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戦乙女召喚

「ん……」


(……あれ、自分の部屋じゃ無い?)


 ブラインド越しに微かに入る外からの明るさで、見上げている天井と、そこから下がっている照明設備が、いつもの自分の起き抜けの景色とは違っているのに気がついた。


「……そっか、昨夜は」


 右側におりょうさん、左側には頼華ちゃんが俺に添い寝している。


「「ん……」」


 ほぼ同時に、おりょうさんと頼華ちゃんが瞼を開けた。


「おはようございます。起こしちゃいましたか?」

「おはよう、良太。ううん。あたしも、丁度起きたところだよ」

「おはようございます、兄上! 余も、いま起きましたが、実に良い目覚めです!」


 口々に挨拶を返してくれたおりょうさんと頼華ちゃんは、両サイドから俺に腕を絡めてきた。


「今朝は俺が、朝食を作りますね」

「手伝うよ、良太」


 おりょうさんが右腕を開放してくれたので、俺は掛け布団を跳ね除けた。 


「うう……もう少し兄上と姉上とこうして過ごしたい気もするのですが、お腹が減りました」

「あはは。急いで作るね」

「はい! 余もお手伝い致します!」


 元気に言った頼華ちゃんは、勢い良く布団を跳ね除けた。



「おや? 今朝は粥かい?」


 キッチンで調理中の俺の元に、洗顔を済ませてさっぱりした顔のおりょうさんが戻ってきた。


「ええ。昨日の店では食べられなかった、中華風の粥です」


 風呂場に隣接している洗面所に三人は並べないので、おりょうさんと頼華ちゃんに順番を譲った俺は、手を洗ってから朝食の支度を先に始めた。


「でも粥じゃあ、あたしが手伝う事はあんまり無さそうだねぇ」

「おりょうさんは、薬味類を刻むのをお願いします」


 中華粥の方は、鶏ガラスープの素と缶詰のホタテの漬け汁を出汁にして、後は炊き上がるのを待つだけなので、おりょうさんには葱やザーサイなどの薬味類の用意を頼んだ。


「兄上。余は何を?」

「そうだな……少し彩りに乏しいから、卵でも」


 ボウルに卵を割り入れ、軽く醤油と塩、大さじ二杯くらいの干し海老を投入する。


「これを掻き混ぜて焼いてみようか。粥だから炒り卵みたいにするのがいいかな?」


 葱とザーサイ以外は白いだけなので、卵の黄色と海老の赤をプラスする事にした。


「むむ。これは責任重大ですね!」

「あはは。そこまで気合い入れ無くても大丈夫だよ。それじゃ後は任せるね」

「はい」

「あたしが面倒見ておくよぉ」


 頼華ちゃんも大分調理などにも慣れてきたので、失敗する事は無いと思うが、おりょうさんも付いているので安心だ。


 俺へ二人に後を任せて洗顔に向かった。



「そいじゃ、頂きます」

「「頂きます」」


 おりょうさんの号令で朝食の開始になった。


 食卓には湯気を上げる粥の茶碗と、葱やザーサイなどの薬味類、頼華ちゃんが作った炒り卵などが並んだ。


「あたしゃ白粥も好きだけど、こういう味付きのも悪くないねぇ」

「貝柱から、良い出汁が出ていますね!」


 一応はレンゲも用意したのだが、おりょうさんも頼華ちゃんも日本人らしく、箸で粥を食べている。


「この漬物は初めて食べるけど、少し癖はあるけど粥に合うねぇ」

「そういえば初めてでしたっけ? 不思議な風味ですけど、口直しにはいいですよね」


 本場では粥の添え物以外には漬物としてそのまま食べるという事は少なく、炒め物などの調味料として使われるザーサイは、最近では日本でもすっかりポピュラーになっている。


「頼華ちゃんが作った卵料理もおいしいよ」

「本当だねぇ。塩っ気も丁度いいよ」

「あ、ありがとうございます! でも、味付けは兄上が……」


 俺とおりょうさんが出来栄えを褒めるのだが、頼華ちゃんは複雑そうな笑顔を浮かべる。


「火の通し方がいいから、ボソボソにならないで口当たり良く出来てるんだよ」


 そぼろにする場合には水分が飛ぶまで炒りつけてもいいのだが、干し海老入りの卵は、火を通し過ぎていないのでしっとりと水分を残して纏まり、粥に良く馴染んでひと味足してくれる。


