房中術
4月中の更新は出来ませんでしたが、なんとか新作をアップしました
お風呂回継続中です(^_^;)
(おおおおぉ……な、なんて柔らかさ!)
今までに散々腕だの背中だのに押し付けられていたので、わかりきっていた事ではあるのだが、手のひら全体で感触を味わっているおりょうさんの胸は、どうやって美しい形を維持しているのか理解出来ない程に自在に形を変える。
その上、張りと弾力も抜群であり、どこまでも指が沈んでいきそうな柔らかさなのに、まるで内圧でも掛かっているかのように押し返してくるのだった。
(柔らかい中に一点だけ、少しだけ硬めの部分があるけど、これは……あれか)
手のひらで覆われた柔らかい半球の中でぽつんと、明確な主張をしてくる箇所があるのだが、考えなくてもおりょうさんの胸の頂点である乳首だろう。
「んんっ!」
「す、すいません。痛かったですか?」
僅かに顔をしかめた俺の腕の中のおりょうさんが、小さく呻くような声を発しながら身を捩った。
「ううん。別に痛かぁ無いんだけど……良太のその手の動きは、無意識なのかい?」
「手の動き?」
(力を入れ過ぎないように気をつけてはいるけど……なんだろう?)
こっちの世界で再構築された俺の手の力は、恐らくは気による身体強化も加えれば石も砕ける程だろう。
とは言え、そんなパワーでは日常生活に支障が出てしまうので、普段はかなり意識的にセーブしているのだが……。
「べ、別に嫌じゃぁ無いんだよ? でも、微妙な加減で絶えず胸を揉まれるってぇのは……んんっ!」
「え……あっ!」
おりょうさんに言われて、魅惑の球体に触れている自身の手を見てみると、五本の指が独立した生き物のようにバラバラに力加減を変えて、本当に無意識に柔肉の感触を楽しんでいた。
「す、すいませんっ! 直ぐに止めますねっ!」
と、口では言ったものの、おりょうさんの胸からは強い引力でも発しているのか、しっとりと吸い付くような感触そのままに、俺の手をホールドして離してくれない……そんな錯覚を抱かせる程に名残が惜しく感じるのだった。
「って、ちっとも止まらないじゃないのさぁ」
「す、すいません。おりょうさんの胸の触り心地が良過ぎて、無意識に手が動いちゃってるみたいでして」
おりょうさんの指摘を受けて自分の両手に目を向けると、魅惑の膨らみを包み込んだ状態で、絶えず小刻みに動いている事を自覚した。
「も、もぅ。良太にそんな風に言われちまったら、止められやしないじゃないかぁ」
「え? そ、それじゃ?」
「うふふっ。今夜は良太の好きにしていいよ。なんなら揉むだけじゃ無くって、す、吸ってみる?」
「えっ!?」
顔を真赤にしながら、おりょうさんは俺の方を見ながら訊いてきた。
(む、胸を……吸う?)
そういう行為をする事があるというのは知っていたが、いざ自分がとなると様々な思考が頭の中を駆け巡って、おりょうさんに言われた言葉の意味を理解出来なくなるレベルで混乱している。
(えーっと。おりょうさんは妊娠してる訳じゃ無いから、当然だけど母乳を飲ませる為に吸っていいって言てるんじゃ無いよね? あ、でも、妊娠して無くても出る女性がいるって聞いた事があったような……って、俺は何を考えているんだ)
何を馬鹿な事をと考えるくらいの心の余裕はあるみたいなのだが、逆に現実逃避的に別方向に自分の思考を誘導してしまうくらいには余裕が無いのだろう。
「や、やっぱり良太は赤ん坊じゃ無いから、あたしの胸を吸ったりしたくは無いかい?」
「あー……」
安心半分、落胆半分な感じの表情でおりょうさんが見てくるが、全く興味が無いとも言えないので、申し訳ないとおもいながら曖昧な態度を取るしか出来なかった。
「そいじゃまあ、別に吸わなくてもいいから、おいで」
「え……」
膝の上に座ったままのおりょうさんが半ば無理矢理に上半身を捻ると、胸を包み込んでいた俺の手が離れた。
天上の柔らかさが手の内から消えてしまったので、物凄い喪失感を味わっていると、上半身を捻ったおりょうさんが俺に向かって両腕を広げたポーズを取っている。
両腕を開いているので、当然ながら美しい胸が惜しげもなく晒されているのだが、おりょうさんはポーズを崩す事無く、期待感の込もった表情で俺の出方を見ている。
「ほ、ほらぁ。この格好してるのって結構恥ずかしいんだからぁ……早いとこおいで?」
やはり胸を晒しているのは恥ずかしいらしいが、おりょうさんはもじもじしているのだが、それでも腕を閉じずに俺が行動を起こすのを待ってくれている。
「じゃ、じゃあ……」
「うん……」
頬を染めながら笑顔を浮かべるおりょうさんの胸に、思い切って自分の顔を押し付けた。
普通に向かい合った状態だと、身長差の関係で不自然なポーズになってしまうところだが、今はおりょうさんが膝の上に乗っているので、無理に背中を丸めたりしなくてもベストポジションで胸の中に顔を埋められた。
(ぬおおおぉ……散々揉ませて貰ったからわかりきった事だけど、この顔に触れる柔らかさは、この世の物とは思えないレベルだな!)
