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アフォガード

「ふぅ……おりょうさん、頼華ちゃん、俺はちょっと買い物に行ってきますね」


 自宅に戻って、スーツケースを六畳間に運び込んでから、俺は二人に断って出掛けようとした。


「ん? 夕飯は済んだのに、まだなんか買うもんがあるのかい?」


 スーツケースから中身を取り出していたおりょうさんが、手を止めて俺の方に振り返った。


「今日の分じゃなくて、明日の朝食を仕込んじゃおうかと思いまして」

「明日の朝は、飯を炊かないのかい?」

「ええ。昨日、今日と和風……でも無いか」


 今日の昼は主食は御飯だったが、おりょうさんはチキンのチリソースだったし、夕食は回転寿司だったが、おりょうさんも頼華ちゃんもラーメンを注文していたので、和食だったとは言い難いかもしれない。


「それは置いておいて……明日の昼は和食の予定ですから、朝は洋風にしようかと思って」


 別に和風の朝食でも構わないのだが、こっちの世界での俺の普段の朝食はそれ程凝っていないので、楽をする為に夜の内に仕込んでおこうと思っただけだったりする。


 これから仕込む予定のメニューは朝になって火を通せば出来上がりで、後は飲み物でも付ければそれなりの体裁になるのだ。


「なら、あたしも一緒に行くよ」

「余も行きます!」

「二人は休んでてもいいんですよ? 風呂にも入りたいでしょうし」


 食事や休憩を挟みながらだったが、朝から歩きっ放しで幾つも店を回ったので二人共疲れているだろうし、早く汗も流したいだろう。


「まだこっちの世界の買い物に慣れてないし、良太が何を買うのかも気になるんだよ」

「そんなに変な物は買わないんですけどね……っと、俺が買って一緒に入れておいた荷物があるのを忘れてましたね。失礼」


 おりょうさんと頼華ちゃんのスーツケースの中に、俺がショッピングモールで買って入れてあった物が見えたので、一言断りを入れてから手に取った。


「そいつは何を買ったんだい?」

「それは後でのお楽しみです」

「そうかい?」


 ちょっと誤魔化すように言ったが、おりょうさんはそれ以上追求して来ようとはしなかった。


「では参りましょうか!」

「行くけど……今日はお菓子は買わないよ?」

「兄上、余はいつもいつもお菓子をねだるように思われているのですか!?」


 心外だと言わんばかりに、頼華ちゃんが頬を膨らませる。


「違ったんなら謝るけど……どうなの?」

「そ、その、少しだけ……」

「ははは……」


 俺が軽く質問してみると、頼華ちゃんは頬を染めて視線を逸した。



 買い物して帰ってきてから、今日も俺が先に入浴をして、入れ替わりに二人が入浴になった。


「ねえねえ、良太」

「上がりましたか?」


 風呂上がりに冷たい物をと思って用意していた俺に、おりょうさんから声が掛けられたので振り返った。


「……な、なんて格好してるんですか!?」


 振り返った俺の視界に入ったのは、湯上がりで少し髪の毛がしっとりとしている、下着姿のおりょうさんと頼華ちゃんだった。


「なんて格好って……かなり念入りに店で選んだんだけど、似合わないかい?」

「似合いませんか?」

「そりゃ、似合うかどうかって事なら、似合ってますけど……」


(やっぱり女性専用の店で作られた物は、俺が向こうで作ったのとは違うな)


 あまりジロジロと見るのは二人に失礼になると思って、さっと目を逸らしたのだが、俺の目には二人の下着姿が焼き付いていた。


 おりょうさんが着けているのは淡いブルーの、レースで花の柄を作ってフリルで縁取られた、上下、そしてガーターベルトまでセットになった物で、落ち着きがありながらもアダルトなデザインの物だ。


 頼華ちゃんが着けているのは、黒地にピンクのボーダー柄の上下セットの物なのだが、動き易さを重視したのか、ブラジャーは向こうの世界で使っていたような、タンクトップの下側を切り取ったようなスポーティーな感じだ。


