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食べ放題

「……おりょうさん、どうします?」


 頼華ちゃんは既にその気になっているみたいだが、財布の紐はおりょうさんが握っている。


「そうだねぇ。ちと時間は早いけど、結構歩き回ったし、いいんじゃないのかい」


 おりょうさんにそう言われて時間を確認すると、十七時は回っているので確かに少し早いが、早過ぎるといういう程でも無い。


「ありがとうございます、姉上! では兄上、行きましょう!」

「おっと。頼華ちゃん、ちょっと待った」


 今日一番のいい笑顔をした頼華ちゃんは、おりょうさんに礼の言葉を述べると店にダッシュしようとしたが、俺が背後から肩を掴んで止めた。


「むぅ……最近の兄上は、余にお預けを食らわせる事が多過ぎです!」

「そういうつもりは無いんだけどね……」


 大きく抵抗はしないが、振り返った頼華ちゃんは恨みがましい表情で俺を見てくる。


「……周囲に人がいないから、その袋を腕輪(ドラウプニール)に仕舞っちゃいな」


 俺は両手で肩を掴んだまま、頼華ちゃんの耳元に顔を寄せて囁いた。


 袋の重量の方は頼華ちゃんにとっては問題にならないのだが、明らかに邪魔になっていたし、持って帰る間に溶けてしまってもと思っていたのだ。


「あ! そ、そうですね……ありがとうございます」


 俺が落ち着きを取り戻させる為とかに止めたのでは無いと理解した頼華ちゃんは、確かに周囲に人の気配が無くなったというのを感じ取り、素早くドラウプニールにチョコレートが詰まった袋を収納した。


「駅に近いのに、急に人がいなくなるんだねぇ」

「さっきまで歩いてたアメ横とか近くの大きい通りとかは、人が途切れないんですけどね」


 いまいる場所は、アメ横からも御徒町駅の改札がある辺りからも遠く無く、店なども立ち並んでいるのだが、場所的には裏通りになるので、タイミングによってはぽっかりと人がいなくなる事があるのだ。


「兄上! お陰様で万全の状態になりました!」

「そ、そう……」


 お洒落な格好をしているけど、中身はいつも通りの頼華ちゃんだった。



「それじゃあ……ステーキを四種類と、お好み焼きのミックスと、海鮮の焼きそばを」


 二人にも相談した上で二番目の食べ放題のコースを利用するのを店員に告げ、最初のオーダーをした。


「お飲み物は如何しましょう?」

「えっと……ソフトドリンクのドリンクバーを」


 アルコールの飲み放題もあるのだが、ここでもおりょうさんには我慢をして貰うしか無い。


「かしこまりました。それではドリンクバーの方は、ご自由にお使い下さい。ラストオーダーは二十分前になります」


 四人掛けの席に、金属のコテと各自の分の皿と紙ナプキンを置き、備え付けの鉄板に火を入れて説明を終えた女性の店員は、一礼して去っていった。


「兄上、どりんくばーというのは?」

「ああ、初めてだったね。あそこの一角にある機械から、色んな飲み物を好きに注いで飲んでいいんだよ」

「なんと! 食べ放題だけでは無く、飲み物までも!?」

「そういう事だね。おりょうさんも、最初は一緒に行きましょうか」

「そうだねぇ」


 店内なので心配無いと思うが、念の為に唯一の貴重品であるおりょうさんのポーチだけを持って、俺達は注文した料理が来る前にドリンクバーに向かった。


「珈琲に緑茶に……この烏龍茶っていうのがこの間、良太が飲ませてくれた奴だね?」

「日本のお茶と同じで種類が幾つもあるので、同じかと言うと微妙なんですが……概ね間違っていません」


 ペットボトルの烏龍茶にしても、各社が独自色を出そうとしているので、家で淹れたのと同じ味を想像したら違っているかもしれないので、念の為におりょうさんには少し曖昧に説明をしておいた。


