寝坊
「ブルム殿。俺も御相伴に預かっても宜しいかな?」
「白ちゃん?」
一緒に入浴と言い出すかと思っていた白ちゃんが、ブルムさんに申し出た。
「あたいもいい!?」
「黒ちゃん?」
これまでに酒を飲んでいるのを見た事は無かった、黒ちゃんまでがそんな事を言い出した。
(まあ酒を飲んだからって、どうにもならないだろうけど……)
白ちゃんも黒ちゃんも少女の見た目通りの中身では無いし、アルコールが身体に影響があるとも思えない。
「勿論、構いませんよ。鈴白さんから頂いたお酒は、一人で飲むには上等過ぎると思っていましたしね。では少し、摘む物も用意しましょうか」
「手伝おう。黒、お前もだ」
「おう! そいじゃ御主人、頼華、お休み!」
「「……」」
あれよあれよという間に、中庭には俺と頼華ちゃんだけが取り残された。
「黒ちゃんと白ちゃん、気を遣ってくれたのかな」
「え……あっ!?」
俺の呟きに、一瞬反応出来ないでいた頼華ちゃんだが、すぐに理解して顔を真っ赤にした。
「あいつら……では兄上、湯殿に参りましょう!」
「うん」
「♪」
急に機嫌を良くした、鼻歌交じりの頼華ちゃんに手を引かれ、俺は風呂場に向かった。
「っつつ……少し滲みるな」
軽く流してから湯に浸かると、そこかしこにある傷口がピリピリと疼くように痛んだ。
「無茶をなさるから……」
「自業自得なのはわかってるんだけどね」
頼華ちゃんに嗜められるが、全くその通りなので苦笑して誤魔化すしか出来ない。
「では兄上。お背中をお流ししましょう!」
「ありがとう」
頼華ちゃんに促された俺は、湯船から出て洗い場に座った。
「なるべく傷には触れないように致しますが、痛かったら言って下さい」
「うん。ありがとう」
(いつも以上に気を遣ってくれてるなぁ)
いつもはそれなりに強く背中を擦ってくれる頼華ちゃんが、今は石鹸を泡立てた手拭いで、撫でるように洗ってくれている。
「背中と腕はこれくらいですね。では兄上、こちらをお向き下さい」
「え……頼華ちゃん、前は自分で」
「駄目です!」
「えっ!?」
これまでは自分でと言うと引き下がってくれていたのだが、今日の頼華ちゃんからは駄目出しをされてしまった。
「先程、出来る範囲で綺麗にはしましたが、兄上は頭の先から汚れきっております! その上、自分のどこが汚れているのかも御承知ではありませんよね?」
「まあ、そうかな」
肩越しに振り返って見た頼華ちゃんは、真剣な表情で非常に鼻息も荒い。
「ですから、余が隅から隅まで綺麗にして差し上げます!」
「えー……」
「いいですね?」
(自分の目の届く範囲は自分で、と言いたいところだけど……)
自分が無茶をした所為で現在に至るのだし、頼華ちゃんの言葉にも表情にも、有無を言わさぬ物を感じる。
(仕方が無い、か……)
「……わかった。それじゃお願いするよ」
「はいっ!」
元気に返事をする頼華ちゃんに対面するように、俺は座り直した。
当たり前だが頼華ちゃんは、一糸纏わぬ姿なので、輝くような裸身を俺の目に晒している。
「では失礼して」
「っ!」
正面の肩から胸の辺りを洗おうとしているので仕方が無いのだが、小柄な頼華ちゃんのリーチの関係で息が掛かりそうな程近づいたので、まだ幼いながらもしっかりと主張をする双丘が、眼の前に突きつけられた。
(こりゃ……目の毒だなぁ)
顔立ちが整っているだけでは無く、鍛えられて引き締まっている頼華ちゃんは小柄だがスタイルも抜群であり、何よりも自分が愛する女の子である。
意識しない方が無理がある、と言うよりは、好きな相手だからこそ、つい二つの膨らみに視線が行ってしまうのだった。
「んしょ、んしょ……では今度は、脚の方をお洗いしますね!」
「え!? それは……」
胸や腋を洗い終わった頼華ちゃんは、少し身体を離すと俺の前に跪き、俺の腰の辺りに手拭いを当てた。
腰から下は作務衣で覆われていたので怪我もしなかったから、洗って貰っても痛みが無いので非常に快適だ。
「では兄上! 仕上げをしますので、お立ちになって下さい!」
「えっ!? いや、そこまでは……」
俺の身体で洗っていないのは、現時点では腰回りと頭である。
それで立ち上がれという事は……。
「も、もうここまででいいからね? 後は自分で……」
「せっかくここまで余が洗ったのですから、最後までやらせて下さい! それに……」
「……それに?」
急にモジモジし始めた頼華ちゃんの言葉を待った。
「父上と母上から、好きになった方の大事な場所を洗うのは、お前の役目なんだよ、と」
「……」
(頼永様ーっ! 雫様ーっ!)
