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三連勝

「ん……」


 翌朝になって、起きて隣の布団の頼華ちゃんを見てみると、苦しそうだったりはしないので、風呂でのぼせた事による悪影響などは残っていないみたいだ。


 俺は洗顔の為に、そっと部屋を抜け出した。



「おはようございます」

「鈴白様? おはようございます」


 歯磨きと洗顔を終えた俺は、食事の支度に忙しい厨房に顔を出した。


「朝餉の方はもうじき出来ますが?」


 既に顔馴染みになっている料理長の男性が、調理の手を止めて対応してくれた。


「俺の連れに外国の方がいますので、良ければ厨房をちょっとお借りして、おかずを幾つか作ろうかと思うんですが」


 多分ワルキューレ達は俺と頼華ちゃんの手前、出されればなんでも食べるとは思うのだが、出来れば良いコンディションで戦に臨んで欲しいと考えて、食べ易そうな料理を作ろうかと厨房へやってきたのだった。


「わかりました。空いている竈も作業台も、お好きにお使い下さい」

「ありがとうございます」


(朝食は粥か)


 厨房の中へ歩きながら作っている物を確認すると、戦に臨んで胃が重くなり過ぎないようにという配慮からなのか、朝食は白粥らしい。


(粥だったら、そぼろでも作ろうかな)


 まだまだたっぷり残っている鹿の肉とミンサーを取り出し、挽き肉を作った。


 その挽き肉を油で炒めて、醤油、酒、砂糖、おろし生姜で甘辛に味付けをして、焦げ付かないように気をつけながら、汁気が少なくなるまで火を通す。


 続いて割りほぐした卵に、醤油、塩、砂糖を入れて混ぜ合わせ、鉄鍋に流し込んで火を通しながら、四本を束ねて持った菜箸で掻き回して炒り卵にした。



「それでは、頂きます」

「「「頂きます」」」


 頼永様の号令で朝食を開始した。


 頼永様を筆頭に酒を飲んだ人達も、量がそれ程でも無かったからか、特に酔いを持ち越した感じでは無さそうだ。


「ううむ。粥には削り鰹に梅干しというのが当然だと思っていたが、良太殿の作った肉のそぼろも合いますなぁ」

「朝から肉は、重くありませんでしたか?」

「いやいや。これは鹿の肉ですよね? 脂が少ないので肉の味は感じながらも重たくは無く、力が出るような気がします」

「本当に。生姜の風味が効いた甘辛の味で、粥と一緒に食べるとおいしいです」

「それなら良かったです」


 パンの朝食にはソーセージやベーコンなどの肉類が付くのは当たり前なのだが、ワルキューレ達には大丈夫でも、和風の朝食に慣れている頼永様や雫様には重いかと思っていたので、大丈夫だとわかってホッとした。


「肉のそぼろもおいしいですが、この炒り卵もおいしいですね!」

「白粥だから、ちょっと濃い目に味付けしてみたけど、大丈夫だった?」

「はい! 非常に食が進みます!」


 俺の自宅で粥を作った時は、スープで炊く中華風だったので、塩や醤油などの味付けを控えめにして、深みを出すために干し海老を混ぜ込んだのだが、今朝は米から炊いただけの白粥なので、そぼろも炒り卵も濃い目の味付けにした。


「米の粥も、あっさりとしていて甘みがあって、おいしいですね」


 昨日の朝食には猪の骨のスープで炊いた粥を出したのだが、それ程抵抗無さそうに、ブリュンヒルドは匙で白粥を口に運んでいる。


「米のって事は、粥は別の食材で作るんですか?」

「ええ。そもそも北欧では寒過ぎて米は育ちませんから、粥と言えば麦ですね」

「あー……」


 品種改良と温暖化によって北限が変わったのだが、実は結構近年になるまでは、東北以北では米の栽培は難しかったのだ。


 中国にも北麺、南飯という言葉があり、米の栽培が困難な揚子江から北側の地域では、主食が小麦粉の加工品である麺類や皮の厚い餃子になっていて、南側の地域では米を主食にしているという意味を指す。