「まあ多少の違いはあっても、食事には合うだろぉ?」

「そうですね。今日みたいな色んな味の物には、烏龍茶はいいと思います」


 お好み焼きや鉄板焼きやステーキと、和洋が入り交じるところにソース味が入るので、個人的には緑茶とかよりは烏龍茶の方が無難だと思う。


「兄上のそれは?」


 オレンジジュースをグラスに注ぎながら、頼華ちゃんが訊いてきた。


「これ? これはコーラって言って……説明が難しいな。席に戻ったら、少し飲んでみるといいよ」

「はい!」


 ファーストフード以外で、あまり清涼飲料水を食事に合わせる事は普段はしないのだが、今日のようなソース味が中心の食事の内容的だと、炭酸の泡で口の中をさっぱりさせたいと思ったので、かなり久しぶりにゼロカロリーのコーラをセレクトした。


 ゼロカロリーの物にしたのは特にダイエットを気にしているのでは無く、甘過ぎると食事の邪魔になると思ったからだ。



「お待たせ致しました。お好み焼きのミックスと海鮮の焼きそばになります。ステーキの方は、焼いた状態でお持ち致しますので」


 俺達がドリンクバーから戻ったタイミングで、店員が注文した料理を運んできた。


 注文品を置いて店員が去ったので、熱くなってきた鉄板に油を馴染ませてから、お好み焼きの生地と具材を容器の中で掻き混ぜた。


「良太、なんか手伝うかい?」

「ありがとうございます。でも、二人は食べるのに専念してくれていいですよ」

「そ、そうかい?」


 おりょうさんに答えている間に、俺は鉄板にお好み焼きの生地を広げて、コテで軽く形を整えていく。


「そうだ。頼華ちゃん、味見どうぞ」


 まだ口を付けていないコーラの入ったグラスを、頼華ちゃんに差し出した。


「ありがとうございます。では……む? 何やら変わった味ですね。種類の違う柑橘系の香りがするのと、口の中で弾ける感じが面白いですね」

「良く分かるなぁ。後はプリンにも使ってある、砂糖のカラメルが主成分だよ」


 俺も細かくは知らないが、コーラの味の主成分はレモンやオレンジなどの香料とカラメルだ。


 今ではコーラに当たり前のように入っている炭酸だが、これは後から加えられた物らしい。


「良太、あたしも貰っていいかい?」

「どうぞどうぞ」


 頼華ちゃんが飲んでいるのを見て、おりょうさんもコーラに興味を惹かれたらしい。


「ふぅん……頼華ちゃんの言う通り、ちと変わった味だねぇ」

「そのコーラと、お酒を合わせた飲み方っていうのもあるんですよ」


 さすがに世界的なベストセラー商品と言うべきか、コークハイやキューバリブレなど、コーラと各国のスピリッツを合わせたレシピは数多い。


「むぅー……飲ませてくれないのに、良太はそういう事を言うんだからぁ」

「す、すいません……」


(しまった。失言だったな……)


