鶉と鶏
「ドランさん、ブルムさんも、ちょっといいですか?」
夕食を終えて、各自が食器を厨房に下げ始めたところで、話が盛り上がっている感じのドランさんとブルムさんに声を掛けた。
「おお、鈴白さん。御無沙汰なのに、挨拶をしただけで済ませてしまって申し訳ないです」
「私も、ちゃんと帰参の挨拶を申し上げるべきでしたな。失礼をしました」
「いえいえ。その辺は構わないんですけど」
何年ぶりなのかは知らないが、異郷の地で一緒に旅をした相手と再会したのだから、幾らでも話したい事はあるだろう。
「私は此方に伺うのは初めてなので作法などは知らないのですが、もしやその辺の注意とかですか?」
「そういうのでは無いです。えっと……ブルムさんには説明したのですが、俺に関する事と、ドランさんの商売に役に立つかもしれない話です」
「ほう? 不思議な方だとは思っていましたが、鈴白さんの素性の片鱗を明かして頂けると?」
「そういう事です」
考えてみれば俺の事を息子とまで呼んでくれたドランさんに、今まで俺の素性を話していなかったというのは痛恨と言える。
「後は……天さんとブリュンヒルドさん」
「はい?」
「はいっ!」
「天さんは眷属の、ブリュンヒルドさんは戦乙女の代表として、話に加わって下さい」
年長者は全員にしようかとも思ったのだが、来客用の館の応接室ではキャパオーバーなので、ワルキューレに関してはリーダーのブリュンヒルドにだけ参加を要請した。
「ゲルヒルデさん」
「はい」
「戦乙女の方達全員じゃ無くて構いませんので、子供達が風呂に入る時に見守ってあげて欲しいんですが」
恐らくは心配は無いと思うのだが、念の為に子供達の入浴の監視を、ワルキューレの中では一番堅実そうなゲルヒルデに頼んだ。
「畏まりました。男湯と女湯、それぞれを二人ずつくらいで当たらせて頂きます」
「宜しくお願いします」
「そのような……良太様はお願いなどなさらずに、御命令下されば良いのです」
「うーん。俺は一般人なので、命令をするのとかって慣れていないんですよね」
「……は?」
決して馬鹿にしている態度とかでは無いのだが、何故かゲルヒルデに『何言ってんだこいつ?』って感じの顔をされてしまった。
「あの……失礼ながら」
「はい?」
聞かれると困る事でもあるのか、ゲルヒルデが一言断ってから俺の耳に口を寄せてきた。
「良太様はフレイヤ様に神宝を授かり、我等を自由に使える裁量を与えられ、天照坐皇大御神様や観世音菩薩様、八幡神様とも知己であらせられるのに、一般人だと仰っしゃいますか?」
「えーっと……」
(こう言われちゃうと、返答に困るな……)
フレイヤ様からは授かっているのでは無く、神宝であるドラウプニールだけでは無く、炎の首飾りブリジンガメンを一時的に貸し与えられているというのが俺は認識している。
神宝を一時的にであっても借り受けるというのが、相当に大それた事であるというのは自覚しているのだが……。
神仏から託宣を授けられるという事は、数は多くないが事例としては俺以外にもあると思うので、ゲルヒルデの言うような知己があると言うような関係性では無い。
「ブリュンヒルドさんに聞けばわかりますけど、俺は元の世界では親に養って貰っていただけの学生ですから」
「……わかりました。暗愚な輩のように驕らない良太様の御心、私も見習いたいと存じます」
「え? いや、そんな大それた考えでは……」
そのままを伝えた筈なのに、ゲルヒルデには大人物が深遠な考えの元に発言したみたいに受け取られてしまっている。
「それでは子供達の事は、責任を持ちまして見守りますので」
「あ、はい……」
凄く丁寧に頭を下げると、ゲルヒルデは誤解の解けないままに立ち去ってしまった。
「貴方様。お話はお済みですか?」
「ええ。天さん、何か?」
ゲルヒルデが立ち去るのを見計らって、天が声を掛けてきた。
「先程申し上げました、遅くなった理由を説明致しますね」
「ああ、そういえばそんな事を」
(確か鶉を仕入れてきてくれるって話だったけど、手間取ったのかな?)