こっちだろうと見当をつけた鎌倉に向けて、心の中で余計な教育をしてくれた頼永様と雫様に叫んだ。
「実際に父上と母上と一緒に入浴しました時には、二人で仲睦まじく洗い合っておりましたし」
「ああ、そう……」
源氏の頭領とは言え、使用人に手伝わせるとかだけでは無く、御夫婦や親子で一緒に入浴して、お互いに洗い合ったりはするのだろうけど、だからといって頼華ちゃんに妙な知識を植え付けないで欲しかった。
「ですから兄上!」
「ん?」
妙にキラキラと瞳を輝かせながら、頼華ちゃんが期待の込めた視線を送ってくる。
「その……余の大事なところも、その内に洗って下さいね?」
「いや、その……善処します」
否定も肯定も出来ない案件なので、頼華ちゃんへは曖昧な返事をしておいた。
(好きな相手の身体を洗うのへ、別に嫌じゃ無いんだけど……)
とは考えたが、実行に移すかどうかとなると話は別だ。
「では、取り掛かりますね!」
「あっ……」
この後の事は、あまり語りたく無い……。
「頼華ちゃん、お腹空いたでしょ? 簡単に何か夜食を作るよ」
「えっ!? で、でも兄上、お疲れなのでは?」
少し傷が疼くが入浴でさっぱりしたし、頼華ちゃんの励ましにも助けられたお蔭で、大分気分も良くなった。
夕食を終えてから結構な時間が経過しているし、頼華ちゃんへのせめてもの恩返しの気持ちで調理に取り掛かった。
「はい、どうぞ!」
「えっ。もうですか!? 早いですね!」
子供達が寝ているから大きな音は立てられないので、必然的に簡単な料理になってしまう。
従って、逆説的に掛かる時間も短くなったので、料理を手渡された頼華ちゃんが目を丸くして驚いている。
「ん……これは見た目に簡素な料理ですが、おいしいですね! この腸詰めの周りを覆う衣が、ほのかな甘味で調和しています!」
以前にブルムさんから買った玉蜀黍を粉にした物に、少量の塩と卵と水を入れて掻き混ぜ、乳酪を溶かした鉄鍋で薄く焼いた生地に腸詰めを包んだ、料理とも言えないような料理を頼華ちゃんは気に入ってくれたようだ。
「はい。お次はこれだよ」
「おお……衣の熱でとろりと溶けた乾酪が燻製肉に絡んで、なんとも豊かな味わいです!」
さっきの物は腸詰めに焼いた生地を巻き付けただけだったが、今度の物は焼いている段階で薄切りの燻製肉とスライスしたチーズを載せて折り畳んだ、クレープのような作り方をした。
「まだ食べる?」
「良いのですか!?」
「うん。俺はそんなにいらないから、半分あげるよ」
夜食の摂り過ぎは良くないと思いながらも、幸せそうに頬張る頼華ちゃんの顔を見ていると、もっと食べさせたくなってしまう。
「では遠慮無く! あむっ!」
(今夜は色々とあったけど、頼華ちゃんのこの笑顔を見ているだけで、報われる気がするなぁ……)
笑顔でもぐもぐしているのを見て和みながら、今後は自分の主義主張は抑えめにしておいて、頼華ちゃんとおりょうさんファーストで行こうと決意した。
「黒ちゃんと白ちゃんは、まだ飲んでるみたいだね」
「ここに戻っていないという事は、そうなのでしょうね」
いつも寝るのに使っている部屋では、子供達が安らかな寝息を立てているが、黒ちゃんと白ちゃんの姿は無かった。
どうやらブルムさん相手の酒宴はまだ継続中のようだ。
(黒ちゃんと白ちゃんはともかく、ブルムさんは大丈夫なのかなぁ……)
