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「あの、これって訊いて良い事なのかわからないんですけど……」

「なんでしょうか?」


 ならば訊くなと言われてしまいそうだが、食後のお茶を飲んでいる白面金毛九尾に、思い切って尋ねてみる事にした。


「その子達って、喋る事が出来ないんですか?」


 湯呑を両手で持って、淹れたてのお茶をふーふーしながら冷ましている糸目の女の子達を見ながら、白面金毛九尾と志乃ちゃんに問い掛けた。


「ああ、その事ですか。えっと、わたくしや志乃が長命なのは御存知ですよね?」

「ええ。やっぱりその辺が関係するんですか?」


(志乃ちゃんはわからないけど、白面金毛九尾は八百年くらいは生きてるんだったな)


 この白面金毛九尾の答えは、俺の予想の範囲ではあった。


「この子達は元々が動物の狐とは違って、長い寿命を持っているのですが、まだ百年以上経過していないので、自我や知性が確立されていないのです」

「ちなみにですが、私は百年以上生きておりますので、知性と自我を確立させたのと同時に、尻尾が分かれました」


 白面金毛九尾の言葉を志乃ちゃんが継いで、自分の事を説明してくれた。


「百年以上!?」


 見た目や仕草などが自分より年下っぽいと思っていた志乃ちゃんだが、実はとんでもなくお姉さんだった。


「や、やっぱり驚かれますよね? でもでも、心は乙女のままなのですよ?」

「あ、はい」


(まあ女性はいつまでも、そういうところあるよな)


 志乃ちゃんには生返事をしながら、心の中で一般論を考えた。


「勿論、わたくしも心は乙女のままです!」

「あ、はい」


 巨大な胸を張って白面金毛九尾が自信満々に言い放つので、反論は無理だと悟って大人しく受け入れた。


(まあ玉藻前とは違う存在らしいから、男を(たぶら)かすような事は……してないんだよね?)


 普通に考えてこれだけ見目麗しい女性が、何百年も異性に言い寄られる事が無いとは考え難いのだが、だからといって(たぶら)かすという方向に行くとは限らない。


「と、ところで、猫又や付喪神と似たような感じだと思っていいんでしょうか?」


 頭が混乱し始めたので、話の内容を切り替えた。


「全く同じかと言われますと悩むところですが……概ねはその考え方で間違っていないと思います」


 長く生きた猫も、尻尾が分かれて猫又という妖怪になるという伝承がある。


 無生物でも、百年間の年月を経ると精霊が宿り、人を(たぶら)かす付喪神になると言われている。


(封神演義に登場した王貴人は、月の光を長く浴びた石琵琶が妖怪になったって言うけど、付喪神ってよりは白面金毛九尾の方に近そうだよな)


 王貴人は妲己の妹分として人間に災いを齎した存在なので、一緒にしては白面金毛九尾や志乃ちゃんに悪いが、とりあえず長く生きていたり存在しているだけで、最終的には神秘的な存在に変化するという事みたいだ。


「ちなみにですけど、白面金毛九尾さんはどれくらい生きていらっしゃるんですか」

「もう……女に歳を訊くなんて、野暮な御方」

「す、すいません!」


 妙に艶っぽい表情と声で白面金毛九尾に言われ、反射的に謝った。


(言われてみれば、確かにそうだよな……)


 好奇心が勝って思わず訊いてしまったが、白面金毛九尾の言う通りで、少しデリカシーが足りなかった。


「うふっ。別に構いませんよ。でも歳の所為か千年以上も前の事は、良く思い出せませんで……」

「そ、そうですか……」


(八百年どころか、千年以上も生きているとは……)


 俺の想像を遥かに超えて、白面金毛九尾は長生きだったみたいだ。


「ところで貴方様。わたくしの事は、白面金毛九尾という以外の呼び方を、いい加減になさって下さいませんか?」

「そう言われましても、適当な呼び方が……」


(お(きん)さんとかでいいのかなぁ……お玉さんが使えないとは思わなかったし)


