呪い
「あっ! よ、宜しければ、昨日お出しした雀と鶉をお出ししますが?」
場の空気を変えようというのか、焦った様子で白面金毛九尾が提案をしてきた。
「いや、結構……」
「鶉に雀!? 食べたい!」
申し出を辞退しようかと思ったが、俺が言い切る前に黒ちゃんが御所望してしまった。
「……頼華ちゃんと白ちゃんは?」
「余はいいです!」
「俺もいらん」
黒ちゃんは鶉と雀という言葉に目の色を変えているが、頼華ちゃんと白ちゃんは依然として白面金毛九尾から視線を逸らさない。
「で、では、少々お待ち下さい……」
「あ、急ぎませんので……三人共、話が進まないから、少し控えめにね?」
逃げるように白面金毛九尾が立ち去ったので、三人に注意した。
「むぅ……あの者が、あのような男に媚びるような外見をしているのがいけないのです!」
「そうだー! これ見よがしに胸元を出しやがって!」
「奴は、色んな意味で盛り過ぎだろう」
(その辺りが気に入らないんだね……)
一応は本人に対して言うのは控えていたらしく、白面金毛九尾が席を外した途端に三人は、それぞれ抱えていた不満を口にした。
「まあまあ。言いたい事はわかったけど、ブルムさんの店もある京の街に関わる事なんだからね?」
「それを言われてしまいますと……」
膝の上の頼華ちゃんが、面白く無さそうに唇を尖らせる。
「それと、一応言っておくけど」
「「「?」」」
俺が何を言い出すのかと、三人の視線が集中する。
「昨日ね、報酬に私の身体をとか言い出したんだけど」
「っ!? あ、あやつ……結界をなんとかしたら、話をつける必要があるな!」
頼華ちゃんの中で殺気が膨れ上がり、密着している部分から伝わる体温が上昇するのを感じる。
「話はまだ終わってないよ」
「ま、まだ何かあるのですかっ!?」
「そうじゃなくてね。俺には将来を誓った相手がいるから必要無いって、その場できっぱり断ったから、もう決着はついてるんだよ」
殺気を宥めるように、頼華ちゃんの頭にポンと手を置いた。
「あ……さ、さすがは兄上です!」
膨れ上がるのと同じ勢いで頼華ちゃんの殺気は急速に萎んで行き、俺の方に振り返って、にこーっと笑顔になった。
「お、お待たせ致しました! こちら、焼いた鶉と雀になります。それと、お口に合うかどうかはわかりませんが、お茶と甘酒をお持ち致しました!」
(……必死だな)
盆で運んできた物を俺達の前に次々と置いていく白面金毛九尾だが、その手は小刻みに震えている。
「うむ! では遠慮無く頂こう!」
「は? はぁ……」
急に頼華ちゃんの機嫌が良くなっているのに気がついた白面金毛九尾が、俺の方にチラチラと視線を送ってきたので、笑顔で軽く頷いた。
「甘酒は久しぶりに飲んだが、生姜が効いていて中々旨いな!」
「お、恐れ入りましてございます……」
頼華ちゃんの機嫌が直ったのを感じてはいるようだが、それでも白面金毛九尾はひたすら恐縮している。
「んー……鶉も雀も旨いことは旨いけど、やっぱ御主人の味には及ばないな!」
「黒ちゃん。御馳走になってるんだから、そういう事は言っちゃ駄目だよ?」
味見を頼まれたりしている訳では無いのだから、気に食わない事があったとしても、こういう時に礼儀を忘れてはいけない。
「ご、御免なさい! その……御馳走様でした」
これでいい? そう言わんばかりに黒ちゃんが俺の方を見てきたので、声には出さないが、良く出来ましたと頷き返した。
「お返しにという訳じゃ無いんですが、良ければこれをどうぞ」
ドラウプニールから、湯呑と鉄の匙を取り出した。
