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天然理心流

「では、今度こそ宜しく頼む」

「は、はい!」


 沖田様に今度こそと言われて、俺もようやく腹を括った。しかし……。


「……」


 俺が後ろを向く間も無く、軽い衣擦れの音を立てながら沖田様が襦袢の合わせの結び目を解いて、するりと畳の上に落とした。


 続いて、胸をきつく締め付けていたサラシが解かれて、畳の上に小さな山を形成していく。


「……」


 ゴクリ……


 静かな室内に、自分の固唾を飲む音が妙に大きく響いたように感じた。


「そんな、見てばかりいないで、さっさと採寸をしてくれ。それに……こんな醜い姿を眺めていても、気分が良くは無いだろう?」


 緋色の腰巻き一枚の姿の沖田様の言う醜い姿とは、着物に隠れていてわからなかったが、腕と言わず肩と言わず、無数に見える様々な傷痕のある身体の事だった。


 胸に巻かれていたサラシにばかり注目してしまっていたが、沖田様の肩口の辺りには新しい傷なのか、包帯代わりに巻かれているサラシに少し血が滲んでいる。


「……」

「なっ!? なんで泣くのだ!? そんな泣く程に見るに堪えないか、私の身体は!?」

「い、いえ! 決してそうじゃ無いんですけど……」


 憐れみを感じたとかそういう事では無く、自分でも良くわからないが、本当に無意識に涙が溢れてきたのだ。


「お主がこれを見て、どう感じたのかはわからんが……」


 沖田様が、誰に言うともなく呟き始めた。


「私が身に受けたこの傷の数だけ、罪の無い人々が傷を負う事を防げたのだから、一つ一つが私の誇りなのだ」

「……」


 沖田様は苦笑しながら、何も恥じる事は無いと言わんばかりに、腕で隠すような事をせずに堂々と裸身を晒している。


「だがまあ、傷を受けた事自体は、私が未熟だからなのだがな」

「そ、そんな事は……」


 京のように人口の多い都市ならば各地から様々な、それこそ良い人間も悪い人間も集ってくるだろう。


 只の物取り程度ならば沖田様が遅れを取るとは思えないが、腕に覚えのある武人が悪党に身を落とさないとは限らないし、多数を相手にしなければならない事もあるのだろう。


「それはそれとして、早いところ採寸とやらをしないか?」

「そ、そうでした! では……」


 沖田様が堂々としているのだから、こっちの方が恥ずかしがって採寸を疎かにする訳にはいかない。


 あくまでも採寸の為と自分に言い聞かせて、俺は沖田様の胸と、胸以外の上半身の形状を脳に焼き付けた。



「終わりました」


 トップやアンダーは当然だが、背面や側面からも採寸すると同時に、腕を上げて貰ったりしながら身体を動かした時の形状の変化の様子を確かめた。


「そうか。手間を掛けたな」

「あ、ちょっと待って下さい」

「ん?」


 採寸が済んだので、畳に落ちたサラシを再び胸に巻こうと拾い上げた沖田様を止めた。


「まだ何かあるのか?」

「あの、実は俺は気功治療が出来まして、宜しければ沖田様のお怪我を、治させて貰えればと」


 既に痕になってしまっている物は治せない、近くで見ると痣や治りきっていない傷が沢山あった。 


「それは……こちらとしては是非も無いが、いいのか?」

「ええ。せめてものお礼です」


 沖田様も武人なので闘気(エーテル)は使えると思うのだが、護りを超えるダメージを与えてくるような敵と、何度も戦ったのだろう。


「じゃあ、布団を敷きますので、うつ伏せに寝て頂けますか」

「わかった」


 ありがたい事にブルムさんが、俺達用に真新しい布団を手配してくれていたので、それを押し入れから引っ張り出して畳の上に敷いた。


「ど、どうぞ……」

「うむ」


 俺が促すと、沖田様は布団の上にうつ伏せになった。


(予想はしてたけど、背中側も凄い事になってるな……こりゃあ表面的な傷だけじゃ無くて、打撲なんかも多そうだ)


