マッスル・パーフェクト・ドリンク 1
「暇だなぁ」
カリカリとペンを走らせる音。
緊張感に包まれている教室。
皆が真剣にテスト用紙に果敢に立ち向かっている中、俺はあくびを噛み殺しながら時間が過ぎるのを待っていた。
入学式から2カ月半経った初のイベント。
そうガレイスト王立学園は現在中間試験の最中であった。
皆が熱心に机に向かっている中、俺は教卓の後ろで椅子に座りカンニングがないかやる気なさげに見張っていた。
本来ならば学生である俺は皆と同じようにテストを受けるのが普通なのだが俺は転生者であることがばれてしまっているため、テストは特別に免除らしい。
転生者というハードルはこの世界の人にとっては厳しいため、転生者はほとんどが人生の後半に差しかかる者が多く教養がある者が大半だ。それに実技などの試験を転生してないものと比べることなど差がありすぎて意味が無い。そのためガレイスト王立学園では転生者はテストが免除になっている訳だ。そりゃ小学生のテストを大学生が受ける様なものだから当然と言えば当然だ。
しかし、俺の場合はこの世界の常識なんて有ってないようなものだから本当にテストを受けていたらいくつかの分野は赤点が確実だろう。だから転生者とばれてしまって事についてはこのテストにおいてはお得だったと思うべきだ。
まあ、その代わりに俺達転生者はテストの見張りを手伝わされているのだが
そうやってテストを受けないでよかったと考えていると四時間目のチャイムが鳴った。
「はい、そこまでね、後ろの人は解答用紙を前に回してね」
俺がそう言うとテスト用紙が前に運ばれてくる。
この用紙を人数分あれば今日の学園は終わりだ。
俺はさっさと人数分テスト用紙があることを確認すると解散をつげる。
そうするとわぁっと生徒達は輪を作りテストできた? あの問題解けた? あと二日もあるよ などとわいわいと騒ぎ始める。
俺はその喧騒を懐かしみながら教室を後にする。
「んで今日のテストはみんなどうだったの?」
がやがやと騒がしい学食のいつものおテーブル席。
俺はにやにやと笑いながらテストが有った七人にその出来を聞いていた。
「ゼブルっちそれを聞くのは野暮ってもんだぜ」
「そうなの、女の子にそういうのは聞いてはいけないものなの」
ティシュとミレイはどうやらお察しの出来らしい。
「僕は普通だったかな」
ネル普通とか言っているが絶対出来ていると思う。
「私は出来たよ」
「私も結構良い感じだったかな」
「当然できた」
フレアや賀茂さん、千崎さんは当然という顔だ。
というか千崎さんはなんで偉そうなんだよ。
そう思っていると何か足りない感じがする。
何だろうと考えていると
「グレイは出来どうだったなの?」
そうだグレイの事を忘れていた。いつも筋肉ネタで来るからスルーしているがないと何か納得いかないものあるらしい。
グレイの方を見ると何か考え込んでいるようで先のミレイの発言も聞こえてないみたいだ。あのグレイにしては珍しい。
「おーい、グレイっちどうかしたのか?」
ティシュが肩を叩くとようやくこちらに気付いた様で
「お、すまんかった、何の話だったか?」
グレイはやはり話を聞いてなかったようだ。
何か厄介事を抱え込んでなければいいが…
結局ご飯を食べて解散するまでグレイが上の空なのは変わりなかった。
そうして三日が過ぎテスト最終日も終わり昼食。
「グレイ何で悩んでいるんだろうな?」
「俺っちらには話せない悩みなのかもよ」
「話せない悩みといえば筋肉の悩みなの! 最近筋肉の肉付きが――――」
「そんなわけないでしょ、話せない悩みといえば恋の悩み!きっと――」
「きっと新しい筋肉に恋をしてしまって自分の筋肉に倦怠期というシュチュですね」
「い、いけません綾様、そんな破廉恥な事を」
「筋肉に恋? 破廉恥?」
「ネルお前は今のままで良いんだ」
「新しい筋肉に恋とか有りそうだな」
「ありそうなの!」
「だよね!」
「てかお前ら暴走しすぎじゃねか。もう少し落ち着いてグレイのためを思ってだな、読心スキルで悩みを調べて陰ながら応援を――」
「「「「最低だよゼブル」」」」
「ゼブルくんそれはちょっと…」
「ネルまで俺を否定するのかひでい…」
「「「「「…………」」」」」
「すいません自重します」
「さて、ふざけるのはこれくらいにして何を悩んでいるかグレイに直接聞いてみた方がいいと思うの、これでいいかな?」
「「「「「良いと思う(ぜ)(なの)(よ)」」」」」
というわけで言い出しっぺのフレアが俺達を代表して何について悩んでいるのか危機に行くことが決まった。
そしてフレアが早速悩みを聞きに行こうとすると
アレスが急に俺の前まで来るとかなり真剣な顔で――
「俺と付き合ってくれないかゼブル」
驚きの発言をした。
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