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師匠

「良太殿、皆さん。お待たせ致しました」


 予告していた通りに一時間程経過した頃合いに、頼永様と雫様が戻ってきた。


「それでは出発を……頼永様。出来れば戦乙女(ワルキューレ)の方を呼び出すのは、あまり多くの人にお見せしたく無いので、玄関先とかは避けたいのですが」

「成る程。では人払いをしますので、訓練場にお呼び頂きましょう。あそこならば馬の出入りも可能ですので」


 訓練場では剣術や弓術だけでは無く、騎乗や流鏑馬(やぶさめ)の訓練も行えるので、そのまま外へ抜けられるようになっているのだろう。


「わかりました」

「では、訓練場へ向かいますか」

「っと、その前に。頼永様と雫様にはこれを」

「良太殿、これは?」

「認識阻害効果を持たせた外套です。ある程度の方に知られるのは仕方が無いでしょうけど、頼永様と雫様が鎌倉を離れるのに、あまり目立たない方が宜しいですよね?」


 以前に鎌倉に来た時に、頼華ちゃんが領民に物凄く慕われている場面を見ているので、戦に勝利した事も既に知れ渡っているだろう町中に頼永様と雫様が姿を表したら、お祭り騒ぎを通り越してパニックになるのが予想出来る。


 その辺を見越して、これから呼ぶジークルーネの分も含めて、待ち時間を利用して移動時に目立たないように外套を作っておいたのだ。


「むぅ……なんという軽さ」

「本当に……それに凄く丈夫そうで」

「軽いですけど、風で捲れ上がったりしないようにはしてありますし、馬に跨っても大丈夫になってます」


 これまでに作った他の外套と同じ様に、要所を結び合わせて風雨から身体を守れるようにしてあるのだが、歩き易さと騎乗した時の事を考慮して、背中側にスーツのセンターベントの様に、腰の辺りまでスリットを入れてある。


「成る程。全体を覆っているのに、動きは阻害されないのですね」

「水や汚れにも強いし熱も遮断しますので、使い勝手は悪くないと思います」


 但し、今回のようなお忍びの場合には使い勝手が良いと思うのだが、領主となるとある程度は派手な装飾や色使いなども必要だろうから、頼永様や雫様が普段使いするのは難しいだろう。


「ふむ。ではお忍びで町に出る際には、使わせて頂きましょう」

「……そんな機会があるのならば、どうぞ」


 今回の里への移動は例外として、領主がお忍びで町中に出るなんて、越後のちりめん問屋を詐称する御老公や、暴れん坊な将軍様などのフィクションじゃ無ければ、実際には有り得ない事だろう。


「ま。あなた、お忍びでお出掛けなどと、どこかに女でも囲っていらっしゃるんですの?」

「な!? し、雫! 馬鹿な事を言う物では無いぞ!」


 家宗様と違って、と言うと悪い気もするが、これまで接している感じでは頼永様は浮気とかはしそうにないタイプなので、雫様の言葉で秘密を暴かれて動揺しているとかでは無く、純粋にびっくりしているだけだろう。