 白面金毛九尾と玉藻前は別の存在だと言われてしまったので、お玉さんとは呼べないのだが、当初はそう呼ぼうかと考えいてたりした。


「んー……白面金毛九尾さんは、仙狐でいいんですよね?」

「わたくし自身がそう名乗った事は無いのですが……そうですね。仙弧とか天狐、神狐などと呼ばれております。いくらなんでも神狐というのは、おこがまし過ぎですが」


(まあ、そりゃそうだよな)


 恐らくは仙弧も天狐も無論は神狐も、自身でそう呼称したのでは無く、見ている側からそういう風に呼ばれたのだろう。


 自身で神狐だなんて名乗っているようなら、それは相当に邪悪な存在なのではなかろうか。


「では、天さんでは? 天気雨を狐の嫁入りというところにも掛けてみました」


 天さんというと、なんとなく頭の中には龍の玉を集める冒険譚や、四人で卓を囲むゲームを主題にした作品のキャラが浮かぶのだが、そこは置いておく。


(お仙さんだと、伊勢の古市の知り合いと被るから、っていうのは内緒だけど……)


 同姓同名なんて山程いるとは思うのだが、積極的に同じ名前にする必要も無いという打算的な理由があるのだが、それは白面金毛九尾改め、天には黙っておく。


「天……」

「あの、お気に召しませんか?」


 目を伏せながら俯いて呟く白面金毛九尾に、不安になって尋ねてみた。


「いいえっ! とっても気に入りましたわ!」

「そ、そうですか?」


 ガバっと顔を上げた白面金毛九尾こと天は、瞳をキラキラさせながら俺に言い放った。


「ええ! わたくしはこれから、天と名乗らせて頂きます! 宜しいですわね、あなた達!?」

「は、はいっ!」

「「……」」


 物凄い勢いで天に言われた志乃ちゃんと糸目の女の子達は、激しく頭を上下させた。


「そ、それじゃあお朝ちゃん。そろそろお風呂に入ろうか?」


 天が妙に熱い視線を送ってくるので、緊急避難的に入浴しようと、お朝ちゃんに声を掛けた。


「はーい! それじゃ夕霧お姉ちゃんも行こ!」

「はぁい……ってぇ、りょ、良太さんと御一緒なんですかぁ!?」

「あー……」


(しまった。買い物と料理の当番以外の説明をしていなかったな……)


 昨日までの頼華ちゃんと黒ちゃんと白ちゃんにも、明日来るおりょうさんにも、俺と子供達と一緒に入浴するとしても特に説明する必要が無いので、夕霧さんの事が頭から抜け落ちていたのだった。


「えっと……俺がお朝ちゃんと入って、その後で夕霧さんが入るようにしますか? 逆でも構わないでけど」


 大地くんに本を読んであげる約束もまだ果たしていないので、むしり夕霧さんとお朝ちゃんが入浴してくれた方が、色々と都合は良かったりする。


「えー……主人と夕霧お姉ちゃんと一緒には、入れないんですか?」

「「う……」」


 多分だが買い物の時点から楽しみにしていたのだろう、お朝ちゃんが俺と夕霧さんをじっと見てくる。


「お朝ちゃん、俺はいいんだけど、夕霧さんにも都合というのがあってね」

「あ、あたしはぁ、大丈夫ですからっ!」

「……え?」


 顔を真赤にして身体を震わせながら、夕霧さんが俺の事を真っ直ぐに見てきた。


「りょ、良太さんとはぁ、一度里で御一緒しましたしぃ……」

「あー……」


(でもあれは、家族風呂みたいな感じだったんじゃ……)


