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ボーリング

 おりょうさんの許可を得た頼華ちゃんは、かなり面積の大きな牛革と羊の革を選んだ。


 革のコーナーの端の方に、様々な大きさや形や色の革が雑多に箱に入れられているのを見つけて、頼華ちゃんはその中から、植物鞣しの物を選別して手に取る。


「処分品と言っても、革なので安くは無いですね」

「そうだねぇ。でも、構わないよ」


 葉書サイズくらいの革でも数百円するので、植物鞣しの物だけでも、合計するとそれなりの金額になった。


 とは言え、最初に選んだ大きな牛革と羊の革に比べれば安いものだが。


「五号館と六号館の主要な場所は回りましたけど、七号館に移動してもいいですか?」

「良太。服地とか以外にもこの、ぼたんなんかも扱ってるのかい?」

「通過してきちゃいましたけど、上の階で扱ってますね。後はファスナーなんかも」


 和服には無いパーツのボタンやファスナーだが、洋服に於いては重要な構成要素になる。


「なら、ちっと見とこうかねぇ」

「わかりました」


 再び三階まで階段で上り、ボタンなどを扱っているコーナーまで歩いた。


「ぼたんってのは、ぷらすちっく以外の物を使ってるのもあるのかい?」

「ありますよ。例えばですけど、こっちの世界の江戸時代では薩摩焼のボタンが、外国への重要な輸出品目だったって聞いてます」


 風流な絵柄を色鮮やかに描かれた薩摩焼のボタンは外国で高く評価され、得られた外貨は統幕資金に流用されたとも言われている。


「そいつは高いだろぉ?」

「そうですね。でも、自分で言っておいてなんですが、服飾材料というよりは工芸品なので、この店では扱って無いでしょうけど」


 現代でも何人かの作家が薩摩焼のボタンを製作しているが、詳しい値段などは調べた事が無いのだが、かなり手間暇の掛かった作品である。


 もしかしたら縫製まで含めた服一式よりも、ボタンの方が値段が高いかもしれないくらいだろうから、こういう店よりは美術商などで扱われていると思われる。。


「でも、プラスチック以外の、例えば貝やガラスや木のなんかの、向こうに持って帰れそうなボタンもありますよ。っと、ここがボタンのコーナーみたいですね」

「「うわぁ……」」


 ボタンのコーナーの景色を目にして、おりょうさんと頼華ちゃんが揃って呆れたような声を出した。


 既製服では大概の場合は安価なプラスチックが使われているが、俺達の目の前には様々な色や形や素材のボタンが、所狭しと並んでいる。


「と、とりあえず、材質的に大丈夫そうで、数を多く買えそうなのを見つけようかねぇ」

「そ、そうですね!」


 明確にどういう服に使おうかと目処を付けて、ボタンを買いに来た訳では無い。


 おりょうさんも頼華ちゃんも向こうの世界で服を作る際に使えればとか、ボタン自体を作る際の参考にという考えで、適当な物を探し始めた。


「こんなもんかねぇ。貝とか硝子のぼたんも綺麗だけど、買っても今のところは使い途が無いからねぇ」


 結局、無難な丸い木製の四つ穴ボタンの、大きめの物と小さな物の百個の箱入りを一つずつ買う事に決まった。


 前開きのシャツとかを数着作れば、百個くらいのボタンはすぐに使い切ってしまいそうだが、選んだのはデザインも何も無い、丸くて平たいだけの物なので、いざとなれば木から複製を作るのも簡単だろう。