「せっかく良太に見せる為に着けたんだから、もっと見ておくれよ」

「そうです!」

「そう言われても……」


 自分の感覚では、女性の下着姿を見るのは失礼になると思っているのだが、許可が出ているのだから……とか、そう簡単に切り替えられる物では無い。


「おお! そういえばこのすまーとふぉんというのには、かめらという機能もあるのでしたね!」

「えっ!? ま、まさか……」


 何か頼華ちゃんが恐ろしい事を言い出しそうな予感がしたが、今のところ振り返る事も近づいて阻止する事も出来ないので、言葉の続きを待つしか無かった。


「兄上! 待受画面とかいうのに、姉上と余をお使い下さい!」

「や、やっぱり……」


 予想通りの頼華ちゃんの言葉と共に、視界内に俺のスマートフォンが差し出された。


「いや、おりょうさんも頼華ちゃんも、待受画面になんか使われたら恥ずかしいですよね?」

「は、恥ずかしいけど、いつも良太に見て貰えるんだと思ったら……我慢出来るよ」

「勿論、余もです!」

「ええー……」


(二人共、本当にどういう事なのかわかってるのかなぁ……)


 こっちの世界に来る際に入力された情報で、写真がどういう物なのかは知っていると思うのだが、それを待受画面にするという事の意味が理解されているのかが怪しい。


「えーっと……とりあえすこれが、今の俺の待受画面ですけど」


 俺は二人に、スリープモードから立ち上げたスマートフォンの待受画面に使われている、プレイしているネットゲームのシンボルとも言える、文字の彫り込まれた伝説の指輪のグラフィックを見せた。


「通話とかメールの着信があると、ここにおりょうさんと頼華ちゃんの、その……今の格好が出るんですけど、本当にそれでいいんですか?」

「う……」

「む……」


 再度の確認をすると、おりょうさんも頼華ちゃんも言葉に詰まった。


「あ、あたしは……いいよ」

「……え?」

「余は既に、覚悟を決めております!」

「覚悟するような事なら、やめた方がいいと思うんだけどなぁ……」


 おりょうさんからは強気な姿勢は消えているのだが、頼華ちゃんと同様に引く気は無さそうだ。


「ささ、兄上。余はまだ貧相ではありますが、姉上の神仏が形作ったようなお身体は、正に人に見られる為の物です!」

「人に見られる為って……」


(まあ、確かにおりょうさんの身体……だけじゃないけど、綺麗だよな。頼華ちゃんだって自分で言うような、貧相って事なんか無いし)


 何度も一緒に入浴した際に見たおりょうさんの肢体は、しなやかさの中に柔らかさと丸みがあり、西洋人のように胴が短くて手足が長い割には、東洋人特有の撫で肩で腰回りも優美な曲線を描いているのだ。


 頼華ちゃんの方は純粋に発展途上なので全体的に小柄で硬さもあるが、鍛えられて引き締まったウェストのお蔭で、胸もお尻も同年代の女の子と比べれば豊かに見える。


「はぁ……それじゃ二人共、そこで並んで下さい」


 俺が写真を撮るまでは収まりそうも無いので、諦めてスマートフォンのカメラを起動した。


(と言っても、おりょうさんと頼華ちゃんじゃ身長差があるから、どうしたもんかな……)


 俺と頼華ちゃん程では無いにしても、おりょうさんとでも頭一つ分近くは身長差があるので、ファインダー内のバランスを考えると中々難しい。


「そうだ。二人でソファーに並んで座って下さい」


 座っても高低差はあるのだが、立っている状態よりはマシだと思ったので、おりょうさんと頼華ちゃんをローソファーの方へ促した。


「んー……おりょうさんが、頼華ちゃんの方へ少し頭を傾けて貰えますか」

「こうかい?」

「ええ、それで。頼華ちゃんの方も、おりょうさんに少し頭を預ける感じで」

「これでいいですか?」

「うん」


 俺のスマートフォンの画面には、やや緊張気味だが、仲良く寄り添っている二人の姿が映っている。


「ちょっと硬い感じですね……もう少し笑顔でお願いします」


 最初は乗り気じゃなかった俺だが、どうせならいい写真を撮りたいと思ったので、二人に注文をつけた。


「そ、そんな事言われても……」

「急に笑顔と言われましても、難しいですよ」


 俺の言葉で二人共、硬い表情から困り顔になってしまった。


(うーん……どうしたもんかな)


