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悲しみが紡ぐ永遠の恋の唄  作者: アルテフィーア
1/1

プロローグ

全て知った上で私は彼の側に居るの。

「きゃっ!」

砂浜に躓いて彼が抱きとめてくれる。

けれどその優しさ、本当は他の人のもの。私ではない。

「大丈夫か?」

「うん」

優しげなその声も、優しげなその瞳も、優しげなその笑みも、全てあの人のもの。

手を繋いで砂浜を歩くも、心に浮かぶのはあの人の顔。

「帰るか?もう暗くなってきている」

「そうだね」

石畳の階段を一緒に登り、海岸沿いを歩いて帰る。

歩幅や歩調を合わせてくれる、その気遣いが、私は好き。

大好きな彼。でも、時々辛くなる。

その優しさが痛くて。

その気遣いが辛くて。

彼の存在を痛く感じてしまう。

どんなに願おうとも、叶わない。

「サク!」

「え………」

俯いていて気づけなかった私は、どれだけ愚かだっただろう。

「っ!」

そして、突き飛ばされる衝撃。次いで、キキィーーーーーッ!、というリムジンのブレーキ音。最後に、リムジンが何かにぶつかった、ドンッ!、という音。

急いで瞳を開ける。

見たくなかった。けれどそれが、私が招いてしまった現実。

急いで私は彼の元へと駆け寄った。

血塗れになった、彼の元へと。

「創星っ!」

服が血塗れになることを厭わずに、身体に血が付くことを厭わずに、彼を抱く。

「嫌よっ!側に………側に居てよぉっ!」

溢れる涙は止まることを知らずに溢れてくる。

すると、彼が私の頬に血塗れの手を添える。彼の顔を見ると、微笑んでいて。

「ご、めんな………きちんと、サク、だけを…愛して、やれなくて………」

私はその言葉を否定するために首を振る。そうすると、彼は苦笑する。

「ホント、は…お前の、不安に…気づいてた………俺、最低、だよな………」

衝撃で声が出せない私は首を振ることしかできない。

「サク、俺は…ホント、は…お前だけを、愛してる………その、事実は…変わることは、ない………」

認めたくない。認められない。

体は正直で、彼の命が尽きようとしているのを否定する。

「今まで、ありがとな………こんな、俺、に…ついてきて、くれて………」

「そ…っせい!!」

涙のせいでうまく口が回らない。言葉をうまく発せない。

彼の名前さえ、呼ぶことができない。

「桜…………………………ーーーーー愛してる」

刹那。

私の頬から彼の手が離れた。

「あ、ああっ!嫌あぁぁぁぁぁぁっ!!」

彼をより一層抱きしめても、彼は何の反応も示さない。

どれだけ涙を流そうと、どれだけ願っても、どれだけ後悔しても、もう彼が戻ることは、二度とない。
















ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー愛しています、心から、永遠に………。

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