水菜
「お待たせー」
「お茶ですよぉ」
「「「はぁーい!」」」
遊んでたり、本を読んでいたりした子供達が、手を止めて群がってきた。
「一人に三つずつあるから、順番にね」
大皿や菓子鉢で出すと取り合いになるかと思ったので、小皿に三つずつ分けて一人一人に手渡した。
「このお菓子初めて見ますー。食べていいですか?」
両手で小皿を持った陽華ちゃんが、待ちきれないとばかりに訊いてくるが、なんとか我慢している。
「どうぞ。お上がり」
「「「頂きまーす!」」」
ちゃんと頂きますを言ってから、子供達はお菓子を手に取って齧り付いた。
「あれぇ? これって小豆餡ですか?」
想像していた味と違ったのか、陽華ちゃんが首を傾げている。
「んー? あたしのは、なんかふわっと甘いのが?」
「お朝ちゃんのは多分、牛の乳から作ったクリームが入った奴だね」
「くりーむ?」
(どう説明したものかな……)
こっちの世界の日本では、まだ牛乳から作ったクリームが一般的では無いので、何かに例えて説明するのが難しい。
「えーっと、牛の乳を撹拌……掻き混ぜると、溶け込んでる脂肪、脂が分離して、それを取り出して更に掻き混ぜて砂糖を加えると、そういう風になるんだよ」
「へぇー!」
結局、何かに例えるのでは無くそのままを説明したのだが、陽華ちゃんは感心したように俺とお菓子を交互に見ている。
「貴方様のお作りになる物は、おいしくて不思議な物ばかりですねぇ」
「こういう、甘くてお口の中で溶けるようなお菓子は初めてです」
(概ね評価は悪くないみたいだな)
本家のお菓子はクルッと巻いてあるだけで中身は無いから、甘い生地に甘い中身なのでくどいかなとも思ったのだが、生地の砂糖を控えめにしたので大丈夫だったようだ。
(上手く巻けたし、中に入れる物を変えたりしてバリエーションも増やせそうだな)
ぶっつけ本番だったので上手く巻けないかとも思っていたのだが、その場合でも食べられなくは無いし、最悪は平たい状態で供してもいいかもと考えていた。
しかし、実際に作ってみて比較的に上手く行ったので、今後は例えば中身を胡麻餡にしてみたりとか、クリームの種類とかで変化も付けられそうだ。
「さて、大変御馳走になってお茶も頂きましたし、そろそろお暇しましょうか」
「ええ」
お菓子を食べ終えてお茶も飲み干し、白面金毛九尾は志乃ちゃんと一緒に、俺とブルムさんに向けて礼を述べようと居住まいを正した。
「「「えー!」」」
「「……え?」」
すると、子供達から一斉に不満の声が上がり、二人は戸惑っている。
「金色のお姉ちゃん、もっとあそぼー!」
「志乃お姉ちゃんもー!」
「あ、あら……」
「ど、どうしましょう……」
白面金毛九尾と志乃ちゃんを帰らせまいと、子供達が膝に載ったり袖を引っ張ったりしている。
「ははは。子供達もこう言っていますし、どうですか、夕食も御一緒に」
「そんな……そこまでお世話になりますのは」
白面金毛九尾は嫌がっているというよりは、単純にブルムさんに遠慮をしているのだろう。
「えー! お姉ちゃん、一緒に御飯食べよー!」
「一緒にお風呂入ろー!」
「こ、困りましたわねぇ……」
俺達年長組だけが相手なら固辞して帰る事をしたかもしれないが、子供達が相手では白面金毛九尾も分が悪いみたいだ。
「子供達もあなた方が一緒の方が嬉しいみたいですし、今日だけでも如何ですか?」
「ですが……」
「ええ……」
