昆布出汁
「……あれ? だれかいます?」
「……ん? ああ、お糸ちゃんか。おはよう」
「しゅ、主人!? お、おはようございますっ!」
朝食の下拵えを済ませ、睡眠の足しにしようと瞑想をしていたところに、お糸ちゃんがやって来て驚いている。
「あ、あたし、何か主人のお邪魔をしてしまいましたか!?」
「いや、そんな事は無いよ。それにしても早起きだね」
小さい子が相手とは言え、座ったままなのも失礼だと思い、俺は椅子から立ち上がってお糸ちゃんに向き合った。
「あ、あの……髪の毛金色の人達がいらっしゃって、食事の量が増えると思ったので」
「ああ、成る程ね」
ブルムさんや天達が加わる程度なら、米ならば二合くらいを増やせばいいのだが、九人のワルキューレの分もとなると調理も盛り付けも大変だと見越して、お糸ちゃんは早い時間から自主的に動き出してくれたのだった。
「汁はもう作って、温めれば出せるようになってるんだ。飯はこれから焚くんだけどね」
「そうなんですか!? 凄いです!」
「いや、そんな……」
大した事をした訳では無いのだが、お糸ちゃんは尊敬の眼差しで大袈裟に賛辞を述べてくる。
「それと、戦乙女さん達は外国から来た人達だから、まだこの国の食事に慣れていないかと思って、別に用意してあるよ」
炊きたての飯の匂いが苦手という欧米人がいるのだが、そこはお櫃に移すなどすれば解決出来るので、大きな問題にはならない。
味噌汁も、味噌の味自体は問題にならないと思うが、日本人が旨そうだと思う鰹節の出汁の香りが、欧米人にとっては生臭く感じる場合があるのだ。
この辺は味噌汁では無く煮物の出汁などで徐々に慣れていって貰うしか無いのだが、誰でも苦手な物はあるので、どうしても受け付けないという場合には、今回のように別の料理を用意するなりして、無理強いをするつもりは無い。
「ふわぁ……あたしはそこまで考えていませんでした! やっぱり主人は凄いです!」
お世辞でもなんでも無く、お糸ちゃんは幼い瞳をキラキラさせながら俺を見てくる。
「あー……じゃあ、せっかく早起きしてくれたんだし、お糸ちゃんにも少し手伝って貰おうかな」
「はいっ!」
純粋な瞳から発する圧力に耐えきれなくなってきた俺は、元気よく返事をするお糸ちゃんと朝食の支度を始めた。
「主人! 御飯は炊きあがりました! 後は蒸らせば大丈夫です!」
「ありがとう。こっちもそろそろ終わるよ」
大きな羽釜を相手に飯を炊いていたお糸ちゃんに応えながら、俺は出汁を取っていた鍋に材料を投入した。
「汁の鍋は別にありますから、それは煮物か何かですか?」
沸騰させないように保温してある鍋の存在を知っているので、お糸ちゃんは俺が大きな鍋で出汁を取っているのが不思議なようだ。
「こっちの鍋が、戦乙女さん達の分の朝食だよ。ちょっと手抜きだけどね」
量を多めに作る必要があるので、やや手抜きな感じのメニューになってしまったのが心苦しくて、お糸ちゃん相手に苦笑してしまった。
「……でもでも、凄くいい香りですよ!」
背伸びをして鍋の中で沸いている出汁の香りを嗅ぎながら、お糸ちゃんが慰めてくれた。
「ちょっと味見をしてみる?」
「はいっ!」
「それじゃ……はい、どうぞ」
投入した材料が煮えてきて、塩と酒と、香りつけ程度の醤油で味付けした鍋の料理を、小皿に取ってお糸ちゃんに差し出した。
「ん……お、おいしーい! 主人、これはあたし達は食べられないんですか!?」
「ん? お糸ちゃんは御飯と味噌汁よりも、こっちの方がいい?」
ワルキューレ達の食欲がどの程度なのかは現時点で不明なのだが、十分にお代わり出来る程度の量は作ってある。