「縫い針なんかも欲しいかったんだけどねぇ……」

「錆止めにメッキされちゃってるので、諦めて貰うしか無いですね」


 縫い針は、物によっては鋼で出来ているのだが、ほぼ全ての製品にニッケルなどでメッキが施されているので、残念ながら向こうの世界に持ち帰るのは不可能だ。



 布地などを買おうかという話も出たが、殆どの場合は蜘蛛の糸で賄えるので、無駄な出費を抑える意味も含めて購入は控えて、俺達は七号館の二階に到着した。


「この建物の中は、また色とりどりだねぇ」

「画材や工作用品なんかを主に扱ってるからでしょうね」


 油彩や水彩やカラーペンなどの画材類、文具や用紙類や工作材料など、良く目にする物から聞いた事の無いメーカーの商品までが並んでいる。


「えーっと……あ。あったあった」


 筆記具と製図用品の並んでいる中間くらいの位置に、ガラスペンが陳列されていた。


「こういう高いのもあるんだなぁ」


 ペン先を交換する方式のガラスペンは軸と合わせても数百円だが、作家の工房製の物などもあり、見た目にもスタイリッシュな製品は数千円する。


「安くも無いけど、高くも無いって感じだねぇ」

「そうですね」


 書道用の筆などには、かなり高価な物もあるので、多分だがおりょうさんはその辺と比較しているのだろう。


「良太。良く考えたら、ぷらすちっくの軸は木とか竹とかが代わりに使えるんだから、先っぽだけのを買って帰っても良いんじゃないのかい?」

「あ。言われてみればそうですね……」


 ガラスペンの先を捩じ込んで使う軸は、プラスチックの専用の物しか使えないと思い込んでいたが、考えてみれば木でも竹でも金属の筒でも構わないし、サイズが違うなら現物合わせで削ったりしてもいいのだ。


「なんで気が付かなかったんだろう……おりょうさん、ありがとうございます」

「水臭い事をお言いじゃ無いよ。良太とあたしの仲だろぉ?」


 穏やかに微笑みながら、おりょうさんが俺の頭を撫でた。


(敵わないなぁ……)


 一応は恋人と認めてはくれているのだが、実際に年下なので仕方が無いとは言え、時折おりょうさんは俺の事を弟のように扱う。


「この先っぽだけのを主に使うとして、軸まで硝子のと、こっちの少し高いのも買っていこうかねぇ」

「そうですね。高い方のは、頼永様達へのお土産にも良さそうですし」


 自分の事は一旦置いて、目の前の現実に向き合って買い物の内容を考える。


「兄上。そういえばそろそろ、頂いた書写用の紙が無くなります」

「あー……じゃあ、紙も買っていこうか」


 ガラスペンを使って筆記速度が上がれば、当然ながら墨だけでは無く紙の消費量も増えるというのが頭から抜け落ちていた。


 しかし、高いのでそれ程は買えなかったとは言っても、かなりの枚数は渡してあったので、おりょうさんと頼華ちゃんの二人が数日で使い尽くした事を考えると、物凄い筆記ペースである。


「すいません。和紙はどこにありますか?」

「和紙ですか? 失礼ですが用途はどのような?」


 名札を付けた女性の店員さんが通り掛かったので、丁度良いので呼び止めたら、和紙の使用用途を確認された。


「書道というか、筆写です」

「それですと、手漉きと機械漉きがございますが」

「えっと……それじゃ両方見せて貰えますか?」

「では、こちらへ」


 買う分のガラスペンを、店内備え付けの小さなカゴに入れた俺達は、店員さんの案内で紙のコーナーに向かった。



「こちらが書道用の機械漉きの和紙、そしてこちらが手漉きの物になります」

「ありがとうございます」


 書道用の半紙と言うと、極薄だけどかっちりしているというイメージを持っていたのだが、それは一般的な紙と同じくパルプから作られた物である。


 店員の女性が見せてくれたのは、日本では古来から紙の素材として使われている(こうぞ)などを原料に、機械漉きと手漉きで作られた物で、どちらも一般的な物と比べると風合いがある。


「機械漉きでも、素材が(こうぞ)とかなら大丈夫かなぁ……」

「百均の茶碗なんかも、成形は機械でされてるだろうから、大丈夫だろぉ?」

「それもそうですね」


 持ち帰る予定の物は、向こうの世界では用いられていない素材や製造法を使った物は駄目という縛りがあるのだが、陶器の食器類などは機械式のろくろや型押しで成形されているのでアウトっぽく思うが、工程を簡略化しているだけで、技術的には再現は可能だ。