「うふふ。わかっておりますよ、あなた」

「はぁ……良太殿、参りましょうか」

「は、はい……」


 どうやら単なる雫様の惚気だったようだが、頼永様は思いっきり疲れた顔をしている。


 そんな頼永様の先導で、俺達は訓練場に向かった。



「「「頭領」」」


 訓練場に面した場所まで到着すると、頼永様を待っていたらしい、荷物を抱えた武人の人達から声がかけられた。


「うむ。そこに置いてくれ」

「「「はっ」」」


 武人達の内、一人が抱えていたのは木の樽で、二人掛かりで抱えていたのは米俵だ。

「では」

「うむ、御苦労。下がってくれ。それと暫くは、ここには誰も近寄らせないように」

「はっ!」


 三人の武人の内、リーダーらしき人が頭を下げ、後の二人もそれに倣い、退出して行った。


「良太殿。これは里へのご挨拶代わりという事でお納め下さい」

「はい。ありがとうございます」


 武人達が立ち去ったからこの場には関係者以外はいないので、俺は頼永様にお礼を言ってドラウプニールに樽と米俵を仕舞った。


「それでは良太様。ジークルーネを呼びますね」

「お願いします」

「畏まりました。いらっしゃい、ジークルーネ!」


 俺の方を見て確認したブリュンヒルドは頷くと、訓練場に向き直って虚空に向けて呼び掛けた。


「おお、これは……」


 数メートル先の空中に魔法陣が描かれるのを見て、頼永様が呻くように言葉を漏らした。


「ブリュンヒルド様の命に従い、ジークルーネ参上致しました」


 俺の前に最初に現れた時のように、白銀の鎧に身を固めたジークルーネが跪いている。


「ぶりゅんひるど殿達とは、また違った美しい御方だな」

「ええ。戦いに身を置かれる方とは思えない程に、繊細な美貌ですね」


「良く来てくれました、ジークルーネ」

「は」


 ブリュンヒルドの呼び掛けに、ジークルーネは淡々と受け答えをしている。


「来て下さってありがとうございます。里で何かしている最中とかではありませんでしたか?」

「子供達と遊んでおりましたが、正直疲れていましたので、お呼び頂いて助かりました」

「そ、そうですか……」


 面倒臭がりなジークルーネは子供達が嫌とかでは無く、振り回される事に疲れているのだろう。


「ジークルーネ。あなたにはこちらの頼華様のお母上様、雫様をお運びするという栄誉を担って貰います」

「承知致しました。頼華様のお母上様、お初にお目に掛かります。このジークルーネ、必ずや御無事にお運びする事をお約束致します」


 ジークルーネは相変わらず淡々とした口調ながら、頭を下げたまま雫様に(うやうや)しい態度で挨拶をした後、与えられた仕事を完遂する事を約束する言葉を述べた。


(ジークルーネさんは本当に、与えられた任務には忠実なんだな)


 状況に応じて臨機応変に動くのは苦手なのかもしれないが、ブリュンヒルドが率いて集団として運用する場合には、ジークルーネのような命令に忠実なタイプの方が適しているのではないかと思える。


「ジークルーネさんお立ち下さい。今はドラウプニールを使っても大丈夫ですから、その鎧は目立つので里で渡した服に着替えて、移動の際にはこれを羽織って下さい」

「畏まりました」


 俺に言われた通りに立ち上がったジークルーネは、ドラウプニールを操作して作務衣姿になった。


「これは……ブリュンヒルド様を始めとする、特別な方々しか下賜されない物なのかと思っていましたが、私などに宜しいのですか?

「いや、下賜とかそんな、大袈裟な物じゃ無いですから」


(いつの間にか、そんな認識になっているんだろうか?)


 里から出る必要のあった者の内、迷彩効果のある外套を持っていないブリュンヒルド達に、認識阻害の効果の実験も兼ねて作って渡しただけなのだが、ジークルーネには特別扱いに映っていたらしい。


「そうなのですか?」

「俺に時間がある時だったら、ジークルーネさんが欲しい服とかを作りますよ」

「なっ!?」


 何故かジークルーネのリクエストに応えると言った途端に、ブリュンヒルドが声を上げて絶望的な表情をしている。


「本当です?」

「本当ですよ。何か思い浮かぶ希望とかありますか?」

「ん……この国の一般的な装いと、お風呂やサウナの後に楽に着ていられるような衣類が欲しい、です」


 表情を変えないまま少し首を傾げると、ジークルーネは要求を口にした。


(着物はいいとして……風呂上がりに着る衣類って、バスローブみたいなのでいいのかな? それともサウナなんかで休憩時に着るみたいな物か?)