こっちの世界は自然が多く残っているので、もしかしたら飼育している鶉を購入する以外の方法で入手したので、時間が掛かったとかなのかもしれない。
「うふふ。こちらにいらして下さいまし」
「はぁ……」
天は柔らかく微笑みながら俺の腕を取ると、自らの豊かな胸に埋めるように押し付けた。
「む! こら天! 余や姉上の目の前で、兄上に対して馴れ馴れしいぞ!」
「ひいっ!? お、お許しを!」
眼光鋭く睨みつける頼華ちゃんに一喝されると、天は俺の腕を放り出すようにしながら飛び退った。
「頼華。そんな言い方は良くないよ」
「でも父上……」
「でもでは無い。良太殿が嫌がっているならともかく、そうで無いのなら失礼に当たるのだよ」
「むぅ……」
(確かにそうなんだよなぁ)
頼華ちゃんは面白く無さそうだが、海外では挨拶代わりにハグやハンドキスみたいな風習もあるので、いきなりその行為を咎めてしまうのは、頼永様の言う通りに失礼になってしまう可能性もある。
とは言え天の場合には、ドラウプニールのレプリカを渡して消耗していたのが治ったり、志乃ちゃんを始めとする京の結界に閉じ込められていた眷属を助けたという事で好意を持ってくれているみたいなので、少しスキンシップが過剰になっているとは思う。
「し、しかし父上。此奴は兄上に色仕掛けを……」
「お前が伴侶に択んだ良太殿は、そんなに信頼の出来ない男性なのかい?」
「う……」
頼永様に指摘され、頼華ちゃんが言葉に詰まった。
「頼華。貴方と天殿の関係は知りませんけど、年上の方を呼び捨てにして怒鳴りつけるなど、私の躾が疑われてしまうのでおよしなさい」
(あー……確かに頼華ちゃんは、そういうところあるなぁ)
ドランさんやブルムさんが相手だと丁寧に接するのだが、自分より格下だという認識になっているのか、朔夜様や天に対しては見下すような態度を取っている。
俺にとって頼華ちゃんと同じ立ち位置にいるおりょうさんの場合には、寄り付く女性に対しては警戒感は抱くようだが、客商売をしていた事もあって、基本的には丁寧な姿勢を崩さずに接してくれている。
「くっ……天、殿。申し訳ない」
「えっ!? そそそ、そんな。わたくしは気にしておりませんので、どうかお手をお上げになって下さい」
雫様に窘められて反省する部分があったと感じたのか、頼華ちゃんは天に頭を下げて謝罪したのだが、された天の方が恐縮してしまっている。
「兄上にも恥をかかせてしまいました……」
「俺はそんな風には思ってないかな」
今にも泣き出しそうな雰囲気の頼華ちゃんを、抱き寄せて慰める。
「俺の事はそんなに気にしないでいいけど、頼永様の言う通り、頼華ちゃん自身が失礼な態度にならないようにするのは、良い事だと思うよ」
「はい……」
元々、領主の息女としての教育を受けているので、頼華ちゃんは俺なんかよりは礼法を弁えているので、自分基準の妙な格付けさえやめれば、態度が失礼になるような事は無くなるだろう。