白面金毛九尾と志乃ちゃんが、俺の方をチラッと見てくる。
「俺としても、子供達を風呂に入れてくれると助かりますよ」
「そ、そうですか?」
今日も、買い物と料理のお手伝いのお朝ちゃんと夕霧さん以外は、夕食前に入浴になるのだが、子供四人の面倒を見ながら風呂に入るのは、ブルムさんだけでは大変なのではないかと思ってはいたのだ。
白面金毛九尾と志乃ちゃん以外に女の子二人もいるので、入浴は俺達以外のメンバーで二回に分ける感じになると思うが、それでもブルムさんの負担は大分減るだろう。
「それじゃあ俺は、夕食の買い物に行ってきますね……っと。大地くん、本を読むのは御飯の後でいいかな?」
「はいっ!」
おやつの後で大地くんに本を読んであげる事になっていたのだが、流れで夕食の支度と入浴になってしまった。
もしかしたら拗ねてしまうかもと思っていたが、俺よりは綺麗なお姉さん達と一緒にお風呂の方に魅力を感じているのだろう。
「「お世話お掛けします……」」
「そんな事は」
白面金毛九尾と志乃ちゃんが、物凄く申し訳なさそうに会釈をしてくる。
「夕霧お姉ちゃん、行こー!」
「えっ!? あたしもなんですかぁ?」
俺と一緒に立ち上がったお朝ちゃんが、夕霧さんに近づいて手を引いている。
「里に出て来た人が順番に買い物と料理、って感じになってまして」
お朝ちゃんに手を引かれて困惑している夕霧さんに、掻い摘んで状況を説明した。
「そういう事ですかぁ。わかりましたぁ。それじゃあ行きましょうねぇ」
「うん! 主人もー!」
「うん。行こうね」
納得したらしい夕霧さんを掴んでいるのと反対側を俺に差し出してきたので、俺はお朝ちゃんの手を取った。
「おかずはこんなもんでいいか。でももう少し野菜が欲しいな……」
こっちの世界に来てからそれなりに経つが、元の世界の江戸時代と同様に、食事の内容が主食である米に偏重しているように感じる。
野菜類は煮物や漬物で良く食べるが、それでも現代に比べるとバラエティに乏しいし、ちょっと塩分も多めだ。
「良太さぁん。これなんかどうですかぁ?」
「これは……水菜か」
俺の呟きが聞こえたのか、夕霧さんが指差した露天の八百屋が広げている野菜の中に、一掴みくらいの束に纏めてある水菜があった。
(悪くないけど……どう料理するかな?)
元の世界でも見知っている水菜だが、薄切りの豚バラのシャブシャブと一緒に食べるとか、サラダみたいな使い方しか試した事が無い。
(肉は昼に食べたから、あんまり重なるのもなぁ。水菜みたいな水分の多い野菜の調理は……ん? これなら上手く行く、かな?)
同じような水分の多い野菜を使った料理を、水菜に置き換えて出来ないか、試してみる気になった。
「それじゃ水菜にしましょうか。すいません、この並んでいるのを全部下さい」
「毎度っ! そうだなぁ。おまけして銅貨七枚でいいよ!」
威勢のいい店主が並べてある十束くらいの水菜を、紐でひと纏めにしてくれた。
水菜以外にも目についた野菜を数種類選んで買い、その分の代金を支払って商品を受け取った。
「ちょ、ちょっと良太さぁん!?」
「ん? 夕霧さん、何か?」
「?」
小声で俺に声を掛けながら揺すってくる夕霧さんを、お朝ちゃんが不思議そうに見ている。
「今日はお客さんもいますけどぉ、これじゃ多過ぎますよぉ」
「ああ、御心配無く。質が良さそうだったから、里にも持って帰ろうかと思いまして」