「これは……冷たい茶碗蒸しですか?」
俺が差し出した湯呑の八分目くらいまでを満たす、プルンと弾力のある物を見て白面金毛九尾が訊いてきた。
「これはプリンと言いまして、外国のお菓子です」
「ぷりん、でございますか……」
「本当は牛の乳で作るんですが、豆腐の美味しい京の豆乳で作ってみました」
実は牛乳はついこの間、白ちゃんが江戸から持ち帰ってくれたので十分な量があるのだが、豆腐やその加工品で有名な京の豆乳を使って、一度豆乳プリンを作ってみたかったのだ。
「はい、頼華ちゃんと白ちゃんの分」
白面金毛九尾の分に続けて、湯呑と匙を三組取り出した。
「ありがとうございます!」
「かたじけない」
「うぅ……」
一応、罰という事で黒ちゃんの分は無しだ。
「で、では、頂きます……」
「「頂きます」」
豆乳とお菓子というのが繋がらないのか、やや躊躇気味に匙を取った白面金毛九尾に続いて、頼華ちゃんと白ちゃん、そして俺も匙を手に取って湯呑に差し込んだ。
「まあぁ……なんて優しいお味。豆乳の甘さと砂糖の甘さが合わさって、これは美味しいですね!」
「気に入って頂けたのなら、何よりです」
元々、外見通りの柔らかな雰囲気の持ち主である白面金毛九尾だが、豆乳プリンを口にした途端に、持ち前の柔らかさが何段階も増したように思える。
「むむ! これは京の水の所為なのか豆の違いなのか、鎌倉や江戸で食べた物とは口当たりが違いますね!」
「ふむ……頼華の言う通り、底の糖蜜の味も、僅かに違うような気がするな」
「どれ……ああ、成る程ね」
材料の配分などはこれまでと変えていないつもりなのだが、言われてみればという程度ではあるが、舌触りや、口の中に微かに感じるミネラル分の感じなどが違う気がする。
「ううぅ……」
「……黒ちゃん。昼が多かったから俺はもう入らないから、食べかけで良かったらどうぞ」
「……へ?」
羨ましいと言うよりは恨めしい表情で、唸りながらプリンを食べる俺たちを見ていた黒ちゃんに、匙と一緒に湯呑を差し出した。
「あ、あの……」
「全く……兄上も甘いですねぇ」
「黒よ。主殿の慈悲深さに感謝するのだな」
頼華ちゃんと白ちゃんは、受け取るのを躊躇っている黒ちゃんに興味が無さそうな風を装って、プリンを食べる手を止めずに呟いた。
「……」
「ん」
おずおずと伸ばされた両手で湯呑を捧げ持つようにした黒ちゃんに、小さく呟きながら笑顔で頷いた。
「っ! い、頂きますっ! んーっ!」
ぱあっと、お日様のような笑顔になった黒ちゃんは、気が急いているのか、匙を取り落としそうになりながら口に運ぶと、目を閉じてじっくりと味わっている。
「あの……何かあったのですか?」
「ええ、少し」
俺たちのやり取りを見て、白面金毛九尾が不審げに尋ねてきたが、俺は苦笑しながら言葉を濁した。
「それでは、改めまして御紹介を。こちら、鎌倉の源家の御息女の頼華ちゃん。そして鵺の黒ちゃんと白ちゃんです」
座っている面々を、それぞれ手で指し示しながら白面金毛九尾に紹介した。
両サイドの黒ちゃんと白ちゃんは良いのだが、俺の膝の上という頼華ちゃんのポジションが、なんとも間抜けな感じなのが否めないが……。
「うむ! 源頼華だ! そして兄上の妻である!」
ふん! と、鼻息も荒く、頼華ちゃんが俺との関係を自慢気に述べた。
「あ、あの……妹君であらせられるのに、妻、ですか?」
「うむ! 血の繋がりはないのだが、兄のように慕っており、先日婚姻の約束を交わしたのだ!」
「そ、そうでございますか……」
