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現代魔法使いの捕蝶記  作者: 天野 洋
1章 ガレイスト王立学園編
12/19

反魂蝶は舞う 4

 そこは見渡すばかりの畑、畑、畑だった。

 都市をぐるっと囲んでいる魔物用か人用か知らないが大きな壁

 その周りの一面には畑が広がっていた。


 俺は昼食を食べ終わると昼からは授業などは入れていないので外縁部までこの世界の蝶について調べようとやってきていた。

 ほんとは昼からの授業も入れていたのだが、その手の授業は俺に役に立ちそうな有益なものはなかったので全部受講をキャンセルして学園で受ける授業は陰陽術の授業が午前中にあるだけで後はフリーだった。

 今頃ネルたちは大人しく授業を受けているだろう。

 俺は昼からは暇なので先に来て蝶についてと外縁部をちょっと調べておこうという魂胆だ。


 そして、俺はここに来るときは寝ていたので外縁部を見ることがなかったのだが、都市の周りってこんなに畑があるものなんだなと俺は驚いていた。

 この世界はモンスターなんてモノがいるから外は危険だから都市には大体こういう壁があるのはおっさんから聞いていたが、やはり畑とかは壁の外側にあるんだな、石材とかを大量に使うからどうしても畑などは外側にしないといけないのだろう、そもそも壁で影って成長に良くないだろうしな。

 俺はそんなことを思いながら改めて周りを見回す

 それにぱっと見何種かの蝶が飛んでいるのが見えるので早速採ってみてどういう蝶がこの世界に居るか確かめてみよう。俺はわくわくしながらインベントリから三角ケースを取りだしベルトに嵌めて、捕虫網を取り出して蝶の採集を始めることにした。

 

 まずは傍を飛んでいるモンシロチョウっぽいチョウを網で捕まえる。

 無論一発で捕まえられた。

 そして胴体を指で少し強く抑えて気絶させ蝶の観察を始める。

 蝶はちゃんと触角が有り、羽も4つ、頭部、胸部、腹部もあるし、足は6本、口は勿論ストロー状になっている。

 ほんとに普通の蝶だな。

 一応アナライズで魔法的な何かがないかと調べてみるが全く反応しないみたいでただの蝶だ。

 異世界ならこう凄い変わってる蝶が居てもおかしくないんだが、普通すぎてちょっと肩透しを食らった気分だ。


 さてと他の蝶の方も調べてみるか。

 俺はそのモンシロチョウっぽいものを三角ケースから取り出した三角紙に包み三角ケースの中に入れて他の蝶も同様に捕まえ始める。


 あれから1時間ほど経ち20匹ほど蝶を捕まえたが、確かに日本では見たことのない蝶ばかりだがやはり普通の蝶が多かった。

 食草らしい畑に生えているキャベツっぽい野菜を調べたが魔力をほとんど持っていないようだった。

 この手の魔法世界の定番として魔力を持っている物を食べているためそれを食べる生き物も魔力を持つようになるというものだと思ったが、そもそもここら辺に植えてある野菜などは魔力をほとんど持っていないようだ。

 なので、ここら辺で飛んでいる蝶は普通の蝶だということになるな。

 一応インベントリの中に入っていたマナポーションを作るのに使うマナハーブにアナライズを掛けるとそこそこ魔力を持っていることが分かっているので、この世界の植物にも そういう風に魔力があるものがあると確信している。