おりょうさんの背中に回している腕に力を込め過ぎないように気をつけながら、興奮で荒くなりそうな呼吸も無理矢理抑え込んでいるのだが、心の中では先刻以上に暴風が荒れ狂っていた。
(……あれ? なんか心が落ち着いてきたな)
心臓と、おりょうさんの胸に押し付けている形になっているこめかみの辺りが激しく脈打っていたのだが、どういう訳か動悸が少しずつ収まって行き、次第に心の方も平静を取り戻しつつあるのを自覚する。
(……一体なんで?)
俺よりは激しく無いが、それでも平常と比べればかなり早く鼓動しているおりょうさんの心臓の音が、押し付けられている顔から伝わって来るのだが、そのリズムが不思議と心を落ち着かせてくれているのだというのがわかった。
(でも、どうしてなんだろう……あ。なんかそういう話を聞いた事があったな)
胎内に居る時に常に母親の心音を聞いている子供は、生まれてからも鼓動を聞かせると安心するという話を以前に聞いた事があったのを思い出した。
生まれたばかりの子犬なども、心音の代わりに一定間隔で時を刻む機械式の時計などを傍に置いておくと、母親の心音と勘違いして安心する事があると言われている。
「……有難うございます。すっかり落ち着きました」
いつまでも離れたく無い程に胸の感触が名残惜しい気はするのだが、いつまでも湯船に浸かっていると自分はともかくおりょうさんがのぼせてしまうので、意志の力を総動員して魅惑の柔らかさから顔を引き剥がした。
「そうかい? そりゃ良かったよ」
「おりょうさん……」
自分の恥ずかしさを顧みずに女神の微笑みを浮かべるおりょうさんを見て、胸の奥の方が熱くなった。
「そいじゃ、ぼちぼち上がるかい?」
「えっと。その前に、一つだけお願いがあるんですが?」
「他ならぬ良太のお願いだ。あたしに出来る事だったらなんでも言ってみな」
こういう答えが返ってくるだろうととは思っていたが、おりょうさんの言葉には迷いが無かった。
「その、ですね……」
「ん? あ! さ、さっきも言ったけど、結ばれたいってのは駄目だよ? そ、そりゃいい雰囲気になっちまってるし、頼華ちゃんとの約束が無けりゃあたしだって……」
「そ、それは俺もそう思ってますけど、そうじゃ無くてですね」
女性の方がその気になっているのに手を出さないというのば、もしかすると凄く失礼になのではないかと思うのだが、俺もおりょうさんも頼華ちゃんという共通の大事に思っている存在がいるので、この場で流されてしまおうという考えは無い。
「ち、違うのかい?」
「えっと、その、結ばれす前にですね……、き、接吻をしたいですけど、駄目でしょうか?」
「き!?」
俺が元居た世界に滞在していたおりょうさんは、キスという単語の意味はわかっているし、そうで無くても翻訳機能が働く。
おりょうさんがキスという言葉の意味を理解しているのは、さっきまで以上に真っ赤になっているので一目瞭然だ。
(でも、オッケーしてくれたとしても、大丈夫かなぁ……)
元居た世界で結婚式っぽい事をした時に、おりょうさんと頼華ちゃんは額にキスをしただけで腰砕けになってしまったのだ。
現代の日本でもキスという行為は相当に親しい間柄じゃ無ければ行わないし、それが唇と唇でとなるとかなりハードルが上がってしまうのだから、こっちの世界の住人であるおりょうさんが激しい反応を見せるのは当然だと言える。