 里の女湯で、周囲に十数人いる状態での入浴というのと、俺とお朝ちゃんと夕霧さんの三人でというのが、同じ条件だとは俺には思えない。


「……じゃあ、行きますか。お朝ちゃんおいで」

「はいっ!」


 ここで時間を掛けても、後々の色々がずれ込むだけなので、お朝ちゃんに声を掛けながら立ち上がった。


「大地くん。悪いけど風呂から出るまで待っててね」

「はい! それじゃ天お姉ちゃん、御本読んで下さい!」


 ちゃんと俺達の会話を聞いていたらしく、大地くんは白面金毛九尾の事をちゃんと天と呼称して、本を持って駆け寄った。


「それじゃあ読んであげましょうかね。貴方様、わたくしが相手をしておりますので、どうぞごゆっくり入浴なさってきて下さいませ」

「♪」


 天の膝の上に乗った大地くんは、巨大な胸をクッション代わりにして頭を預け、御満悦な様子だ。


「それじゃあ、宜しくお願いします」

「……」


 お朝ちゃんの手を引いて歩き出した俺の作務衣の袖を、無言で夕霧さんが摘んで一緒についてくる。


(やっぱりやめたとは言わないか……)


 正直、俺には実害が無いし、お朝ちゃんが三人での入浴を楽しみにしているので、これ以上は何も言わずにおいて、無言で風呂場に向かった。



「お朝ちゃん、痛くないですかぁ?」

「うん! とっても気持ちいい!」


 入浴前の緊張感はどこ吹く風で、夕霧さんはニコニコしながらお朝ちゃんを洗っている。


「ここのお風呂にもぉ、ちゃんと石鹸があるんですねぇ」

「そもそも石鹸は江戸の商人のドランさんと、ここの店主のブルムさんから買った物ですからね」

「そうだったんですかぁ?」


(そういえば夕霧さんには、ブルムさんは名古屋で知り合った商人としか説明して無かったっけ?)


 特に話す事でも無いので、俺の石鹸の仕入先が江戸のドランさんとブルムさんだとは、夕霧さんには知らせていなかったかもしれない。


(……ブルムさんから仕入れられるんだから、米糠とか廃油から石鹸を作る必要は無いのかな? いやいや。


米糠はともかく廃油は、処理するよりは再利用した方がいいし、食器洗いや洗濯なら固形である必要も無い訳で)


 固形石鹸は持ち運びなどには便利だが、液状の洗剤やボディソープなども存在するので、もしかしたら廃油と重曹で作る石鹸が鹸化不良で固形に出来なくても、特に問題は無いのかも知れない。


 俺の好みで一般家庭よりは頻繁に食卓に揚げ物が出る事が多いので、必然的に廃油も多く発生するのだが、今のところはドラウプニールにまとめて貯蔵している状態で、まだまだ容量を圧迫したりはしていないが、いずれはなんとかしなければいけない問題でもあるのだ。


(里に戻ったら、やるだけやってみるか)


 幸いな事に重曹の材料の塩はいっぱいあるので、それ程は失敗を恐れないでも済む。


「綺麗になりましたねぇ。良太さぁん、受け取って下さぁい」


 考え込んでいうる内に、お朝ちゃんはすっかり綺麗に洗われて泡も流された状態になっていて、夕霧さんが背後から抱えあげてバンザイするような格好で、俺が受け取るのを待っていた。


「はい。お朝ちゃん、おいで」

「はい♪」


 お朝ちゃんがしっかり抱きついてきたのを確認してから、ゆっくり腰を下ろして一緒に湯に浸かった。


「ふぁぁぁ……」


 目を閉じたお朝ちゃんは肩まで湯に浸かると、気持ち良さそうに溜め息を漏らした。


(それにしても……)


 当たり前だが全裸の夕霧さんは、お朝ちゃんを俺に手渡すと視界を遮る物が無くなるので、束縛から解き放たれた正に豊満と形容するのに相応しい胸が、重さと柔らかさを誇示しながらプルンと揺れているのが見えるのだった。