夕霧さんには心配しているようだが、今日の夕食に使うのは多くても水菜を三束くらいで、残りは里に持ち帰って明日以降に使うつもりだった。
「な、なぁんだぁ……それじゃぁ、お買い物はこれでおしまいですかぁ?」
「そうですね。帰りましょうか」
「はいっ!」
「可愛い奥さんと嬢ちゃんを連れた旦那! また宜しく!」
「っ!?」
店主の見送りの言葉に夕霧さんが息を呑み、立ち去ろうとしていた脚を停めさせた。
「夕霧お姉ちゃん、早く帰ろ?」
「っ!? そ、そうですねぇ……」
訝しげに見るお朝ちゃんに、顔を真赤にしながら無理矢理作った笑顔を向けた夕霧さんが、ぎくしゃくとした動作で一歩を踏み出した。
「えーっと……俺は気にしてませんので」
「そ、そうですかぁ……」
気にしていないと言ったのに、夕霧さんは不満そうに頬を少し膨らませた。
「主人がお父さんで、夕霧お姉ちゃんがお母さん?」
「「っ!?」」
内容的に無茶苦茶なのだが、お朝ちゃんが疑問に思うままに紡ぎ出した言葉は、俺と夕霧さんの脚を再び停めさせた。
「違うんですか?」
「う、うーん……お朝ちゃん達は娘ってよりは、妹みたいなものかな?」
元服で成人とみなされるこっちの世界でも、俺とお朝ちゃんの年齢差で親子はちょっと無理がある。
「ふぇ? 主人の妹は頼華姐様ですよね? それで、頼華姐様は主人の奥さん!」
「あ、あー……」
(そうか。既に俺とおりょうさんと頼華ちゃんの関係で、ややこしくなってたんだな……)
俺が主人で、おりょうさんと頼華ちゃんと黒ちゃん達を姐様と位置付けしている、お朝ちゃんを始めとする里の子供達には、そのままにしておいた方が良かったのだ。
(でも訂正しないと、夕霧さんがお母さんというポジションに……それは幾ら何でも気の毒過ぎる)
「えっとね……夕霧さんは、お姉ちゃんでいいんだよ」
夕霧さんをお母さんと認識させてしまうと、様々な方向に角が立つ事になってしまうので、こればっかりは言い聞かせないといけない。
「そうですか……お母さんってどんなのかわからないので、夕霧お姉ちゃんがそうだったらと思ったんですけど」
「あ……」
(そうか。お朝ちゃん達には、母親って概念が……)
俺の分体のように、紬が魂を分けて生み出したお朝ちゃん達子蜘蛛は、親蜘蛛から生み出されたという訳では無いので、親と子という関係が良くわかっていないのだ。
(そのうちに、鎌倉の雫様のところにでも連れて行って、気分だけでも味わわせてあげた方がいいんだろうか?)
知り合いの範囲で母親をやっている女性が雫様くらいしかいないのだが、今は身重だし、実子の頼華ちゃんがいるので、色々と微妙なところではある。
「うぅ……お姉ちゃんって呼ばれるのはいいんだけどぉ、良太さんの奥さんにぃ……」
「夕霧さん?」
「お姉ちゃん、何か言った?」
何やら俯いて小声で呟いている夕霧さんが気になったので、お朝ちゃんと声を掛けた。
「っ!? な、なんでもありませんよぉ!? さ、さあぁ、帰ってお夕飯の支度をしましょうねぇ!」
「は、はい……」
「はーい♪」
妙に焦って大声を出す夕霧さんに圧倒されて返事をした俺とは対象的に、お朝ちゃんは嬉しそうに手を挙げた。
(それにしても、母親か……)
笹蟹屋に向けて歩き始めながら、心の中で呟いた。
(なんとなく、おりょうさんが女性陣のリーダーみたいなポジションになってるけど、母親っていうのとはまた違うしなぁ……里親とかも考えた方がいいのかな?)