「兄上。昼は蕎麦が食べたいです!」

「……もう昼の話なの?」

「昨日の昼がうどんで、夜が飯、今朝が粥なのですから、昼は蕎麦が良いと思ったのですが?」

「まあ、いいけど」


 蕎麦打ちのエキスパートのおりょうさんがいないので、また製麺機に頼る事になるが、うどんに続いて製麺機利用による蕎麦のデモンストレーションとしては悪くないだろう。


「となると、なんか天ぷらでも添えたいところだね」

「おお! いいですね!」

「今の時期だとなんかあるかな……」


 元の世界では、はっきりと暑かったり寒かったりしないと季節感を追い求めなくなっているので、初夏と言える今の時期の旬の天ぷらダネというのが、俺にはいまいちピンと来ないのだった。


「今の時期で天ぷらですと、魚介類ならば鱚や穴子辺りですね」

「ああ、穴子は良さそうですねぇ」


 穴子は天ぷらだけでは無く、寿司にも用いられる江戸前の代表的な素材だ。


「それでは穴子の天ぷらと蕎麦で、戦勝祝いと行きましょう!」

「頼華ちゃんは気が早いなぁ……」

「ははは」


 頼華ちゃんの発言を聞いて穏やかに笑っているところを見ると、頼永様も勝利は疑っていないようだ。



(戦って、こういう感じなんだな……)


 戦の場に選ばれたのは鶴岡若宮から約十キロ程離れた場所の、沖合に江ノ島を望む砂浜で、現在で言えば片瀬海岸の辺りだ。


 ここまでの移動は、正恒さんの家から鎌倉までの時と同じ、俺とブリュンヒルド、頼華ちゃんとオルトリンデ、正恒さんとロスヴァイセという組み合わせで騎乗し、頼永様と源の家臣団も各自が騎馬での移動だ。


 妊娠中の雫様は八幡神(やはたがみ)様を祀ってある祭壇の前で、必勝祈願をしながら帰りを待ってくれると言いながら、笑顔で送り出してくれた。


 源家が左側に、北条家が右側に江ノ島を見る形で、三十メートル程の距離を開けて配置され、各々の代表者の背後には陣幕が設えられ、代表者には床几と呼ばれる折りたたみ式の椅子が用意されて、各自が腰を下ろしている。


 源の陣幕の傍には頼永様の家臣や、同行してきた正恒さんが立って見守っており、それは北条側も同じだ。


 人垣が出来て遠巻きに戦の様子を見つめているのだが、娯楽という側面もあるからなのか、追い散らされたりはしない。


 俺達とこの場まで一緒に来た頼華ちゃんは、出奔した事になっているから源の陣中に姿があるのを確認されると不味いので、迷彩効果のある外套を着て見物人の中に紛れている。


(……ん?)


 その遠巻きにしている見物の人垣を割りながら、数騎の騎馬武者が現れたのだが、先頭の武者にどことなく見覚えがあるような気がする。


 俺が考えている内に、その先頭の騎馬武者はひらりと地面へ降り立った。


「此度の戦の判定をする栄誉を賜った、江戸徳川家の頭領、家宗である! 源、北条、双方の代表者による勝ち抜きによって、最終的に大将である者が倒された時点で戦の勝敗を決するが、問題はござらぬな?」


(家宗様! これは中立の人に審判をって事なのかな?)