 目の前の機械漉きの和紙は、手漉きの工程を機械で行っているだけで、手作業では不可能なサイズの物とかでは無いので、百均の陶器と同じく大丈夫なのではないかというのが、俺とおりょうさんの見解だ。


「まあ紙が駄目だって言われたら、書き写してから焼却しますって言う条件で許して貰うしか無いですね」


 こっちの世界の技術的な資料自体の持ち帰りが、駄目と言われる可能性もゼロでは無いのだが、その時はその時だ。


「念の為に、機械漉きと手漉きの両方を買って帰ろうかねぇ」

「ああ、それはいいですね」


 箱入りの物を買うつもりなので、少し量が多い気もするが、手漉きをメインに使って、余った物にお許しが出れば、向こうの世界に持って帰ればいいのだ。


 ガラスペンの入ったカゴをおりょうさんに任せ、俺は和紙の箱を抱えてレジに向かった。



「さて、と。まだちょっと夕食には早い時間ですね。おりょうさん、頼華ちゃん、まだ見たい物とかあります? それともお茶でも飲みますか?」


 昼の混雑を避ける為に、ホットケーキの店に入ったのが正午よりも前だったので、色々と見物して回ったのだが、まだ夕食にはかなり早い時間だ。


「あたしゃさっきの店で、色んな服に目移りしちまったんで、見物の方はもういいよ」

「兄上。良ければ何か、こちらの世界ならではの物でも経験出来ませんか?」

「こっちの世界ならでは、ねぇ……」


(向こうの世界に無いって考えると、カラオケとかビリヤードとか、かな? でもなぁ……)


 カラオケは知っている歌が無ければ話にならないし、ビリヤードの場合は頼華ちゃんの身長では、台の高さが問題になってプレイに支障が出そうだ。


(後はダーツとか……ん? そういえば、電車の窓から見える店があったな)


「おりょうさん、頼華ちゃん、軽い運動的に遊べる場所があるんですけど、そこでいいですか?」

「あたしゃ構わないけど、難しくは無いのかい?」

「大丈夫ですよ。慣れれば難しくは無いですから」

「では、参りましょう!」

「っと、その前に、荷物を仕舞っちゃおうね」


 意気揚々と歩き出そうとした頼華ちゃんを止めて、狭い路地を少し入って人影が無いのを確認してから、それぞれが手に持った荷物をドラウプニールに収納した。


「良太。その場所は遠いのかい?」

「いえいえ。すぐそこです」


 俺達は手芸用品の店から歩いて一分くらいの場所にある、電車の車窓から良く見て存在だけは知っていた、ボウリング場に入った。



「むむ……兄上。このぼーるというのは、重さは問題にならないのですが、指が上手く入りません」

「穴の位置ばっかりはどうにもならないから、軽くて指を入れ易いのを選ぶしか無いなぁ」


 土曜日限定でボウリング三ゲームと貸し靴の安いセットが有ったので、早速料金を支払って各自のサイズの靴を選び、台に置いてあるボールを選ぶところで問題が発生した。


 向こうの世界とは違う身体ではあるのだが、概ね同じ能力を発揮出来る頼華ちゃんにとっては、大人の男性が使う一番重い十五ポンドのボールでも、軽々と扱えるのだ。


 しかし、十五ポンドのボールはそれなりに手の大きな人用になっているので、指を入れる穴の間隔が広過ぎて、頼華ちゃんの手にはサイズが合わないのだった。


「むぅ……どうも手に合った玉ですと、頼りない重さなのですが」

「……念の為に言っておくけど、転がすのであって、投げて直撃させる遊びじゃ無いからね?」

「そうなのですか!?」


(あ、危なかった……)


 一応は最初に手本を見せるつもりではあったのだが、心底から意外そうな顔をする頼華ちゃんは、レーンの奥の並んでいるピンに向けて、ボール投げつけるんだと本気で思っていたようだ。


