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間違い探し  作者: はるこ
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タイムスリップしたら七年前でした。

ご訪問ありがとうございます。

不慣れで、読みにくい部分はあるかもしれません。

少しずつ更新していきますので、興味のある方だけでも読んでみてください。

 好きな人と両想いになって、付き合う。

それは好きな人がいる人からしたらみんなが憧れること。

その人と結婚して、子どもができて、生涯を共にすることはものすごく奇跡で尊いことだ。

しかしそれは、ただの理想に過ぎない。

いくら好きだった相手と結婚しても、どんどん飽きがきて、嫌な部分ばかりが見えるようになってくる。

絶対に一生一緒に入れるとは限らないのだ。

楽しかった思い出は色褪せて、喧嘩が増える。

特に子どもができると、夫婦の時間がとれなかったり、価値観のズレが生じて尚更言い合いになることが増える。

もちろん、すべての夫婦のことを言っているわけではない。

仲がいい夫婦というのは存在する。

夫と2人の子どもとの家庭を専業主婦として守っている下野春子は実際にそんな問題に陥っていた。




 「もうこんな時間。早くお風呂入れて子どもたち寝かさなきゃ」

時計は午後7時半を指しており、やっと夕飯の皿洗いが終わった春子はそう言って、お風呂の支度を始めた。

お風呂上りにオムツ、着替え、タオル……。

それらを用意しているうちに、玄関のほうで音がした。夫の下野凌が帰ってきたのだ。

リビングの戸が開くと、たちまち服が脱ぎ捨てられる。

春子はバタバタと動きながら、「服脱ぎ捨てないで洗濯篭に入れて」と言った。

凌はもうすでに食卓に座り、携帯をいじっている。

そしてめんどくさそうに脱ぎ捨てた服に目をやると、「あとでやる」の一言。

鬼ごっこを始めた3歳の双子の梅子と桃子が、その衣類を踏んで転んだ。

「あ!」と思ったときにはもう遅い。

「うわああああん!痛い!!」

「あらら、痛かったね!」

慌てて春子が抱っこして頭を撫でている間も、凌は知らん顔。

ずっと食卓に居座って、ご飯を待っているだけの夫。

春子はイライラして声を荒げた。

「早くしまって!子どもたちがこうやってケガするから!」

「俺も仕事で疲れてるから。てか、主婦の仕事じゃん。飯は?」

何を言っても「仕事で疲れている」。

最近まともに会話したことがあっただろうか。

春子はあきらめて、凌の衣服を踏まなさそうなところに押しやった。

「おい。ちゃんとたためよ」

「あとで。私も育児で忙しいの」

「飯は?」

「ご飯とみそ汁よそって、おかずはチンして。お風呂入れてくる」

「はあ?お前そんなんでほんとに主婦なの?仕事から帰ってきた旦那さんの服も畳まない、ご飯も出してくれない。ゴミじゃん」

「だから、これから子どもたちとお風呂に……」

「はいはい、いいなお前は。ゆっくりお風呂に入れて。俺なんて入るころにはお湯冷めてるもんな。どうぞごゆっくり」

春子は血管が切れそうになったのをグッとこらえた。ここで言い争っても意味がない。

夫がご飯をチンしている横をすり抜け、子どもたちをお風呂に入れた。

 寝かしつけを終えた後、春子はリビングでため息をついた。

もう時計は日付をまたごうとしている時間を指している。

凌もとっくに寝ていて、暗闇のリビングに一人だ。

「昔はあんな人じゃなかったのに……。私が悪いの?結婚して主婦になったのは子育てがあるからなのに、旦那さんの世話まで全部やらなきゃダメなのかな……みんなやってるのかな……」

そう呟きながら涙があふれてくる。

春子だって言い返したい気持ちは山々だった。双子育児のワンオペで余裕なんてない。お風呂にゆっくり入っているわけじゃない。ご飯だって作るのですら一苦労なのに、凌の分もきちんと用意してある。