 不意を突かれたのでは無く、正面の敵を相手にしている内に背後から斬りつけられた物だと思われる、かなり大きな刀傷が、背中にある物の中で一際目立っている。


「では始めますので、身体を楽にしていて下さい」

「わかった」


 正直、どこから手を付ければいいのかと言うくらいに、そこら中に傷があるので、先ずは目を凝らして患部を確認しながら、首の付根辺りに(エーテル)を送り込む。


「おぉ……首から背骨にかけて、風呂に入っているような心地良さを感じるな」

「痛かったりはしませんか?」

「痛みは無い。だが、心地良さに混じって、少しむず痒い感じはするな」

「そのむず痒さは、身体が治ろうとしている物ですから、感じるのに逆らおうとしないで下さい」


 痒く感じるのは傷痕になりきっていない部位が、(エーテル)によって賦活されて元に戻ろうとしている反応だ。


 施術されている側が変に逆らおうとすると、治りが遅くなったり、傷が綺麗に消えなかったりする事がある。


「むぅ……中々に我慢するのが大変な痒みだが、そう言われると堪えねばならんな」

「申し訳ありませんが、お願いします」


(時々、こういう幼い反応をするんだよな……)


 母親につまみ食いを咎められた子供のように、渋々と俺の指示に従う沖田様を見て、思わず苦笑する。


(刀傷と打撲はかなりの箇所にあるけど……骨折は無さそうだな)


 闘気(エーテル)の防御と技量によって、斬りつけられはしても打点を逸らせているからだろうか、刀傷や打撲は所々に見られるが、骨にまで達しているダメージは無さそうだ。


(新しい傷っぽいから、やっぱりここが一番深刻そうだな……)


 包帯代わりにサラシが巻かれているくらいなので真新しい傷だと思うが、目を凝らすと(エーテル)の色がかなり変化しているので、かなり深く重いというのが視覚的にもわかった。


「っ……」


(これは……良く平然と行動出来てたものだ)


 並の人間ならば意識がブラックアウトするのでは無いかと思う程、沖田様の傷を治すのにごっそりと(エーテル)を持っていかれた。


 それ程に肩の傷は深刻であり、動かすだけでも激痛が走っていたはずなので、そういう意味でも沖田様が並では無いという証明になっている。


「おぉー……肩こりが解れていく感じがするなぁ。鈴白は治療よりも、按摩の方が上手いのではないか?」

「それは良く言われます」


(何を呑気な事をこの人は……)


 下手をしたら腕が使えなくなってもおかしくないレベルなのに、全く危機感を感じさせずに軽口を叩く沖


田様には、苦笑するしか無かった。



「とりあえず終わりました。お身体の調子はどうですか?」


 (エーテル)に異常が見えた箇所の治療を終えたので、うつ伏せになっている沖田様に訊いてみた。


「うむ! 感じていた痒みも無くなったし、無論の事、痛みも無くなったぞ! お主は凄い男だな!」

「いや、そんな……」


 身体を起こしてあぐらをかいて座り直した沖田様が、相変わらず恥ずかしげも無く身体を隠したりはしないので、治療という行為が終わった後の今は、非常に目のやり場に困る。


(す、凄い揺れ方だな……)


 調子の良くなった自分の身体を確かめるように、腕を回したり腰を捻ったりしているので、採寸の時から確かに大きいなと思っていた沖田様の胸が、縦横無尽の動きを見せている。


「では、世話になったな」

「あ、少しお待ちを」

「またか……今度はなんだ?」


 再度、機先を制された沖田様が、口をへの字にした。


「あの、御依頼された胸を保持する肌着ですが、寸法的に知り合いの為に作った物が、偶然ですが沖田様にも合いそうなので」

「なんと! それは誠か!?」

「ええ」


 勿論、嘘、と言うより方便である。


「では早速、着けてみたいのだが」

「ですが、身に着けるのに少しコツがありますので、それを黒ちゃん……あの娘に説明させます」


 剥き出しの胸を晒したまま、沖田様が身を乗り出して来るので、俺の方は思わず身体を反らした。


「そうか! では今暫く、このまま待たせて貰うとしよう」

「はい。なるべく早く参らせますので」


(どうやら上手く行きそうだ……)