「それじゃ天さん。途中で止まっちゃいましたけど、遅れた説明とやらをお願いします」
「は、はいっ! こちらへ!」
俺が声を掛けると天は弾かれたように反応して、先に立って食堂から出て行って。
「さ。俺達も行こうか」
「はい!」
元気を取り戻した頼華ちゃんを腕にぶら下げながら、天の後を追った。
コッコッコッコ……
「ん? この鳴き声は……」
家畜小屋の近くまで来ると、天が手に入れてくれると言っていた鶉とは明らかに違う動物の鳴き声が聞こえた。
「貴方様。こちらが御所望の鶉と、知り合いの農家に当たってみましたら手に入った鶏でございます」
「それは素晴らしい。天さん、ありがとうございます」
天が手で指し示す先には、竹を編んだ籠が四つ置かれていて、その内二つには鶉が、残りの二つには鶏が入っていて、中で忙しなく頭を動かしている。
「結構な羽数がいますけど、高かったんじゃ?」
「それ程でもございません。安全なこの場所に住まわせて頂く家賃だと思いましたら、安い物ですわ」
美しい顔に屈託の無い笑みを浮かべる天は、嬉しそうに語った。
「内訳ですが、鶏は雄が二羽に雌が六羽。鶉の方は雄が二羽に雌が八羽ですわ」
「成る程」
鶏の方は雄と雌は見た目の差があるのだが、鶉の方は知識が無い俺には見分けがつかない。
「用意しておいた家畜小屋は広く作ってあるので、鶏と鶉の間には仕切りを作れば大丈夫でしょうかね?」
「十分だと思いますわ」
家畜小屋は内部で半分に板で仕切られていて、片方には猪のセーフリームニルが棲んでいる。
猪の繁殖を考えて広めに作ってあり、鶉を飼育しようと思っていた方も同じだけの面積があるので、仕切って鶏を同居させても手狭にはならないだろう。
「この里からは逃げられないのですから、極端な話ですが放し飼いでも問題は無いと思いますわ」
「それもそうですか」
俺を含めて管理権限を持っている者が許可を与えなければ、確かに天の言う通りに外に逃がす心配は無い。
「ただ、放し飼いにすると卵を集めるのが面倒になるのと、畑の作物に悪さをしないとは限りませんので」
「ああ、それはそうですね」
卵の回収は手間ではあっても左程は問題にならないが、放し飼いにしていれば畑の作物が食害に合うのは目に見えている。
「それじゃ、俺が仕切りを取り付けたら、中に離して下さい」
「わかりました」
俺は小屋に入ると先ずは粘着力のある糸を、中の仕切りの割合が七対三くらいになるように張った。
張った糸の上に網戸くらいの密度のメッシュを編んで被せ、隙間が出来ないように気をつけながら壁にも貼り付けて固定した。
小屋の入り口にも、扉の開閉の際に鶏と鶉が外へ逃げ出してしまわないように、メッシュのカーテンを垂らした。
この程度の作業なら特に難しい技術は必要としないので、所要時間は数分だ。
「用意出来ましたのでお願いします」
「わかりましたわ」
天に続いて、志乃ちゃんや糸目の女の子達もそれぞれ籠を持ち、小屋の中に入った。
コケーッ!