「あたしゃ、これにしておこうかねぇ」


 おりょうさんは、女性向けとしては重めの十三ポンドの、ピンクのマーブル模様のボールを選んだ。


「仕方がありません。余はこれを」


 頼華ちゃんは子供用の中で一番重い八ポンドのグリーンのボールを、渋々ながら選んだ。


「それじゃ投げ方と、簡単にルールの説明をしますね」


 俺は投球フォームやレーンの入り口にあるラインをはみ出してはいけない事、一投して残りのピンがある場合にはもう一投する事などを簡単に説明した。


「慣れてきたら、離す時に少し捻りを加えて、先頭のピンに斜めに当たるようにすると、ストライクって言う、一度に全部のピンを倒すのがやり易くなるんですけど、最初の内は真っ直ぐに投げて斜めの角度で当たるようにするといいかな?」


 この辺はレーンのコンディションにもよるので、後は実際に投げてみて確認するしか無い。


「じゃあ、先ずは俺が投げてみせますから」

「わかったよ」

「兄上! 御武運を!」


 背中に受ける期待の視線と言葉が少し痛い気がするが、軽く深呼吸をしてから、ボールの重さと遠心力に逆らわず、特に変化を心掛けないでボールを投じた。


「あはっ! 凄い凄い!」

「兄上! お見事です!」


 以前にやってからどれくらいの期間が空いているか忘れてしまったが、実に久しぶりのボウリングで、二人の前でお手本になるようなストライクを取る事が出来た。


「そうだ。後ですね、今みたいなストライクや、スペアっていう二投して全部ピンを倒したら、こう上げた手を合わせて、相手を祝福するんですよ」

「そうなのかい? そいじゃ、おめでとう、良太」

「おめでとうございます、兄上!」

「二人共ありがとう」


 俺が教えたハイタッチを、快く二人共やってくれた。


「さあ、次はおりょうさんの番ですよ」

「う、上手く出来るかねぇ」

「おりょうさんなら、大丈夫ですよ」

「姉上! 御武運を!」

「う、うん……」


 全身に緊張を漲らせながら、ボールを持ったおりょうさんがレーンの前に立った。


「えいっ!」


 ゴンッ!

 

 可愛らしい気合の声と共におりょうさんが投じたボールは、離すタイミングが早かったので、大きな音を立ててレーンの入口付近に叩きつけられた。


「ああー……上手く行かないもんだねぇ」


 辛うじて左端のピンを一本だけ倒して、おりょうさんが投じたボールはレーンの奥に吸い込まれた。


「最後の段階で、レーンに滑らせるみたいな感じで手を離すといいですよ」

「そうかい?  そいじゃ試してみるよ。えいやっ!」


 幾らかフォームと投球タイミングを修正したおりょうさんの二投目は、レーンの中央を通り抜けて五本を倒した。


「では、次は余の番ですね! ていっ!」


 ゴットン!


 おりょうさんの一投目とは逆に、離すタイミングが遅かった頼華ちゃんのボールは、三メートル程宙を舞ってから一度大きくバウンドすると、そのままピンを三本薙ぎ倒した。


「頼華ちゃん、そんなに力まないで、レーンの奥を見ながら転がす感じでいいからね」

「わかりました! とうっ!」


 転がすようにという言葉で、前に押し出すような動作が無くなったからか、頼華ちゃんの二投目は速度は遅かったが、斜めに理想的なコースを通ってピンを倒したが、惜しくも一本残った。