「……ん?」
ぎぎぎ……
何かが強烈に擦れ合う音が聞こえてきたので、音源であろう物を探ろうとすると、それは左右に存在した。
チラッと視線を走らせると、俯いた黒ちゃんと白ちゃんが唇の箸を剥き出しにして、見えている歯を砕けるんじゃないかと思えるくらいに噛み締めて軋ませていた。
(俺と頼華ちゃんとおりょうさんの仲は、認めてくれているんだと思ってたけど……)
おりょうさんと頼華ちゃんが、黒ちゃんと白ちゃんが相手なら浮気にはならないと言っていたのと同じ様な心理状態だと思っていたが、どうやら違っていたらしい。
ただ、頼華ちゃんの宣言に口を挟むような事をしてこないのは、二人なりの俺に対しての忠誠心の現れなのだろう。
「えっと……黒ちゃん、白ちゃん、自己紹介を」
状況を変えるのに何かきっかけが必要だと感じたので、黒ちゃんと白ちゃんに声を掛けた。
「……黒だ! 縁あって御主人に拾われて復活した!」
「……白だ。復活して鎌倉に害を成し、討伐されるところだったが、主殿の慈悲によって救われた」
「は、はあ……」
黒ちゃんと白ちゃんの説明には、少しも間違っている部分は無いのだが、少々ざっくりし過ぎているので、白面金毛九尾は何が何やらという顔をしている。
「それで、あの……こういう強い方々をお連れになったという事は、私共は風前の灯という事なのでしょうか?」
「いやいやいや。なんでそんな事に」
どうやら白面金毛九尾の方では、昨日のやり取りで俺の心証を悪くして、手勢を率いてきたという認識のようだ。
「ははは。白面金毛九尾よ、お主とその眷属を滅ぼす程度、兄上ならば我等の手を借りる必要など無いぞ」
「頼華ちゃん、笑顔で俺の事を危ない人みたいに言うのはやめようね?」
持ち上げてくれているのだとは思うのだが、武人である頼華ちゃんの事なので、俺の事を戦闘力だけで白面金毛九尾も説明しようとするのは勘弁して欲しい。
「こちらの方でも京の結界は問題があると判断しまして、破壊……と言うか、効果を及ぼさないようにする必要ありという結論に達しました」
「で、では!?」
「はい。力を尽くさせて頂きます」
「まあっ! ありがとうございますっ!」
怯えの色を一瞬で消した白面金毛九尾は、感激の面持ちで立ち上がると、多分無意識の行動だと思うのだが、自分の手で俺の両手を握り締めた。
(柔らかい手だな)
見た目には成熟している大人の女性なのだが、白面金毛九尾の手は里の子供達のようにプクプクとしていて、柔らかいと言うかふくよかな感触だった。
「むぅ……」
「ぬぅ……」
「フーッ!」
「ひいっ!?」
いつまでも俺の手を離さないのが気に食わなかったらしく、頼華ちゃんと白ちゃんが唸りながら白面金毛九尾を睨みつけ、黒ちゃんは怒った猫のように髪の毛を逆立てて威嚇した。
「まあまあ、三人共……それでですね、主な作業はこちらでしますが、ちょっと手が足りなさそうなので、出来ればそちらからも人手をお願い出来ればと思うんですが」
「あ、それは……」
「何か問題でも?」
白面金毛九尾は喜色から一転して、落ち込んだ表情になってしまった。
「あの、それ程難しい事をお願いするつもりは無いんですよ?」
「いえ、貴方様とお連れ様に御尽力して頂くのに、こちらが動かないというのは道理から外れておりますのは、重々承知しているのですが……実は、私はかなり力を喪失しておりまして」
「喪失、ですか?」
「ええ」
(……ん? 言われてみればだけど、日本三大妖怪なんて言われてるのに、気の量が多くないのかな?)