 噂の反魂蝶とやらはおそらくどこか別の場所から飛んできたか、それとも誰かが連れてきたかのどちらかだろう。

 そもそも、モンスターなのかアイテムなのかそれとも魔力を持った蝶なのかもよくわかっていないんだがな。

 取り敢えず、この外縁部で自然発生したという可能性は否定してもいいだろう。

 まあ、それが分かっても全然反魂蝶について分かってないんだがな。


 後は、ネルたちが来るのをのんびり待つか、約束まであと2時間はあるからな。

 俺は網と三角ケースをインベントリに直し、ビーチパラソルとシート(ビーチイベント産)を取り出して昼寝を始めた。





「あー、ゼブルっち昼寝なんてしてやがったのか!」

「羨ましいの」

「男ならパラソルなんて要らないはずだ!」

「私たちが授業を受けていたのにここで昼寝なんて…」

「これだからチャラ男は…」


 がやがやとネルたちが来たようだ

 いつもの5人に今回は同じ陰陽術クラスの賀茂さんと千崎さんが加わっている。

 それと千崎さんチャラ男は止めてくださいチャラ男は。

 みんな私たちは授業を受けていたのに自分は昼寝ですか、良い身分ですねみたいな視線を飛ばしてきている。

 まあ、気にしてたら負けだな。

 俺に必要ない授業ばっかだしな。

 

 俺はその視線に屈せずに取り敢えずここら辺周辺の蝶と食草について調べたことをみんなに話すことにした。




「ふむ、チャラ男はちゃんと仕事をした後で昼寝をしていたと言いたいようなの」

「一応ゼブルっちも寝てただけじゃなかったんだな」

 

 いやいや、すること無くなったら寝てただけであって、寝ることが目的でここに来たわけではないんだから。

 それとミレイよ、便乗してチャラ男と言うのは止めてくれ…


「それでどうする?ゼブルっち、こんな早く集まっちまって、ゼブルっちの話を聞くにやることなさそうだし、反魂蝶が出たのは夜中らしいから随分時間があるが?」


「そうだな、一応怪しい蝶が居るか周りを気にする以外することないな… てかなんでこんな早い時間に決まったんだ?」


 「面白そうだったから授業が終わったらすぐに行こうって話になっていたね」


 フレアがそう答えるが、俺はあの時のことはあまり覚えていない

 仕掛けた結界術、認識阻害、盲目のデバフ、隠密さえ解かれていた件で何かあいつに対して対策を立てて置いた方がいいとスキルの未取得スキルの欄で良いスキルがないか探していたのだ。

 ちなみに未取得スキルの欄は情報弱者のためにどういったスキルがどこでどうやれば取得できるか網羅されているのでとても便利だ。

 ただその量が膨大でどれが使えるのかよくわからないという困った点もあるが…



「取り敢えずやることないので、ゼブルはビーチパラソルを出すの」


「はいはい」


「あればテーブルと人数分の椅子、それにジュースとお菓子を所望するの」


「はいはい」


 俺はミレイの言うとおりに8人が座れるくらいのテーブルと人数分の椅子と人数分のバナナジュースとチョコチップクッキーにパンプキンパイをインベントリの中から取り出した。

 すぐにミレイは椅子に座りジュースとクッキーを確保し食べ始める。

 ノスタルジアオンラインのときに料理のランクを1にするために作った料理が未だにインベントリの中に残っているからとミレイに上げたのかがいけなかったのか、休日や放課後にミレイと会うと大体せがまれてこうやってご飯やお菓子を食べさせてあげている。


「ゼブル、このパンプキンパイを切り分けるためのナイフと取り皿を用意するの」


「はいはい」


 ミレイがもぐもぐとハムスターみたいにほっぺを膨らませながらパンプキンパイを食べるのを俺は椅子に座りにこにことしながら眺める。

 やっぱロリっ子は最高だな!

 俺がバナナジュースを飲みながらロリっ子を観賞していると声を掛けられた。


「えっと、ゼブルくん なんでインベントリの中にそんなものが入っているの?」


 なぜかネルが不思議そうに妙な質問をしてくる


 はて、何かおかしいことをしただろうか?

 俺はよくわからないので質問に対して質問で返すことにした。

 

「何かおかしいことをしたか?」


「ゼブルくん、普通インベントリの中には武器とかを入れるけど、そんなにインベントリの中には入らないから必要最低限の物しか入れてないというか入れないのが普通なのよ?」

 

「………」


 おお! 

 フレアに言われて思い出したわ

 おっさん曰く移ろい人以外にはインベントリは上限があるから無暗やたらにインベントリを使うなだったな。

 日常生活でもインベントリはめっちゃ使ってるわ!