 鰻屋の大前の常連でもあり、牛乳などを融通して貰った事もある、江戸を治める徳川家の領主の家宗様が、今回の戦を取り仕切るらしい。


 家宗様の確認の言葉を聞いて頼永様と北条の武人達が、無言のまま大きく頷いた。


「尚、同じ条件での戦は、本日より一年間は相手に挑めないものとするが、宜しいかな?」


(成る程。敗北した側が即再戦を申し込んだら、勝った側はたまったものじゃ無いしな)


 例えば個人での技量が抜きん出ている源家が、武人を多く抱える徳川家に毎日同一条件で戦を挑まれれば、いずれは疲弊して受け入れざるを得ない状態になってしまうだろう。


 再度の確認の言葉に、俺も含めた戦に参加する全員が大きく頷いた。


「双方共に戦いに遺恨を残さぬように気をつけられよ。それでは最初の代表者、前に!」


 家宗様の呼び掛けに、右端の先鋒の位置に座っていたロスヴァイセが立ち上がった。


「あー……そなたはそのままの格好で戦うのか?」

「……」


 家宗様の問い掛けに、ロスヴァイセは無言で頷いた。


「……まあ良いが」


 家宗様がそのままでいいのかと訊くのも無理はなく、前に出たオルトリンデだけでは無く、他の二人のワルキューレ、そして俺も頭からすっぽりと頭巾を被って顔を隠し、視界を確保する為に開けてある部分も、向こうの世界で頼華ちゃんと作った赤味がかった透明の紙、セルロースナノファイバーで覆ってあるからだ。


 正体を隠すには顔さえ見えなければいいのではと思ったのだが、俺は大丈夫でもワルキューレ達は、明らかにこの国の人間とは違う碧い瞳の持ち主なので、誤魔化す為に色付きのセルロースナノファイバーで目の周囲を覆ったのだ。


 雫様や頼華ちゃんのように女性の武人というのは珍しく無いので、体型の方の補正などは特に行わず、ワルキューレ達の全員が、俺が作った巴紋の入った着物と袴姿だ。


 だから源側の代表が頼永様と俺以外は女性だというのが北条側にも見物人達にも、体型から読み取られているだろう。


「双方宜しいか? それでは……始め!」


 家宗様が挙げていた手を振り下ろすと、ロスヴァイセと北条側の武人が後ろに飛び退った。


 相手の名は清水というらしく、事前に聞いていた大力だとの評判の武人のようだ。


 清水は対しているロスヴァイセと比べると、ふた回り以上は大きな体格をしているし、着物の袖口から出ている腕は太く、筋肉の束が浮かび上がっている。


「やぁっ!」

「……」


 大上段に木刀を構えた清水は、気合を発しながらオルトリンデの出方を見つつ、ジリジリと間合いを詰めて来ている。


 ロスヴァイセは様々な武器を扱うのだが、彼女の最もポピュラーな得物は槍らしいので、試合用の木の槍を携え、左上に小型の盾のバックラーを装着するところなのだが、代わりに武者鎧の籠手を両腕に装備している。


(それにしても上段か……侮られてるんだろうな)


 上段の構えは堂々としていて斬り下ろしの威力は高いのだが、防御に関してはガラ空きになるので、相当に自信が無ければ実戦での使用は難しいと言うか危うい。


 対するロスヴァイセは軽く膝を曲げた姿勢で、両手で保持した槍の先を油断無く相手の清水という武人に向けている。


「ええいっ!」


 焦れたのか、それとも絶好の間合いに入ったのか、裂帛の気合と共に清水が上段から木刀で斬り下ろして来た。


 鍛錬と持ち前の膂力に、闘気(エーテル)による身体強化も加えた、真剣では無く木刀であっても必殺の威力を秘めた一撃だ。


 ギリッ!


「なにィっ!?」

「「「!?」」」


 ロスヴァイセはガラ空きの胸元や喉などを狙わずに、真一文字の軌道で斬り下ろされる筈だった清水の木刀の中程を(エーテル)を込めた槍で鋭く突き、乾いた音を立てながらその攻撃を封じた。


 攻撃を仕掛けた清水は放った斬撃に自信があっただけに、封じられた事が信じられずに声を上げ、見守っていた北条の他の武人や観客達は、何が起きたのかを理解するまでに少し時間が掛かった。


「くっ!」

「……」


 清水はなんとか動きをを封じる槍先を外そうとするのだが、まるでそこに張り付いてしまっているかのように、ロスヴァイセが巧みにコントロールして、木刀を構え直す隙を与えない。