 自分でアルコールを制限してもらっているのに、おりょうさんに酒のウンチクを語るのは残酷な行いだった。


 その報いだろうか、おりょうさんがジト目で俺を見てくる。


「さ、さあ、焼けましたよ。ソースとマヨネーズを掛けましたけど、他にも好きに味付けして食べて下さい」


 場を誤魔化すように、俺は焼き上がってソースとマヨネーズ、青のりと鰹節でデコレートしたお好み焼きをコテで一口大に切り、おりょうさんと頼華ちゃんの方へ寄せた。


「いい香りです! 頂きます!」

「頂きます」


 二人は両手を合わせてから、箸を手に持って自分の皿にお好み焼きを取った。


「んー! 濃い味付けですけど、熱々でおいしいです! このまよねーずで不思議と口がさっぱりしますね!」

「ああ。それはマヨネーズに入ってる酢の所為じゃないかな」


 酢の酸味には口当たりをさっぱりさせてくれて、食欲を増進させる効果があるので、こってりとしたソースとマヨネーズで味付けしてあっても、口が重くならないのだろう。


「頼華ちゃんが言う通りに、濃いから海鮮の味なんかわかんなくなっちまいそうだけど、海老やイカ、それに肉の味もしっかり感じられるんだねぇ。変わった味だけど旨いよ」

「それはたっぷりのキャベツと、出汁の入ってる生地の所為でしょうね」


 キャベツの歯応えと火が通った事による甘み、生地に使われている出汁によって各素材が旨味を高めあっているので、ゴッタ煮的な味にならないのだろう。


「ところで、これが兄上の言っていた、向こうで再現出来なかった調味料という物ですか?」

「ん? どうしてそう思ったの?」


 頼華ちゃんは牛めしの店での会話を覚えていたようだが、あの時は具体的にどういう物とかの話はしていなかったはずだ。


「この料理にきゃべつが使われているので、初めて味わうこのそーすというのが、お話下さった物なのかと思ったのです」


 頼華ちゃんはお好み焼きにキャベツが使われているところから、俺が話した揚げ物と添え物の千切りキャベツに合う調味料というのが、同じ物だと推察したらしい。


「ああ、そんな話もしたね。えっと……系統で言うとそうなんだけど、これは濃度の調整をしてあって、揚げ物に使うのとは違う香辛料なんかも入ってるね」


 市販品のウスター、中濃、とんかつソースは基本的には同じ物で、濃度しか違いが無いらしいのだが、お好み焼き用のソースやとんかつの専門店などで使われている物には、おそらくだが更に香辛料や野菜を追加して調整して、独自色を出しているだろう。


「ほう? 濃度の違いとは面白いですね。その内それを使った物を食べてみたいです!」

「家庭では焼きそばなんかは、そのソースを使う事が多いから、近い内に作ってあげるよ」

「おお! それは楽しみです!」


 頼華ちゃんは期待に瞳を輝かせながら、新たに箸で取ったお好み焼きを頬張った。


「お待たせ致しました。こちらチキン、ポーク、牛、ハンバーグステーキになります」


 お好み焼きを寄せて空いたスペースで焼きそばの具材を炒め始めたところで、表面に焼き色が付けられた四種類のステーキが鉄板に載せられた。


「注文した物は全部来たから、食べながら追加を選んで下さいね」


 焼きそばの面倒を見ながら、ステーキに軽く塩を振ってから切り分けていく。


「塩と胡椒を振ってあるけど、こっちにソース類もありますので。


 鉄板の脇には塩、胡椒などのスパイス類と、バーベキューや和風などのボトル入りの幾つものソースが置いてある。


「ふむ。柔らかくて中々に旨いですが、向こうで食べた鴨や猪と比べると……」

「そりゃあね……」


 天然物は個体差も大きいのだが、運動量の違いから味には深みがある。


「でも、これくらいの肉が安定して食べられるんだろぉ? そう考えると大したもんだねぇ」

「そうですね」


 野生の鴨も猪も鹿もおいしいのだが、食べられる肉の状態になるまでには相当な労力が必要になり、その分が価格になって跳ね返ってくる。


 そう考えると、ブランド和牛や銘柄豚などを別にすると、庶民にも手に入り易い値段で安全な食肉が入手出来るというのは、地味に凄い事なのだというのがわかる。


(鰻も、もう少し庶民的になるといいんだけど……)