「この一ゲーム目で投げ方とか転がす軌道を掴んで、二ゲーム目からは慎重に投げていきましょう」

「わかったよ」

「わかりました!」


 俺が次の投球をする為にレーンに立つと、背中におりょうさんと頼華ちゃんからの、さっき以上の鋭い視線が送られてくるのを感じる。



「おい。凄いな、あのレーン」

「あんな小さな女の子まで、パーフェクト?」

「それにしても美人だな!」

「あの小さな女の子も、凄く可愛いよね」


 気がつくと俺達のレーンの隣や背後に、ギャラリーが鈴なりだ。


 理由は、一ゲーム目ですっかりボーリングに慣れてレーンの特性も掴んだ俺達が、二ゲーム目からパーフェクトを続けているからだ。


 おりょうさんと頼華ちゃんは、一ゲーム目は完全に試行錯誤と割り切って投げたので、ストライクどころかスペアが精一杯で、トータルで百を少し超えるくらいのスコアだった。


 しかし完全にコツを掴んだ二ゲーム目からは、おりょうさんは一投目からゆるく弧を描く投法までを織り交ぜ、頼華ちゃんは直球オンリーだが絶妙のコースに投じて、ストライクを量産していった。


 俺の方は一ゲームの五フレーム目には以前の感覚を取り戻せたので、以降はほぼストライクだけで、トータルは百五十を超えた。


 二ゲーム目からはおりょうさんと頼華ちゃんと同じく連続ストライクを続け、後は三ゲーム目の十フレームを残すのみだ。


「「「……」」」


 周囲のギャラリーからは緊張感は伝わってくるが、邪魔をしてはいけないと思っているのだろう、遠くのレーンでのゲームをする音以外は、周囲は静まり返っている。


「……よし」


 最後の投球を終えた俺は、手を離れたボールがピンに到達する前にストライクを確信して、小さく声を出した。


「「「おぉーっ!」」」


 狙い違わずストライクを取れた俺に、ギャラリーから歓声と共に拍手が起こった。


「良太、やったね!」

「やりましたね、兄上!」

「ありがとうございます」


 おりょうさんと頼華ちゃんにハイタッチで迎えられ、やっと緊張感から解き放たれた。


「それじゃおりょうさんも、綺麗に締めくくって下さいね」

「ま、なるようになるさね」


 俺とは違ってプレッシャーなど掛かっていないのか、艶やかに微笑んだおりょうさんは、優雅な歩き方でレーンの前に進むと、ほぼ予備動作の無いままに投球した。


「「「おおおーっ!」」」


 美人ボウラーの優雅ささえ感じる投球動作からの見事なストライクに、周囲は大盛り上がりだが、当のおりょうさんは俺と頼華ちゃんに向かって苦笑すると、その後はなんでも無いかのように二度のストライクで締めくくった。


「最後は頼華ちゃんだね」

「はい! 殿(しんがり)はお任せ下さい!」

殿(しんがり)って……まあ、遊びなんだから気楽にね」


 余裕の笑顔の頼華ちゃんは、お手本のように右方向、左方向からピンに進入する軌道での投球でストライクを取り、最後はスプリットになり易いので良く無いと言われている、正面からの真っ直ぐな投球でストライクを取って見せてギャラリーを沸かせた。



「中々面白かったですが、コツを掴めば後はただ投げるだけでしたね!」

「本当なら、そう思い取りには行かないもんなんだけどね」


 頼華ちゃんは何でも無いように言うが、人間の身体というのは本来は、思い通りには動かない物だ。


 しかし、向こうの世界で再構築された身体は、殆ど思い描いた通りに動かす事が出来たし、(エーテル)が鍛えられた効果なのか、こっちの世界に戻ってからも自由自在になっている。


 頼華ちゃんやおりょうさんの場合は生来の物なのか、それともこっちに来てからの事なのかは不明だが、どうやら俺と同じく、考えた通りに身体を動かすのが可能のようだ。


「良太。さっきちっと話が出たけど、今日の晩飯は外食かい?」

「ええ。少し歩きますけど、いい店があるので」

「そいつは楽しみだねぇ。久々に家事以外で身体を動かしたんで、少し腹が減ったよ」

「余も、いい具合にお腹が減りましたので、楽しみです!」


(まあ今日の昼は、軽いと言えば軽かったからな)


 味が良かったので、昼のホットケーキは非常に満足感が高かったのだが、分量自体は決して多くは無かった。


 だからなのか、頼華ちゃんだけでは無く、珍しくおりょうさんまでが空腹を訴えている。

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