「えっ!? う、うーん……」
「そんなに真剣に悩まなくても……お腹を壊さない程度に、両方食べてみればいいよ」
幼い顔に似合わない、眉間に皺を寄せる程に悩み始めてしまったお糸ちゃんに助け舟を出した。
「そ、そうですね! やっぱり主人は凄いです!」
「えー……」
あまり褒められた気がしないのだが、幼児に対して大人げない真似をしても仕方が無いので、俺は色々と言いたい事を飲み込んだ。
「あ、そうだ。お糸ちゃん、包丁を買ってきたから、ちょっと見てくれるかな」
「包丁ですか!? はいっ!」
向こうの世界で仕入れてきた何種類かの包丁を取り出し、作業台の上に並べた。
「うわぁ……これなんか小さいので、あたしでも持ち易そうです!」
小出刃の一本を握って、お糸ちゃんはバランスなどの確かめている。
「研いであるから、すぐに使えるからね」
「凄く切れそう……こ、これって、あたしが使ってもいいんですか!?」
名刀に出会った剣士のように、お糸ちゃんは包丁に魅入られているようだ。
「勿論、使っていいんだよ。でも、慣れない内は気を付けてね?」
「はいっ!」
(これだけ喜んでくれると、買ってきた甲斐があるなぁ)
無邪気にはしゃぐお糸ちゃんを見ていると、自然と自分も笑顔になってしまう。
「おはよう良太……って、飯の支度は済んじまってるんだねぇ」
「おはようございます」
炊きあがった飯の釜の蓋を開けてお櫃に移しているところで、おりょうさんがやってきて渋い表情をしている。
「起きたら寝床にいないから、もしやとは思ってたんだけどねぇ……」
「すいません。つい……」
別に謝る事でも無いのだが、おりょうさんは自分が朝食を用意しようと思っていたみたいなので、差し出がましい事をしたかという詫びだ。
「ん……そいじゃ漬物でも切ろうかねぇ」
「ああ、そうですね。お願いします」
汁が具沢山なので、他におかずはいらないかと思っていたが、言われてみれば箸休めに漬物くらいは欲しいかもしれない。
おりょうさんのお言葉に甘えて、俺はお糸ちゃんと手分けをしながら配膳を続ける。
「おはようございます! って、貴様ら! なんだその破廉恥な格好は!」
扉を開けて頼華ちゃんが入ってきたと思ったら、急に表情を険しくさせながら怒鳴り始めた。
「ひっ!?」
頼華ちゃんの剣幕に驚いて、茶碗を盆に載せていたお糸ちゃんが息を呑んだ。
「す、すまんお糸! お前が悪いのでは無くてだな……貴様らだ貴様ら!」
頼華ちゃんが顔の向きを変えて、厨房の外に向けて再び怒鳴りだした。
「破廉恥って……なんの事っすか? あ、良様。おはようございます」
どうやら頼華ちゃんが怒鳴っていた対象はオルトリンデみたいなのだが、当の本人はのんびりした口調で、俺にがいるのに気がついて朝の挨拶をしてきた。
「おはようござ……お糸ちゃん、ちょっとあっち向いてようね?」
「ふぇ?」
乱れ髪で眠そうなオルトリンデに挨拶を返そうと思ったのだが、辛うじて下は履いているが上半身は裸のままだったので、背後からお糸ちゃんを抱え上げて視界に入らないようにした。
「おはようございますー……」
「ごはん……」
「きっ、貴様らぁっ!」
どうやらまだ視界に入らないワルキューレ達に何人かも似たような感じらしく、頼華ちゃんの怒りゲージの上昇を感じる。
「あんた達……」
いつの間にか包丁を置いたおりょうさんが入り口まで移動すると、外の様子を見て静かに殺気を放ち始めている。
「「「ひぃ!?」」」
只ならぬ気配を感じ取ったワルキューレ達の何人かが、揃って息を呑んだ。
「りょ、りょう様!? あたし達、何か不味かったのでしょうか?」
