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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

悪役転生してくれと言われた その3

作者: heavygear

基本このシリーズの『俺』はバカです。


 死んだ。

 俺は死んだ。

 事故だった。

 お昼休みに会社近くの蕎麦屋に向かっている時の事だ。

 トラックがカーブを曲がりきれずに横転。

 偶々近くを歩いていた俺は、トラックの積荷に押し潰されて往生ときた。

 で……。


「お主の来世は悪役じゃ! 世界を救う主人公の良き踏み台になるのじゃっ!」


「ぇー」


 死後すぐに俺は神様からトンデモナイ言葉を授かった。


「大丈夫。特典を1つやるから、頑張れ」


「あれー」


 そして、反論の余地すら与えられずに転生用落とし穴へGO。

 落とし穴の先は、母の胎内でした。

 オギャーと転生した俺の生家は、とある役人家系のお屋敷。

 しかも、産まれた世界はアジアンテイストなファンタジーワールドです。

 悪役として頑張れとは、神様も酷な事を言う。


 俺、幸せになれるのだろうか?


 今世の母の腕に抱かれながらオギャーと不安そうに泣くのでありました。


 あれ?

 そういえば、特典ってなんだろう?


 それよりも、だ。

 無事に成長しても、きっと強くて格好いい主人公に俺は殺されちゃうんだろうなぁ。

 やだなぁ。

 近い将来ズンバラリンされちゃうって未来が待ってるんだぜ。

 どうしよう?

 よし、叩きのめされても『ギリギリ生きてました』ってなるよう身体を鍛えようっ!




 あっという間に15歳。

 俺は大した病気や怪我もせず、立派に成長しました。

 身の丈2メートルを超えるムキムキマッチョな少年に……。


 後、特典も判りました。


 俺に与えられた特典。

 それは、魔法の才能でした。

 とある属性に特化したと注釈がつきますがね。


 よし、主人公を迎え撃つべく頑張るぞっ!




 まずは、父が管理している村の住人達に強制労働だ!


「父上! 愚かなヤツ等に我らがどれだけ偉いのか示す良い案を思いつきましたっ!」

「う、うむ」

「これこれこういう作業をさせるのです!」

「……良かろう。お前の言う通りにさせよう」


 父におねだりすると、俺の意見が通ったようで、すぐさま人が集められ強制労働が開始された。

 真冬の寒空の中、住人達がヒーヒー言いながら道路を整備する。

 可哀想だが、仕方ない。

 俺は悪役なのだ。

 人々に憎まれる存在でなくてはならない。

 ご、ごめんなさい……。




 2年が経過した。

 村と都を繋ぐ立派な街道が出来た。

 住人達が苦役が終ったと涙している。

 作業は冬の季節のみさせていたのだが、思ったより早く出来てしまった。

 原因はアレだな。

 魔法の練習。

 作業の邪魔になる大岩やら大木を俺が破壊した事が、街道開発を早める結果になったのだろう。

 あっけなさ過ぎ?

 しかも、主人公来ないし……。

 次の悪事を考えねば。




「都まで気軽に行けるようになったのだ。奴隷でも買いに行ったらどうだ?」

「なるほど」


 俺が次の悪事をウンウン考えていると、父からナイスな一言。


 次は奴隷を購入しようっ!

 そして、哀れな奴隷を酷使するのだ。

 主人公は奴隷を解放すべく、俺を倒しにやって来る。

 パーフェクトだ、父上!


 早速整備された街道を使って都へと向う。

 向う先は人買い専門の奴隷商だ。


「これはこれは若様。このような場所に何の御用でしょうか?」

「奴隷を買いに来た。それ以外に何の用がある?」

「ケヒヒ、そうでございましたな。ではでは、こちらに……」


 奴隷商のお奨めする美しく可憐な少女達を一切無視して、安値の訳あり奴隷達を50人程購入。

 主人は不満そうだったが、使い潰す予定なので、これで良い。

 父上の部下達に一旦預けて、どう酷使するか考える。

 街道はあるし、さてはてどうしたものか。

 俺が悩んでいると、そこに小汚い托鉢僧の歩く姿が……。

 ティンと来た。

 よし、無駄に豪華な仏寺を建立しようっ!

 街道整備で一段落している住人達も巻き込めば、哀れな人々を救うべく主人公がやって来るに違いないっ!

 さあ、来い主人公っ!

 バトルステージを用意して待ってるぞっ!




 4年が経過した。

 村に立派な仏寺を建立した。

 管理者には、あの小汚い托鉢僧を選んだ。

 奴隷共と住人達が苦役が終ったと涙している。

 主人公が来ないまま作業は終了。

 寺という神聖なものを作ったのがいけなかったのだろうか?

 次の悪事を考えねば……。


 あ、そうそう。

 お見合いして結婚しました。




「あなた。子供達の為、古くて汚い家屋を建て直しませんか?」

「なるほど」


 俺が次の悪事をウンウン考えていると、妻からナイスな一言。


 次は罪のない住人達の家を破壊しようっ!

 そして、主人公は横暴を阻止すべく、俺を倒しにやって来る。

 パーフェクトだ、妻よ!