「……しよ」
暫くの間、おりょうさんは俺から視線を逸していたのだが、上目遣いに俺を見てきたと思ったら、小さくそう言った。
「えっ? い、いいんですか!?」
「い、いいも何も、良太が言い出したんじゃないかぁ」
「そうなんですけど……」
おりょうさんの指摘通り、言い出した俺の方が躊躇するのは変な話ではあるのだが、半分以上はダメ元だったので、まさかの承諾された事に驚いてしまったのだった。
「じ、実はあたしもね、良太と、その……き、接吻したいなぁって、思ってたからぁ」
自分もこれまで唇が触れ合うキスなんてした経験が無いので、おりょうさんの方もその気になってくれているというのを聞けて凄く嬉しくなった。
「おりょうさん……」
「良太……」
お互いの名を呼んで少しの間見つめ合っていたが、決心した表情を浮かべたおりょうさんは静かに瞼を閉じた。
(えーっと……あんまり勢いをつけると歯がぶつかっちゃうのと、少し顔を傾けないとお互いの鼻が邪魔になるんだったっけ)
完全に冷静さを欠いている状況なのだが、それでもなけなしの知識を総動員して自分がリードしなければという思いがあるので、おりょうさんを焦らしてしまわない程度にゆっくりと、そして優しくなるように顔を近づけていった。
「……ん」
唇が触れ合った瞬間に、喉の奥の方で小さく声を上げたおりょうさんだったが拒否や抵抗をする事は無かった。
それどころかおりょうさんは、俺の頭の後ろに回した手で強く引きつけて来たので、触れ合っている唇に掛かる圧力が増した。
(せ、積極的だな、おりょうさん……)
キスをした当初はガチガチに固く閉ざされていたおりょうさんの唇だが、少しすると緊張が解けて微かに開かれた。
それからは当初の戸惑っていた感じが嘘のように、唇の間を割って出てきた滑らかな舌が、まるで俺の舌を求めるように触れてきたと思ったら、徐々に積極的に絡ませるような動かし方を始めたのだった。
(これは……俺の方からも応じた方が良いんだよな?)
額や頬にしたのを除けば俺もおりょうさんもファーストキスなので、あまり大胆な行為をするのは良くないと思っていたのだが、女性であるおりょうさんの側が積極性を見せているのだから、ここは男である俺の方からも応じるべきだろう。
「んんっ!?」
妙な確信を持った俺が口内に舌を侵入させると、おりょうさんがくぐもった声を上げた。
しかし、おりょうさんは驚いただけで拒否するような反応は見せずに、こちらの動きに呼応するように自分の舌を絡ませ、唇の方も更に求めるように小刻みに動かしてきた。
(それにしてもキスって、気持ちが良いもんなんだな……)
普通に考えれば、他人の舌が自分の口の中に入ってくるなんて行為には嫌悪感を覚える筈なのだが、甘い唾液でコーティングされたおりょうさんの舌は、むしろ積極的に迎え入れてしまっている。
胸の感触は柔らかさや温かさがダイレクトに気持ち良かったのだが、キスは触れ合った唇からお互いの好きという感覚が交わされているみたいな、そんな充足感を思わせる気持ち良さがあるのだった。
(……ん? これは)
舌の動きなどは穏やかになってきているのだが、触れ合った唇から感じるおりょうさんとの一体感のような物が、さっきまでと比べて強くなっている気がする。
(これはもしかして、房中術になってるのかな?)