黙って連れ去ろうとする者がいるくらいには、里の子供達はみんな愛らしい容姿をしているので、里親になりたいという人は多そうな気がする。
(でも……みんな嫌だって言うだろうけど)
紬の魂を分けて生まれているので、子供達は通常の肉親よりも結束が強いように思える。
成長してからはわからないが、今の時点で引き取りたいという里親の元に行きたいという子は、多分だがいないだろう。
(まあ、この件は保留だな)
思い出したように、お朝ちゃんを始めとする子供達がお母さんが欲しいとか言い出したら困るが、現時点でいいアイディアが何も浮かばないので、未来の自分への宿題としておくしか無い。
「♪」
俺と夕霧さんに挟まれて歩きながら、凄く嬉しそうにしているお朝ちゃんを見ていると、自然と自分も笑顔になっているのを自覚する。
(とりあえず今は、おいしい食事を作らないと)
母親問題から頭を切り替えて、作る予定のメニューを確認しながら歩いた。
「お朝ちゃんには野菜を刻んで貰って、夕霧さんは焼き物をお願いします」
米を研いで水加減をしたところで、お朝ちゃんと夕霧さんに指示を出した。
「お朝ちゃん。慌てないで、ゆっくり丁寧にね?」
「は、はいっ!」
「はぁい」
お朝ちゃんには緊張感が漂っているが、夕霧さんはいつも通りマイペースだ。
「俺はこっちで……」
「ふぇぇ? 良太さん、お豆を燃やしちゃうんですかぁ!?」
買ってきたそら豆を莢ごと竈の灰の上に並べ、手に能力の炎を発現させたので、夕霧さんが何事かと驚いている。
「燃やしはしませんけど……」
「えぇー……でもぉ、真っ黒じゃないですかぁ」
夕霧さんの言う通り、炎に包まれた豆の莢は、一部が炭化するくらいに真っ黒の状態だ。
「しゅ、主人。今夜のおかずは、そのお豆なんですか!?」
「いや、そうじゃ無いから。ほら」
不安そうに包丁を動かす手を停めたお朝ちゃんに、莢を割って綺麗な緑色の豆を見せた。
莢から出てきたそら豆からは、湯気と一緒に独特の風味が漂うが、茹で上げた物と比べると和らいでいるように思える。
「へぇー。中身は全然焦げてないんですねぇ」
「不思議です!」
「あはは」
焼けたそら豆を全て莢から取り出し、薄皮も取り除いて水加減をした釜に入れ、四センチ角くらいの大きさに切った昆布を入れ、塩と酒と醤油を入れてから蓋をして、能力で底を持続的に熱する。
「さて、お次は……」
魚屋で目についた、犬の舌とか牛の舌とか呼ばれている舌平目を俎板に並べ、鱗、エラ、内臓と腹側の皮を取り除いてから塩と小麦粉をまぶす。
「お魚はぁ、揚げ物ですかぁ?」
食材に串を打ちながら、夕霧さんが訊いてきた。
確かに、もう少し下味をしっかり利かせていれば、ここまでの手順なら唐揚げとかだと思っても不思議では無い。
「揚げ物と似てますけど、ちょっと違う外国風の料理です」
平たい鍋に乳酪を多めに入れて溶かし始め、舌平目の調理の準備を始める。
その間に別の鍋で作っておいた出汁に具材を入れ、塩と醤油と酒で味を整えた。
「溶けたな……」
乳酪の溶けた鍋に舌平目を二匹並べ、時折焼き油を掛けながら火を通して、次々に予定数を焼き上げていく。
「んしょ、んしょ……主人! お野菜切り終わりました!」
ゆっくり丁寧にと言った通りに、それなりに時間を掛けての作業をお朝ちゃんが終えたようだ。
丁寧にと注意しただけあって、大きさを整えて切られている。
「良く出来たね。それじゃ仕上げをするから、お朝ちゃんは先に出来あがった料理を運んでくれるかな?」
「はいっ!」
焼き上がった魚を盛り付けた皿を両手で一枚ずつ持って、慎重な足取りでお朝ちゃんが運んでいく。
「良太さぁん。あたしの方は終わりましたよぉ」
「じゃあ残りは俺がやりますから、夕霧さんも料理と食器類を運んで下さい」
「はぁい」
夕霧さんは自分が作った料理の皿や茶碗などを盆に載せ、まとめて運んでいく。
「これでよし、と」
お朝ちゃんが刻んでくれた野菜に味付けをして、炊きあがった御飯を混ぜ起こしてからお櫃に移した。
「ものぐさしちゃうけど……仕方が無いか」
料理を盛り付けた皿や鍋やお櫃をまとめて持つには、重量的には問題が無いのだが、かなりアクロバティックになってしまう。
ひっくり返したりしたら悲劇以外の何物でも無いので、ドラウプニールに一時的に収納してから、手ぶらで居間に向かった。
「それでは、頂きます」
「「「頂きます」」」
ブルムさんの号令で夕食を開始した。
糸目の女の子達は、やはり声を発しはしないのだが、ちゃんと手を合わせてから箸を手に取った。
(何か喋れない理由でもあるのかな?)