 なんとか沖田様を丸め込んだ俺は、障子を開けて中庭に面した廊下に出た。



「黒ちゃん、ちょっといい?」

「おう! で、何?」


 笹蟹(ささがに)屋の玄関を出ると、黒ちゃんは子供達と一緒にジェンガに興じていた。


「ちょっとお願いがあるんだ」

「勿論、御主人の言う事なら聞くよ! で、何?」

「うん。ありがたいんだけど、要件を聞いてからでいいからね」


 俺と黒ちゃんの関係を考えれば、この反応は仕方が無いのだが、それにしても無条件で受け入れるというのは是正して欲しいものだ。


「あのね、沖田様に下着を作ったから、着け方を教えてあげて欲しいんだ」

「えー……」

「いや、気持ちはわからなくも無いけどね……」


 俺の言う事はなんでも聞くという割には、黒ちゃんにとっては苦手としている沖田様が絡むと、話が別らしい。


「そこはほら、胸の方の下着を着けるのには、コツがいるのは知ってるでしょ?」

「知ってるけど……あっ! も、もしかして!?」

「うん。そういう事」


 胸の下着、スポブラもどきを着ける際には、背中や脇から肉を集めるようにするのがコツである。


 ただ、必要だから行うのだが、脇や胸などを手が這い回る訳で、現におりょうさんの場合には、このフィッティングの際に悶絶してしまったくらいだ。


「まあ、黒ちゃんも少しくらいの仕返しはしても、いいかな?」


 俺の方では沖田様に対して含む物は無いどころか、巡回の件などで非常に感謝しているのだが、黒ちゃんの方は常に見を縮こまらせるような状況で、少し可哀想に感じていたのだ。


「おう! よーし……」

「お手柔らかにね?」


 相手が沖田様なので、黒ちゃんがやり過ぎたら反撃されてしまうのではと思うが、この辺は成り行きに任せよう。


「で、これが胸用のと、こっちが下に履く方。説明は任せるね」


 採寸も観察も済んだので、部屋からここへ移動する間に編み上げた、白くて柄も無い上下セットの下着を黒ちゃんに渡した。


 沖田様は女性だが新選組の任務中は袴姿なので、普通の女性の着物姿とは違うので、用足しの際はどうするのかとわからないが、念の為に貼って剥がせるタイプにしておいた。


「黒ちゃんが着け方を教えてる間に、予備分を作っておくから」

「おう! でも、御主人もあたいも離れちゃったら、子供達の世話はどうするの?」


 生憎と、ブルムさんはまだ商談中で戻っていないようだ。


「そこは、ちゃんと考えてるよ。ほら」


 黒ちゃんの疑問に応えるように、俺は手のひらに小さな蜘蛛を出現させた。


 俺と視覚や聴覚などを共有している、分体の蜘蛛だ。


「こいつに目立たないように見張らせておくから、何かあっても大丈夫だよ」

「おう! そういう事なら、いってきまーす!」

「俺も後で行くから」

「おう!」


 俺の声を背中に受けながら、黒ちゃんがバタバタと店の中に駆けていった。


「さて、俺も……」


 軽くスローイングして、店の前の縁台で遊んでいる子供達の背中に、五匹の分体の蜘蛛を放った。


 蜘蛛は緩い放物線を描いて宙を舞うと子供達の背中に張り付き、肩や襟の辺りに這い登らせて、そのままのポジションを維持させる。


 分体の蜘蛛の八個ある目のうち、頭が混乱するので六個の目の情報をカットして、子供達の様子を観察する。


(これくらいなら、なんとか脳が混乱せずに済むか……)


