アリの家族の幸福
現代の童話のような感じで書きました
昔、あるところにアリの家族がいました。お父さんアリは仕事が嫌でしたが子供がふたアリ(男の子と女の子)できたのでしぶしぶ働いていました。この時代はお見合い結婚が主流でしたので、お母さんアリは、断ることもせず仕方なく結婚しました。お父さんアリは仕事で嫌なことがあると子供達に当たり散らし、殴ったり蹴ったりしました。そして決まってこう言いました。
「誰が飯食わせてやってると思ってるんだ!」
お母さんアリはそんなお父さんアリに逆らえず、仕方なく黙っていました。
そして時が過ぎ、子アリ達も大きくなりました。娘アリは、性格が暗く学校に行ってもいじめに遭いました。ある日、けがをして帰ってくるとお母さんアリに問い詰められ、虐められている事を話しました。そしてお母さんアリがお父さんアリに相談したところ
「大人しくしてないで殴り返してやれ!」答えが返ってきました。お母さんアリはそれを聞くと
「何も言わないで黙ってやられてたんでしょ。それじゃあ虐められるわ」と言いました。その日から毎日、お母さんアリは「今日は虐められなかった?」と娘アリに聞きました。娘アリにはそれがとても嫌でした。その後お母さんアリが娘アリの担任の先生に虐められていると相談をしました。そして先生にちくったと思われた娘アリはますます虐められました。それからお母さんアリには虐められていないよと言い続けました。
その頃、息子アリは、学校になじめずにいました。息子アリは、いばりんぼうな性格で人をバカにして見下していました。そのくせ、自分が傷付けられることには酷く敏感でした。
お父さんアリにも逆らうようになり、殴り合いの喧嘩になりました。そしてお父さんアリが息子アリに負けたとき立場は逆転しました。息子アリはどんどん我が儘になりました。そして学校に行くのをやめました。
そして10年の月日が流れました。息子アリは働きもせず毎日、お母さんアリにお金をせびって暮らしていました。お父さんアリはもう何も言わなくなり黙々と働いて帰ってくるとお母さんアリに当たり散らしました。娘アリは要領が悪く、仕事も上手くできず、人になじめないせいで、仕事を何度も首になり、転職を繰り返し、なんとかアルバイトをしながら、欲しい物を我慢してお金を貯めていました。お金を貯めて、自分の家を持ち、この家族と縁を切りたいと思っていたからです。
そんなある日の事、娘アリは病気になって入院しました。命に関わる病気ではありませんでしたのでいずれ退院し、家に戻ると、大切にしまっておいたお金がありません。見つからないように隠していたはずでしたが、お金を入れた袋ごとなくなっていました。手作りで作った猫の刺繍を施したお気に入りの袋です。
娘アリは息子アリに問い詰めましたが「知るわけねーだろ!」と逆ギレされました。本当に取ったのかは証拠がありませんでした。
その時娘アリは、気付きました。神様は、私に死ねと言っているのだ、生きる価値もないのに、生きているから、嫌なめにばかりあわせるのだ。もう疲れたわ・・・。娘アリは、そう思いながら、その日は眠りました。すると、お告げのような夢を見たのです。
呪われた家を燃やすと、天使が現れて、今まで感じたことのない幸福を感じたのです。家が呪われていたのだと思った娘アリは、家を燃やそうと夢の中で決意していました。
しかし、もう燃えていました。逃げ遅れた娘アリは、燃えながら夢を見ていたのです。
お父さんアリは仕事に行っていたので助かり、お母さんアリは酷い火傷を負いましたが助かりました。
息子アリは、最近お金が手に入ったので、遊びほうけていて家にいませんでしたのでもちろん助かりました。
お母さんアリは火傷がひどく合併症などで、病院で寝たきりの生活になりました。お父さんアリは、たまに顔を出しましたが、息子アリは見舞いにも来ませんでした。
息子アリはまとまったお金ができたのでギャンブルにつぎ込んだら大当たりで、かなりの大金を手に入れたため、マンションを購入し、毎日遊んで暮らしとても幸せでした。
お父さんアリはお母さんアリの治療費などにおわれ、まともに住む場所もなく、テントをはって生活していました。娘アリは燃えて跡形もなくなったので、特にお墓も建てませんでした。
そのうちお母さんアリは、もともと太りすぎで糖尿病もありましたから回復力がなさすぎて、死にました。
そして、お父さんアリは、そのままテント暮らしを続けていましたが、あるときテントの近くで倒れ、そのまま死にました。死体は誰にも気付かれることなく腐って土に帰りました。
息子アリはお金を使い果たすと、おなかが空いたので万引きをして捕まりました。それをきっかけに生活保護を受ける事ができ、大きなギャンブルはできなくなりましたが、たまにパチンコを楽しんでいるようです。最近はインスタを投稿して、「いいね!」をもらうのを楽しみにしているようです。
最近一番「いいね!」をもらったのは猫の刺繍を施した袋の写真だそうです。
どんなふうに生きるのが幸せなのでしょうか