俺自身のように、普段は気が外に漏れないようにしている可能性もあるのだが、話を聞く限りでは白面金毛九尾は、純粋に弱っているみたいだ。
「先日お話しました通りに、私自身は特に悪事などを働いた訳では無いのですが、それでも正体がわかると退治しようとする武人や術者などは数多くおりましたので……」
「その際に傷を負った、と?」
「そういう事でございます」
どうやら白面金毛九尾も土蜘蛛の末裔である紬達と同じく、異形の者という事で迫害される対象になっていたようだ。
「でも、見た目にはそれ程は……」
確かに気の内包量が多くは見えないのだが、逆に人型を維持出来る程度には保持しているという事なのだ。
「これでも、結構無理をしているのです。先日、本当の姿をお見せ致しましたが、覚えておいでですか?」
「はい」
(あれは可愛かった……)
手に乗りそうなサイズの九本の尻尾が密生している狐の姿は、もう一度見たいと思える程に非常に愛らしかった。
「本来でしたら狐の姿も、尻尾まで入れますと体長が三メートルを超えるくらいなのです」
「ええっ!? と言う事は、あれは気の消費量を抑える為に?」
狐の尻尾が長めだとしても一メートルは越えなさそうだから、純粋な体長だけで二メートル以上という事になるだろう。
日本に棲息している狐が、最大級でも尻尾まで含んで一メートル前後である事を考えると、白面金毛九尾の本当の姿が如何に大きいかというのがわかる。
「そうです。あれが精一杯なのです」
(だとすると、なんで人型がこんなに盛り盛りなんだろう……営業用かな?)
本来の狐の姿が所謂省エネモードなのに、人間モードが身体も髪の毛も盛りまくっているのは謎である。
狐の元締めというのがどういう役割なのかは不明だが、主に男性を相手に交渉とかを有利に出来るようにする必要があるのかもしれない。
「ですので、大変申し訳無く思うのですが、私が御協力致しますのは……」
「あの、治ればいいんですよね?」
「……へ?」
俺が何を言っているのかわからないという表情をした白面金毛九尾は、放心したように言葉を漏らした。
「以前に、似たような相手の傷というか、呪われた部分を治した事があるんですよ」
似たような相手というのは、かつて蜘蛛切りと呼ばれていた頼華ちゃんの愛刀、現在は薄緑と呼ばれてる太刀の呪いで、再生不能の傷を負っていた紬の事だ。
「あ、あの……貴方様にはそのような事がお出来に?」
これ以上無いというくらいに、白面金毛九尾の瞳が見開かれている。
「ええ。でも、方法がちょっと……俺の事、信用してくれてますよね?」
「え? ええ、それは勿論ですが……」
「じゃあ驚かないで、じっとしててくださいね」
「ひっ!?」
俺がドラウプニールを操作して腰に巴を帯びたのを見て、白面金毛九尾が息を呑んだ。
「頼華ちゃん」
「はい! おい狐よ。兄上はちゃんと驚くなと申したのだから、そんなに怯えるでない!」
俺が呼び掛けると、心得たとばかりに頼華ちゃんが膝から降りながら、震え上がっている白面金毛九尾に注意した。
「決して、傷つけるような事はしませんから」
「は、はい……」
苦笑しながら立ち上がって俺が言うと、少し後退り気味ではあるが、白面金毛九尾は逃げ出したりはしなかった。
「では、少し失礼します……」
(うーん……受けた傷や呪いを、全身に均等に分けてるって事なのかな?)
近づいて目を凝らして見ても、紬の時のように明確に欠損している部分はわからないのだが、どうやら固有の気の色だと思っていたのは、薄く引き伸ばされた呪いに由来する色だったらしい。
省エネモードでは無い本当の姿ならば、欠損している部位を見定められるのかもしれないのだが、妖とはいえ女性なので、傷ついた身体を見られるのには抵抗があるだろう。
「こう、かな……お?」
抜き放った巴で白面金毛九尾に触れるか触れないかの辺りを撫でるようにすると、少しくすんだような色の気が巴の黒い刀身に触れて崩壊し、細かな粒子のようになり、次いで霧散していく。
「す、凄い……」
自分の身体に起こっている変化に、白面金毛九尾は溜め息混じりに呟いた。
(それにしても、傍から見たら物凄く危ない図だよな……)
俺達のいる席は認識阻害の呪いとやらで他の利用客は気にしないし、一緒にいるのは白面金毛九尾と身内だけなので問題は無いのだが、刀で金髪美人の体表を撫でるなど、理由が無ければとんでもなくバイオレンスな図だ。
「……こんなもんかな?」
(これが白面金毛九尾の、本来の気の色なのかな?)
