組んだ男女が出てきた。

私はなんの恐れもなくそのドアを開けた。

カランカラン―

「いらっしゃいませ」

ドアの中にはバーテン服の男性が立っていた

「カウンターへ、お客様がお待ちです」

父だろうか。

案内されるがまま、私はカウンター席へと連れていかれた。

「火はあるかね」

なんとも貫禄のある老人だった。

「火は...」

「どうぞ」

私が『もっていない』と答えるよりも先にカウンターの中からスッとマッチが出てきた。



「いやぁ、ありがとう、今日は持っていなくてね」

老人は笑いながら言った。

するとバーテン服の彼は「いえ」と一言、

頭を下げて言った。


「どうかね、生きることは。」

「生きること...?」

突然投げかけられた質問の意図は私には全く掴めなかった。

老人はうんと頷いてまたひと吹き。

私は水を一口。

「長年生きてきたが、もう沢山の老いぼれを見てきた。老いぼれだけではない。命は尽きる。」

ははは、と笑い老人は酒を飲んだ。

「ここに来るは幸福な老人ばかりだ」

「あなたも?」

幸せそうに笑った。

私はその横顔を見てなぜかとても嬉しくなった。

「お前さんはまだ未熟じゃのう、もう大きくはなれん。でも、幸せなんじゃな、」

私が...幸せ?

わからなかった。老人はまた笑顔で私の頭を撫でた。

なんとも言えない気持ちがこみ上げてくると同時に

やはり何か引っかかる言い回しだ。

私は幸せなのだろうか。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