「ぬぅっ!」


 苦し紛れに後方に大きき飛び退いた清水は、なんとか槍を木刀から離す事に成功した。


「う……」


 だが、同じ間合いのままに前に出たロスヴァイセの槍先が、反撃に転じる前に清水の喉元に突きつけられたのだった。


「……」

「ま、参った……」


 相変わらず無言のままのロスヴァイセに、不気味な物を見るような視線を送りながら、清水は負けを認める言葉を絞り出した。


「それまで! 勝者、源!」


 源の領民の割合が多いのだろう、ロスヴァイセに勝利の判定が下された途端に、見物人達の間から大きな


歓声が上がった。


「……」

「……」


 一礼して踵を返したロスヴァイセが、俺に向かって小さく頷いたのだが、お互いに正体を隠している状態なので、俺の方も無言で頷き返すだけに留めた。


(平静を装ってるけど、嬉しそうだな)


 ほんの僅かではあるのだが、源の陣に戻ってくるロスヴァイセの歩調が、フワフワとかウキウキとか、そんな軽快な感じに見える。


「む? 源の代表者は、勝ったのでそのまま続けて戦えるのだぞ?」


 ロスヴァイセが源の陣に戻って床几に腰を下ろし、次鋒のオルトリンデが立ち上がったのを見て、家宗様が声を掛けてきた。


「家宗殿。此方の次鋒が出ても、構いはしませんよね?」

「まあ、そうであるのだが……」

「では、お気になさらずに」

「ふむ……承知した」


 頼永様に何か意図があると感じたのか、家宗様はそれ以上は追求しようとはしなかった。


「清水、貴様ぁ! 帰ってからも下田の地頭の座にいられるとは思うなよ!」

「……」


 まだ変声期を迎えていない少女のような声の少年に激しく叱責され、北条の先鋒の清水は項垂れながら歯噛みしている。


(随分と小柄だなとは思ってたけど……そういえば頼華ちゃんと同じくらいの歳なんだっけ?)


 大将の場所に座っている、北条の現頭領であるという武人は、容姿だけでは無く声までが若いというよりは幼かった。


(それにしても若いからかなぁ。何もこの場で敗戦を責めないでもいいだろうに……)


 確かの個人戦なので、敗戦の責任は清水という武人が負うのだが、何も衆人環視の場で行わないでもとは思ってしまう。


「北条方も、早く次鋒が出るように」

「大山! さっさとせい!」

「は、はっ!」


 負けた清水の事が気になっていたのか、進み出るのが遅れていたのを家宗様に注意され、更には北条の大将の叱責を受けて、大山というらしい武人が慌てて前に出て来た。


 先鋒の清水は尊大な態度を隠そうともしなかったが、大山という武人は引き締まった表情からして実直そうな印象を受ける。


「それでは、始め!」

「おうっ!」

「……」


 今度は北条側の大山という武人が槍を、オルトリンデは両手に戦斧(バトルアックス)では無く、短い木刀を握っている。


 腰を落として手にした槍の先を下げ気味に構える大山に対し、オルトリンデは一見すると棒立ちで、右肩に両手の木刀を揃えて乗せるようにしている。


「むっ!?」

「……」


 右肩に背負うような格好で木刀を乗せたままで、オルトリンデが無造作に前に出たので、大山は対処に迷いが生じているようだ。


「た、たあっ!」


 やや躊躇いがちにではあるが、それでも大山はオルトリンデに向けて鋭い刺突を放つ。


 カァンッ!


「くっ……」

「……」

「勝負あり! 勝者、源!」


 自分に迫る槍の刺突を、オルトリンデが揃えて繰り出した木刀が乾いた音を立てて叩くと、大山の手から離れて地面に落ちた。


(……俺に防がれたのが、そんなに悔しかったのかな?)