極端な話、黒ちゃんと白ちゃんは眠らなくても問題は無いと思うが、ブルムさんはそうも行かないだろうし、何よりも店がある。
「まあ、俺達が気にしても仕方が無いな……それじゃ頼華ちゃん、寝ようか」
「兄上。一緒に寝てもいいですか?」
「じゃあ、そうしようか」
頼華ちゃんの要望を叶えてあげたいというのがあるのだが、ここに黒ちゃんと白ちゃんが戻って布団を人数分敷くのが難しそうなのも理由だったりする。
(魔法陣の所為で、子供達の布団が部屋の真ん中に敷かれてるしな……)
部屋の端からきっちり並べれば、なんとか人数分の布団を敷けなくも無いのだが、用意していった布に描かれた魔法陣を部屋の中央に配置した関係で、デッドスペースが出来てしまっているのだ。
ならば子供達の布団を端に寄せればとも考えたが、移動の際に起こしてしまうのは気の毒だ。
「黒ちゃんと白ちゃんが戻ってくるかもしれないから、この辺に……」
部屋の奥の方に敷くと、押し入れから布団と出すのに邪魔になってしまうので、黒ちゃん達が戻ってくる時に踏まれてしまう恐れがあるが、そこは甘んじて受け入れよう。
「それじゃ……っつ」
「まだ、傷が痛みますか?」
横になる時に背中が擦れて、傷の痛みに少し声を出すと、頼華ちゃんが心配そうに囁いてきた。
「少しね。でも大丈夫だよ。さ、寝ようか」
「はい」
当然のように頼華ちゃんは、布団に入ると俺にピッタリと寄り添ってきた。
(あったかいな、頼華ちゃんは)
もう初夏なので、俺には温もりが心地良く感じるが、頼華ちゃんの方は暑いんじゃ無いかと思うが、目を閉じているその顔が微笑んでいるので、引き剥がすような事はしないで俺も目を閉じた。
(おやすみ。良い夢を。それと、ありがとう……)
心の中で頼華ちゃんに改めてお礼を言いながら、俺は意識を手放した。
「……じんー……主人ー。朝ー」
「ん……陽華ちゃん? おはよう」
「おはようごさいます! 朝ですよ」
目を開けると、陽華ちゃんの可愛い顔のアップが飛び込んできた。
「主人起きたー」
「おはようございます!」
「あれ、もうそんな時間?」
身体を起こすと、陽華ちゃんだけでは無く、子供達総出で身体を揺すられていたという事実に気がついた。
「おはようございます、鈴白さん。朝食の用意が出来ていますよ」
「えっ!? す、すいません!」
どうやら今朝は寝坊したらしく、声を掛けられて部屋の入口の方を見ると、呼びに来てくれたらしブルムさんが立っていた。
「御主人おはよー! 御飯だよー!」
「おはよう主殿。朝食の前に顔を洗ってくるといい」
ブルムさんに続いて、黒ちゃんと白ちゃんもやって来た。
「お疲れだったのでしょう。布団は片付けて起きますから、洗顔を済ませてきて下さい」
「あー……何から何まですいません」
ここで下手に遠慮をすると、みんなに食事を待たせてしまう事になるので、ここはブルムさんのお言葉に甘える事にする。
「頼華ちゃん、朝だよ」
「う、うーん……もう少しだけ、寝かせて下さ、い……」
「えっ!?」
弱々しく懇願するような口調で、目を開けずに頼華ちゃんが言った。
頼華ちゃんも朝に強い方では無いが、出会ってから今までに起こして起きなかった事は無いし、起床イコール朝食なので、これはかなりの異常事態と言える。
「主殿だけでは無く、頼華も疲れているのだろう。寝かしておいてやってはどうだ?」
「……そうだね」
(もしかしたら、自称将門公に手こずってたのが関係するのかな?)