 周りを見回してみるとミレイ以外は俺がテーブルや椅子やお菓子を出したのを驚いて固まっているみたいだった。

 道理で静かだったわけだ。

 まあ、あれだ

 適当な言い訳をしておこう。


「えっと、あれだ、遺跡でインベントリの代わりとなるものを見つけてそれを使ってるから俺は大量の物を収納できているんだ、という設定でお願いします」


「「「「「「………」」」」」」


 うわあ

 ちょっと言い訳が適当過ぎたのか

 みんなそれ完全に嘘だろ見たいな目でこっちを見てくるんだけど…


「まあ、ゼブルっちだし気にしたら負けか」


「そうだな!」


「ゼブルくんだしね」


「そうよね」


「「………」」


 今の適当な説明でティシュ達はなんとか納得したようだが、同じ陰陽師クラスの賀茂さんと千崎さんは胡散臭い顔でこちらを見ていらっしゃるのですが


「賀茂さんに千崎さん、こんなことで驚いていたら仕方ないよ、もっとあり得ないことをゼブルくんは時々やらかすことがあるから」


 フレアさんがフォローを入れてくれたみたいだが

 なんかフォローの仕方おかしくないですか


「「そう(なのか)なんですか?」」


「言動がおかしいのはいつものことですが、突拍子もないことを言ったり、意味不明な行動をしたりすのは日常茶飯事ですから」


 いやいやいや

 なんかさっきより言ってることがひどいんだけど

 そんな俺変な事してるか?


「ゼブルくん、なんで見覚えがないみたいな顔をしているんですか? よく思い出してください、例えば魔法書買い占め事件とか、小説買占め事件とか、薬草買占め事件とか、挑戦者返り討ち、冒険者返り討ちなんてことがあったじゃないですか」


 そ、そんなこともあったかな…

 金が有り余っていたからこの世界の面白そうな魔法書をたくさん買ったり、小説を買ったり、調合の研究用に薬草を大量に買ったことはあったけど常識の範囲内だったような

 返り討ちとかは勝負を挑んでくるから仕方なく手合わせしているだけなんだが


「なんでそれぐらい普通じゃないか見たいな顔をしているんですか、普通の人は金貨10枚はする魔法書を簡単に100冊とか小説を100冊、薬草を200本も買いません!」


「「あー」」


 なぜかフレアの言葉に賀茂さんと千崎さんが納得したような顔でこちらを見てきているんだが


 いやいやいや

 小説とか本買うときってどばっと買わないか?

 俺夏休みになると必ず古本屋で100円のラノベを100冊くらい大人買いしていたんだが…

 薬草については…

 ノスタルジアオンラインでは薬草1本に付きポーションが1つできたんだよ!

 まさかこっちだと1本に付き10個もできるとは思わなかったし

 おかげで超ポーションができたわ

 普通だとこれだけ作る前に薬草が駄目になるらしかったけど調合のスキルランク1だから即効終わったんだよね

 まとめて製作とかチートだと思います


「私の知らないところでゼブルくんってそんなことしてたんですね、言動については私もおかしいのは知っています」


 こらこらこら

 賀茂さんも何を言っておられるのか

 陰陽師クラスでは俺普通にしていたはずなんだが…

 そんなにおかしいか、俺?


「そんなことより賀茂さんも千崎さんも一緒にお菓子食べましょう、ミレイちゃんが無心で食べているということは味の方はかなり期待できると思うから」


 フレアが賀茂さんと千崎さんを誘ってテーブルに付き勧められるままバナナジュースを飲み始めた。

 って散々いじったあげく放置かよ!