 鰻もやっと産卵などに関する研究が進み、完全養殖の目処がついたみたいなので、手軽に食べられるようになる事を祈るばかりである。


「この、そーす味というのは、なんとも例えようが無いですけど、おいしいですね!」

「旨いけど、あたしゃ焼きそばって言うくらいだから、焼いた蕎麦が出てくるのかと思ってたよ」


 焼きそばを箸で摘み上げながら、おりょうさんが苦笑する。


「蕎麦は世界中で食べられてるみたいですから、探せばそういう料理もあるかもしれませんけどね」

「うーん……味付けによっちゃ、旨いのかねぇ? あたしは蕎麦切りに鰹出汁のつゆで食うのが好きだけど」

「それは俺もですよ」


 地勢や標高や気候の関係で、米や麦が育たない場所では、古来から蕎麦の栽培と食事への利用が多かったので、地域によって独特の食べ方が編み出されている。


 粉にした物を薄く延ばして固く焼いたフランスのガレットや、小さなパンケーキ状にしたブリヌイなどのような食べ方が主流だが、これは調理が簡単なのが理由だろう。


 イタリアには日本の蕎麦のように細く延ばしたパスタがあるが、これは小麦が栽培出来なかった地域で蕎麦を材料にした、苦肉の策的に発祥した物のようだ。


「おりょうさん、頼華ちゃん、何か追加で頼みますか?」


 鉄板と皿の状況を見て、二人に訊いてみた。、


「……ぷはぁっ! 兄上、このもんじゃというのは?」


 焼きそばを食べ終わった頼華ちゃんは、オレンジジュースのグラスに手を伸ばして一気に飲み干し、満足そうに一息つくとメニューの内容を俺に確認してきた。


「もんじゃはねぇ……今日はやめておこうか」

「な、何故なのですか!?」


 まさかの俺のダメ出しに、頼華ちゃんが衝撃を受けている。


「ああ、説明が足りなかったね……もんじゃって水分の多い生地を広げて、最後に鉄板に押し付けるよにしながら切り分けて食べるんだけど、焼き上がるのに時間が掛る割には、少しの間しかお腹を満たせないんだよ」