頭の先から座っている脚元まで、丹念に巴で撫でるようにする作業を終えると、やや黒ずんで見えていた白面金毛九尾の体表の気が、今は薄桃色をしているのが確認出来る。
「か、身体にあった倦怠感のような物が消え去りました! な、なんて御方……」
「いや、そんな……」
巴を鞘に収めて、更にドラウプニールを操作して仕舞った俺は、元の位置に戻って座り直した。
「兄上ならば当然だ!」
「そうだー! 御主人はすげーんだぞ!」
「うむ!」
あまり持ち上げられたりするのは嫌なので、やめるように白面金毛九尾に言おうとしたら、頼華ちゃんと黒ちゃんと白ちゃんに思いっきり言葉を被せられてしまった。
「ですが兄上。傷や呪いは治ったようですが、今のこの者の気は、一般人程度しかありませんよ?」
当然のように俺の膝の上に座り直した頼華ちゃんが、顔を向けて訊いてきた。
「そうなんだよね……」
呪いが解けて欠損した部分は回復するようになったので、白面金毛九尾の本来の最大量まで気は戻るはずだが、現状では頼華ちゃんの言う通り一般人程度の量でしか無い。
今夜は多少なりとも荒事が発生するのが予想されるので、自分の身を護る事も出来そうに無い白面金毛九尾は、現状では役立たずだ。
(俺が気を送り込めば回復はするだろうけど、どれくらいの量が必要になるか……)
これが普段の事ならば、気を送り込んで回復するのに何も躊躇は無いのだが、京の結界を壊した後で発生する状況を考えると、自分自身も万全の状態にしておきたい。
「紬と同じように、主殿の配下にしてしまってはどうだ?」
「それはちょっとなぁ……」
紬の場合は呪いを解いて元の大きな身体が縮んで省エネ化され、更に魂分けされていた蜘蛛達の一部を吸収したので、元の最大値に戻るのが早かったのだ。
その上、成り行きで配下にしてしまったが、紬や里の子供達だけでも大いに持て余しているのに、日本三大妖怪が新規加入なんて、考えただけでも気が重い。
「うーん……あの、ある道具をお渡ししますけど、絶対に悪用しないと誓いを立てて貰えますか?」
「っ!? あ、兄上、まさかあれを!?」
「御主人!?」
「主殿!?」
俺の言葉の意味を読み取った三人が、信じられなと言う表情で見てくる。
「三人共落ち着いて。それに、誓いを立てて貰うって言ってるでしょ?」
「し、しかしですね!」
「……?」
俺に向かい合わせになるように姿勢を変えて、作務衣の胸元を掴みながら頼華ちゃんが抗議するが、意味のわからない白面金毛九尾は首を捻っている。
「仮に気が万全になったとしても、頼華ちゃんや黒ちゃんや白ちゃんが、遅れを取ったりするの?」
「む! そんな事はありません!」
「おう! 増えた分丸ごと食ってやるよ!」
「ふ……主殿には敵わんな」
三人は俺の言葉にプライドを刺激されたのか、反対意見は引っ込めてくれるようだ。
「じゃあ、ちょっと失礼して……」
「?」
(椿屋さんから入金があって助かったな……)
白面金毛九尾が不思議そうに見守る中、俺は金貨を三枚取り出し、右の手の平で笹が持つようにしたままドラウプニールを弾いて回転させた。
「な!? こ、これは!?」
やや高周波の音を発しながらドラウプニールが回転を早めると、手の平の上に金貨が粒子に変換されて吸い込まれて行くのを見て、白面金毛九尾が驚いている。
「……出来たな。どうぞ」
やがて虚空から転げ落ちたドラウプニールの複製品を空中でキャッチして、白面金毛九尾の方へ差し出した。




