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現代魔法使いの捕蝶記  作者: 天野 洋
1章 ガレイスト王立学園編
15/19

マッスル・パーフェクト・ドリンク 2

 とりあえず、ホモォー、ホモォーと言う集団から離れ、グレイの右手首をがっちりホールドすると風の速さで学食を後にする。

 決して決してみんなのホモォーホモォー発言が嫌だったとか千崎さんの消えされこのゴミ屑がっていう視線とかフレアのそうだったんだねという可哀そうなモノを見る目が堪えたからじゃないとここに記しておこう。

 ほんとなんだからね!


 学食から離れて人気が無い場所までなんとか来た所でグレイの手を離し向き直る。

 グレイにはちゃんと言い聞かしておかなければ


「グレイああいう間違われそうな発言はお願いだから止めてくれ」


 俺の必死な頼みにグレイはなんのことだ?という顔をしていたが、先の発言を思い出すと得心のいったという顔をした


「いやあ、すまない、俺も色々と悩んでいて狭量になっていたよ」


「分かってくれて重畳だ、今度あいつらと会ったときに誤解を解いてくれると助かる」


「ああ、俺の方から言っておこう、それで少し話が有るんだが」


「分かってるってテストの真っ最中の頃から何か悩んでた事に関してだろ?」


「おお、気付いていたのか」


「そりゃな、俺だけじゃなくて皆気づいてたぜ、どうしたのか心配にしてたのが3割でからかうことに7割って塩梅だがな、恋バナだと尚良しってとこだ」


「くく、あいつららしいな」


「それで肝心の悩みってのは何なんだ?」


「ああ、それだが今回の中間テストでの実技テストであまり結果が芳しくなかったんだ…俺よりも筋肉がないやつに負けてな」


「そうか」


 筋肉重視のグレイが筋肉の無い奴に負けてショックだったというわけか、体を鍛えて上がるSTRは微々たるものだから、レベルを上げてスキルを少しでも上げているやつが強いのが当然だからな。


 「それで筋肉だけを追求していては駄目なのかと俺は悩んだんだ、そして俺は…俺は…図書館で調べることにしたんだ!」


 図書館で調べる?

 筋肉を効率良く鍛えるためにか?

 この世界で図書館とかそういえば行ったことなかったけど、筋肉の本とか置いてないだろ…時代的に中世だし、一昔前の根性だ根性!とか書いてる本が有りそうだ

 一応根性論の本に傾倒していたら止めてやろう。


「そこで俺はこの本を見つけたんだ」


 そう言ってグレイはインベントリの中から1冊の本を取りだした。

 題名は…なになに 筋肉の愛し方100選


「…………」


 これにどうやって突っ込み入れればいいんだよ!

 というか何でこんな本が図書館にあるんだよ!

 ちゃんと考えて本を入れろよ…

 

「それでだな、この本には筋肉を愛する色々な人たちの人生が書いてあったのだがその中で転生をすると筋肉が無くなってしまうことが書かれていたんだ」


 そうか…転生すると筋肉が失われてしまうことを知ってしまったのか、気を使って言わないようにしておいたのだがそれがまずかったか

 まあでも、転生のペースさえ掴めば筋肉を最高の状態で保つこともできないことはないんだが、グレイがレベル100になるまでどれだけかかるかがな


「転生すると筋肉が無くなってしまうことは大問題なんだが、それよりもこれを読むんだこれを」


 そう言ってグレイが差し出しているページを見るとそこには『転生後すぐに筋肉を付けたい人や筋肉がなかなかつかない体質の人に向ける薬 マッスル・パーフェクト・ドリンクの作り方』と書かれていた。

 なんだこの胡散臭い薬は…というかなんでこんな筋肉の本に薬の作り方が書いてあるのやら…あれか筋肉を鍛える本にプロテインの作り方が書いてあるみたいな感じだろうか


「これなんだ俺の目指していたものは!」


 喜色をあらわにして、グレイはそのページをぐいぐい俺の顔へと近付けてくる。

 いや、そのページ読んだから、そんなにぐいぐいしなくても

 という俺の顔色をグレイが読んでくれるはずもなく


「最近筋肉の肉付きに限界を感じていてな、この本の通りにこの薬を使えば最高の筋肉が得られるらしいんだ、薬に頼ることは俺も随分悩んだよ、筋肉というものは己との戦いにより勝ち得た努力の証であり俺の人生でもある、薬などというモノに頼るなど己の今までの人生を否定する、しかしだ、俺の筋肉はもはや限界なんだ、鍛えても鍛えてもなかなか筋肉が付いてくれない、だからこそ俺は悩みに悩みぬいてこの薬を使ってみようと結論を出したんだ、なんとこの本によると筋肉が付きにくい人のためにも最高の筋肉を得た後も筋肉を鍛えることができるという素晴らしい秘薬でもあるんだ! この薬を使うことにより俺は更なる躍進を遂げることができるだろう。さらにこの薬の良いところは――――」


「あー、わかった分かったから」


 グレイが筋肉と薬について語りだしてどこまでも行きそうな感じだったので取り合えずストップを掛けておく


「それでその秘薬とやらを作るのを俺に手伝ってほしいんだな」 


「ああ、そうなんだこの秘薬マッスル・パーフェクト・ドリンクを作るのを手伝ってくれ!」


「はいはい、それで材料はどんな感じなんだ? けっこう集めるのが大変なのか?」


「ああ、それがけっこう集めるのが難しそうでな、これを見てくれれば分かるが」


 俺は言われるままにグレイが指さすページを見てみる

 マッスル・パーフェクト・ドリンク作り方

 ※これの作成には最低でも累積レベル500以上の方か、手伝いを必要とします、累積レベル百未満の方はあきらめましょう


「…………」


 おい!

 この薬どうなってんだよ!

 累積レベル500以上の人向けとかとち狂っているとしか思えない

 こんな危険そうな匂いがぷんぷんしているものを作るのを手伝ってくれとかグレイも良い根性してるな

 グレイの方を見ると誕生日プレゼントを期待する子供の様な無垢な笑顔でこちらを見ている。

 いやいやいや、筋肉質の男にそんな目で期待されても嬉しくもなんともないから!

 というかグレイの中では俺が諸手を上げて手伝ってくれることが決まってるんですか

 俺はため息を吐くとグレイの方にちゃんと向き直り


「分かったよ、手伝い料は出世払いでいいぜ」


 こうして俺はグレイのマッスル・パーフェクト・ドリンクの材料集めと作成を手伝うこととなった。


「報酬はマッスル・パーフェクト・ドリンクでいいか?」


「いるかよっ!」


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