「あ、そうだ」

「「?」」


 俺の呟きに、おりょうさんと頼華ちゃんは首を傾げた。


「おりょうさん。この後で出すお菓子には、昨日の夜のとは違う香り付けを用意してあるんですよ」

「ほ、本当かい!?」

「ええ」

「うふふ♪」


 昨日の夜のブランデーが余程お気に召したのか、期待感からおりょうさんが顔を綻ばせた。


「頼華ちゃん。これが終わったら、アイスクリームに一工夫したお菓子がお待ちかねだよ」

「あいすくりーむ! で、では早く終わらせましょう! むふふ♪」


(二人揃って、すっごくいい笑顔だな)


 上手い具合に誘導が成功して、超いい笑顔になった二人を、俺は写真に撮った。


「二人共お疲れ様」

「終わったのかい? そいじゃ良太、早くぅ」

「兄上! 早くあいすくりーむを!」

「はいはい。わかったから、ちゃんと服を着て下さいね」


 俺は苦笑しながら、中断していた作業をキッチンで再開した。



「お待ち遠様です」

「これは……あいすくりーむだけ?」

「兄上、これが一工夫なのですか?」


 俺がトレーから下ろした、ガラスの器に盛り付けられているだけのアイスクリームを見て、おりょうさんも頼華ちゃんも訝しげに問い質してくる。


「これから仕上げをするので、少しお待ちを」


 俺はキッチンに行き、ガスコンロに掛けてあった小さなヤカンのような器具を持って、二人が座っているリビングに戻った。


「これを、こうして……」

「ええっ!? 熱い珈琲を掛けちゃうのかい!?」


 変わった形の器具から注がれる湯気の上がる液体が、昼に飲んだ物と同じ風味だったので、おりょうさんはコーヒーだとわかったようだ。


「あああ……そんな、あいすくりーむが溶けてしまって」


 表面が溶けて流れ出したアイスクリームを見て、頼華ちゃんが絶望的な表情をしている。


「兄上! これは姉上と余への、何かの罰なのですか!?」

「そうじゃ無くって、これはこういう食べ方なんだよ」

「「ええっ!?」」


 信じられないと言わんばかりに、おりょうさんと頼華ちゃんの目が見開かれた。


(まあ、目の前の状況を見たら、信じ難いのかなぁ……)


 確かに予備知識が無ければ、冷たいアイスクリームにマキネッタで抽出した熱いエスプレッソコーヒーを注ぐというのは、暴挙に見えるかもしれない。


「ここに更に……」

「ん? さっき言ってた香り付けかい?」

「ええ。頼華ちゃんの方は量を少なめ」


 来客用の小さなミルクピッチャーに注いだ、香り付けのスコッチウイスキーを、頼華ちゃんの器にはほんの少し、残りをおりょうさんの器のアイスクリームに振り掛けた。


「最後の仕上げに」

「な!? ここで更に火を!?」


 こっちの世界に来ても能力は失われていないので、俺は指先からごく小さな炎を出して、頼華ちゃんのデザートに振り掛けたウイスキーに火を点けてフランベした。


「おりょうさんは、そのままでどうぞ」

「そ、そうかい?」

「ううう……勿体無いから食べますが」


 おりょうさんも頼華ちゃんも、物凄く困った表情でスプーンを手に取った。


「……あ、あれ? 意外に中まで溶けて無いんだねぇ? それにこの、珈琲と香り付けの酒と一緒になった部分を口に入れると、今までに嗅いだ事の無いような風味が」

「む? こ、これは!? 温かい苦さの中から、冷たく甘い味が!? この溶けてしまった甘い部分が、苦いのと混じり合って不思議な味と舌触りになって……」


 一通り、エスプレッソ掛けのアイスクリーム、アフォガートの味を評し終えると、二人してスプーンを咥えたまま目を瞑って黙り込んでしまった。


(一時はどうなるかと思ったけど、どうやらお気に召して貰えたみたいだな)