「了解しました。風呂とサウナの後の衣類というのが、俺が思い浮かべる物と同じかどうかわからないので、後で話しましょう」

「ん。ありがとうございます」


 この辺は齟齬が生じると双方共に不幸になりそうなので、後で時間を取ってジークルーネとしっかり話し合うべきだろう。


「りょ、良太様っ! その、厚かましいとは存じますが……わ、わたっ、私にもでしゅね!」

「あの、ブリュンヒルドさん、落ち着いて……」


 焦りまくりの噛みまくりで、ブリュンヒルドが何かを訴えてくる。


「そういえば、源家から報奨が出ますけど、今回の戦にブリュンヒルドさん達を巻き込んじゃった俺からも、何か出さないといけませんね」

「そ、そういうつもりで申し上げた訳では!」


 何故かブリュンヒルドは、俺の言葉を聞いて更に動揺している。


「良太様。それはあたしらにもという事ですか?」

「えっ。私も?」


 オルトリンデは自分にも関係のある話だと気がついたようだが、ロスヴァイセの方は戦の参加したから報奨というのが結びつかないのか、きょとんとしている。


「その辺も、夕食の後にでもお話しましょう。ジークルーネさん、お願いします」

「ん、承知。いでよ、シスル!」

「おおっ!?」

「まあっ!?」


 ジークルーネの呼び声で、輝くような金の肌と(たてがみ)を持つ馬が空中に現れ、頼永様と雫様から驚きの声が上がった。


「これはなんとも美しい毛色の……ぶりゅんひるど殿達の愛馬も見事だが、じーくるーね殿の愛馬も素晴らしいですな」

「本当に。正に天馬と呼ぶのに相応しい姿ですね」

「お褒めに預かり光栄です」


 表情に変化は乏しいが、僅かに口角が上がって胸を反らしているように見えるので、頼永様と雫様に愛馬を褒められたのは、ジークルーネも嬉しいようだ。


「ジークルーネさん。先に乗って雫様が乗るのを手伝ってあげて下さい」

「承知」


 言葉少なに応じたジークルーネは、シスルという馬に身軽に飛び乗った。


「では雫様、どうぞ」

「お手数お掛けします」

「失礼」


 俺が片方だけ立てた膝を踏み台代わりにすると、そこに足を置いて地面から身体を浮かせた雫様を、背後から抱えるようにしてジークルーネがシスルの鞍の上に引き上げた。


(踏み台を作った方が良さそうだな……)


 雫様が里に籠もりっきりになるかどうかはわからないので、再び馬に乗る事も考えた方が良さそうだ。


 踏み台を作っておけば馬の乗り降り以外にも、背の低い子供達が多い里では使い途も多いだろう。


「では参りましょうか」

「ええ」


 頼永様を先頭にして、俺達は訓練場から屋敷の玄関へと移動した。



「では、留守の間の事は頼んだぞ」

「お任せ下さい。鈴白様、頭領と奥方様を宜しくお願い致します」

「わかりました」


 頼永様から申し付けられたのか、領主とその奥方の見送りとしては少ない人数の家臣や使用人の中から、俺達には顔見知りの頼親さんが代表で挨拶をした。


「ああ、せめて私だけでも……」

「控えろ胡蝶。行き先は秘中の秘なのだ」

「ですが……」


 雫様への心配や忠誠心の現れなのか、一緒には行けない胡蝶さんが食い下がる。


(兄上。騙されてはいけませんぞ)

(ん?)


 既に馬上にいる俺に、同じく馬上の頼華ちゃんが耳打ちをする。


(母上を心配しているのは本当なのでしょうが、あやつの本音は兄上と行動を共にすれば、ぷりんが食えると思っているのですよ)

(あー……)


 俺が作った甘味の中でも、胡蝶さんは特にプリンへの執着が激しいのは確かだ。


(でも、そんな訳……)

(昨日、兄上が作った新作のぷりんが、胡蝶を虜にしたのでしょう)

(う、うーん……)


 イタリアンなファミリーレストランのプリンの再現は、我ながらそこそこは上手く出来たとは思うのだが、それでも胡蝶さんが雇い主の源家の頭領に逆らってまで求る程なのかというのは、頼華ちゃんの言葉であってもすんなりとは受け取れない。