一体感を得るのと同時に頭が澄み渡っていき、そんな事を考える余裕が出来た。
(……間違い無さそうだな。俺とおりょうさんの気が、唇や触れ合っている肌を通して溶け合って、増幅してる)
房中術というのは、平たく言ってしまえば男女の交合を利用して気を高めようと考えた、密教や仙道の技術というか修行法だ。
交合している者同士で気を循環させて高めて行き、生じた強大な気を取り込むのが目的なのだが、性的な絶頂を迎えてしまうとせっかく高めた気が霧散してしまうので、接して漏らさずという絶妙なコントロール必要になってくる。
交合によって高まった気を利用出来るなんて、良い事ずくめに思えるのだが、そんなに上手い話がある訳が無く、一方的に得てしまわずに少し戻してやらなければ相手が廃人になる恐れもあるので、実際に行うにはかなりコントロールが難しい修行法だと言える。
「んん……」
さっきまでの、やや興奮気味な感じでは無く、熱は込もっているが満足そうな吐息が、おりょうさんの唇から漏れ出た。
多分だが、おりょうさんの方でもそうとは知らずに、交わされている気の高まりを感じているのだろう。
(まあ、実際に結ばれている訳じゃ無いから、そんなに心配しないでも大丈夫だろうけど)
おりょうさんに感覚を掴んで貰うのに、手を繋いでの気の循環を以前にやった事があるが、今の状況は触れ合っている部分こそ違う物の、その時とほぼ同じだと言える。
交合による房中術程には強烈な気の高まりは無いのだが、逆にどちらかが廃人になるような危険性も殆ど無いと言える。
(だから、もう少し積極的に……)
この場合の積極的とは、おりょうさんの舌の動きにより強く応じるという事では無く、気の循環量や勢いを強めるという意味だ。
「ん……」
気の循環が強まったので新陳代謝も良くなり、それに伴って体温の上昇や浮遊感のような物が発生しているのだが、おりょうさんも同じ感覚を味わっているらしく、決して苦しそうでは無い声が小さく漏れた。
(……ん?)
気の循環と入浴で心身共に充足感を味わったので、そろそろ風呂から出た方が良いだろうと身体を離そうとしたのだが、おりょうさんが俺の頭の後ろに回してガッチリホールドした手が、まだ開放してくれそうに無い。
(まだ続けるのは、俺も嫌じゃ無いけど……なら折角だし)
触れ合っているおりょうさんの身体の中の気の流れを感じ取り、俺の方の流れや呼吸と同調するように意識する。
仙道に小周天という、天の気を頭頂から取り込んで、身体の中心に沿って下方に流して再び上方に向け、自分の中の気合わせて練り上げるという修行法があるのだが、これを一人では無く二人で行うのだ。
(ああ、凄ぉいぃ……)
(おりょうさん?)
俺もおりょうさんもキスによって口が塞がれているので声が出る訳が無いのだが、はっきりと声が聞こえたように思えたのだった。
(ん? 良太なのかい?)
(そうですけど……これって念話じゃありませんよね?)
おりょうさんが応じてくれたので幻聴の類では無いのは確実なのだが、念話を使うように意識はしていないので、どうやら別の現象らしい。
(もしかしてですけど、おりょうさんとの間で気を循環させたので、意識の方も通じ合ったのかもしれません)
(言われてみりゃあ、良太の声が聞こえるってよりは、直接意識を読み取れてるって感じだねぇ)
(そうですね)
周囲では湯の流れる音などがするので、声を出しての会話にはノイズが混じる筈なのだが、今の状況では互いの思っている事がはっきりと伝わるのだった。
(でもまあ、この距離なら小声で話しても伝わるんだから、驚きはしたけど特に便利って事も無いねぇ)
(そ、そうですね……)
おりょうさんの言う通り、至近距離だから会話をすれば済むので、冷静に考えればコミュニケーションの方法としては大した事は無いのかもしれない。
(でも、言葉にしないでも良太があたしを好きって気持ちが伝わってくるのは、凄く嬉しいねぇ)
(おりょうさん……俺の方にも、おりょうさんが好きだって思ってくれてる気持ちが、伝わってきますよ)
循環している気の中に生命エネルギーだけでは無く、温かな感情が込められた物が混じっているのだが、これが俺がおりょうさんを、おりょうさんが俺を好きだと思っている成分なのだろう。
そして一度意識してしまうと、そのお互いを好きという成分の混じった気がどんどん増し、循環される事によって更なる強化をされて行くのだった。
(んっきゅーんっ!)
((えっ!?))
どう考えてもこの場にはおりょうさんと俺以外には存在しないのだが、明らかに第三者の、それも歓喜に満ちたような声が脳裏に響いたのだった。
「良太?」
「ええ。あの声は……」
突然の出来事に、俺とおりょうさんは触れ合っていた唇を離し、お互いの顔を見合わせた。
「……北欧の」
「フレイヤ様でしょうね」
俺とおりょうさんの頭の中で聞こえた甘く澄んだ声の主は、間違い無く北欧の愛の女神、フレイヤ様の物だろう。
おりょうさんも俺と同じ結論に達したらしく、小さく頷いている。
次回の更新は、出来れば月中に行いたいと思っています
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