 斧と木刀の違いはあるが、オルトリンデは敢えて源屋敷で俺が防いだのと同じ攻撃を択んだようだ。


 大山も(エーテル)による身体強化をしていたのだが、それでも繰り出された刺突はオルトリンデには届かず、叩かれた衝撃で槍は手から離れたのだった。


(あれは……右手の指と左の手首が、骨折くらいはしちゃっているな)


 槍に攻撃が来るとは考えていなかったからか、刺突の為に保持する角度が悪かったのか、或いは両方の要因による物か、オルトリンデの激しい攻撃によって、大山の順手で保持していた右手の指と、逆手で下側から支えていた左の手首は、骨にまでダメージが達しているようだ。


(うーん……味方だったら治療しちゃうんだけど)


 一応は領地同士の戦いなので真剣勝負ではあるのだが、命の取り合いという訳では無いので、敵ではあるのだが怪我を負ったままというのは気の毒に思える。


「ぐぅっ……」


 大山という武人は痛みに顔を歪めながら、なんとか砕けている手で木刀を拾い上げると、最初に感じた実直そうなイメージそのままに、一礼をしてから北条の陣に引き上げた。


 同じく源の陣に戻ってきたオルトリンデが、じっと俺の方を見てくるのだが、恐らくは『あなた以外には通じるんですよ?』とでも言いたいのだろう。


 俺は覆面の中で苦笑した。


「む。源は次鋒もか?」

「はい」


 オルトリンデが戻り、中堅のブリュンヒルドが立ち上がって前に出たのを見ての家宗様からの問い掛けに、頼永様が間違い無いと返事をした。


「大山……」

「はっ……面目次第もございません」


 北条の大将になんとかそれだけ言いながら礼をした大山は、崩れる様に床几に腰を下ろした。


「……長谷川。わかっておるな」

「は……」


 源側に二勝されているのだが、勝ち抜き戦なので現時点で落とした星は最終的な結果には影響をしない。


 それでも武家としての面子の問題で、先勝を許したのが北条の大将には気に食わないのだろう。


「双方宜しいかな? それでは……始め!」

「……」

「……」


(む。居合か……)


 長谷川という武人は居合の使い手のようで、腰に木刀を帯びたまま、無言で腰を落として構えた。


(示現流!?)


 対するブリュンヒルドも無言で、右手だけで保持した木刀を顔の右側に持ち上げ、左手は添えるだけのその姿は、示現流のとんぼの構えに似ている。


「……」

「……」


 長谷川とブリュンヒルドは、じりじりと這うようにお互いの間合いを詰めていっている。


「えいっ!」

「っ!」


 ゴッ!


 両者は初動のタイミングは殆ど同じだったのだが、長谷川の木刀がまだ半ばまでしか抜かれていない状態で、鈍い音を立てながらブリュンヒルドが持ち手に近い部分を強打した。


 長谷川の居合もかなり早かったのだが、ブリュンヒルドの斬りおろしはそれ以上で、まるで閃光のような一撃だった。


「そこまで! 勝者、源!」

「ま、まだっ!」


 家宗様が判定を下したのだが、長谷川が食い下がった。


「お主の得物は既に使い物にならぬ。それでもか?」

「なっ!?」


 ブリュンヒルドの居合の動作を止められていただけだと思っていた長谷川が、家宗様の言葉を受けて抜き掛けていた木刀を確かめてみると、打たれた部分に無数の細かい罅が入っていた。


(左腕を捨てた一撃とは……ブリュンヒルドさん凄いな)


 多分だがブリュンヒルドは、源の訓練場で見た俺の示現流の切り下ろしを自分なりに解釈して、構えの時点から左手を添えるだけにした。


 そして示現流の左肘を動かさない左肱切断(さひせつだん)という教えを、左腕を使わずに右腕だけで斬り下ろすという、片手での斬撃にアレンジしたのだった。


「……」


(……やれやれ)


 判定は下されたがまだ礼も終わってない内に、ブリュンヒルドがチラチラと俺の方を見て来るので頷くと、ビクッと大きく身体を震わせたと思ったら、自分を抱くようなポーズでくねくねし始めた。


 ともあれ、これで源側の三連勝だ。

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