「何かって……朝っぱらから見苦しいもん放り出してんじゃ無いよ!」
「「「はいっ!」」」
バタバタという複数の足音が聞こえたので、ワルキューレ達の何人かは宿舎の方に着る物を取りに走ったようだ。
(予想の範囲ではあったんだけど……寝起きからか)
北欧の方では短い夏の期間を惜しみ、晴れている日は人の目を気にせずに、出来る限り全身で太陽の光を浴びる者が少なからずいると聞いた事がある。
しかし、さすがに支給した下着や寝間着は着用していると思ったのだが、どうやら俺の考えが甘かったらしく、結果としてオルトリンデだけだけでは無く数名のワルキューレが、おりょうさんの逆鱗に触れてしまった。
「おはようございます。あの……オルトリンデ達が泣きそうな顔で走っていったんですけど、何か?」
「おはようございます。ええ、ちょっと……」
「?」
昨日贈った作務衣姿のロスヴァイセが不思議そうに、まだ怒りの治まらない様子のおりょうさんと頼華ちゃんと、俺を交互に見ながら尋ねてくるが。
やはり同郷のロスヴァイセの常識ではオルトリンデ達の格好をおかしくは感じないのか、何が起こっているのかをわかって無さそうなので、曖昧に答えるだけに留めた。
「頂きます」
「「「頂きます」」」
まだ少し表情と口調に刺々しい感じが含まれるおりょうさんの号令で、朝食を開始した。
「おいしい……良太様。朝食まで我等に配慮して下さりまして、ありがとうございます」
「口に合いました?」
俺達とワルキューレ達の食事の内容が違うのに気がついたロスヴァイセが、料理を一口食べてから感謝の言葉を伝えてきた。
里の住人やこの国での生活が長い者の朝食メニューは、御飯と味噌味の猪の汁にしたのだが、ワルキューレ達の分も米を使っているのだが、香り付けの少量の醤油以外は基本的に塩で味付けした粥にした。
「はい! 凄く濃いのにすっきりとした味わいでおいしいです! でも、何か奥の方に、知らない風味があるのですが……」
「隠し味みたいな物なのに気がつくなんて、ロスヴァイセさんの舌は凄いですね。実は昆布の出汁を足してあるんですよ」
猪の骨を煮出して出汁を取り、骨からすき取った肉と刻んだ人参を具にして作った粥は、旨味を増す為に昆布の出汁を足してある。
鰹節と昆布を合わせ出汁にすると、グルタミン酸とイノシン酸の相乗効果で旨味が増すのだ。
しかしワルキューレ達は鰹出汁に慣れていないだろうから、同じイノシン酸を含む猪の骨と肉に、グルタミン酸を含む昆布を合わせたのだった。
「……でも、味がすっきりしているのは、それだけじゃ無いような」
「ん? どういう事です?」
ロスヴァイセが首を捻りながら、妙な事を言い出した。
「あの、ヴァルハラで出る汁物や煮物は、なんと言いますか……凄く嫌な風味や、くどい脂を感じるのです」
「それって……セーフリームニルの肉の特色なんですか?」
もしもそうだとすると、せっかくフレイヤ様に頂いた無限に食材になる猪のセーフリームニルなのだが、里の食卓に並べるには不適格かもしれない。
「どうなんでしょうか? ただ焼いただけの料理なんかは、凄くおいしいですけど」
「……あ。もしかして」
「な、何か思い当たる事でもございますか?」
ヴァルハラでの食事情の改善になるかもしれないからか、ロスヴァイセが軽く身を乗り出しながら俺に訊いてくる。
「あの、ロスヴァイセさんは、調理をする場面は見ていますか?」
「ええ。材料を鍋に入れて、掻き混ぜているのとかは見ていますが」
「その時になんですけど、アク取りはしていますか?」
「アク取り? なんですかそれ?」
(……やっぱりか)