 絶えず視界の隅のサブウィンドに、子供達の肩越しの風景が映ったような感じになっているが、蜘蛛の糸の操作を妨げる程の事は無さそうなので、店の小上がりに腰掛けた俺は、沖田様の下着のスペアを作り始めた。


 あひゃぁぁぁ……


「……ん?」


 店の奥の方から妙に艶めかしい女性の声が、尾を引きながらやがて消えていった。


「黒ちゃん……やり過ぎて無いといいけど」


 声には心当たりがあるし、悪ふざけの範囲を超える事は無いとわかっているので、気にはなったが無視して作業を進めた。


 ひぃやぁあぁぁぁ……


「えっ!?」


 今度は艶めかしい感じでは無く、明らかに助けを求める様な声が、店の奥の方から聞こえてきた。


「黒ちゃん……反撃されたか」


 こちらも心当たりがあるので慌てずに、出来上がった下着を粗めに織った布で包んでから、俺は店の奥に向けて歩き始めた。



「失礼します」

「おお、鈴白か? 入ってくれ」

「はい」


 廊下から声を掛けると沖田様からの返答があったので、俺は障子を開けて中に入った。


「って! 下着姿じゃないですか!」


 障子を開けると、白い下着の上下だけを身に着けた沖田様が何やら誇らしげに、両手を腰に当てて仁王立ちしていた。


「ん? さっきまでお主には、裸を見せておったではないか?」

「それはそうなんですが……」


 沖田様の下着姿は、試合後のアスリーテスのようで妙なエッチっぽさは無いのだが、しなやかさを感じさせるな手脚や、うっすらと筋肉が浮かび上がっているお腹の辺りに、つい視線が行ってしまう。


「って、黒ちゃん!? この有様は……」

「ふにゃぁ……」


 部屋の中に敷かれた布団の上に、精魂尽き果てたという感じで、髪や着衣を乱れさせた黒ちゃんが横たわって小さく呻いている。


「この娘子に肌着の着け方を教わったのだが、騙されていないかと確認をしたのだが、どうやら間違いは無かったようだな」

「はぁ……」


(確認だけで、こんな風になるとは思えないんだけど……)


 俺が軽い雷を放った後の黒ちゃんと白ちゃんがこんな感じになるが、状況を聞かされていなければ沖田様に手篭めにされたようにしか見えない。


(それにしても、本当に黒ちゃんを押さえ込んだんだな……そんな事が出来るのは、おりょうさんだけかと思ってたけど)


 鵺である黒ちゃんは身体能力だけでは無く、見せ掛けの肉体を(エーテル)で構成しているので、(エーテル)の扱いにも長けている。


 その黒ちゃんを、技術によるのかパワーによるのかは不明だが、真っ向から押さえ込んでこの状態にしたのだから、沖田様の底は知れない。


「……この子は凄く力が強いんですけど、良く自由を奪えましたね?」


 どうにも疑問に対しての答えが出ないので、思い切って沖田様に尋ねてみた。


「ああ。確かにこの娘子も、中々の膂力の持ち主ではあるが、力任せなだけで技が無かったからな」

「そうかもしれませんけど……それにしたって」

「私が習い覚えた天然理心流という流派は、剣術を習得しただけではまだヒヨッコ扱いでな。棒術や柔術なども修めて、やっと一人前と認められるのだ」


(天然理心流! それも元の世界と同じだったか……)


 天然理心流は元の世界の江戸時代では、竹刀や防具を使った試合でパッとしない成績しか残せなかったと言われている。


 だがしかし、それは徹底した実戦主義であり、なんでもありの戦場(いくさば)で、あらゆる方法を使って敵を倒すという事を念頭に置いていたからだとも言われている。


 天然理心流はそういうオールラウンドの対応を求められる流派なので、戦場(いくさば)で武器を失った際に落ちている棒きれや無手でも戦える方法を、叩き込まれるという事なのだろう。


(となると沖田様は、剣術と棒術が使えるおりょうさん?)