 焼く前の状態のもんじゃを見ると、ほぼ出汁だというのがわかる。


 そういう食べ物なので、個人的にはおやつ感覚であり、食事にはならないという認識だ。


「そ、そうでしたか。ではこの、牛すじ入りのお好み焼きというのを」

「あたしは海鮮の乳酪(バター)焼きってのが食ってみたいねぇ。あとこの、しーざーさらだってのを」

「いいですね。あとはステーキじゃない肉の、鉄板焼きも頼みましょうか」


 俺は席に備え付けのボタンで店員を呼んで、オーダーを伝えた。


「おりょうさん、頼華ちゃん、何か飲み物を注いできましょうか?」


 気がつけば自分のだけでは無く、二人のグラスも空になっていたので、俺は腰を浮かせた。


「有り難いんだけど、良太も焼いてばっかりいないで、少しは落ち着いて食いな」

「そうですよ! 兄上は焼いているばかっりではないですか!」

「あ……」


 焼く作業が楽しくなっていて、合間に水分補給にコーラを飲む以外には、軽く味見程度にしか料理に手を付けていないのを、二人に指摘されるまで気が付かなかった。


「さあ、兄上もお好み焼きと、すてーきを!」

「良太、牛も豚も食いな」

「は、はい……」


 ステーキが少し焼け過ぎで固くなっていたが、俺は二人の好意を有り難く受けて箸を手に取った。



「兄上! この、ぱんけーきの果物添えを、もう一つ追加でお願いします!」

「まだ食べるんだ……」


 あの後、豚玉のお好み焼き、キムチ入り焼きそば、鶏のチーズ焼き、トッピングの違うパンケーキを四種類食べ終わってからの、まさかの頼華ちゃんからの追加の要請である。


「あたしゃ、もう食えないよ……」


 普通の姿勢で座っているのがきついのか、おりょうさんは椅子に背を預けながらアイスコーヒーを飲んで一息ついている。


「……この珈琲も悪くは無いんだけど、良太の家で飲んだ方が旨いねぇ」


 パンケーキをひっくり返している俺に、おりょうさんがチラッと視線を送ってきながら呟いた。


「それなら、帰ってから淹れますよ。お好みの飲み方があったら言って下さい」

「そうかい? すまないねぇ。家に帰るまでに考えとくよ」


 そう言いながらおりょうさんは、笑みを深めた。



「うう……最後の追加が余計でした」

「良く食べたねぇ……」


 会計を済ませて店を出ると、頼華ちゃんはダメ押しのパンケーキが効いてきたのか、お腹の辺りを手で押さえながら胸を反らし、圧迫感を幾らかでも緩和しようとしている。


 おりょうさんの方は早めに一息ついたのと、コーヒーで消化を促進されたのか、今はそれ程苦しそうにはしていない。


「頼華ちゃん、苦しいんならこのまま帰ってもいいけど? それともどっかで休憩する?」


 腹ごなしに歩く方がいいのか、それとも休憩した方がいいのかは本人にしかわからないので、頼華ちゃんに訊いてみた。


「だ、大丈夫です! 武器を扱っているという店に行きましょう!」

「そう? 無理そうなら早めに言うんだよ?」

「はい!」


 微かに食事の名残のソースの香りを纏いながら、頼華ちゃんが手を繋いできた。


「良太、その店は遠いのかい?」


 おりょうさんも、ごく自然な感じに俺に腕を絡めてきた。


「ここからだと……歩いて十五分くらいですね」

「ならまあ、大丈夫かねぇ」

「途中に立ち寄れる飲み物とかを出す店もあるので、のんびり行きましょう」


 頼華ちゃんがこれ以上苦しがったり、気分が悪くなったりしても、コーヒーショップやファーストフードの店などもあるので、いざとなれば休憩を入れればいい。


「兄上、姉上、そんなに心配なさらなくても、一時間もすれば何か食べられるくらいには回復しますので!」

「まだ食べる気なんだ……」

「あはは……」


 頼華ちゃんの食への飽くなき探究に、俺は呆れ、おりょうさんは乾いた笑いを浮かべた。



「おおお! これはなんとも壮観な!」

「頼華ちゃん、他のお客さんもいるからね?」


 御徒町から電車の高架沿いに歩き、途中で秋葉原の中央通りに出てから暫く歩くと目的地に到着した。


 中央通りに面したビルのワンフロアにある、様々な武器を扱っている店に入ると、お腹の苦しいのなど吹き飛んでしまったらしい頼華ちゃんが歓声を上げた。


「へぇ……実用品ばっかりじゃ無いみたいだけど、それでもいっぱい扱ってるんだねぇ」


 頼華ちゃんのように歓声を上げたりはしないが、おりょうさんも店内に陳列されている様々なアイテムを、興味深そうに眺めている。


「兄上。この弓に付いている、妙な車はなんですか?」


 弓の名手でもある頼華ちゃんは、やはり弓やクロスボウに興味があるらしく、様々な種類が置いてある中でも、知らないパーツが付いている複合弓(コンパウンドボウ)の一部を指差している。


「妙な車? ああ、滑車だね。それが動く事によって引く力を軽減して、通常よりも強い威力で矢を発射出来るんだよ」


 滑車(カム)の形状や大きさによって、通常では引けないような張力のある弓を楽に引けるようにしたのが複合弓(コンパウンドボウ)だ。


 向こうの世界でエルフのレンノールが作ってくれた合成弓(コンポジットボウ)と名称が似ているが、あれは複数の素材の組み合わせによって反発力を高めた物だ。


「ほほぅ……あれ? こういう弓があるのをご存知でしたら、何故に向こうでは提案なさらなかったのですか?」

「ああ、それはね。この滑車の部分を上手く応用出来る知識が俺に無かったのと、俺達みたいに特殊な収容方法を持っていないと、強い反発力で弓に負担が掛かって、すぐに駄目になっちゃうからなんだよ」


 複合弓(コンパウンドボウ)の原理的な物は知っていたのだが、大きさや形状を計算して再現出来る程には、俺の数学的な知識が高くないのが、提案しなかった主な理由だ。


 そして複合弓(コンパウンドボウ)の特徴的な滑車に、交差させるように掛けられている弓弦は、一度張ってしまうと取り外しが面倒であり、それなのに強力なテンションを発揮し続けるので外すか緩めておかなければ、本体にダメージが掛かってしまうのだ。

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