「ぷひゅぅ……」

「ん? お朝ちゃん、温まったかな?」

「はい……」


 風呂の湯が少し熱かったのか、少し浸かっただけでお朝ちゃんは真っ赤になっている。


「のぼせちゃうと不味いから、もう上がろうか?」

「はい!」

「それじゃ……って、すっかりいい色になっちゃってるな」


 立ち上がりながら抱えたお朝ちゃんを見ると、元々の肌の色が白い所為もあるが、全身が茹でられたみたいに真っ赤だった。


「お朝ちゃん、頭がボーッとしてたりはしない?」

「はい! 大丈夫です!」


 お朝ちゃんは受け答えもしっかりしているし、表情もにこやかなので、どうやらのぼせる寸前くらいで済んだようだ。


「ブルムさんか天さんに言って、飲み物を用意して貰ってね。なるべく多めに」

「はい!」


 脱衣所まで運んだお朝ちゃんを拭き上げて、衣類を身に着けさせながら話しているが、特に具合が悪そうにはしていない。


「大丈夫そうかな」


 パタパタと脱衣所から出ていきお朝ちゃんを見送ったが、足取りにも危なそうな感じは無い。


 一応、気配を探っていたが、途中で座り込んだりはせずに、ちゃんと居間まで到着したみたいだ。


「りょ、良太さん!」

「は、はいっ!?」


 脱衣所との仕切りの扉を閉めると、夕霧さんに大きな声で呼ばれたので、反射的に背筋を伸ばした。


「お、お背中ぁ、お流ししますねぇ……」


(参ったな……)


 手拭いを持った夕霧さんが正面に立ち塞がり、どうやら俺が湯船に戻るのを許してくれそうに無い。


「……わかりました。お願いします」


 押し問答になって夕霧さんに風邪でもひかせてはと思って、俺は早々に観念した。


「お願いしますなんてぇ……あたしは良太さんに買われたんですからぁ、もっと色々要求して下さってもいいんですよぉ?」

「買ったなんて、そんな……」


 石鹸を泡立てた手拭いで背中を洗ってくれながら、夕霧さんが照れたような声を上げる。


 確かに金銭を支払って忍びの集落から抜けさせたのだが、それをネタにして夕霧さんに何かさせるなんて、そんな悪徳高利貸しみたいな事をするつもりはこれっぽっちも無い。


「それに、夕霧さんには子供達の面倒を押し付けちゃってますから」

「押し付けるなんてぇ。里の子達ってぇ、同年代の子達と比べると手が掛からないからぁ、全然大変なんかじゃ無いですよぉ」

「そうは言いますけどね……」


(小さくても女の子が集団になると、俺は怖いけどなぁ……)


 まだそれ程性差なんか無いはずなのだが、里の女の子の五人以上を越える集団に囲まれると、なんとも言えない圧迫感があるのだ。


 子供達が気にすると悪いので、極力表情などには出さないように気をつけているが、夕霧さんが平然としているのを見ると、素直に尊敬してしまう。


「里だってぇ、江戸の大前や鎌倉のお屋敷と比べてもぉ、かなり便利ですしぃ」

「里が便利なのは、単に俺が楽をしたかったからなんですけどね……」


 井戸から水を汲み上げる必要が無かったり、風呂が二十四時間入れる温泉だったりするのは、子供達に楽な生活をという名目で、俺の趣味が反映しているだけに過ぎない。


「でもぉ、あたしって弱いからぁ、良太さんにとっては役立たずですしぃ……」

「いや、だから決して役立たずなんかじゃ……それに弱いって言ったって、体術なんかは習得してるんですよね?」


 背中を洗ってくれている手が止まったので、肩越しに振り返って夕霧さんに話し掛けた。


「それはぁ、自分とぉ、仕事でお仕えしている方をお護り出来る程度ではありますけどぉ、鎌倉のお屋敷の皆様はお強いですからぁ」

「そりゃそうですよね」


 源家は頭領の頼永様を筆頭に、奥方の雫様も頼華ちゃんも遠方にまで武勇が知れ渡っていて、そもそも身の回りの世話以外に警護がいるのかと、疑問に思う程だ。


「あ、でもぉ、たまに頼華様の鍛錬にお付き合いさせられたんですけどぉ、あたしが相手だと妙に疲れるって言われちゃいましてぇ」

「妙に疲れる?」

「そうなんですよぉ。他の方がお相手をするとぉ、大概はお相手の方が先に音を上げるんですけどぉ、あたしって持久力があるみたいでぇ、頼華様の方が先にやめようって言い出すんですよぉ」

「……」


(……どういう事だ?)