薄緑が巴のようには効果を及ぼさなかったので、気の無駄遣いをさせられた可能性があり、それが今朝の頼華ちゃんの状態に繋がっているのかもしれない。
そう考えた俺は白ちゃんの進言に従って、そっと床を抜け出して、頼華ちゃんに布団を掛け直した。
「……ん?」
(あれ? 背中の傷の痛みが……無い?)
昨晩、横になる時に痛んだ傷が、さっき起き上がる時には何も感じなかったのだ。
手の届く範囲の傷を寝巻きの上から触ってみたが、痛みどころか傷自体が消えてしまっているようである。
「……」
(成る程……頼華ちゃんが疲れている理由はこれか)
どうやら俺が眠ってから、頼華ちゃんが気を使って傷を治してくれたらしい。
ドラウプニールで回復すると俺が起きてしまうので、消耗したまま眠ったから疲れが残っているのだろう。
(ありがとう、頼華ちゃん……)
起こさないように気をつけながら、頼華ちゃんの額の辺りをそっと撫でた。
「黒が腹ペコだから、なるべく急いでやってくれ」
手拭いと房楊枝を渡してくれながら、白ちゃんが人の悪い笑顔を浮かべる。
「そ、そんな事! あるけど……御主人、早くね?」
「了解」
反論しかけた黒ちゃんだったが、空腹は純然たる事実だったようだ。
俺は苦笑しながら、洗顔の為に井戸の前まで急いだ。
「それでは、頂きます」
「「「頂きます」」」
ブルムさんの号令で、俺が待たせてしまっていた朝食が開始された。
食卓には干物の鯖、豆腐の味噌汁、漬物などが並んでいる。
「鈴白さん程はおいしくないと思いますが、その辺は御容赦を」
「そんな……用意して下さっただけで有り難いですよ」
謙遜するブルムさんだが、口を付けた味噌汁は、しっかりした出汁の風味が生きていて、味噌の加減も丁度良かった。
「魚は俺が焼いた」
「漬物はあたいが切ったよー!」
「二人にも迷惑掛けちゃったね」
(……三人共、ちゃんと寝たのかな?)