 早速部下達に、小汚い家屋を建て直す旨を伝えさせる。

 すぐに破壊するのではなく、時間を少しおくのだ。

 住人達はハラハラドキドキしながら、俺が家を壊す事に恐れ戦く。

 もう一度言おう。

 パーフェクトだ、妻よ!




 1年が経過した。

 村は立派な街へと進化した。

 しかも、またしても主人公来ないし……。


 あれ~~~?




「息子よ」

「どうしました父上?」


 次の悪事を考えながら武術の稽古をしていたら、引退した父上参上。


「最近の都は不穏な空気に包まれているそうだが、知っているか?」

「そうなのですか? まったく気が付きませんでした」

「まぁ、いい。これからはお前のやりたいようにやりなさい。ワシは止めはせん」


 それだけ言うと、父上は孫達の方へと去ってしまった。

 どういうことだ?


 っ!?


 都を攻めろとおっしゃるのですね、父上っ!


 おおう、ついに俺も年貢の納め時か。

 都を攻め落とす俺を退治しに来る主人公。

 まるでラスボスみたいだな。

 !?

 そうか、俺はラスボスだったのかっ!?

 主人公がなかなか来ない訳だ。

 よし、主人公を落胆させぬよう確り準備して都を攻め落とすぞ!


 まずは、軍の編成だ。

 街に流れ着いてきた難民を兵士にするか。

 ついでに、俺を裏切りやすいように以前購入した奴隷達を数人徴用しよう。

 徹底的に扱いて、強兵にし、俺を憎悪するよう仕向けよう。

 これで俺が倒された後は、主人公が彼らをなんとかしてくれるに違いない。

 待っていろ、主人公っ!

 バトルステージはすぐそこだっ!




 あれあれ~~~?


 気が付いたら都を攻め落として、俺は王様になってしまったぞ。

 主人公どこだよ?

 もしかして、城内に居たあの剣士だろうか?

 いや違う。

 あれ、滅茶苦茶弱かったし……。


 もしかして、俺が統治者になってから反乱軍を指揮して来るのかなぁ?


 武術と魔術を鍛えながら待つとするか……。




 30年が経過した。

 家族と多くの家臣達に見守られながら俺は逝った。

 結局、主人公は俺の前に現れる事はなかった。




 ★★★★




 あの方は、常に愁いておられた。

 勤勉で真面目なあの方は、平穏な世を作るべく常に努力なさった。


 冬を越せるか不安な年があった。

 出稼ぎに行こうにも、道は荒れ放題。

 村を出れば、危険な獣達が出る。

 住人の多くは悩み苦しんだ。


 そんな時、15歳のあの方は街道整備をすると村に伝えた。

 金は出さないが、代わりに蔵にある作物を与えると。

 多くの家族がこれに救われた。

 作業を邪魔する危険な獣や、取り除きに時間が掛かる岩等、全てあの方が排除した。

 こうして出来た都への道は商人や旅人の行き来を楽なものへと変え、村の発展へと繋がるのです。


 あの方が17歳の時。

 旅人や商人が伝える悪い誘惑に村の若者達が曝されていた時の事です。

 あの方は、今や高僧と伝えられる修行中の僧と行き場のない50人の少年少女を連れて来ました。

 平穏な世を祈るべく、寺社を建立すると宣言します。

 信仰厚きあの方指導の下、わずか4年で立派な御寺が建立されました。

 悪い誘惑に負けるなと勇気付けられたと、多くの住人達が伝えます。

 行き場のない50人の少年少女達も、仕事を共にする事で希望に満ち溢れていたそうです。

 村もドンドンと発展し、確りとした新しい家屋が多く作られるようになりました。

 御寺が建立され、街道を通って参拝に訪れる人々が増えてくる頃には、街へとなっていました。


 あの方が22歳の時。

 都の腐敗はとても酷いものだったと伝えられます。

 賄賂と不正がお上に広がり、納める税も理由なく増やされていたそうです。

 あの方は、立ち上がりました。

 兵を率いて、民衆に正道を伝えんと軍を組織したのです。

 あの方のために多くの人達が集まりました。


 そして、悪逆な王とそれに付随する悪臣をお討ちになったあの方が王となります。


 即位30年余、あの方は善政を行い、多くの民衆に夢と希望を与え身罷られました。


 あの方の死後も、あの方の思いを受け継いだ子孫達が国を長い間繁栄させ続けたそうです。




 ★★★★




「どうしてこうなったんじゃ?」

「さあ?」


 頭を抱える神様を前に、俺はお手上げのポーズをした。

 ちゃんと悪役になるべく、俺なりに努力したのだがなあ。


 あっ、そうそう。

 自己紹介がまだだったね。


 俺の名前は、アクダイ・カーン。


勢いだけで書いた。

後悔はしてない。

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― 新着の感想 ―
[一言] すごく面白かったです!
[一言] 努力って重要ですよね……。 面白かったですよ。
2015/06/18 22:45 退会済み
管理
[良い点] 真面目な人間こそが報われたそんな世界に涙した [一言] アクダイ・カーン のちに遠山の〇んさんとディレク〇ーが収録の度に平伏し崇めた存在である………そして大陸のほぼ全てを征服……あれ??
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