しかし、言い返しても返ってくるのは「主婦のくせに」「稼いできてやっているのに」「いいご身分」「ゴミくず」。

そんなことを言われて心がえぐられるよりは、我慢するほうが遥かにマシだった。

春子は携帯の待ち受けを眺める。

梅子と桃子が赤ちゃんの時の写真。

「ゴミくずなお母さんでごめんね……。これ以上頑張れないよ……」

春子は暗闇の中で×××を手に取ると、それを飲み干した。

涙が止まらない。

春子の目の前がより深い暗闇に包まれ、意識が途切れた。



 ピピピピ、ピピピピ。

春子は目覚まし時計の音で目が覚めた。

「ん……」

布団の中から手を伸ばし、その目覚ましを止めた。もそりと布団から起き上がり、思い切り伸びをした。ふと、違和感を感じる。

「ん?」

春子は周りをぐるりと見渡し、首を傾げた。

「あれ?ここ私の実家?なんで?」

昨日までは自宅にいたはずだ。春子は昨日の夜のことを考えたが、思い出せなかった。

さっき止めた目覚まし時計に目をやる。

「おかしいな……。これ、高校の時に使ってたやつ……。インテリアも全部……。なんで?どうなってるんだろう」

足元に置いてあった、高校の時使っていたスリッパをとりあえず履くと、春子は子どもたちはどこだろうと探しに部屋を出た。

部屋を出たところで、母親の篠原つぐみに出くわした。

「あら、春子。おはよう」

「お、お母さん。おはよう。ね、私昨日いつ実家に来たんだろう。何も覚えてなくて」

「え?何の話?春子はうちの子でしょ。実家だなんて、急にどうしたの?」

「え?」

「それよりこれ、洗濯ものね。きちんとしまっておくのよ」

つぐみは手に持っていた洗濯物の4分の1を春子に手渡した。

春子は呆然としたままそれを受け取る。

「えっと……梅子と桃子はどこ?まだ寝てるよね?」

「だからさっきからなんの話?梅子と桃子ってだあれ?」

頭の中を鈍器で強く殴られた気がした。

つぐみが冗談を言っているようには見えない。春子は頭痛がしてきた。

「ちょっと、大丈夫?顔色真っ青よ?」

「だ、大丈夫……」

襲ってくる頭痛と吐き気に耐えながら、なんとかもらえると、隣の部屋のドアが開いた。

「おはよう……」

「ああ、おはよう、心美。今起こしに行くところだったわ。心愛は?」

「まだ寝てる……」

心美は眠たそうに目をこすっている。きっとつぐみと春子の声で目が覚めたのだろう。

それよりも、春子は心美の姿に唖然としていた。

心美と心愛は春子と8つ離れた双子の妹だ。

本来なら、14歳のはずだ。それなのに、目の前にいる心美はどう見ても7歳くらいの子どもだった。

「こ……こみ……?どうしたの、その姿……」

「ん……おはよう、お姉ちゃん。心美、どこかおかしい?」

「いやおかしいも何も……なんでそんな小さくなってるの?」

その会話を聞いていたつぐみが怪訝そうな顔をして、「まだ寝ぼけているのね、顔洗ってきなさい」と言って、春子を洗面所に連れて行った。

 「おかしい……。絶対になんか変だ……」

「何がよ」

春子が顔を洗いながらそう呟くと、洗面所の入り口で呆れた顔をして立っているつぐみが言った。

「お母さん、私の顔を叩いてくれない?きっとこれ、何かの夢だから」

するとつぐみは容赦なく、春子の頬をひねったり、ひっぱたいたりした。

「痛い!」

しかし、何も起こらない。目は覚めない。

絶望した気分だった。

たしかに昨日まで夫の凌と、双子の梅子と桃子と一緒に過ごしていたはずだ。その夜の記憶はないが。

春子がこめかみを押さえると、つぐみが「そういえば、高校入学おめでとう」と言った。

「はい?」

「今日から高校生でしょ、バス通始まるんだから早くしないと遅刻するよ」

すると、今度は部屋に連れていかれたのだ。




 キーンコーンカーンコーン。

春子はその校舎をぼんやり眺めた。

まさか、またここに通うことになるとは……。しかも、制服。

周りを見渡して、自分が浮いていないかだけが気になって落ち着かない。

 部屋に戻った後、携帯とカレンダーを確認した。

携帯はガラケーで、表記されている日付は「2013年4月1日」。

カレンダーにも、2013年4月と書かれていた。

そして壁に掛けられた真新しい制服。使ったはずの教科書も筆記用具もノートもすべて未使用の新品だった。

ここまで完璧だと、さすがに認めざるを得なかった。

「タイムリープ……だよね、これ……」

 それから慌てて準備してバスに乗り、今に至る。

今日は高校の入学式で、周りには保護者の人も数名いた。

「はあ……最悪……」

思いもよらない出来事に、春子は大きなため息をついた。

ふと、周りの人が自分に集中していることに気が付いた。

(え?なに?やっぱどこか変?)

思わず、肩より少し長い髪で顔を隠してしまう。

ふいに後ろから声をかけられた。

「あの」

「は、はい!」

振り向いて、春子の心臓が嫌な音を立てる。

そこに立っていたのは間違いなく、下野凌だった。

「え?凌?なんで……」

そこまで言って、ハッと口をつぐんだ。凌とは元々高校の同級生。

これが本当にタイムリープだとしたら、凌は入学式にいてもおかしくはない。

むしろ、今の春子のセリフのほうが違和感がある。

目の前の凌が首をかしげた。

「なんで俺の名前……?」

「あ、あの……ごめんなさい、知り合いに似ていたから……」

「ふーん。あ、そうだ。あそこの奴らが、君のメアドが欲しいって」

親指でぐっと後ろを指さす。その方向を見ると、見覚えのある人たちがこちらを見ていた。

彼らも高校のときの同級生。毎日放課後一緒に遊んでいた連中だ。

春子は携帯を取り出し、この時代がスマホではないことを思い出して元に戻した。

仕方なくメモ帳と筆記用具を出してメアドを書くと、それを破って凌に渡す。

「これ、渡しておいて」

「……。知らないやつなのにそんな簡単に教えていいのか?」

たしかに当時は知らなかったかもしれないが、これから仲良くつるむ人たちだと、春子は知っている。だから、「うん。渡しておいて」と言った。

「返すかわからないけどって言っておいてね」と付け加えて。

それから「バイバイ」というと、校舎へ向かう。その後ろ姿を、凌はずっと眺めていた。





読んでくださってありがとうございます。


作者名とヒロイン名が同じですが、この作品は全くのフィクションです。

登場人物も架空の存在です。


第2話も読んでくれると嬉しいです。

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