まだ調理法が未熟なのか、それともアク取りとかいう概念が無いのかは不明だが、おそらくヴァルハラで作られている汁物や煮込みというのは、鍋で食材を煮て味をつけているだけの代物なのだろう。
「あのですね……肉とか野菜を煮込むと、表面に余計な脂や、アクって呼ばれる濁りみたいな成分が出てくるんです。それを除かないとえぐみの残るような、不味い料理が出来上がるんですよ」
「「「ええっ!?」」」
俺の話を聞いてロスヴァイセ以外のワルキューレ達も、悲壮な表情になって朝食の手を止めた。
(本当に知らなかったのか……)
アクを取らない煮物や汁物と、それを食べさせられていたワルキューレ達の事を考えると、気の毒としか言い様が無い。
「おのれアンドフリームニル……」
「……今まで不味い物を食べていたのは、料理人の手腕だったのですね」
ヴァルハラの料理人であるアンドフリームニルに対し、生真面目そうなゲルヒルデは怒りを顕に歯軋りし、ジークルーネは口調は穏やかだが、周囲を凍りつかせそうな雰囲気を放っている。
「えっと……と、ところでりょう様? あたし達はいつまでこの格好で?」
「あ、足の先の方の感覚が……」
「こ、この座り方、つらぁい……」
「……反省してる」
おりょうさんの情けで食事抜きは免れたのだが、オルトリンデ、シュヴェルトライテ、ヘルムヴィーゲ、ジークルーネ達は、半裸で歩き回った罪で正座をさせられ、現状を嘆く言葉や反省を口にしながら、足の痺れに身体を震わせている。
「ぶ、ブリュンヒルド様からも、なんか言って下さいよ」
涙目のオルトリンデがワルキューレたちを率いるブリュンヒルドに、救いを求めるように問い掛けた。
「ゆ、夢にまで見た良太様の手料理……」
「ブリュンヒルド様、何も泣かなくても……」
当のブリュンヒルドの方は、隣に座るゲルヒルデに同情の視線を向けられながら、懸命に匙で粥を口に運んでいる。
結局、朝食を食べ終わるまでは、おりょうさんからオルトリンデ達の正座を解く許可は出されなかった。
「新しい住人が増えたので、みんなに一緒に暮らしていく上で守ってもらいたい事を、これから話します」
朝食後、食器類を片付けてから皆に茶を淹れた湯呑が行き渡ったところで、俺は苦手な演説みたいな物を始めた。
「えっと……早速罰せられる人達が出ちゃいましたけど」
「「「……」」」
今は普通に椅子に座っているオルトリンデ達が俺の話を耳にして、肩身が狭そうにしながら湯呑を傾けている。
「原則として、自分の部屋と風呂場、新しく作ったサウナ小屋とその周辺以外の場所では、裸になるのは禁止します」
「「「はい」」」
当たり前な事過ぎるのか、大多数の者が不思議そうに俺を見るが、すぐに承諾する声が上がった。
「「「えー……」」」
そんな中、一部の者、さっき正座をさせられたオルトリンデ、シュヴェルトライテ、ヘルムヴィーゲが、小さい声ではあるが不満を訴えている。
(彼女達にとっては普通なのかもしれないけど、困るんだよなぁ……)
この辺は自分達の生活圏での普通を、否定された事による反発だと思うのだが、下手をすれば町中でも脱いだりしかねないので、徹底しておく必要がある。
「貴様ら、小さな者でも納得しているというのに……立派なのは図体だけなのか!?」
「「「ひぃっ!」」」
頼華ちゃんの一喝を受けて、オルトリンデ達は震え上がった。
「そうですよあなた達。フレイヤ様から良太様の言う事を聞くようにと言われたのを忘れたのですか?」
「「「うっ……」」」
リーダーであるブリュンヒルドの、更に上位者であるフレイヤ様の言いつけを思い出したのか、オルトリンデ達は言葉に詰まった。
「ジークルーネは聞き分けがいいわね」
「ん」