 マキネッタに残ったエスプレッソを、小さなデミタスカップに注いで味わいながら、俺は内心でホッとしていた。


 昼間にコーヒーを飲んでいたおりょうさんはともかく、頼華ちゃんには苦味の強いスマトラのマンデリンのエスプレッソは、口に合わないかと思ったからだ。


 母親のお茶好きと対を成すように、父親がコーヒー好きなので、エスプレッソメーカーとも呼ばれるマキネッタなんかも家にあるのだ。


 コーヒー豆に関しては、焙煎してからは時間の経過と共に酸化して風味が落ちていくので、冷凍庫で保存してあった分は好きに飲んでもいいと父親から言われている。


(ウィスキーも、おりょうさんの好みに合ったみたいで良かったな)


 さすがに父親のブランデーを頻繁に使うと、量の減少に気づかれてしまうので、二人が買い物をしている間に家電量販店の酒類のコーナーで買ってきたのだが、自分で飲んだ事が無いのでどれにすればいいのかと相当に頭を悩ませた。


 結論として、読んだ事のあるBARを舞台にした漫画に出ていたスコッチウィスキーにしたのだが、作中で使われていた二十一年物が高かったので、同じスコッチウィスキーの十二年物を選んだ。


 九年間の熟成期間の差がどれくらいなのか不明だが、どうやらおりょうさんの口に合ったようなので作者の方に感謝だ。


「この香り付けぇ、すっごく芳醇で複雑でぇ……はぁぁぁぁ、幸せぇ」

「そ、そんなにですか?」


 目尻を下げ、蕩けるような笑顔のおりょうさんは、熱い吐息を漏らしながら呟いた。


「うん! 良太、大好き♪」

「お、おりょうさん!?」


(酔っ払ってるのかな?)


 向こうの世界では酒で陽気になっても、おりょうさんが乱れた姿は見た事が無いので、機嫌の良い猫のように、俺にもたれ掛かりながら頬を擦り付けてくるというのは珍しい。


「む? 兄上は珈琲だけなのですか?」


 今更といえば今更なのだが、頼華ちゃんは俺がアイスクリームを食べずに、小さなカップを傾けているのに気がついた。


「ん? ああ、家族用みたいな大きなアイスクリームを、買ってこなかったからね」


 買ってきたのは、一人分ならばネーミングの通りにスーパーな大きさのカップアイスなのだが、一人一カップでは多過ぎな気がしたので、自分の分は考えないでおりょうさんと頼華ちゃんで一カップを半分ずつに分けて盛り付けた。


「むぅ……兄上だけ無いというのはお気の毒ですので、一口だけでもどうぞ!」

「そう? ありがとう……って、自分の手で食べるけど?」


 おりょうさんの温もりが気になって、一瞬だが視線を外していた俺の目の前に、頼華ちゃんが持ったスプーンが差し出された。


「今の兄上は姉上に自由を奪われておるのですから、そう遠慮なさらずに」

「遠慮はしてないんだけど……」


(確かに、自由は奪われてるな……)


 左腕はおりょうさんにガッチリ抱え込まれているし、右手にはデミタスカップを持っているので頼華ちゃんの言う通りに、確かに自由は奪われていると言える。


 しかし、カップを置けばいいだけの話なのだが、頼華ちゃんが自分の身体の位置を割り込ませて、俺がローテーブルに手を伸ばそうとするのを巧みにブロックしてくる。


「……わかったよ。あーん」

「はい、どうぞ♪」


 俺が観念すると、頼華ちゃんは満面の笑顔でスプーンを口に運んでくれた。


(ん……成る程。普通の生活では味わえない風味だな)


