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06

シベリアン·ウルフが飛びかかってくる。


噛み殺そうと歯をむき出しにしてワルワラに襲いかかる。


しかし、ワルワラの剣は牙が届く前にその額を打ち抜いた。


その一撃でシベリアン·ウルフの体が光の粒子となって飛散し、跡には宝石が転がる。


「まずは一匹!」


ワルワラは前へと突進。


残り二匹を片付けようと剣を振るう。


彼女のステータスはレベル3だ。


一般的なRPGでいえば低いと思われるが、このVRMMORPGでは十分に強い部類に入る。


ラスト·ワールドは、通常のRPGのようなモンスターを倒して経験値をためてレベル上げるものでない。


まだ誰にもわかってはいないが、多くのプレイヤーからは特定の条件があると思われている。


確認されているだけで、最大のレベル6まで。


レベルが上がるたびに身体能力は常人を超え、レベル5ともなればたった一人で中ボスモンスターをも凌駕(りょうが)する。


このVRMMORPGはパーティー戦が主流のゲームだが、レベル2もあればフィールドに現れるモンスター程度なら十分にソロでも戦える。


「はぁぁぁッ!」


ワルワラの剣が輝き始める。


エフェクトがかかったような光を放ち、まるで閃光のような刺突を放った。


ラスト·ワールドには他のVRMMORPGと同じく、レベルの他にスキルというものがある。


ワルワラが持つスキルは、剣術 Aランク、投擲 Aランク、料理 Bランク、鑑定 Cランクと戦闘だけではなく幅広い。


スキルは鍛錬を続けた者のみ発動すると言われている。


スキルにはランクがあり最高がS、最低がF。


ランクが高いほどスキルを使いこなせる。


スキルの種類は人の数――つまりは無限にあると、この世界を創ったピューティアには説明されている。


「あと一匹!」


ワルワラが声を荒げると、残っていたシベリアン·ウルフがその場から去ろうと駆け出していた。


彼女の強さに怯んでしまったのだ。


レベルの差を感じ取ったモンスターに逃げる傾向があるのは、この世界では常識である。


ワルワラが衛兵が落としていった剣を手にすると、先ほどと同じく輝き始める。


投擲のスキル――ランクAを持つ彼女ならば、そこら辺に落ちている小石を投げるだけでも拳銃並みの威力を持つ。


ライト·エフェクトした剣を放ち、それが逃げるシベリアン·ウルフの背中を貫くと、他のモンスターと同じく光の粒子となって消えていった。


「やっぱり強いんだね、ワルワラって」


シベリアン·ウルフ三匹を倒すと、そこへメイが現れた。


彼女は宿屋で借りてきたのか、頼りない薪割り用の斧を手にワルワラに近づいてくる。


まだアルコールが抜けていないのか、その顔色は悪く足取りも不安定だ。


「ちょっとメイあなた!? なんでこんなとこにいるのよ!?」


「えッ? だってワルワラと二ヴァがモンスター倒しに行っちゃったし、あたしも手伝わなきゃって思って」


当たり前のように返事をしたメイは、不思議そうに小首を傾げていた。


一方のワルワラはその身をワナワナと震わせると、肩を落としてため息をつく。


ろくな装備もなく戦闘にどうしてやってくるのだと、ワルワラは思う。


さらにレベルは1で、このVRMMORPGの世界にやってきて間もないというのに。


そんな小ぶりの斧でモンスターが倒せると思っているのかと、ワルワラは呆れて言葉を失っていた。


メイは辟易しているワルワラを見て口を開く。


「なにかマズかった?」


「もういいから……。今から一人で避難場所へ行っても危ないし、ワタシについてきて」


「わかったよ。じゃあ、あたしはワルワラのサポートをすればいいんだね」


「なにもしないで! メイはワタシの後ろでじっとしてないと危ないのよ!」


ワルワラは、余計な気を回さないといけなくなったと、怒りをあらわにした。


だがメイのほうに悪びれる様子はなく、それどころか酒の影響でえずいている。


気を取り直して他のモンスターを探しに走るワルワラの後に、メイは言われたようについてきていた。


並んで走っていると、ワルワラの肩にいた二ヴァがピョンっとメイの肩に飛んで移動する。


それを見たワルワラは、二ヴァも彼女のことが心配なのだなと表情を緩ませていた。


「モンスターはあとどのくらいいるの?」


「わからないけど。衛兵の話じゃ、ワタシ以外にも戦ってくれてる人がいるみたいよ」


「そっか。なら安心だね。戦えないのはちょっと残念だけどさ」


「あんたは戦うなって言ったでしょ!」


ワルワラはメイに対して、あなたからあんたへと言葉が悪くなっていた。


しかし、彼女がプンスカ怒っているのに、なぜか二ヴァのほうは機嫌よさそうにメイの肩に(たたず)んでいる。


こいつら似てるなと、ワルワラは内心で毒づきながら願っていた。


もう一人の戦っている者が、メイのような無謀な人間ではないことを。


「あッ、あそこじゃない? オオカミっぽいのがいっぱいいるのが見えるよ」


「はい、あんたは下がって! あいつらはワタシがやるから! 二ヴァはメイが変なことしないように見張っててよ!」

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