 頼華ちゃんが意図的にこの出来上がりにしたのかはわからないが、結果的にはこの料理だけを食べても、粥の添え物としても、実に優れた料理になっているのだった。


「そ、そんなにお褒め下さるのでしたら、またお作りしますね! あ。兄上、姉上、お代わりは如何ですか?」

「うん。貰おうかな」

「あたしも頂こうかねぇ」


 和やかな朝食の時間が、ゆっくりと過ぎていく。



「……そいで良太。戦乙女の姉さん方は、喚び出すのかい?」


 食後に、中国の緑茶である龍井茶(ろんじんちゃ)を淹れ、一息ついたところでおりょうさんが訊いてきた。


「うーん……悩ましいところではあるんですよね」


 話し合いの末に、向こうに持って帰る予定の品物を買い溜めたのだが、観世音菩薩様からの資金の追加もあって、戦乙女(ワルキューレ)を数人呼んでも、滞在費などの金銭的な余裕はある。


 元々、おりょうさんも頼華ちゃんも浪費癖は無いし、我が家を滞在場所にしたというのもあるのだが、全員がいざという時の事を考えて、ある程度以上の贅沢はしないという暗黙の了解があったのが、現在の手持ち金の額に反映しているのだろう。


「兄上、姉上。余は戦乙女を呼ぶのには賛成です!」

「ん? 頼華ちゃんは、黒ちゃんや白ちゃん以外は、喚ぶのを嫌がるかと思ってたんだけど」

「正直申し上げれば、兄上の周囲にこれ以上女の影が動き回るのは、歓迎しないのですが……」


 何か複雑な感情が渦巻いているようで、しれが頼華ちゃんの表情にも現れている。


「姉上、ちょっと……」

「ん?」


 頼華ちゃんがおりょうさんを手招きし、リビングの端の方に移動して頭を突き合わせている。


「姉上。率直に申し上げて、余と姉上だけ……いいえ。黒と白、夕霧に天まで加えても、兄上を満足させてあげられるかは、わからないのですよ?」

「えっ!?」

「……」


 頼華ちゃんはヒソヒソ話をしているつもりのようだが、点けっ放しのテレビの多少の音声以外には他に雑音が無いので、二人の会話の内容は俺には丸聞こえだ。


 しかし、頼華ちゃんはおりょうさんと内緒話をしているという体裁を取り繕っているので、俺は邪魔しないように無言で湯呑を傾けるだけに留めている。


「で、でもぉ。幾ら良太だって、あたしに頼華ちゃん、黒と白はともかく、夕霧さんや天さんがいなくったって……」

「甘いですよ姉上! 兄上には姉上を抱えたまま、藤沢から品川まで疾走出来るくらいの体力があるのです!」

「うっ!」


(……なんでおりょうさんも、言いくるめられちゃうかな)


 (エーテル)で強化されている筋力や持久力で、藤沢、品川間と走って移動出来るのは事実だが、それが俺の体力に直結している訳では無い。


「一晩なら、それはもう兄上と、めくるめくような時間を過ごせると思いますが、それが連日に及んだとすると……いや、一晩でも一人では、御相手をするのはきついかもしれません!」

「い、言われてみれば……」


 どんな状況を想像したのか、おりょうさんは頼華ちゃんの話を聞いて、少し顔を青褪めさせている。


(……もしや俺は、家宗様と同じように思われているんだろうか?)