プライバシーに関わるだろうから、突っ込んで訊いてしまっていいのかは悩みどころだが、気にはなる。
「お豆の御飯、おいしいですねぇ。何やら普通のそら豆よりも、香ばしさを感じますけど?」
「普通なら茹でるところを、莢ごと真っ黒になるまで焼いてから、米に入れて炊き込んだんですよ」
「成る程っ! 茹でると味も逃げてしまいますから、この調理法は正に一石二鳥という事ですね!」
肉好きらしい白面金毛九尾の口にも合ったのか、少し興奮気味に語ってから笑顔でもう一口、そら豆の炊き込み御飯を口に運んだ。
「ふむ。私はそら豆の独特の香りが少し苦手なのですが、確かにこれは焼けた香ばしさとおいしさだけがありますね」
「苦手でしたか? それは申し訳ない事を……」
「いやいや。少し苦手というだけで、味自体は嫌いでは無いのですよ。それにこれは、本当においしいですから」
ブルムさんも笑顔で口に運んでいるので、俺達が作った料理だから無理をしているという感じでは無いが、どうやらリサーチ不足だったようだ。
「このお魚の料理、香りが良くて濃厚なお味でおいしいですね! カリカリに焼けている端っこが特に!」
「口に合ったのなら良かったよ」
「ええ、とっても。それにお料理が濃厚だから、お吸い物と、この和え物が口直しにぴったりです!」
志乃ちゃんの反応を見ると、乳酪をたっぷり使ったムニエルには味噌汁は少し重いかと思ったので、焼き豆腐の吸い物にしたのは正解だったみたいだ。
お朝ちゃんが刻んでくれた水菜をさっと茹でて水を切り、塩とにんにくと胡麻油で味付けしたナムルも好評でホッとした。
(うん。旨いな)
水分が多くて癖の無いもやしと水菜は似ているので、試しにナムルにしてみたのだが、歯応えがシャキシャキしていて、もしかしたらもやしのナムルよりも旨いかもしれない。
安くて簡単に出来るので、もう一品欲しい時などには、水菜のナムルは良さそうだ。
「夕霧さんが焼いてくれた海老も、凄くおいしいですよ」
「そうですかぁ? 良かったですぅ」
串に刺して醤油のタレを付けて焼いた淡水に棲む手長海老は、火を通されて殻が美しい鮮紅色に染まっている。
「ふむ。これだけの料理が出来るのでしたら、夕霧殿はいつでもお嫁さんに行けますな」
香ばしく焼けた手長海老をバリバリと噛み砕きながら、ブルムさんがしみじみと呟いた。
「そ、そんなぁ……そうですかっ!?」
「え、ええ……」
照れたようにはにかんでいた夕霧さんが、唐突に確認するように問い質したので、ブルムさんが食事の手を止めて返事をした。
「えへへぇ……」
「……」
(そっとしておいた方が良さそうだな……)
非常に幸せそうに微笑んでいるので、特に夕霧さんに突っ込んだりするのはやめておいて、俺は食事に専念した。