 頼華ちゃんはまだ成長途上だが基礎体力もかなりあるし、その上で強大な(エーテル)を保有しているので、ペース配分を考えれば戦闘継続時間は相当に長いはずだ。


 その頼華ちゃんが先に音を上げるという事は、夕霧さんが同程度の戦闘力と(エーテル)を兼ね備えていなければおかしな話になってしまう。


(でも、そういう訳じゃ無いんだよな?)


 これまで聞いている話や、俺自身が身近で接した感じからすると、夕霧さんが特に武術に秀でていたり、(エーテル)の容量が多いという事は無さそうなので、何か他に要因があると見て間違い無いだろう。


(じゃあ……どういう事なんだ?)


「あの、夕霧さん」

「はぁい?」

「俺の方はもういいので、お返しに背中を流しますよ」

「っ!?」


 さっきから手が止まりっぱなしだし、少し試してみたい事があるので声を掛けたら、夕霧さんが息を呑んだ。


「そ、それじゃあぁ、お願いしますぅ……その前にぃ、流しちゃいますねぇ」

「はい」


 桶で汲んだ湯で石鹸の泡を流してくれたので、俺は夕霧さんとポジションを入れ替わる為に立ち上がった。


「……」


 無言で俺の前に座った夕霧さんは、熱い湯船に浸かっていた訳でも無いのに、さっきのお朝ちゃん以上に肌を真っ赤に染め上げている。


「それじゃ洗いますね」

「ど、どうぞぉ……」


 消え入りそうな声で返事をしてきた夕霧さんの滑らかな背中を、強過ぎないように気をつけながら洗い始めた。


「……」


(うわぁ……おりょうさんや頼華ちゃんの肌も綺麗だけど、夕霧さんの肌は正にモチ肌って奴だな)


 里でマッサージした時には服の上からなので気が付かなかったが、おりょうさんや頼華ちゃんの肌が滑らかで非常に張りがあるのに対し、夕霧さんの肌は搗き立ての餅のように柔らかくふっくらとしている。


「夕霧さん。最近は肩こりはどうですか?」


 素肌の柔らかさや腰のくびれに視線が行ってしまいそうになるが、出来るだけ意識しないようにしながら夕霧さんに話し掛けた。


「良太さんに作って貰った下着のお陰でぇ、大分楽にはなりましたけどぉ、お胸自体が無くなった訳じゃありませんからぁ、やっぱり凝りますねぇ」

「幾らかでも下着の効果が出てるのなら、良かったですけど」


(夕霧さんも天も、見るからに重そうだからなぁ……)


 人によっては数キロの重量が首と肩の周囲に掛かっていると聞いた事があるから、胸をすっぽり覆う形のスポブラもどきで楽になっているとは言っても、所詮は支点を分散させているに過ぎないので、やっぱり苦労は絶えないのだろう。


「背中を流すついでに、少し(エーテル)を送り込んで治療しますね」

「そんなぁ……でもぉ、お言葉に甘えちゃいますぅ」


 少し遠慮の言葉を口にしたが、やはり肩こりには耐え難い物があるのか、夕霧さんは(エーテル)による治療を受け入れた。


「……これは」


 里では手と雷によるマッサージしか施術していなかったので、何もおかしいとは思わなかったのだが、夕霧さんの方の辺りに手をかざして(エーテル)を送り込み始めて、やっと異常である事に気がついたのだった。

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