 頼永様の奥方の雫様が、絶倫と噂の家宗様との縁談を、頼華ちゃんが壊されてしまいそうという理由で渋っていたのだが、まさか女性経験すら無い自分が、そういう目で見られるとは思っていなかった。


「正室は姉上、側室が余という序列は絶対です! なぁに、我らの身体が大丈夫ならば、他の者を兄上に近づかせなければ良いだけの事です!」

「成る程! 頼華ちゃんは頭が回るねぇ」


(納得させられちゃったよ……)


 頼華ちゃんを見るおりょうさんの目には、尊敬の念が宿っている。


「今回は戦乙女どもを、側女(そばめ)候補として観察する為に喚び出すのです。もしも兄上に対して不遜な行いをするようなら、失格の烙印を押してやれば、損失はこちらの世界での滞在費だけ!」

「か、完璧じゃないか!」


(完璧なのかなぁ……)


 話の流れからすると、おりょうさんと頼華ちゃんのお眼鏡に適えば、戦乙女(ワルキューレ)は俺の側女(そばめ)とやらになってしまうらしい。


「戦乙女共が駄目でも、黒や白や夕霧や天がおりますし、いざとなれば織田の朔夜や紬などは、喜んで兄上に我が身を差し出すでしょう!」

「そ、そうなのかねぇ……」


(なんか朔夜様と紬に、頼華ちゃんは物凄く偏見があるみたいだなぁ……)


 朔夜様は俺に対して好意は抱いてくれているようだが、それは人柄がどうとかでは無く、頼華ちゃんよりも強い人間であるという部分だけに対しての物だろう。


 紬に関しては、本当はあっちの方が物凄く歳上なのだが、俺に対しては父親や兄みたいな感覚と、蜘蛛の一族を救った相手としか認識していないんじゃ無いかと思う。


「余の考えとしては、戦乙女共の中で一番兄上に好意を持っていそうな者と、そうでは無さそうな者を、それぞれ一人ずつ喚んでみてはと思っております」

「ん? 好意を持っていそうってのはわかるんだけど……なんでもう一人は、好意を持っていなさそうな方を喚ぶんだい?」

「一番上と一番下の者の意識を基準にすれば、それが我らが戦乙女共を扱う際の指針になるからです」

「……良くわからないねぇ」


 頼華ちゃんの中では戦乙女(ワルキューレ)に対しての考えがあるようなのだが、おりょうさんには中々伝わらないようだ。


「兄上に好意を持っている、ぶりゅんひるどとかいう者は、申し付ければ兄上の為ならば火の中にでも飛び込むでしょう」

「そ、そうなのかい?」

「そうなのです!」


(そうなのかなぁ……)


 ブリュンヒルドの言っていた試練とやらが、幻の炎を突破しろという内容だったからとはいえ、それが自分から火の中に飛び込むという事にはならないと思う。


「しかし、幾ら兄上に恋い焦がれていようと、我等を差し置いて歩み出る事は許されないのです!」

「お、おう……」


 いつの間にか、内緒話とは言えないような話し方になっている頼華ちゃんに、おりょうさんが気押されている。


「姉上や余の下に付くというのを良しとしないのであれば、失格です。逆の理由で、一番態度の良くないように見えた、おるとりんでとかいう女の行動を見れば、他の戦乙女共の兄上に対する尺度を測れるでしょう!」


(……思ったよりは、考えてたんだな)


 ブリュンヒルドもオルトリンデも、喚び出してみたら無軌道に動かれたとかいう事になったら困るし、フレイヤ様にお願いして遠ざけて貰うという事も有り得るのだ。


 そういう意味では頼華ちゃんの言う通りに、一番好意を持ってくれていそうな一人と、持っていなそうな一人を喚び出して様子を見るというのは、かなり理に適っている。


「あ奴らならば、見た目の通りに大柄ですし、相当に身体も鍛えられているようですから、多少は兄上に無体な扱いを受けても耐えきれるでしょう!」

「無体って……」


 まるで俺がそういう扱いをするかのような頼華ちゃんの言い方に、我慢しきれずに言葉を漏らしてしまった。


「はわっ!? あ、兄上。もしや余の言葉がお聞こえに?」

「もしやも何も……」


 あくまでも頼華ちゃんは、おりょうさんと内緒話をしていたと疑っていないようだ。


(頼華ちゃんに悪気は無いんだ。悪気は……)