 俺が最後には放置されるのはいつものことなので

 俺はため息を吐き飲みかけのバナナジュースをすすることにした。


 ちなみにジュースやお菓子の感想は今度からどこかに行く時の補給線は俺が担当とのことだった。

 まだ、インベントリにたくさん料理とかお菓子が残っているからいいけど、そのうち作らないといけないなあ

 食材とか調味料ってこの世界はどうなっているか調べないとな

 俺も白米とか白米とか白米とか食べたいからな

 

 おやつが終わりそのままだらだらと椅子に座ってだらだらと話しているとグレイが話しかけてきた。


「ゼブル少しいいか?」


 珍しく真面目そうな顔でいつもの筋肉語ではなく話しかけて来たのでこちらも真面目に話を聞くことにする。


「どうしたグレイ?」


「実はだな、最近私の筋肉の成長が行き詰ってしまってな」


「………」


 いやいやいや

 グレイさん、さすがに俺でも筋肉の成長の悩みとか言われても答えられないよ

 そりゃグレイよりはSTRが高いのは確かだけど筋肉の成長とかは分からないから

 それに俺はインドア派だったんでプロテインの作り方とか知らないし…


「レベル上げでスキルポイントは全てSTRが上がるスキルに費やして、STR極振りにはしているのだが、さすがにSPDが上がるスキルにも振らなくてはいけないのでなかなか筋肉が成長しないんだ、それに最近レベルもなかなか上がらなくてな」


「なるほど、つまりSTRとSPDが上がるスキルを紹介するのとレベル上げのコツを紹介しろということだな」


「ああ、それと筋肉の成長についてお願いする」


 筋肉の成長もなのかよ!!!

 それについては分からんぞ

 いや、待てよ

 随分前に作った俺の肉体超改造計画の試作品があったはずだ

 俺はインベントリの中を探って目的の物を取り出す。

 肉体改造用の重力魔法が込められた指輪

 これを嵌めると重力魔法が展開され肉体に負荷を掛け常に修行している状態となる。

 なるはずだったんだけどなあ

 これを付けることにより筋肉ムキムキだぜとか思っていた頃もありました…

 実は筋肉とか体を鍛えることについてはたしかにステータスにボーナスが付くんだけど…

 転生して年齢を戻す

 そうすると今まで鍛えた筋肉はどこに行くのか

 答えは消えてなくなるんです…

 結局転生を前提にするとステータスを上げる以外に強くならないんですよね

 そのことをグレイに話すべきか…

 さすがに転生して年齢を戻すと筋肉が消えて無くなることを話すのはな…

 今まで鍛えてきた筋肉が無くなるのは…

 いや、しかしグレイが転生できるまでまだ時間があるし、筋肉が最高の状態で転生でその状態に戻るようにして維持するということもできないわけではないし、今は話さないでおくか。

 俺はそう決めグレイに指輪を渡し、色々アドバイスをすることにした。


「ほら、これをあげるよ」


「これは?」


「重力魔法が込められた指輪だ、付けているだけで修行になる優れものだが、慣れるまでかなりきついと思うので最初は筋肉を鍛えるのはよした方がいいと思うぜ」


「おお、ありがとう大切にするよ」


 そう言ってグレイはその指輪を左手の薬指に嵌めた


 ………


 おい、どこに嵌めてんですか、グレイさん


「「「「「ホモォー」」」」」


 不吉な言葉が聞こえたような気がする

 いやいや振り向いて見ると賀茂さんと千崎さん、フレア、ミレイ、ティシュがにやにやしながらこちらを見ていた。

 ネルがそんなこと言っちゃだめだよと顔を真っ赤にしながらみんなに注意してるのが救いだろうか

 いや、ネルも顔が真っ赤な時点でアウトだな


「いやあ、さすがゼブルっち男たらしだなあ」


 ティシュ…

 君は何を言っているんだ…


「あらあら、さすがゼブルくんね」

「さすがなの」

「やはり変態だな」

「ふふ、さすがゼブルくんだね」


 女子たちも概ねティシュの意見に賛同だと…

 俺は取り敢えず、バナナジュースを新しくインベントリから取り出し飲むことにした。

 現実逃避じゃないよ!


 そうして今日という一日は過ぎて行った。


 え、反魂蝶はどうしたかって?

 朝まであいつらに付き合わされたけど蝶とかまったく見かけなかったよ

 まったく、あいつら元気すぎるだろ

 あいつらのせいでインベントリの中にあったお菓子が大分減ったぞ

 それでもまあ、こんな日も悪くないそう思えた1日だった。


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