(聞き分けがいいってだけじゃ、無さそうだけどなぁ……)
ブリュンヒルドに言われてジークルーネは言葉少なに頷くのだが、どうも半裸だったのも面倒臭かっただけのように思える。
今も言う事に従っておいた方が余計な軋轢を産まないだろうという、ジークルーネの打算的な行動に見えるのだ。
「ブリュンヒルド様。従えないという事ならば、この三名は送還しても良いのでは?」
「ああ、そうしましょうか」
「「「えっ!?」」」
ロスヴァイセの進言に頷くブリュンヒルドに、オルトリンデ達は目に見えて狼狽している。
「りょ、良太様! 今度こそ心を入れ替えますので!」
「で、出来れば御容赦を……」
「良太様に従いまぁーす」
オルトリンデは必死の形相で、シュヴェルトライテは弱気な感じに上目遣いで、ヘルムヴィーゲは真剣味が感じられない軽い感じで、各自が主張を口にした。
「最終的にどういった裁定を下すのかは、良太様にお任せ致します」
「はぁ……」
(と、言われてもなぁ……)
ブリュンヒルドは俺に丸投げしてきたが、正直言って判断に困る。
オルトリンデは向こうの世界に滞在中も聞き分けが良くなかったのだが、不思議と頼華ちゃんに対しての忠誠心は高い。
シュヴェルトライテはジークルーネと同じく面倒臭がりみたいなのだが、一応は聞く耳は持っている。
ヘルムヴィーゲはロスヴァイセに近い感性を持っているようなのだが、自分の興味の範囲外の物に対しては無頓着になるみたいだ。
「……オルトリンデさん」
「は、はいっ!」
俺に名前を呼ばれて、オルトリンデは弾けるような勢いで立ち上がった。
「御自身と、この里の特異性は認識していますか?」
「それは……」
「向こうで物見遊山はさせてあげましたから、それを継続している気分で滞在しているのなら、お帰り下さい」
向こうの世界では喚んだ日と帰る日以外は、ほぼノータッチで過ごして貰ったのだから、フレイヤ様と天照坐皇大御神様と観世音菩薩様とに対する義理は果たしたと思う。
子供達に気に入られている感じではあるのだが、オルトリンデの不用意な行動が続くと、その子供達に危険が及んでしまうので、ここは厳しく対応すべきだろう。
「うぅ……わ、わかりました。良太様の仰せのままにしますので、ここにいさせて下さい」
「わ、私も、良太様の仰せのままに」
「私も従いまぁーす」
(裸になるなって、そんなに厳しい事なのかなぁ……)
思いっきり悲痛な表情のオルトリンデとシュヴェルトライテは俺の言葉を受け入れた。
対象的にヘルムヴィーゲからは、相変わらずのお気楽な感じで答えが返ってきた。
「……まあ、いいでしょう」
「「「……」」」
送還されなかった安堵の雰囲気が、三人のワルキューレ達から伝わってきた。
「それじゃあ、他の注意事項を話しますね」
裸で行動出来る場所の制限以外は、基本的な安全への対策的な内容で、厨房や風呂場やサウナは子供達だけでの利用は避けて、里の外に出かける際にも必ず年長者の同行というのを厳格化する事にした。
「念の為に言っておくけど……紬と玄。天さんの連れている女の子達」
「「「はい?」」」
「「?」」
なんで自分達が名指しされたのかわからずに、紬と玄、糸目の少女達が首を傾げている。
「見た目じゃない実際の年齢が上だからとかいう屁理屈で、単独行動をするのは無しで」
「「うっ!」」
「「……」」
(危ないなぁ……)
俺に言われて言葉を詰まらせた紬と玄は、明らかに子供達よりも優位に立って振る舞おうとしていたのだろう。
糸目の少女達には念の為に言っておいたのだが、きょとんとしているところを見ると、天や志乃ちゃんと離れて行動するつもりは端から無かったのかもしれない。