「では、言ってくる」

「頭領、奥方様、皆様。道中お気をつけて」


 頼永様が手綱を取って馬を進め始めると、頼親さんが代表して別れの言葉を述べながら頭を下げると、他の人達も続いた。


 頼永様と雫様に続いて、頼華ちゃんの事を言及しなかったのは、形式的にではあるのだが、現在の源家には籍を置いていないからなのだろう。


「……」


(し、視線を感じるな……)


 見送りの人達は頭を下げ続けているので、本来は視線を感じる筈は無いのだが、恐らくはプリンに未練のある胡蝶さんが犯人だろう。


(うーん……里に来たからって、プリンが食べられる訳じゃ無いんだけどなぁ)


 プリンの材料である卵と砂糖はこっちの世界ではそれなりに高価であり、牛乳に至っては入手自体が簡単では無い。


 それにプリンはあくまでもおやつなので、日常においてどうしても必要という訳では無く、同じ卵と砂糖を使用するのならば食事の方に、という結論に達してしまうのだった。


 鶴岡若宮の参道をかなり長く進むまで、俺は背中に熱い視線を感じ続けた。



「雫様。お疲れでは無いですか?」 


 馬での移動なので徒歩よりは遥かに早いのだが、雫様の体調に気を配っているので、通常よりはペースはかなり遅くなっている。


「不思議と全然揺れませんので、大丈夫ですよ」


(地面を蹴ってないんだから、そりゃ揺れないよな)


 雫様が不思議だと言うのも当然で、ジークルーネの愛馬であるシスルは、パカパカという蹄の音は響かせているのに、地面スレスレの高さを宙に浮いて進んでいるのだ。


 一見しただけでは宙に浮いて進んでいるようには思えないのだが、それでも万が一を考えて、シスルを囲むよう隊列を組んでここまで歩んで来た。


「それじゃあ、このまま里へ直行しますね」

「わかりました」


 もしも雫様が疲れたり体調を崩したりしたら、正恒さんの家を借りての休憩も考えていたのだが、どうやら大丈夫そうだ。


「む。霧が?」


 正恒さんを横に見ながら山の中へ分け入り、暫くすると霧が漂い始めたのに頼永様が気がついた。


「頼永様、離れずに付いてきて下さい」

「わかりました」


 ジークルーネと同乗している雫様は例外として、この場にいる人間の中で里と外とを隔てる結界の霧で迷う可能性があるのは頼永様だけだ。


 離れずにいてくれれば特に問題は無いと思うのだが、念の為に頼永様の馬の手綱を引いて先へと進んだ。


「……抜けたな」


 霧の(とばり)を抜けて、里の外縁部に辿り着いた。


「おお! 山の中にこのような開けた場所が?」


 先が続いている山道を進んでいた筈なのに、霧の先に唐突に平地が開けたので頼永様が驚いている。


「まあ……集落の規模としては大きくないのに、随分と立派な建物が幾つも」


 江戸とかの大きな街では珍しく無いのだが、手前に見える来客用の館や、奥の方の子供達とワルキューレ達の住居などの木造三階建てを見て、雫様は頼永様とは違う観点で驚いている。