これも竹で編んだ、籠の上に被せてあった蓋を取ると鶏は、けたたましく鳴きながら小屋の中で落ち着き無くバタバタと羽ばたく。
鶉の方は鶏とは対照的に、チリチリと鈴を鳴らすような声を上げながら、屋根の下の辺りで蹲った。
「卵も楽しみですけど、順調に繁殖してくれると嬉しいですね」
「ここは環境がいいから、大丈夫だと思いますわ」
天の言う通り、この里の中で暮らしている限りは、野生動物などの外敵に襲われるという害にもストレスにも無縁なので、卵を産まなくなったりする事は無さそうだ。
卵が取れなくなるくらいに老齢にならなければ、鶏も鶉も肉としては期待は出来ないだろうと思うが、里の周辺には野鳥もいるので、鳥の肉は暫くの間は自然の恵みに期待しよう。
「志乃ちゃん、それに君達もお疲れ様。俺達はこれから話し合いをするから、お風呂にでも行ってくるといいよ」
農家からだという話だから、京の街中から背負ってきた訳では無さそうだが、それでも鶏や鶉の入った籠を背負って、それ程は険しくは無いとは言え山道を歩いてきたのだから大変だったろう。
「良太お兄さんのお役に立てて、少しでも恩返しが出来たのなら嬉しいです」
「恩なんかに感じないでもいいのに……」
実質は志乃ちゃんの方が年上というのは承知しているのだが、見た目は年下の子に恩返しとか言われると反応に困ってしまう。
「じゃあ、私達は失礼しますね」
「「……」」
志乃ちゃんと糸目の女の子達は丁寧にお辞儀をすると、浴場の方へ歩いていった。
「明るく、礼儀の正しい子達ですね」
志乃ちゃん達を目で追いながら、頼永様が呟いた。
「そうですね。天さんの教育が良かったんでしょうね」
頼永様が志乃ちゃんを明るくと評したが、京の結界から救い出した後に、声を押し殺して泣いていた姿を知っているので、口では肯定をしながらも心中は複雑だ。
「まっ! 貴方様にお褒めに預かるとは、恐縮ですわ♪」
口元に手を当てて驚いている天は恐縮という言葉とは裏腹に、嬉しそうに目尻を下げている。
「むぅ……兄上、早く行きましょう」
「そうだね」
さっき自分を注意した頼永様が志乃ちゃんを褒めたのが面白くないのか、頼華ちゃんが俺の腕を引っ張りながら唇を尖らせている。
「「「……」」」
俺の腕を引く頼華ちゃんの姿を見ながら後に続く人達が、苦笑を噛み殺している気配を感じながら、来客用の館に歩いた。
「先ずは頼永様に提案する事柄から始めましょうか」
「お願いします」
俺、おりょうさん、頼華ちゃん、黒ちゃん、白ちゃん、頼永様、雫様、正恒さん、夕霧さん、ドランさん、ブルムさん、天、ブリュンヒルド、以上がこの場にいるメンバーだ。
「透明の紙の作り方に関してはこれに記してあります。本格的に生産を始めるのは、俺と正恒さんが風車を完成させてからになるでしょうけど」
俺は纏めておいた透明の紙の製法を記した紙の束を、頼永様に差し出した。
「そうですね。とりあえずは良太殿が仰っていた籾殻を使って、試験的に作ってみます」
現物を見せているとは言え、透明の紙の製法に関しては実際に試してみない内は半信半疑だろうから、風車を利用しての生産の本格稼働の前に試作をして貰うのはいいと思う。
「塩の生産にも使えるってんだから、風車の完成は急がねえとな」
「そうですね」
確かな技術を持つ正恒さんには、鍛冶で作って貰いたい物が多いのだが、殆どは今まで無くても間に合っていたので、風車を優先するのは仕方が無い事だ。
「そいじゃ次はあたしから。これは頭領様にお願いなんですけどねぇ」
風車と透明の紙い関する件は一段落ついたとみなして、おりょうさんが発言した。
「む? りょう殿の願いとあらば、大概の事は聞くつもりではありますが」
「あら、そいつは嬉しいですねぇ。でも、一筋縄では行かないと思いますよ?」
嬉しそうに呟きながら、おりょうさんは数枚の紙を束ねた物を、ドラウプニールから取り出した。
「こいつは、清酒の作り方を纏めたもんなんですがねぇ」
「ほぉ。ですが、それの何が一筋縄では行かないと?」