 これは我ながらかなり乱暴な考え方で、仮に沖田様の柔術の腕前が互角だとしても、おりょうさんには剣術と棒術の代わりに、透過や反射などの(エーテル)を用いる技術がある。


 沖田様の流派がわかったからと言って、それで戦い方の全容を知った事にもならないし、今の時点でおりょうさんとの比較をしても無意味だ。


 そもそも、沖田様とおりょうさんの戦う姿なんて見たくも無いのだが……。


(しかし、世の中は広いな……鵺である黒ちゃんを圧倒出来る人間に出会う日が来るとは、思っても見なかった)


 これも単純比較は禁物ではあるのだが、源頼光(みなもとのらいこう)から受け継いだ弓で鵺を射落とした、源頼政(みなもとのよりまさ)という英雄と沖田様は、同等だと見てもいいのかもしれない。


 なにせ源頼政(みなもとのよりまさ)頼光(らいこう)から受け継いだ弓を用いていたのに、沖田様は素手で黒ちゃんを取り押さえたのだ。


「それにしてもこの肌着は、実に快適だな! まるで鈴白の手で、下から胸を持ち上げられているように軽く感じるぞ!」


 そんな俺の考えなどお構い無しに、沖田様は下着の着け心地をお気に召したらしい沖田様は、無邪気な笑顔でその場でくるっと回ったりする。


「は、はあ……」


(この表現って俺が知らないだけで、どっかで流行ってるのかな……)


 最初にパンツを作った時にも、俺が尻をもちあげているようだと言われたが、全然褒められている気はしない。


(でもまあ確かに、胸はしっかりホールドしてくれているみたいだな)


 サラシを巻いてぎちぎちに固定しているのとは違って、袋状に包み込むスポブラもどきは、締め付けないのに胸を慣性の法則から護ってくれている。


「えっと、これは洗い替え用と、その……必要だろうと思って、用意しておきました」


 努力して胸から視線を外した俺は、用意しておいた布の包みを開いて中身を沖田様に示しながら差し出した。


 包みの中の内訳は、上下五セットの白い下着と、以前におりょうさんに頼まれたのを覚えていたので、沖田様の腰巻きと同じ緋色のパンツが五枚だ。


「お、おお!? お主は、良くも悪くも気が利いているな……」

「はは……」


 五枚だけ色の違うパンツの用途を察して、沖田様が困ったような顔をしているのを見て、俺の方も困ってしまった。


「だがまあ、助かるのは間違い無い。感謝するぞ、鈴白」

「そう言って頂ければ……」


 沖田様が下着を包み直している間に、俺は黒ちゃんの着衣の乱れを直して、腕や脚が捻じ曲がった妙なポーズで寝ているのを直して、楽に横になっていられるようにしてやった。


 (エーテル)で身体が構成されている黒ちゃんが、苦しくなるのかは謎なので、見ている俺の気分的に直しているだけなのだが。


「しかし、な。この肌着と、そこの娘子の肌着とでは、ちと質が違うのではないか?」

「そ、それは……」


(やっぱり肌に直接着ける物だから、わかるもんなのかなぁ……)


 沖田様に渡した方も、かなりの量の(エーテル)を注ぎ込んで、並の手段では破壊出来ないレベルでの高品質なのだが、黒ちゃんが身に着けている物は、ドラウプニールを使って消耗を気にせずに最大パワーで作り上げた物なので、どうしても差は出てしまう。


 しかし、見た目や手で触っただけではわからないくらいの差なので、触感か、それとも鑑定眼によって見抜いたのかは不明だが、沖田様の謎がまた深まった。


「無論、これらも愛用させて貰うつもりではあるのだが……どうもその娘子が身に着けている肌着は、お主が贈ってくれたこの着物と、同等のように思えてな」

「あー……」


(そうか……黒ちゃんの下着に、着物と同じ物を感じて)


 気まぐれで贈った着物一式を身に着けていた沖田様には、どうやら今回の下着とのクオリティの違いが感覚的にわかったようだ。

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