「土蜘蛛の末裔の棲家なんて、どんなヤバそうなところかと思ってたが、でかい建物以外は普通だな」

「どういう想像をしていたんですか?」

「そりゃあ……如何にもって感じの、廃屋だらけの場所かな?」


 どうやら正恒さんの想像での蜘蛛達の里というのは、ミステリーやサスペンスの舞台になりそうな場所らしい。


「あー! しゅじーん!」

「「「しゅじーん!」」」


 遊んでたり畑を見てたりしていた子供達の内、一人が俺達に気が付いて駆け寄ると、他の子供達も後に続いた。


「あらまあまあ! なんて可愛らしい子達なの!」

「お、奥方様。暴れないで……」


 子供達の愛らしさに触発された雫様が、身重なのも忘れてシスルから飛び降りようとした。


 いつもの無表情なジークルーネが焦りを浮かべて、必死になって雫様を抱え込んで止めようとしている。


「雫。今のお前は身重なのだから、少しは控えなさい。じーくるーね殿も困っておられる」

「あ、あら……ごめんなさいね」

「いえ……」


 頼永様に窘められて思い止まった雫様が、恥じらいに頬を染めながら謝罪すると、ジークルーネの表情に微かに安堵が浮かんだ。


「降りるのを手伝いますね。みんな危ないから、少し馬から離れようね」

「「「はーい!」」」


 馬自体も里では珍しいので、近づいて触ろうとしていた子供達に注意をして下がらせてから下馬して、同乗していたブリュンヒルドの降りるのを助けてから、ジークルーネと雫様の乗るシスルの元へ向かった。


「支えますから、俺の膝を踏んで降りて下さい」

「良太殿、かたじけないです」


 乗馬した状態から降りるには地面から高過ぎるので、俺は立ったままで膝を出し、雫様に踏み台代わりにして貰う。


「良太殿。私が支えますので」

「お願いします」


 雫様は(しゅうとめ)なる人なのだが、それでもあまり接触しない方が良いので、俺は踏み台に徹して直接支えるのは頼永様に任せた。


「主人! この人達は誰ですか?」


 雫様を軽々と支えている頼永様を見上げながら、陽華(ようか)ちゃんが訊いてきた。


「この人達はね、頼華ちゃんのお父さんとお母さんだよ」

「おとーさん? おかーさん?」

「えーっと……陽華(ようか)ちゃんにとっては、紬や俺みたいな?」


 里の子供達は大蜘蛛の紬が魂を分けて生み出された存在だし、俺も育ての親と言えなくも無い。


 高校生の俺が、玄もいれると二十人以上の子持ちというのは、恐ろしく現実感の無い話なのだが……。


「頭領様と奥方様と呼ぶといいよ。宜しですね?」

「ええ、構いませんよ。みんな、宜しくお願いしますね」

「私も、宜しくお願いしますね。お腹に赤ちゃんがいるので、一緒に遊んだりするのは難しいですけど」

「あかちゃん?」


 赤ちゃんと聞いて、大地君が首を傾げている。


「赤ちゃんを知らないのね。赤ちゃんというのは、あなた達よりも小さな子の事よ」

「そうなんだ!? それじゃ主人が俺達にしてくれたみたいに、守らないとね!」

「まあ……なんていい子なのかしら。これも良太殿のお世話が行き届いているからですね」

「いや、そんな……」


 大地君の裏表の無い言葉を聞いて雫様が感激してくれているのだが、それは別に俺の手柄では無い。


「あの、立ち話は雫様に良く無いですから、移動しませんか?」

「そうですな。雫、お言葉に甘えよう」

「はい。あなた達も一緒に来る?」

「「「はーい!」」」


 すかさず陽華(ようか)ちゃんと大地くんが雫様の手を取った。


「むっ!」


 俺の右手は何かを察した頼華ちゃんが電光石火でキープしたが、左手はたまたま近くにいた雪華(ゆきか)ちゃんに掴まれた。


「主人! この人はどなたですか?」


 キョロキョロと里の中を物珍しそうに眺めていて正恒さんを、永久(とわ)君が見上げている。


「その人は俺の鍛冶の師匠で、正恒さんだよ」

「主人の師匠ですか!? それじゃ師匠って呼びますね!」

「俺は師匠なんて呼ばれる程、上等じゃねえんだがな……」

「ししょー! 俺にも鍛冶を教えて下さい!」

「ししょー! 俺にも!」

「……こいつは参ったな」


 やはり男の子は鍛冶への関心が高いのか、永久(とわ)君だけでは無く白ちゃんが名前を付けた久遠(くおん)君や(こう)君に、師匠と呼ばれながら群がられて正恒さんは困り顔だ。


 しかし追い払ったりはしないので、内心では満更でも無いのかもしれない。

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