紙の束をパラパラと捲りながら、頼永様はおりょうさんに尋ねた。
「酒の仕込みってのは、年季の入った杜氏さんが指揮を取るでしょう?」
「まあ、そうですな」
「お渡しした資料には酒の仕込み方が、一から十まで書いてあるんですよ」
「む……」
一から十までとおりょうさんが語ったところで、頼永様は問題点に気がついたようだ。
「おわかりになりましたか? 一から十まで書いてあるって事は、杜氏さんの勘とか経験ってもんが入る余地が無いんですよねぇ」
「それは……確かに一筋縄では行きませんな」
歴史の浅い酒蔵などでは、清酒の仕込みの為に経験を積んだ杜氏を遠方から招いて、賓客を扱うように優遇するというのは現代でも行われている。
清酒の仕込みの裁量に関しては、殆ど杜氏に任されていると言っても過言では無いのだが、出来が悪ければ追求されてしまうので、優遇される代わりに重責も伴う役割だとも言える。
「そこで、頭領である頼永様の主導で、新たに手に入れた清酒の仕込みを試験的に行うとかいう名目で、人を集めて醸造をして貰うとかって事は出来ないでしょうかねぇ?」
機械の使えないこっちの世界では、清酒の仕込みにはマンパワーが必要になるのだが、データが揃っていても俺やおりょうさんでは人集めが出来ないので、領主である頼永様に頼ろうと考えたのだ。
「成る程。手順が完全に決まっているのだから、作業が出来る人手と場所があれば、清酒を仕込める、と」
「そうなんですよねぇ。それと原料の米さえ確保出来ていれば、理論的には一年中醸造する事も可能ですから」
「い、一年中醸造を!?」
「ええ。蔵の中の温度管理さえすれば、可能になりますねぇ」
一般的な清酒の仕込みは米の収穫後に、麹や酵母は活動出来るが雑菌が繁殖しないという条件が揃うので、晩秋から行われている。
しかし現代では温度管理をした建物の中で、一年中醸造を行っている酒蔵もあるのだが、おりょうさんはそれをこっちの世界でも行おうと提案したのだ。
「それとこれは……凄く技術力の高い酒蔵で醸された清酒の酒粕なんですが」
俺は元の世界の実家の近くで買った、全量を純米吟醸酒しか醸さない酒蔵の酒粕を取り出した。
「これの中に残っている酵母という……わかり易く言うと目に見えないくらいに小さな黴を取り出して、酒を醸すのに利用します」
「む? その酵母というのは、具体的にはどのような使い方をされるのですか?」
「えっと……」
「頭領様。それに関しては、良太の代わりにあたしが説明しますよ」
酒を飲めない年齢の俺には専門外なので、頼永様からの質問に答えるのにまごついていると、おりょうさんが助け舟を出してくれた。
「ではりょう殿、お願いします」
「はい。簡単に申し上げますとねぇ、桶の中で蒸米と麹と水を混ぜ合わせて酒母を造り、待ってれば酒ってのは出来ちまうんです。でも周囲の状況なんかでこの酒母の機嫌を損ねると不味くなったり、酒じゃない腐れ水になっちまう事もあるんですよぉ」
「ふむ……」
「この酵母というのを使うと、ある程度は酒母の機嫌を損ねずに醸す事が可能でしてねぇ。しかも旨い酒が仕込めるっていう、一石二鳥な寸法なんですよぉ」
「そんな技術が……」
「ふむ……」
「ほぉ……」
日本での麹の利用の歴史は恐ろしく古いのだが、昭和の初期くらいまで醸造には、人為的に培養した酵母を用いられていなかった。
文化レベルは低くないが科学は発達していないのがこっちの世界なので、酵母の利用法を聞いて頼永様だけでは無く、他の人達も驚いている。
「論より証拠なんですが、この酒粕の元になっている酒を、飲んでみたいとは思いませんかねぇ?」
「姐さん、そう来ると思ってたぜ。早いとこ呑ませてくれよ」
「うふふ♪ 正恒の旦那、ちょいとお待ちなさいな」
正恒さんから自分で思い描いた通りの反応を引き出せたからか、おりょうさんは上機嫌で酒の入った素焼きの瓶を取り出した。
「おりょうさん、酒器を持ってきますね」
「済まないねぇ」
鎌倉に出掛ける前に洗っておいた酒器が流しにあるので、中座して取りに行った。