少なくとも俺と頼華ちゃんよりは、ブルムさん達の方が夜更かしをしているはずなのだが……何にせよ、助かったのは確かだ。
「ははは。いつもはお世話になっていますからね。それに、別に鈴白さんが作るのが決まりという訳でも無いのに、こちらが甘えてしまっていただけですから」
「そうかもしれないですけど……」
(でも言われてみれば、江戸の竹林庵に世話になっていた頃は、食事はお任せだったんだよな)
旅に出てからは宿に泊まる時以外は、なんとなく俺がメインで食事を作る機会が多くなっているが、ブルムさんの言う通り、特にそういう申し合わせをしている訳では無いのだ。
(でもまあ、少なくとも里から離れるまでは、俺がメインでやる必要があるかな)
料理も大人数の分を用意するとなると、技術もだがかなりの力仕事になるので、俺が請け負う部分を多くしないと無理があるだろう。
俺達がいなくなった後の里で困らないように、積極的に手伝ってくれているお糸ちゃんだけでは無く、他の子供達にも料理を教える必要を感じる。
(里での料理に関しても、ローテーションを組んだ方がいいかなぁ……)
料理だけでは無く、誰か一人が急にいなくなったくらいで、何かが回らなくなるという状況は健全とは言えない。
そんな事を考えながら、箸を動かした。
「結局、頼華は起きてこなかったな」
「うん。でもさすがに昼には起きるだろうから、少し多めに食事を用意しようかな」
「それがいい。さて主殿、俺と黒はそろそろ里へ戻るぞ」
食後のお茶の湯呑を置いて、白ちゃんが立ち上がった。
「うん。頼華ちゃんが後から帰る事は、おりょうさんに伝えておいて」
「心得ている。さあ黒、行くぞ」
「おう! っと、その前に……むぎゅーっ!」
白ちゃんと同様に湯呑を置いた黒ちゃんも、立ち上がるのかと思ったら、ここ最近の恒例になっている、抱きついての成分補給とやらを始めた。
「御主人……」
「ん?」
「もう、元気だよね?」
まだ俺が昨晩の事を引き摺っているのかと心配しているらしく、黒ちゃんが抱きつきながら顔を覗き込んできた。
「黒ちゃん……うん。もう大丈夫だよ」
「そっかー! それなら、あたいも充填完了したし、行こうかな!」
ピョンと、黒ちゃんは俺から飛び離れた。
「黒ちゃん、白ちゃん。いつも通りに帰る前に、買い物をお願い。それと、これを持って行ってくれるかな」
二人に数枚の銀貨を渡し、ドラウプニールから取り出した伏見と灘の酒の樽を一つずつ示した。
「おりょう姐さんへの土産か?」
「それもあるんだけど、調味料にもね」
(さすがのおりょうさんでも、一斗樽二つを飲み干すには、それなりに時間が掛かると思うけど……)
とは言え、実際におりょうさんがどこまで飲めるのかという限界点は、俺にはわかっていない。
「ブルム殿に御相伴に預かったが、やはり灘の酒も伏見の酒も、江戸の物とは違うな」
「そんなに違う?」
関東と関西では水質の違いがあるのだが、白ちゃんがはっきりと言い切るくらいには違うのだろう。
「うむ。灘や伏見と比べると江戸の酒は雑味が多く、味わいも重いな」
「そうなんだ」
(これは水の質だけでは無くて、やっぱり関西の方が醸造技術が高いんだろうなぁ)
諸説あるが日本の清酒の醸造の発祥は奈良と言われているので、技術は関西を中心にして発展したのは間違い無いだろう。
「伊勢の椿屋で伏見の酒は口にして旨いと思っていたが、灘の酒は、より硬質な味わいだな」
「多分だけどそれは、水の差だろうね」
元の世界の戦時中に、灘の酒蔵が水の質が落ちると、軍隊の工事に抵抗したと言われているくらいに、清酒の醸造には水は欠かせない要素だ。
(やっぱり、一度味見はする必要があるなぁ……)
白ちゃんが指摘するくらいに、灘と伏見では酒の味に明確な違いがあるのだろうから、料理によってはどちらの方がより調和するかというのを知っておくのは、決して無駄にはならないだろう。
「まあ仮におりょうさんと白ちゃんで全部飲んじゃっても、また買うからいいんだけどね」
一般的な食材費から比べると、酒はかなり高価な部類に入るのだが、それでも必要経費の域を出る程では無い。
「承知した。では主殿、また明後日だな」
「御主人、また明後日ねー」
「うん。二人共気をつけて」
明後日にはブルムさんも一緒に、山の中の里に戻る予定だ。
「っと、お見送りついでに、店の扉をを開けようかな」
「では片付けは私が」
「あ、ブルムさん、すいません……」
昨晩からブルムさんにはお世話になりっぱなしだが、ここはお言葉に甘えよう。