 二度目のプロポーズをしたばかりの相手に、苦言を呈する様な事はしたく無いので、心の中で自分に言い聞かせながら精神を落ち着かせる。


「あ、兄上! 余と致しましては、ぶりゅんひるどとおるとりんでの両名を喚び出しては如何かと思いますっ!」


 頼華ちゃんは焦る気持ちを隠しきれないのか、ビシッと気を付けをしながら声を裏返らせている。


「……まあ、いいんじゃないかな」


 ブリュンヒルドは俺への感情が少し怖い気もするが、聞き分け自体は良さそうなので、元から第一候補として考えていた。


 もう一人くらいは喚ぼうかと考えていたのだが、それはブリュンヒルドとは別な感じにフレンドリーに思えたヘルムヴィーゲであり、やや自由過ぎるようなオルトリンデはその次くらいの候補だった。


「そいじゃ喚ぶ前に、支度をしようかねぇ」

「そうですね!」

「何か準備ですか?」


 喚び出しの際の受肉などに関しては、フレイヤ様や天照坐皇大御神(あまてらしますすめおおみかみ)様に任せるしか無いので、特に準備などは不要の筈だ。


「せっかく手が増えるんだから、有効に使わないとねぇ」

「はぁ……」


 そんなに手間の掛かる事をするのかは不明だが、何か考えがあるようなので、おりょうさんに任せる事にする。


「それじゃあ、喚ぶのは少し間を開けた方がいいですか?」

「いや。直ぐにで構わないよ」

「はぁ……」


(なんか良くわからないな)


 おりょうさんの真意は読めないが、いいと言うのなら喚び出してしまおう。


「えっと……ブリュンヒルド、オルトリンデ、来て下さい」


 俺が何気無くそう言うと、リビングの一角の空間から現れた細かな粒子が凝縮し、次第に跪いた姿勢の人の形のシルエットを構成していく。


「ブリュンヒルド」

「オルトリンデ」

「「良太様の命により、参上致しました」」


 彼女たちの仕事着なので仕方が無いのだが、白銀の輝く鎧を身に纏った姿は、現代の住宅のリビングでは異彩を放っている。


「えっと……とりあえず顔を上げて下さい。あと、様は無しで」

「「はっ!」」


 凛々しいブリュンヒルド、不敵な感じのオルトリンデがそれぞれ顔を上げた。


「……」


 俺と視線が合った途端に、ブリュンヒルドの口の端が歪み、一気にだらしなく顔全体が綻んだ。


 それを横目で見て、オルトリンデが笑いを堪えている。


「はいはい。そいじゃ御二人さん。来たばっかで悪いけど、あたしらを手伝った貰うよ」

「「えっ!?」」


 ブラウスに細身のコットンパンツという、すっかりこっちファッションに馴染んだ格好のおりょうさんが、何やら道具類をブリュンヒルドとオルトリンデに突き出した。


「って言っても、こっちの勝手もわかんないだろうから、あんたはあたしに、あんたは頼華ちゃんの後について、指示を受けな」


 おりょうさんはブリュンヒルドを、頼華ちゃんにはオルトリンデの面倒を見るという事らしい。


「あ、あの、りょう様? 私は良太様と御一緒が良いのですが……」

「……あ?」

「ひぃっ!?」


 抵抗を見せようとしたが、おりょうさんからの鋭い一瞥を受けると、ブリュンヒルドは息を呑んで縮み上がっている。


(歴戦のワルキューレをひと睨みで……さすがはおりょうさん)