 バニラ風味のアイスにエスプレッソとスコッチウイスキーの渾然一体とした風味は複雑であり、味わわずに済まそうとしていたが、試食させてくれた頼華ちゃん感謝したくなった。


「ん? おりょうさん、寝ちゃったのかな?」


 俺の腕から肩に掛けて感じる重さがズシッと増したような気がしたので見てみると、おりょうさんが微笑を浮かべたまま目を閉じて、静かに寝息を立てていた。


「今日はいっぱい歩きましたから、お疲れなのでしょう。布団を敷きますね」

「うん。お願い」


 頼華ちゃんと小声で囁き合って申し合わせをした俺は、おりょうさんを起こさないように気をつけながら、お姫様抱っこをして立ち上がった。


(この身体でも疲れるのかな? まあ、眠ってるんだから、眠いか疲れてるかって事なんだろうけど)


 抱き上げたおりょうさんの身体からは、確かな重みと温もりと柔らかさが伝わってくるので、使い捨てらしいが普通の肉体と変わらないように思える。


 だから疲れないと考えるのは早計だし、もしかしたら肉体的には疲れないのかもしれないが、精神の方はそうでは無いかもしれないのだ。



「頼華ちゃんは、まだ眠くないの?」


 おりょうさんを布団に寝かせ、六畳間との仕切りの引き戸を閉めてから、俺と頼華ちゃんはリビングに戻ってきた。


 当然のように頼華ちゃんは、俺の膝の上に自分のポジションを求めてきた。


「はい。珈琲の所為か、まだ眠くありません!」

「そっか」


(頼華ちゃんにコーヒーは、まだ早かったかな?)


 小柄な頼華ちゃんはカフェインの許容量も低いかもしれないし、昼食で入った牛めしの店でも、夕食で入った回転寿司でも、食中や食後に緑茶を飲んでいた。


 そういう意味ではアフォガードを寝る前に食べるのは、良く無かったかもしれない。


 しかし、深煎りの豆を高温で一気に抽出するエスプレッソは、ドリップなどと比べるとカフェインは少ないと言われている。


「あ、そうだ。頼華ちゃんに試してみて欲しい事があったんだ」


 おりょうさん共々、向こうの世界で何度か試してみて欲しいと思っていた事があるのだが、適当な題材が無かったので今日まで持ち越してしまっていたのだ。


 おりょうさんが眠ってしまったのは残念だが、又の機会のお楽しみとしておこう。


「余が何かをするのですか?」

「うん。今日買ったスマートフォンでなんだけどね」

「すまーとふぉんで?」

「うん。っと、その前に、口直しにお茶を淹れようか」


 俺は空いた器などを持ってキッチンに向かった。



「どうぞ」

「ありがとうございます。ん、これもいい香りですね」


 俺が淹れたジャスミン茶の風味に、頼華ちゃんは目を細めた。


「それで、これで何を?」


 俺がお茶を淹れている間に、頼華ちゃんは自分のスマートフォンを用意しておいてくれた。


「大した事じゃ無いんだけど、これで頼華ちゃんに福引みたいな物を試して欲しくってね」

「福引、ですか?」

「うん。ちょっと貸してくれるかな」

「どうぞ」


 頼華ちゃんは小さな手の中にあったスマートフォンを、ローテーブルの上に置いた。


「ネットワークに接続して……ダウンロード開始、っと。ユーザーネームはそのままでいいか」


 自宅内のワイヤレスネットワークに頼華ちゃんのスマートフォンを接続したのを確認してから、とあるアプリのダウンロードそ開始し、終わったところで頼華ちゃんのファーストネームでユーザーネーム登録をした。


「これなんだけどね」

「これは……げーむという奴ですか?」

「うん、そう。これはね……」


 俺は頼華ちゃんに、ゲームの内容を掻い摘んで説明し始めた。

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