 風呂の入り方を神様に注意するくらいなので、おりょうさんはワルキューレが相手でも些かも怯んだりはしない。


「頼華様。あたしは何をすれば?」

「うむ! そなたは余と一緒に、風呂場とその周辺の掃除だ!」

「はっ!」


 オルトリンデは頼華ちゃんの前で、大柄な身体を折り曲げながら指示を受けている。


「えっと……」

「今日の夕方には良太の御両親が帰ってくるだろう? だから、お世話になったせめてもの礼に掃除と、使った寝具を干したりしようかって事だよ」

「成る程」


 俺が学校に行っている間におりょうさんと頼華ちゃんが分担して、掃除などは日常的に行ってくれていたのだが、言われてみれば昨夜使用した寝具類のカバーなどは洗う必要もある。


(掃除は念入りにしないとな……)


 日常的に掃除されていたので、汚れが目立つという事は全く無いのだが、明らかに俺の物とは違う、おりょうさんと頼華ちゃんの長い髪の毛が落ちていたりすると、自分たちの留守中に我が家がどういう状況だったのかと両親に勘ぐられてしまう。


 交際をしている相手として紹介していない女性を、自宅に寝泊まりさせていたという状況は説明が困難なので、現状では両親に知られないのが一番だ。


「良太は自分の部屋の掃除をしな。そんなに汚れちゃいないだろうけど、あたし達も結構出入りしたからねぇ」

「わかりました」


 言い方から察すると、おりょうさんは俺と同じ考えのようだ。


「うぅ……良太様と一緒がいいのに」

「ほらほら。さっさとこいつで、床の掃除をするんだよ」


 おりょうさんはブリュンヒルドの前の床に、吸引力の変わらないコードレスクリーナーを置いた。


「っと、その前に。邪魔な鎧なんか脱いで、髪の毛を纏めちまおうかねぇ」

「きゃっ!?」


 おりょうさんが鎧の留め金に手を伸ばし、次々と外していくと、ブリュンヒルドはイメージからは掛け離れた可愛らしい悲鳴を上げた。


「りょ、りょう様っ!? 鎧はドラウプニールで外せるので、お手は煩わせませんから!」

「そうかい?」


 人に着替えを手伝って貰うという経験が少ないのか、おりょうさんに留め金が外されて、前後に分割して開きそうになった胸甲を押さえながら、ブリュンヒルドが必死の形相で主張している。


「うぅ……」

「鎧を脱いじまうと、言い方は悪いけど、見すぼらしくなっちまうねぇ」


 ドラウプニールを操作して装甲が無くなると、肌を保護する為の鎧下と呼ばれる実用オンリーの衣類を見て、おりょうさんが呆れたように言った。


「ぶりゅんひるどさんなら、あたしのを着れそうだねぇ。掃除の前に、ちと着替えようか」

「えっ!?」


 鎧下の袖を引いて、おりょうさんが風呂場の方へ向かう。


「良太。おるとりんでさんには、あんたのを貸してやんな」

「はぁ……」


 確かに体格的にオルトリンデには、俺のサイズに近いのだが……おりょうさんは振り返りもせずに、ブリュンヒルドと歩み去ってしまった。


「それじゃオルトリンデさん、俺の部屋に」

「はぁーい」

「余も御一緒します!」


 風呂の掃除をする予定だった頼華ちゃんとオルトリンデだったが、おりょうさんに先を越されてしまったので、今は風呂場には入れない。


 とりあえず着替えを渡す為に自室に移動するが、どうやら頼華ちゃんは、俺とオルトリンデを二人だけにするのを阻止するという考えのようだ。 



「んー……こんなもんかなぁ」


 オルトリンデに似合いそうな感じがしたので、ポケットの多いグレーのネルのワークシャツに、ブラックデニムのスリムパンツを出した。


「十分でしょう!」

「それじゃ着替えますね」

「ちょっ!? ここじゃ駄目ですって!」


 既にドラウプニールを操作して鎧を外した格好になっていたオルトリンデは、無造作に上半身の鎧下を脱いで裸になった。


「あたしの裸は、風呂で見たでしょ?」

「そういう事じゃ無くて……俺は部屋から出ます」


 何が問題なのか本気でわからないという表情をしている、オルトリンデと頼華ちゃんを残したまま、俺は部屋を出た。

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